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(7月8日 東京で会談したクリントン米国務長官、アフガニスタンのラスール外相(左)、パキスタンのカル外相(右) アフガニスタン政府にタリバンとの交渉を呼びかけています。 “flickr”より By U.S. Department of State http://www.flickr.com/photos/statephotos/7528050396/)
【衆人環視の中、姦通したとして妻に銃弾9発を撃ち込む】
“アフガニスタンでは2001年以前の旧タリバン政権時代に不倫などイスラム教に反する行為をした人物の公開処刑や、むち打ちが行われており、タリバンの勢力が強い地域では今も続いている”【7月9日 毎日】ということです。
****タリバン司令官、妻を公開処刑****
アフガニスタン首都近郊のパルワン州でイスラム原理主義勢力タリバンの司令官が妻を公開処刑する映像がインターネット上に流れ、女性の人権無視に対する怒りの声が上がっている。司令官は妻が別のタリバン司令官と姦通(かんつう)したとして、衆人環視の中、妻に銃弾9発を撃ち込んだ。パルワン州知事は8日、事件の捜査に乗り出したことを明らかにした。【7月10日 産経】
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この公開処刑の映像がインターネット上に流失しており、それによると、“ショールをかぶってうずくまる女性を夫が射殺。見届けた数十人の男性が「(射殺した夫は)イスラム教の英雄だ」と一斉に叫んでいた”【7月9日 毎日】とのことです。
イスラム文化圏やインドでは、“名誉殺人”と称される、女性の婚前・婚外交渉を「家族全員の名誉を汚す」ものと見なし、この行為を行った女性の父親や男兄弟が家族の名誉を守るために女性を殺害する風習が広く見られますが、上記公開処刑は “名誉殺人”的な行為にも見えます。
いずれにしても、価値観の違い、社会の異質性に言葉を失います。
【「タリバンと米軍の間に挟まれ、とても住めなかった」】
もう1件、アウガニスタンの難民キャンプの現状を伝える記事がありました。
****アフガン:難民キャンプ近くの学校 給料安く教師不在****
アフガニスタンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)の14年末までの撤退に向け、南部ヘルマンド州で、アフガン治安当局への権限移譲が進んでいる。
だが、首都カブール北西にある難民キャンプでは、ヘルマンド州や同じ南部のカンダハル州から逃れてきた避難民約1万人が故郷に戻れないまま、依然として厳しい生活を強いられている。
ヘルマンド州では昨年7月から順次、州都ラシュカルガーや周辺地区で、アフガン側に治安権限が移譲されている。しかし州都を含めて治安は回復せず、州内の多くの地域がタリバンに支配されたままだ。
この難民キャンプができたのは5年前。泥づくりの粗末な建物やテントがひしめくなか、裸足の子供たちがほこりまみれで井戸水をくみ出していた。最近、近くに学校が建設されたが、教師はいない。「給料が安すぎてすぐに辞めてしまうため」で、子供たちは教育を受けられない状況が続いている。
ヘルマンド州内でケシを栽培していたムハンマド・ユニスさん(40)は家族12人で4年前、このキャンプにたどり着いた。住んでいた村にはタリバンが潜伏し、激しい戦闘を経て米軍が入ってきた。米兵は各戸を捜索し、「タリバンの協力者」と疑う住民には暴行を加えたり拘束したという。「タリバンと米軍の間に挟まれ、とても住めなかった」
近くの別の村で農業を営んでいたムハンマド・イサさん(40)は最近故郷に戻ったが、完全にタリバンに支配されていた。「裏切り者が帰ってきた。米軍のスパイではないか」。タリバンに協力的な村人に疑いの目を向けられ、身の危険を感じて再びこのキャンプに戻ってきたという。「しかし、ここでも『(タリバンの勢力拠点である)南部出身のお前はタリバンだろう』と言われ、仕事に就くことすらできない」
難民キャンプの住民たちは日干しのレンガを作り、わずかな生活費を稼いでいる。ユニスさんは「それでも自活できない。外国の支援は、アフガン政府に渡すのではなく、直接ここに持ってきてほしい」と訴えた。【7月9日 毎日】
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【今後4年間に計160億ドル(約1兆2800億円)超を資金拠出】
こうした現状を伝える記事を目にした後では、なんだか白々しい感がありますが、アフガニスタンの復興について議論するアフガン支援国会議が8日、約80か国・国際機関が参加して東京都内のホテルで開かれました。14年末の国際治安支援部隊(ISAF)の撤退を前提にしたものです。
