孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

北朝鮮  困窮する国民生活 「人肉食」も?

2012-05-28 23:20:54 | 東アジア

(平壌で携帯を使う女性 北朝鮮でも携帯を使える生活を享受できる層が存在するのは事実ですが、一方で生命の維持すら難しい飢餓に追いやられる人々も存在しています。 “flickr”より By Roman Harak http://www.flickr.com/photos/roman-harak/5015261681/ )

【「キリンなど、他国の動物や世界的に珍しい動物を増やすべきだ」】
****北朝鮮・金正恩第1書記、動物園や遊園地などの視察を急増させる****
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が、動物園や遊園地など娯楽文化施設の視察を急増させている。
クマの子どもを見て、笑顔を浮かべる正恩氏の映像は、ピョンヤンの中央動物園で26日に撮影されたもので、麦わら帽子をかぶった正恩氏が、張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長らをともない、園内を見て回る様子が映されている。

正恩氏は、関係者に「キリンなど、他国の動物や世界的に珍しい動物を増やすべきだ」と指示した。
正恩氏は5月に入り、3回遊園地を訪れるなど、娯楽施設に強い関心を示していて、国民に「親しみやすさ」をアピールする狙いとみられている。【5月28日 FNN】
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“国民に「親しみやすさ」をアピールする狙い”であって、決して自分が動物園や遊園地に行きたいから・・・という理由ではないのでしょう。いくらなんでも、それではあまりにはお馬鹿ですから。

ただ、金正恩第1書記がご存知かどうかは知りませんが、現在の北朝鮮の国民生活が動物園や遊園地どころではない状態にあるのは国際的にも周知のところです。

****正恩体制でも人権改善なし=北朝鮮600万人に支援必要―アムネスティ****
国際人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)は24日、世界の人権状況をまとめた年次報告書(2012年度版)を公表。金正恩体制移行後の北朝鮮について、600万人が緊急食料援助を必要としている上、公開処刑や強制労働も横行、「ひどい人権状況は少しも改善されていない」と批判した。

報告書は、北朝鮮で穀物の配給量が1人1日200グラム以下に減らされたとの国連報告を引用した上で「これは1日に必要な最低限の栄養量の3分の1に満たない」と指摘。北朝鮮では15~49歳女性の4人に1人が栄養不良であるほか、乳児の3分の1以上が発育障害、5分の1近くが低体重に陥っていると訴えた。【5月24日 時事】
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必要な配給ができない現実をかろうじて支えるのは闇市場などの市場経済で、その部分の統制を強めようとすると国民生活は危機に瀕します。
日々の食糧さえ確保できない状況ですから、電気なども当然行きわたっていません。
あるいは、電気も行きわたらない社会・政治だから、食糧も満足に確保できない・・・というべきでしょうか。

****北朝鮮人口の26%が家庭で電気使用=UNDP****
北朝鮮では全人口の26%の家庭でしか電気を使っていないことが、国連開発計画(UNDP)のアジア太平洋地域人間開発報告書で分かった。米国営放送のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が18日、伝えた。

北朝鮮の電力事情は、2009年時点でアジア20カ国のうち5番目に悪い。ミャンマーの電力使用は全人口の13%と最も低水準で、アフガニスタン(16%)と東ティモール(22%)、カンボジア(24%)も北朝鮮を下回った。(後略)【5月18日 聯合ニュース】
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壮絶な飢餓の実態
極めつけは、「人肉食」の話題もあります。
最近、韓国で摘発された中国製「人肉カプセル」とか、中国雲南省の「食人魔」など、“人肉”に関する話題を目にしますが、北朝鮮のそれは飢餓によるものです。

****金正恩体制で露呈した極限の人肉食****
強制労働収容所での人権侵害に続いて明らかになった壮絶な飢餓の実態

食べるものがなく極限まで追いつめられた人間はどうするか――厳しい食糧難が続く北朝鮮で、壮絶な実態が新たに明らかになった。
韓国の政府系研究機関、統一研究院が新たに作成した人権白書では、公開処刑を目撃したという脱北者230人の証言を集計。これによると、2006年以降に公開処刑された者の中には、人肉を食べたり売ったりした者が少なくとも3人は含まれていたという。

ある男は同僚を殺害して体の一部を食べ、残りを羊の肉と偽って市場で販売しようとしたらしい。中国との国境に位置する恵山市では3年前、食糧不足に困窮した者が少女を殺して食べる事件が発生。3件目の事件は昨年発生したようだが、詳細は分からない。

