孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  タリバン遺体に米軍兵士放尿 事態収拾に追われるオバマ政権

2012-01-13 21:22:26 | アフガン・パキスタン

(タリバン兵士遺体への放尿シーン You Tube 動画http://www.youtube.com/watch?v=F6lR3ZGFwvI&feature=player_embedded より)

カルザイ政権「置き去り」】
アフガニスタンのタリバンが、中東カタールの首都ドーハに事務所を設置することでアメリカと暫定合意したことで、和平交渉に向けた“政治解決への一歩”と期待する向きがある・・・という話は、1月4日ブログ「アフガニスタン  タリバン、国外事務所開設で米と暫定合意 それでも和平交渉に期待できない理由」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120104)で取り上げました。

蚊帳の外に置かれた感のカルザイ政権は、アメリカ主導で進む和平交渉から「置き去り」にされる不安も持っているようです。

****アフガン政府「置き去り」も=タリバン交渉、米主導の見方****
アフガニスタンの反政府勢力タリバンが国際社会との交渉窓口となる事務所をカタールに設立する意向を8日までに明らかにした。テロ重視から対話路線に転じた動きとして注目されるが、タリバンは、米国との本格対話を望む一方、従来通り、アフガン政府を相手にしない考え。米国が自国主導で対話を急いだ場合、アフガンのカルザイ政権が和平交渉から「置き去り」にされる事態も想定される。

タリバンは声明で、自分たちと米国および同盟勢力が「アフガンの二大勢力だ」と指摘、これまで散々繰り返した対米非難を避け、対話意欲を初めて示した。アフガン政府への言及は皆無で、専門家からは「米・タリバンの2者対話だけが進み、カルザイ大統領が積み重ねた対話努力が水泡に帰す恐れがある」(情報機関元トップのタカト氏)との見方も出ている。

元来、カルザイ大統領はトルコなど自国と関係の深い国への事務所設置を希望していた。米、カタール両政府がタリバンと事務所開設について協議していた昨年末には、交渉内容を知らされていないとして駐カタール大使を召還、同国に抗議した経緯もある。

それだけに、タリバンの発表から丸1日遅れで出した声明は、「歓迎」の意を示しながらも、「外国の軍事作戦によるアフガン国民の殺害がやむかもしれない」などと米国への皮肉が目立った。【1月8日 時事】
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カルザイ大統領・アフガニスタン政府に任せていては、何も解決しない・・・という苛立ちがアメリカ側にあるのも事実でしょう。
そうは言っても、アメリカもカルザイ政権を無視はできませんので、カルザイ大統領の合意を取り付けたうえで和平交渉を進めるという方針です。

****米政府:タリバンと和平交渉再開へ 米紙報道****
米紙ワシントン・ポスト(電子版)は11日、米政府がアフガニスタンの旧支配勢力タリバンとの和平交渉を近く再開すると報じた。オバマ大統領は今年9月までにアフガン駐留米軍10万人のうち3万3000人を撤退させる方針を表明しており、アフガン戦争終結に向け和解プロセスを加速したい意向とみられる。

同紙によると、米国のグロスマン特別代表(アフガン・パキスタン担当)が来週、アフガンのカルザイ大統領と会談し、同意を取り付けた上で交渉再開するという。タリバンは今月初め、カタールの首都ドーハに国際社会との交渉窓口となる事務所を開設する方針を表明し、和平機運が高まっている。

ただ、クリントン国務長官は11日、訪米中のカタールのハマド首相兼外相との共同記者会見で「我々は(タリバンとの和解プロセスが)うまくいくかを試す予備的な段階にある」と述べ、タリバンの和平に向けた意思を慎重に見極める考えを強調した。【1月12日 毎日】
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【「金色のシャワー」で慌てるオバマ政権
和平交渉については、すべてはこれからの話ですし、あまり期待できない理由(オマル師の存在が明らかでなく、タリバン側の指揮命令系統が不明確なこと、タリバンの後ろ盾になっているパキスタンが和平を望んでいないこと、更に、「戦争しか知らない人生」のアフガン兵自身が和平を望んでいないこと)についても、1月4日ブログで書いたとおりです。