****アフガン支援国会議、1兆2千億円拠出を採択****
・・・・会議は同日夕、各国・国際機関で今年から2015年までの4年間に計160億ドル(約1兆2800億円)超を資金拠出すると明記した「東京宣言」を採択し、閉幕した。
会議は、玄葉外相とアフガン側が共同で議長を務め、野田首相やアフガンのカルザイ大統領も出席した。
大統領は、14年末の国際治安支援部隊(ISAF)撤収後も安定した国家運営を目指すとし、公正な予算執行や経済成長など5分野で数値目標を明示した「工程表」を発表した。各国・機関は継続的な支援を行うことで合意し、工程表の実施状況と拠出金の使途などを2年ごとに検証する枠組みを東京宣言に盛り込んだ。【7月8日 読売】
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“日本政府は12年からのおおむね5年間で最大30億ドル(2400億円)を拠出する。22億ドルを開発支援に、8億ドルを治安維持に充てる。このほか、アフガンの安定には周辺国による協力が欠かせないことから、中央アジアやパキスタンを念頭に計10億ドル規模の協力も行う”【7月8日 毎日】
【「(タリバンとの)和解と統合を進めていきたい」】
会議後、カルザイ大統領は、今後タリバンとの和平交渉を進めていきたいとの意向と、政権内の汚職問題について語っています。
****アフガン大統領、タリバンと「和解統合進める」****
アフガニスタン支援国会議に出席した同国のカルザイ大統領は9日、都内で記者会見し、国際社会が拠出を表明した約160億ドル(約1兆2800億円)について、「これだけの支援がある以上、できるだけ努力し、(旧支配勢力タリバンとの)和解と統合を進めていきたい」と話した。
和平問題については、アフガン政府高官とタリバン幹部が6月下旬に京都で対話の機会を持ったことを明らかにし、「意欲的に、平和的解決の道筋を話し合った」と交渉の窓口が閉じていないことを強調した。
一方で、国際社会が懸念するアフガン政府内の汚職問題については、「国際社会側も(支援金の)使途や契約内容を監視する必要がある」として、各国の協力を呼びかけた。【7月9日 読売】
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14年末の国際治安支援部隊(ISAF)の撤退までに軍事的な決着をつけることがほぼ不可能な現状では、何らかの形でタリバンとの交渉を進めざるを得ません。
今後の軍事行動は、この交渉を有利に進めるためのものという位置付けになるのではないでしょうか。
クリントン米国務長官、アフガニスタンのラスール外相、パキスタンのカル外相も8日、東京都内で会談し、
「武装勢力と複数の対話のチャンネルを求めることの重要性」を再確認したうえで、アフガニスタン政府との和平交渉に入るようタリバンに改めて呼びかけを行っています。
今のところ、タリバンとカルザイ政権との協議は昨年9月、自爆テロによる高官殺害を機に途切れ、タリバンとアメリカとの対話も今年3月に止まっています。
****アフガン和平―タリバーンを引き込め****
アフガニスタンの自立と復興支援を話しあう国際会合が、東京で開かれる。会合での合意をもとに、反政府武装勢力タリバーンとの政治対話を、早く再開させる必要がある。
外国の戦闘部隊は2014年末までに撤退し、その後の治安の責任はアフガンの国軍と警察に委ねられる。この年には大統領選挙があり、カルザイ氏の後継者による政権が生まれる。
この過渡期にアフガンの政治が乱れ、治安がさらに悪くなれば、過去10年の国際社会の支援は水泡に帰しかねない。
和平と安定を確実なものにするための土台を、今のうちに固めておく必要がある。
治安面で米欧の関係国は、戦闘部隊が撤退した後も10年ほどは、国軍や警察の訓練や人件費の支援を続ける考えだ。
東京会合のテーマとなる自立や復興面でも、国際社会は、貧困軽減や経済発展のため、20年代半ばまでの長期的な支援に取り組む姿勢を確かめ合う。
米同時多発テロ事件後の米軍などの侵攻によってタリバーン政権が崩壊して11年。この間の国際支援によって学校に通う子どもは大幅に増え、国民の多くが病気の治療を受けられるようになった。日本も過去10年に4千億円以上を投じて、教育や医療、農業支援のほか空港建設や首都圏整備を手がけてきた。
この間、カルザイ政権の行政の非効率は常に問題になった。
援助の効果を上げるには、汚職の追放や人材育成を進め、NGOの力をいかして、アフガンの人たちに「平和の配当」を実感してもらう必要がある。
ただ、肝心のタリバーンとの政治交渉は後退している。カルザイ政権との協議は昨年9月、自爆テロによる高官殺害を機に途切れた。タリバーンと米国との対話も今年3月に止まった。
タリバーンの政権時代にも穏健派はいた。対話を再び始め、彼らを引き込む努力をあきらめてはならない。国民的な和解がなければ、紛争解決への出口は見えてこない。
