孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドネシア  増大する中間層に支えられた旺盛な消費と堅調な経済成長

2012-05-14 22:27:15 | 東南アジア

(ジャカルタ 11年7月2日 サムスン製タブレット端末“Galaxy Tap 10.1”発売開始日、列をつくる購入希望者 巨大ショッピングモールの店舗では、1200台が7時間で完売したそうです。“flickr”より By samsungtomorrow http://www.flickr.com/photos/samsungtomorrow/5899705208/ )

航空機を欲しがるインドネシア市場
先週、インドネシアでデモ飛行を行っていたロシア製旅客機が墜落して45名以上の犠牲者を出す事故がありました。
デモ飛行中の事故という特殊性と、またロシアの飛行機か・・・(ロシアの旧型旅客機はロシア国内外問わず、しばしば落ちます。海外旅行で古いロシア製旅客機に乗るときは、あまりいい気持ちはしません)ということはありましたが、よくある飛行機事故のひとつとして、個人的にはそれ以上気にかけることもありませんでした。

しかし、この事故が他ならぬインドネシアで起きたということには、それなりの背景があるとのことで、なるほど・・・というところです。

****墜落ロシア旅客機はなぜインドネシアに*****
悲劇の事故で浮き彫りになった「航空機メーカーのフロンティア」事情

先週、世界に衝撃を与えたロシア製旅客機「スホイ・スーパージェット(SSJ)100」の墜落事故。
9日午後2時頃、デモ飛行のためインドネシアの首都ジャカルタのハリム空港を離陸したが、数十分後に消息を絶った。その後の捜索により、ジャワ島西部のサラク山で遺体や墜落機の破片などが発見された。
乗っていたのはロシア大使館職員やインドネシアの航空会社関係者、メディア関係者など45人以上。生存者はいないとみられている。

それにしても、なぜこのSSJ100はデモ飛行の場所にインドネシアを選んだのか。
実は大手航空機メーカーにとって、インドネシアは世界でも指折りの成長市場。
SSJ100を開発したロシアのスホイ社も、新規顧客の開拓を狙ってデモ飛行を行ったとされる。
スホイ社はもともと戦闘機の製造で知られるメーカーだが、SSJ100は同社初の短・中距離用の旅客機だ。

国際空港の旅客数は急増
世界第4位の人口を抱えるインドネシアでは、中流層の成長が著しい。さらに、多くの島々から成る島国のため、国内の移動手段として最も効率的なのは航空機だ。中流層が航空券を買えるくらいの経済力を手にしたら、需要は一気に拡大するだろう。

既にその兆しはある。地元紙のジャカルタ・グローブによれば、ジャカルタ郊外にあるスカルノハッタ国際空港の旅客数は、01年の1200万人から昨年には5000万人に増えたという。これは、ASEAN(東南アジア諸国連合)内でもダントツの増加率だ。

今回の墜落事故で、スホイ社は急降下を強いられるだろう。それでも、航空機を欲しがるインドネシア市場の勢いは今後も止まらなさそうだ。【5月14日 Newsweek】
**********************

家電需要:まるで昭和40年代の日本
2011年、東南アジア主要国で最高の6.5%の実質国内総生産(GDP)成長率を記録したインドネシアは、生産年齢人口(15~64歳)が増え続け、経済成長に有利とされる「人口ボーナス期」は30年まで続くとされています。
12年1~3月期も6.3%と高水準を維持しています。
新興国BRICsの後を追う国としても、インドネシアはしばしば取り上げられます。

成長する中流層が支える家電消費の増大について、下記の記事もありました。
****インドネシアの光と影〉家電人気 昭和の日本****
南洋に巨大な家電市場があった。
3等オートバイ、2等自動車、1等土地付きの家。オランダの大手家電メーカー・フィリップスは昨年、自社の電球を買えば、抽選で破格の賞品が当たるキャンペーンをインドネシア国内で張った。
世界4位の2億4千万人の人口が生む購買力。なりふり構わぬ販売戦略は、ブランド名のいち早い浸透をねらってのことだ。

調査会社GfKによると、2011年のインドネシアの家電販売額の伸び率は前年比27.6%増。中国やタイを抑えてアジア首位だ。消費の主役は年間可処分所得5千~3万5千ドル(約40万~284万円)の中間層。11年、全世帯の55%を占め、20年には78%になると予測される。

そんな成長市場で、日本メーカーが気を吐く。
「これまで洗濯に2~3時間はかかっていたの。重労働から解放されるわね」
首都ジャカルタから西へ20キロ。シャープの洗濯機を今年1月に150万ルピア(約1万5千円)で買ったスルヤナさん(48)は喜ぶ。経営する食堂の1日の売り上げが前年より1千円増え、家計に余裕ができた。
自宅には、洗いと脱水が別々の二槽式洗濯機、扉が一つで直冷式の冷蔵庫、ブラウン管テレビが並ぶ。まるで昭和40年代の日本だ。