このニュースを報道した韓国の聯合ニュースは、北朝鮮の情報統制が厳しいため、いずれの事件も裏づけを取ることはできなかったとしている。

繰り返す失政と飢饉
北朝鮮ではデノミを断行した09年以降、食糧難が一層悪化したとみられる。
だが01年に脱北したある公務員の証言によれば、99年以降にも10件以上の人肉食事件が発覚したらしい。
200万人近くが死亡する大飢饉が発生した90年代半ばにも、人肉食事件が複数発生したと言われている。(後略)【5月24日 Newsweek】
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「人肉食」の真偽はさだかではありませんが、大量の餓死者が出る状況なら、「人肉食」が行われても不思議ではありません。長距離ミサイルや核爆弾の実験など行っている場合ではない・・・ことは、今更言うまでもないところです。

【中国 「北朝鮮に、住民の生活を優先すべきと説得中だ」】
北朝鮮の後ろ盾である中国も、さすがにそのあたりを北朝鮮に説得しているとのことです。

****住民の生活優先を…中国が北朝鮮を説得中****
13日に北京で行われた日中韓首脳会談で、中国の温家宝首相が、「北朝鮮に、住民の生活を優先すべきと説得中だ」と、核実験などを自制するよう働きかけていることを明かした。
韓国政府高官が伝えた。

同高官によると、温首相は、新指導者、金正恩第1書記の新体制が始動した現在、「国際社会が、北朝鮮が『正しい判断』をするよう誘導し、勧告していく必要がある」と野田首相や、李明博大統領に語った上で、北朝鮮側には「経済発展を重視すべき」と伝えているとも述べた。

中国は、4月の長距離弾道ミサイル発射の前も、「民生発展に集中すべき」と北朝鮮側に発射自制を求めていた。(後略)【5月13日 読売】
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そうした中国の説得に少しは耳を貸したのか、北朝鮮外務省報道官は22日、「衛星打ち上げ」と称して4月13日に長距離ミサイルを発射したことと関連して、「最初から平和的な科学技術衛星発射を計画したため、核実験のような軍事的措置は予定したことがない」と述べ、核実験見送りを示唆する発表を行っています。

****北朝鮮:核実験見送り示唆 自国経済のてこ入れが狙いか****
北朝鮮の外務省報道官が22日、当面、核実験の実施を見送る考えを示唆したことには、米国などの姿勢の軟化を促し、国際社会との関係を改善することによって自国経済のてこ入れを図りたい意図があるとみられる。

米朝両国は2月下旬、北朝鮮がウラン濃縮活動、核・ミサイル実験の中断を約束する合意を結んだが、北朝鮮による4月のミサイル発射実験で、事実上、合意は破棄された。しかし、外務省報道官は米朝合意について「平和的発展に総力を集中するために必要な朝鮮半島の平和と安定を保障するため」と説明した上で、「我々は合意の拘束からは抜け出すものの、実際の行動は自制していると数週間前に伝えた」と強調した。北朝鮮が米朝合意の継続を望んでいることを明確にしたといえる。

そもそも、対米関係の改善は昨年12月に死去した金正日(キム・ジョンイル)総書記が決めた方針だ。それにもかかわらず、北朝鮮が合意破棄につながるミサイル発射実験を行った理由について、米朝協議筋は「北朝鮮側がオバマ政権の出方を読み誤った」と見る。北朝鮮としては、米朝合意で得るものが多い米国は合意にとどまるはずだ、と考えたという見方だ。

一方、北朝鮮が3回目の核実験に備えた新たなトンネルを準備しているのは間違いない。ただ、プルトニウムによる核実験はすでに2度実施しており、一定の水準に達している。北京の外交筋は「新たな実験はウラン濃縮型で行われる可能性が高いが、まだ準備は整っていない」と分析しており、北朝鮮が時間を稼ぎながら米国などの対応を見て今後、方針を変える可能性もある。

北朝鮮国内の経済状況は、今年が「強盛国家の門を開く」と目標に掲げた時期であるにもかかわらず、全国的には改善していない。5月中旬に中国を訪れた北朝鮮の貿易商は「食糧事情は明らかに昨年よりも悪い」と明言する。北朝鮮に対して、中国は高官の往来を通じて民生支援を強化する用意などを伝えているとされている。【5月23日 毎日】
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こうした政権が長く続くとは思われませんが、終止符が打たれるまでの間に犠牲になる国民の苦しみを思うと、やりきれないものがあります。
コメント (2)
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