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(119機の集団実験飛行に成功した中国の固定翼ドローン(無人機)のようです。画像は【https://roboteer-tokyo.com/archives/9159】)
【軍事パレードに憧れるトランプ大統領 「我々は世界があるべき姿を願うのではなく、現実を見つめなければならない」】
アメリカ・トランプ大統領が軍事パレードをやりたがっている(国防総省の発表では、第1次世界大戦終戦の日に当たり、アメリカでは「復員軍人の日」でもある11月11日ごろに計画されているようです)ことに象徴されるように、オバマ前政権時代の核軍縮(実現可能性はともかく、理念としては「核なき世界」へ進みたい・・・との考え)から一転して、このところは軍事力を前面に出した“力の誇示”が流行りのようです。
****トランプ政権、対テロより中ロ対抗を優先 初の国防戦略*****
米国防総省は19日、トランプ政権で初の「国家防衛戦略」(NDS)を発表した。
中国とロシアを「長期的な戦略的競合相手」と位置づけ、対テロよりも優先事項に掲げた。抑止力拡大のため、米軍を強化する必要性を強調した。
マティス国防長官は発表に際し、ワシントン市内で講演。「テロとの戦いは継続するが、米国の安全保障の最大の焦点はテロではなく、大国同士の競争だ」と述べ、中国とロシアを名指しした。(後略)【1月20日 朝日】
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上記「国家防衛戦略」(NDS)を受けて、「核戦略見直し」(NPR)では、小型核兵器の開発や、非核攻撃への反撃にも核を使用する可能性にも言及されています。
****非核攻撃への反撃に核使用も 米政権、核戦略見直し発表****
トランプ米政権は2日、今後5〜10年の核政策の指針となる核戦略見直し(NPR)を発表した。中国やロシア、北朝鮮への対抗姿勢を鮮明にし、新たな小型核兵器の開発や、非核攻撃への反撃にも核を使用する可能性を明記した。
「核なき世界」を掲げて核の役割縮小を目指してきたオバマ前政権の方針から、大きく転換させた。
NPRの発表は8年ぶりで、トランプ政権では初。新たなNPRでは、米国が核軍縮を進める一方で、中ロが核兵器の近代化や拡大を進め、北朝鮮の核開発が脅威になっていると指摘。
「我々は世界があるべき姿を願うのではなく、現実を見つめなければならない」とした。また、多様な核戦力を持つことで抑止に向けた柔軟性な選択肢ができると繰り返し記述した。
具体的には、ロシアなどによる小型の核の先制使用を想定。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用に爆発力を抑えた小型の核弾頭の開発を進めるとした。敵の重要施設などへの局地的な攻撃を念頭に、速やかな反撃の選択肢を確保することが目的だという。
さらに、水上艦や潜水艦から発射できる新型の核巡航ミサイルの開発を目指すことを明記した。
核使用の条件については「極限的な状況で使用を検討する」と、オバマ前政権と同じ表現を用いた。しかし、通常兵器など非核攻撃への反撃を含むことも明示した。(後略)【2月3日 朝日】
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【プーチン大統領は「無敵」新兵器を誇示 ただ、“強さではなく弱さを示す一段の兆候”とも】
こうしたアメリカ・トランプ政権に負けじと、ロシア・プーチン大統領も。
プーチン大統領は3月1日、モスクワで行った年次教書演説で、アメリカがもたらす脅威への対抗措置として開発した新世代の「無敵」兵器を誇示しました。
****プーチン大統領「米ミサイル防衛は無意味に」 露、軍備増強を誇示****
ロシアのプーチン大統領は1日、上下両院と地方指導者らに対する年次教書演説を行い、米国の進めるミサイル防衛(MD)網の構築に対抗していく姿勢を鮮明にした。
プーチン氏は、ロシアがMDでは捕捉できない原子力推進の巡航ミサイルといった戦略兵器を開発・保有していると強調し、米国を強く牽制(けんせい)した。
演説によると、昨年末、原子力を利用する巡航ミサイルや潜水艦発射型の無人攻撃兵器の実験に成功。原子力利用の巡航ミサイルは事実上無制限の航続距離を持ち、核弾頭を搭載してMDに捕捉されない複雑な飛行経路をとることができる。
音速の10倍で飛行する航空機発射型ミサイルが昨年末に配備されたほか、音速の20倍超を誇る大陸間弾道ミサイル(ICBM)の量産も始まったという。
プーチン氏は米MDシステム配備が日本や韓国を含む各地で進んでいることに警戒感を示し、露最新兵器でMDは「無意味になる」と強調。日本が導入する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」も念頭に置いているとみられる。
プーチン氏は、米国が2002年に弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)を脱退したことを改めて批判し、「今日の発言が潜在的な侵略者を正気にするよう望む」と述べた。【3月2日 産経】
