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(今年7月1日の香港返還記念日に行われた抗議デモ 左上部にユニオンジャックをあしらった返還前の香港の旗が目に付きます。現在の香港の旗は、中国を表す赤地に香港を表す白いバウヒニアの花をあしらったデザインとなっています。 “flickr”より By alcuin http://www.flickr.com/photos/forecastle/7480158536/)
【返還記念日の大規模抗議デモ】
1997年7月1日にイギリスから中国へ主権移譲された香港は、社会主義国である中国の中で2047年まで資本主義システムを継続し、政治的にも「高度な自治権」が付与され、中国本土とは異なる行政・法律・経済制度の維持が認められています。
いわゆる「一国二制度」ですが、当然ながら「完全な自治」ではなく、首長である行政長官は職域組織や業界団体の代表による間接選挙で選出され、その任命は中国中央政府(国務院)が行う形になっています。
そうした香港にあっては、「親中派」と香港の独自性・民主主義を重視する「民主派」が争ってきましたが、経済的に中国依存が強まるなかで、最近は「親中派」の勢いが増しているとも言われています。
しかし、これまでも何回か取り上げたように、香港と中国の間には微妙な空気があります。
胡錦濤国家主席も香港を訪れた香港返還15周年記念式典の際には、“隠れ共産党員”とも噂される親中派・梁振英氏の新行政長官就任に抗議して大規模な抗議デモが行われました。
****香港民主派、「40万人」デモ=新長官に反発―返還15周年****
香港返還15周年記念式典と行政長官就任式が1日午前、開催され、長官が官僚出身の曽蔭権氏(67)から実業界出身の梁振英氏(57)に交代した。民主派は中国共産党・政府との関係が密接な梁氏の長官就任に反発しており、同日午後に大規模な抗議デモを行った。
主催団体によると、デモ参加者は40万人で、昨年の返還記念日の約2倍に達した。警察発表では、昨年より9000人多い6万3000人。しかし、デモ隊全員が集合地点の公園を離れるのに要した時間は昨年の2倍の約4時間に及んでおり、参加者数は昨年を大幅に上回ったとみられる。
デモ隊は政府本部まで行進。梁長官の辞職を求めたり、政府と大企業の癒着を批判したりしたほか、中国湖南省の民主活動家、李旺陽氏の不審死について同国政府に徹底調査を要求した。
式典・就任式には胡錦濤国家主席ら中国の党・政府高官を含む約2300人が出席した。胡主席は「『一国』の原則を堅持するとともに、『二制度』の違いを尊重する」とした上で、「一国二制度、香港人による香港統治、(香港の)高度な自治を実施するという中央政府の方針は全く揺るがない」と強調した。【7月1日 時事】
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【「反中デモ」認定 参加者は収容所送り】
なお、香港での抗議デモには民主化や人権擁護を求める中国本土からの参加者も増えていますが、7月1日の抗議デモに参加した中国人活動家が、帰国後収容所送りになったそうです。
****中国民主化デモ、参加の男女が収容所送りに****
香港で7月1日に行われた、「中国の民主化」などを求める大規模デモに参加した中国人活動家の男女2人が、中国本土に戻った後、労働教育1年2か月の処分を受けて収容所に送られたことがわかった。
28日付の香港紙・蘋果日報などが報じた。
2人は江西省寧都県の宋寧生氏と曽九子さん。デモ参加後、陳情のため訪れた北京で拘束され、「香港でのデモ参加」などを理由に労働教育処分となった。公安当局は香港のデモを「反中デモ」と認定したという。
香港での毎年7月1日のデモには最近、民主化や人権擁護を求める中国本土からの参加者も増えている。【7月28日 読売】
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【「返還で中国国民になったことを誇りに思わない」58%】
先述のように、経済的には中国依存・一体化が進んでいますが、香港住民の意識面では「中国離れ」が見られる調査もあります。
****「中国人と呼ばないで」 香港、本土離れ急増****
英国から中国に主権が返還されて15年が経過した香港で「中国の国民とは呼ばれたくない」と考える香港人が急増し、住民の意識に「中国離れ」が進んでいることが最新の世論調査で明らかになった。
香港大学による6月の調査によると、「返還で中国国民になったことは誇りだ」と答えた香港市民は37%で、北京五輪があった2008年に比べ13ポイント下落。半面「誇りに思わない」は08年より10ポイント高い58%となった。
中国の胡錦濤国家主席は今月1日の香港返還15周年記念式典で、「香港同胞の国家と民族に対する一体感と感情は日に日に増している」と述べ、中国本土と香港の関係を「血は水より濃い」と形容した。経済的にも関係が密接になった香港だが、中国本土に対する住民感情は悪化する一方で、「嫌中派」は確実に増えているようだ。
主催者発表で約40万人が参加した同日の香港市内のデモでは、山東省の盲目の人権活動家、陳光誠氏が米国へ逃れた事件や湖南省の民主活動家、李旺陽氏が不審死した事件への抗議も叫ばれ、対中感情の悪化はこうした人権弾圧事件が影響している可能性が高い。【7月3日 産経】
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【「教育に名を借りた洗脳だ」】
中国側は教育による愛国心育成を目指しており、また、それに対する香港側の批判もあるようです。
****「再び紅衛兵を作るのか」香港で愛国教育に反発****
香港の小中学校で9月の新学期から順次導入される、中国国民としての愛国心育成を狙った「道徳・国民教育科」への反発が強まっている。
29日には生徒や保護者、教職員らによる反対デモが予定され、参加者は1万人を超すとの予測も出ている。
同科は胡錦濤国家主席の意向を受け、香港政府が導入を決定。親中派団体が同政府の助成を得て作成した教員用参考資料の内容が今月に入って明らかとなり、不満が一気に高まった。
資料は、中国事情を紹介した全34ページの冊子で、「(共産党は)進歩的で無私で団結した執政集団」「(米国では)政党間の争いが人民の災いとなる」などの記述が並び、負の側面に言及したのは2ページ程度に過ぎない。市民からは「教育に名を借りた洗脳だ」「再び紅衛兵を作るのか」と批判が噴出した。【7月28日 読売】
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主権を有する中国の立場に立てば、中国システムの優位性を主張するのは当然とも言えます。
世界における中国の政治・経済的地位は、香港が返還された15年前とは全く異なります。現在の中国には強烈な自信に溢れています。
世界経済への窓口としての香港の役割も、上海などが成長した今は薄れています。
中国がいつまで香港の自己主張を許容するのか、ちょっと危ういものを感じます。