インドネシアでは冷蔵庫の普及率は35%、洗濯機はわずか10%。潜在的な需要は大きい。両製品でシェア首位のシャープは、ジャワ島に新工場を造り、来秋から増産を始める。
シャープでは現地スタッフが一から商品企画し、家電にジャワ更紗(さらさ)の模様をあしらうなどの工夫をこらす。一世代前の日本製品と同じものを売るのではなく、この国のための特別仕様だ。エアコンで首位のパナソニックも不安定な電力状況に配慮し、冷やす能力を従来の半分にした製品を売る。
12年3月期の連結純損益で過去最悪の赤字を予想し、社長が交代する両社だが、この地での白物家電の存在感は抜群だ。(後略)【4月10日 朝日】
*****************************

インドネシアは他のアジアの国々と比較すると、総需要に占める個人消費の割合が高く、その額は韓国にも比肩できる水準にあります。この個人消費を支えるのが成長する膨大な中流層です。
個人消費中心の経済構造のため、リーマンショックなどの海外変動要因の影響が比較的小さいということも言えます。

燃料価格引き上げ失敗で、ユドヨノ政権苦境
ただ、インドネシアが抱える大きな問題のひとつに、補助金で低く抑えられた燃料価格の問題があります。
補助金の額が膨らみ財政を圧迫しているため、政府としては燃料価格を引き上げたいのですが、国民は激しく抵抗しています。
また、もし燃料価格を引き上げた場合、消費者物価を押し上げ、消費・景気に悪影響が出ることも懸念されています。

****インドネシア 過熱する抗議デモ 大統領苦境****
インドネシアが原油価格の高騰に揺れている。政府は4月から、石油燃料を約33%値上げする方針。
これに反対する学生らによるデモが各地で繰り広げられ、労働組合も大規模なデモを計画している。相次ぐ汚職事件と相まって、支持率が低下する一方のユドヨノ大統領は、苦境に立たされている。

政府はレギュラーガソリンと軽油を1リットル=4500ルピア(約41円)から、同6千ルピア(約54円)に引き上げる。昨年10月の時点で政府は、国内原油価格を1バレル=90ドルと想定していた。だが、実際には同115・91ドル(今年1月平均)と予想を上回り、「値上げは急速な原油高に対応し、補助金の負担の急増を回避するためだ」(ジェロ・エネルギー・鉱物相)としている。

インドネシアの燃料価格は、政府が補助金を補填(ほてん)することで、国際価格より安く設定されている。それだけ政府の財政負担は大きく、原油価格が高騰すれば補助金の支出も膨張する。

首都ジャカルタや、南スラウェシ州マカッサル、ランプン州バンダルランプン、西ジャワ州ボゴールなどでは抗議デモが行われ、逮捕者が出ている。インドネシア労働組合連合(KSPSI)なども今後、数万人規模のデモを予定し、警察は対応に追われている。

抗議デモが過熱している背景として、2つの要因を指摘できる。まず、石油燃料の値上げが他にも波及することだ。公共交通機関の運賃は30~35%(陸運局)、飲食品価格は5~10%(商工会議所)の上昇が見込まれ、中央銀行は「今年のインフレ率が2~3ポイント上昇する」と予測している。

もう一つは、ユドヨノ大統領の支持基盤である与党・民主党の副幹事長や、中央銀行の元上級副総裁が贈収賄罪に問われるなど、枚挙にいとまがない汚職事件に対する国民の強い不満である。
大統領の支持率は40%にまで低下し、民主党も13・7%と低迷している。汚職事件に石油燃料の値上げが加わり、火に油を注いだ格好だ。

インドネシアの政権にとり、値上げは“鬼門”だといえる。1998年の燃料価格引き上げは約30年間のスハルト政権が崩壊する引き金となった。ユドヨノ大統領は18日、民主党関係者に「あるグループが、憲法に違反する方法で政権を打倒しようとしている」と明かし、不穏な動きにも神経をとがらせている。【3月21日 産経】
*************************

インドネシア政府は4月1日から30%あまりのガソリン価格引き上げなどを目指していましたが、反対する大規模なデモが3月27日、各地で行わ、市民団体や学生、野党関係者など計1万人以上(国家警察発表は約8千人)が参加とされています。ジャカルタでは大統領府前に数千人が集まり、学生らの投石に対し、警察機動隊が催涙弾を発射して負傷者が出る混乱ともなりました。

結局、相次ぐデモなど国民の反発を意識した連立与党の多くが値上げ反対に回り国会が紛糾、値上げは見送られることになりました。
“6党の連立政権を率いるユドヨノ大統領の求心力の低下があらわになった”【3月31日 朝日】とも指摘されています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする