孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

南スーダン  独立から1年  石油収入分配交渉頓挫で悪化する経済情勢

2012-07-09 22:05:21 | スーダン

(7月1日 独立から1年、南スーダンの北バハル・アル・ガザール州の母子 
“flickr”より By United Nations Development Programme  http://www.flickr.com/photos/unitednationsdevelopmentprogramme/7480451154/

【「独立で何もかも良くなる。皆そう思ったのだが、全く逆です」】
早いもので、南スーダン独立から1年がたちました。
独立当時の高揚感が消え、今は厳しい現実に直面しています。予想されていた状況ではありますが・・・。

****南スーダン独立1周年、現実の厳しさに薄れる高揚感****
南スーダンは9日、北部からの独立1周年を迎えた。首都ジュバ(Juba)では8日にサルバ・キール・マヤルディ大統領らが出席して記念式典が行われた。

しかし、世界で最も若いこの国の前に立ちはだかる厳しい現実を思い知った国民に、1年前の沸き立つような高揚感はない。かなり改善が進んだとはいえ南スーダンは世界最貧国の1つであり、道路や電気・水道といった基本インフラも整備されていない。成人の73%は読み書きができず、中学校への進学率はわずか6%、技術者も圧倒的に不足している。【7月9日 AFP】
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南スーダンの状況を厳しくしている主な原因は、北部のスーダンとの間の石油収入配分交渉が頓挫し、スーダンとの関係が悪化しているということにありますが、そうした状況で汚職が横行する現実もあるようです。

*****南スーダン:独立1年 汚職横行 必需品の値段は4倍に****
アフリカ東部のスーダンから南スーダンが分離独立して、9日で1年を迎えた。スーダンとの交戦は続き、石油収入分配交渉は頓挫、経済も大幅に悪化した。独立の興奮から冷め、疲弊感すら漂う南スーダンの現状を追った。
 
首都ジュバで社会改善活動を続けてきたクリス・ロティヨ牧師(60)は6日、毎日新聞の電話取材に心境を吐露した。ロティヨさんによると、生活必需品の価格は前年比で4倍近くに高騰し、食料品や燃料の不足も深刻化している。
「低所得者層は大打撃を受け、1日1食も取れない人たちがいる」。NGO「南スーダン非暴力・開発機構」(本部・ジュバ)のモーゼス・ジョン事務局長は、医薬品不足などによる医療サービスの悪化を懸念する。

生活に困窮する市民をよそに、政府内では汚職が横行。キール大統領は5月3日付の文書で、総額約40億ドル(約3180億円)の公的資金を横領したと見られる75人の元・現職員に返還を命じた。

経済悪化の主な原因は、国家歳入のほとんどを依存する石油の生産停止だ。南スーダンが分離する前の旧スーダンはアフリカ第6位の産油国で、油田の4分の3が南部に集中、輸出港は北部にしかなかった。分離後も南北で石油収入の配分交渉が続いたが決裂し、昨年12月にスーダンが南からの石油を接収。南側は生産停止で対抗したが、自らの収入源も絶つことになった。

さらに今年3月には、南側が反政府組織を支援しているとしてスーダンが南スーダンとの国境を封鎖。物不足や物価高に拍車をかけた。

南スーダン政府は「石油問題解決まで持ちこたえる」(アテム報道官)と強気の構えだが、財政破綻も危惧されている。
国境地帯では3月から交戦が本格化。スーダン軍の空爆で南側の民間人に死傷者が出た。和平交渉中だが、戦闘再開の恐れは残る。国際医療NGO「国境なき医師団」などによると、スーダン難民約17万人が南側に逃げ込み、劣悪な衛生環境で多数の死者も出ている。【7月9日 毎日】
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「独立で何もかも良くなる」というのが幻想にすぎないことは部外者には自明のことですが、興奮の渦中にいる人々にはそのように思えてしまうのでしょう。
エジプトなどの「アラブの春」による改革についても、同様の幻想と現実があります。

独立とか革命というのは興奮状態での勢いでも可能ですが、その後の国づくりには冷静で地道な取り組みが必要になります。人々の期待と熱意をつなぎとめるために、汚職や腐敗を許さない厳しく自らを律する姿勢も必要です。
南スーダン政府には、石油収入と国際支援をあてにした甘さもあったのではないでしょうか。

北のスーダンでも物価上昇・反政府デモ
もっとも、石油収入配分交渉頓挫で窮地に追い込まれているのは南スーダンだけでなく、北部のスーダンも同様です。

****反バシル政権デモが激化 スーダン、財政緊縮策に反発*****
スーダンからの報道によると、首都ハルツームなどで、反バシル政権デモが激化している。6月29日には約千人が拘束され、30日もデモが続いた。昨年7月の南北スーダン分離後に石油収入が激減し、補助金削減策を発表したのが原因だ。

南スーダンの油田から北部のパイプライン経由で出荷される石油収入の分配を巡る南北間の協議が進展しておらず、北部で景気が悪化し、国庫収入が減った。
バシル政権が6月中旬に、ガソリンへの補助金の削減などの財政緊縮策を発表したところ、学生や野党勢力が反発してデモを始めた。デモ参加者だけでなく、取材するジャーナリストも拘束や国外追放処分を受けており、複数の人権団体が懸念を表明している。【7月1日 朝日】
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スーダンでは5月のインフレ率が30%を超え、物価高が市民生活を直撃しています。そうしたなかで、緊縮財政策を取る政府が市民が安価で購入できるよう設定したガソリンへの補助金の廃止を決めたため不満が高まり、抗議デモ激化となっています。【6月25日 毎日より】

第三者的には、石油収入配分について双方が妥協すれば、南スーダンとスーダン両方の経済情勢が改善する・・・という単純な話ですが、当事者にとっては、相手に非があるということでなかなか妥協はできないのでしょう。
そうしたなかで、貧しい弱者の生活が追い込まれていきます。
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