変化の兆しはある。先に京都で開かれた会議にタリバーン幹部が出席、外国軍の撤退を条件に対話再開への意欲を示した。カルザイ大統領も来日前の会見で、選挙を通じた国政参加をタリバーン側に求めた。米国や国連、関係国は最大限の努力を払うべきだ。
日本はこれまでアジアの平和構築に貢献し、アフガンでも元タリバーン兵の社会復帰に取り組んでいる。アフガンの人たちの信頼は高い。政府は、和平の仲介にもっとかかわるべきだ。 【7月7日 朝日】
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【「外国の支援は、アフガン政府に渡すのではなく、直接ここに持ってきてほしい」】
タリバンとの交渉も難しい状況ですが、カルザイ政権の汚職体質の方も一向に改善しません。
その結果、国際支援が十分に機能せず、平和の配当が国民に届かず、政権・社会の安定も損なわれています。
****アフガン支援東京会合:援助の手阻むテロと腐敗****
8日開かれる「アフガニスタンに関する東京会合」では、2014年末の国際治安支援部隊(ISAF)の撤退後も、国際社会が継続してアフガンを開発面で支え続ける明確な意思を打ち出す。しかし、国内では依然、テロが頻発し、政権の腐敗や政府機関の行政能力の欠如から、支援額の半分以上が使われないままという実態もある。
首都カブールで、日本の国際協力機構(JICA)の援助による道路敷設工事が進行中だ。費用(契約額)は2000万ドル(約16億円)。来年1月までに延べ約27キロを敷設する。アフガン人作業員が手作業で側溝の石材を積み上げる脇で、住民のファリドさん(45)は「日本が国造りを手伝ってくれる」と話した。
しかし、常に危険とトラブルにさらされている。行政当局者や住民が、計画には無かった街灯設置などを次々に要求、コストが膨らんでしまう。資材運搬車が警察の検問所で止められ、賄賂を要求されることもしばしばだ。工事関係者は「作業を続けるためには、払わざるを得ない」と話した。
今年4月には、旧支配勢力タリバンが首都を一斉攻撃。日本大使館にもロケット弾が着弾した。日本人駐在員らが工事現場を視察する際は、今も自動小銃を持った複数の警備員が必ず随行する。
インフラが完成しても、治安の問題から十分に利用されない例もある。日本の援助で建設したカブールと中部バーミヤンをつなぐ主要道路は、警察とタリバンの交戦で頻繁に通行止めになっている。
国際社会はカルザイ現政権を支援する一方、腐敗や縁故主義を批判してきた。それでも東京会合で支援継続を表明するのには理由がある。89年のソ連軍撤退後、援助が途切れ、わずか3年で当時の政権が崩壊。地方の有力者が軍閥として勢力を争う内戦に突入し、「テロの温床」となった過去があるからだ。ホスト国日本の外務省幹部は「過去を繰り返さないよう道筋をつけることが最大の眼目」と語る。
しかし今も、軍閥が地方を事実上支配する、アフガン政治の困難さを象徴する出来事は頻発している。
中国国営企業が先月、北部のアムダリア油田開発に着手しようとしたところ、軍閥の民兵が作業を実力で阻止した。「カルザイ大統領が自身の出身地の南部から作業員を送り込み、地元住民を雇用しない」というのが理由だった。
◇事業執行「計画の4割」
政府機関の行政能力の欠如も復興を遅らせる。「実際に事業が行われる執行率が支援額の4割にとどまり、半分以上が使われずじまいだ」と、外交筋は明かす。カルザイ政権は「13年から20年まで年平均で必要な援助額は39億ドル」と主張しているが、西側の外交官は「言われるまま受け入れるわけにはいかない」と話す。
アフガン財務省によると、54の国・地域・機関が02年から13年を対象に表明した支援総額は899億ドルに上る。カブールの政治・治安問題アナリストのアブドル・ハディ・ハリド元副内務相は、「アフガン人には、『西側諸国は支援の約束をしながら、実施していない』というふうに受け止められている」と語る。
東京会合には、イランやパキスタンなど周辺国も参加する。開発支援には米国と関係が悪化している両国の協力も欠かせないからだ。日本はこれらの国との独自のパイプを使い、「米国が呼ぶことができない国」(外務省幹部)を巻き込んで支援を加速させる狙いだ。【7月8日 毎日】
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支援しなければ現在のアフガニスタン政権は崩壊してしまう、しかし、支援を行っても汚職・腐敗体質に阻まれて効果が出ない・・・という苦しい状況です。
前出【7月9日 毎日】にあるように、「外国の支援は、アフガン政府に渡すのではなく、直接ここに持ってきてほしい」ということが可能ならいいのですが。
政権内の汚職・腐敗体質を改善しない限り、アフガニスタン政権への国民の信頼は集まらず、今後の展望は開けません。政権の崩壊は自業自得ですが、それによる混乱や内戦で苦しむのが一般国民であることがつらいところです。