そんななかで、タリバン側を激怒させ、交渉を立ち消えにさせかねない米軍の失態が明らかになり、アメリカ側を慌てさせています。

****アフガニスタン:タリバン遺体に米兵放尿? ネットで流出****
アフガニスタン駐留米軍兵士とみられる戦闘服姿の白人男性が、地面に横たわった男性3人に小便をかけている映像が11日、複数のウェブサイトに流出した。横たわっているのはアフガン反政府武装勢力タリバンの戦闘員の遺体とみられる。

米海兵隊は声明で、映像に示された行為は「われわれの価値観に反している」とし、「徹底調査」を約束した。
掲載したサイトの一つによると、映像には「海兵隊の狙撃兵が死んだタリバンに小便をかける」場面との説明が付いていた。戦闘服姿の男性ら4人は放尿しながら英語で「金色のシャワーだ」などと冗談を口にし、カメラに笑顔を見せている。【1月12日 毎日】
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道義的にも、あるいはその影響を考えた利害得失のうえでも、「馬鹿なことを・・・」と言うしかありませんが、戦闘という極限状態の殺し合いの現場にいれば、違和感のない行為なのでしょう。
タリバン・米軍双方で、敵を冒涜するような行為が普段に行われてもいることは容易に想像できます。
「米軍の価値観を反映したものではない」(パネッタ国防長官)との発言の方が、実態とかけはなれたきれいごとなのでしょう。

そもそもの話で、敵を殺すことは“称賛すべき勇敢な行為” で、その遺体への放尿は“恥ずべき行為”という区分けがそれほど自明のことなのか・・・という疑念もあります。

当然、問題の兵士は特定されています。
AP通信によると、問題の4兵士は第2海兵隊遠征軍(司令部・ノースカロライナ州)第3海兵遠征旅団に所属しており、アフガン南部ヘルマンド州に昨年3~9月に派遣されていたとのことです。

“パネッタ米国防長官は12日、声明で「最大級の表現で、この行為を非難する」と憤りを表明。放尿した兵士の特定や映像流出の経緯などの調査をアフガン駐留米軍のアレン司令官に命じたことを明らかにした。長官は「この行為にかかわった者たちは最大限の責任を負うことになる」とも述べており、事実関係が判明次第、関係者を処分する方針とみられる”【1月13日 毎日】

タリバンとの和平交渉再開を準備しているアメリカ側は、反米感情の悪化に危機感を強め事態収拾に追われています。

****米政権:「遺体に放尿」高官ら非難 事態収拾に追われる****
・・・・米国務省は12日、グロスマン特別代表(アフガン・パキスタン担当)が15~27日にアフガンなど5カ国を訪れ、タリバンとの和平交渉に向け関係者と協議すると発表した。アフガン駐留米軍の撤退を加速したいオバマ政権にとって、治安の安定は最重要課題。和平プロセスに踏み出した直後の「不祥事」に出はなをくじかれた格好で、カーニー米大統領報道官は会見で「大統領はパネッタ長官と同じ気持ちでいる」と述べ、政権として事態を深刻に受け止めていることを強調した。

オバマ政権は、今回の問題が米軍全体の信用失墜につながることを懸念しており、クリントン国務長官は12日の記者会見で「このひどい行為を強く非難する。米国の価値観とは相いれない振る舞いだ」と強調。国防総省のリトル報道官は、パネッタ長官がアフガンのカルザイ大統領とテレビ電話で協議し、兵士らの行為が「米軍の価値観を反映したものではない」との考えを伝えたことを明らかにした。【1月13日 毎日】
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ドーハの事務所開設などの和平交渉準備には、膨大なエネルギー・資金・時間が費やされていると思いますが、それが「金色のシャワー」で消えてしまっては、アメリカ側も泣くに泣けないところです。
オバマ政権側の“腹立ち”もよく理解できます。


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