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“プーチン氏はまた、潜水艦や魚雷よりもずっと高速で動き、核弾頭も搭載可能な無人潜水機も開発したと述べ、「とにかく素晴らしい!」と付け加えた。”【3月2日 AFP】とも。なんだかトランプ大統領そっくり・・・というか、トランプ大統領への当てつけでしょう。
演説では、何発もの核弾頭がトランプ大統領の別荘もあるフロリダ州と思われる場所に向けて降下しているイメージビデオも流されるなど、なかなか挑戦的です。
ロシア・プーチン大統領の「無敵」新兵器については、素人としてはよくわかりませんが、下記のようにも。
****プーチン露大統領、「無敵」の核兵器を発表****
・・・・プーチン氏は演説で、米国の弾道ミサイル防衛をすり抜けられるとする、2つの核兵器運搬システムの開発を強調した。
なぜすり抜けられるかと言うと、簡単に言って、両方のシステムが弾道ミサイルではないからだ。弾道ミサイルは、大きな弧を描く軌道で大気圏外から落下する。
1つのシステムは、実質的に核弾頭を載せた長距離魚雷で、ソビエト時代から開発がうわさされていた。現在では、米国のアナリストらから現実的な脅威と考えられている。
プーチン氏が巡航ミサイルだと説明するもう1つのシステムは、開発途上にあるように思える。非常に速い「極超音速」システムの可能性があり、ある軍縮専門家は「ステロイドで増強したようなグライダー」と表現する。これも現在のミサイル防衛システムをかいくぐれる可能性がある。
中国や米国も同様のシステムの開発に取り組んでいる。【3月2日 BBC】
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もっとも、“ほとんどが旧式”との評価も。
****プーチン氏称賛のロシア軍事力、ほとんどが旧式****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が核兵器を誇示したことで、新たな軍拡競争への懸念が高まった。だが、一部の例外を除き、それらは代わり映えのない在来型の武器でロシアの防衛産業が直面する問題を改めて浮き彫りにしている。
ロシアは軍の近代化に向け、肥大化した防衛産業に巨額を投じてきたが、プーチン氏が政治のエリート層を前に披露した兵器の大半は、ソ連時代の防衛構想を強化した焼き直しか、ロシアがすでに製造しているものだ。
ロシア軍のロケット技術に詳しいウラジミール・イェフセイェフ氏は「1日発表されたものはすべて、最新鋭の技術ではない」と指摘する。
ロシアの大陸間弾道ミサイル(ICBM)「トーポリ」などはすでに、米国のミサイル防衛システムを突破する性能を有しているという。
ロシアは財政が厳しい状況では、米国と大規模な軍拡競争を繰り広げることには消極的だ。
カーネギー国際平和財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長は、ロシアはむしろ、力を誇示できる実証済みの大型兵器プロジェクトに的を絞ると話す。原油価格は低水準にあるほか、ロシアはウクライナ領土への介入や2016年の米大統領選への干渉疑惑で制裁に直面している。
今回の発表は、ロシアが強力兵器への投資に注力する姿勢を示す一方で、ICBMを武力の威嚇に利用することは、サイバー戦争の能力に対し、時代遅れだとトレーニン所長は述べる。(中略)
ロシアの防衛産業には、2010年当初の発表で6000億ドル(約63兆円)以上がつぎ込まれ、大きな進展を遂げた。だがそれ以前は何年もの間、投資はほとんど行われず、時と共に劣化していったソ連時代のシステムに依存してきた。兵器の多くは長く、困難な開発の歴史を持つ。(中略)
(「ロシア核戦力」プロジェクトの著者)ポドビッグ氏は、ロシアが軍事力に過度に依存することは、強さではなく弱さを示す一段の兆候だと述べる。「現行のロシア指導部は復興を指揮するのではなく、国家安全保障の戦略策定で、軍事・防衛産業に手綱を渡してしまった」【3月4日 WSJ】
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個人的な印象としては、「ソーセージを約束するから自由は我慢せよ」という国民への約束でロシアをリードしてきたプーチン大統領ですが、原油価格低迷・欧米の制裁で、その“ソーセージ”もままならず、結局、ソ連時代同様に軍事力を倉庫から引っ張り出してきた・・・という感じです。
その意味で、“強さではなく弱さを示す一段の兆候”とも思えます。
もちろん、ロシアは中東・シリアなどではアメリカの空白を埋める形で存在感を強めており、欧州にあっては依然として現実的脅威ではありますが、アメリカと軍事力を競い合う体力があるかと言えば、難しいでしょう。
【“技術力で軍事的優位を保ってきた米国が中国に追い越された衝撃的な瞬間”】
今後の軍事力を左右するのはAI(人工知能)であると言われています。
****次の米ロ冷戦の武器は人工知能になる****
<AI兵器の開発にとくに熱心なのは、通常兵器でアメリカにかなわないロシア。2丁拳銃と車両を操るロボット兵士も出てきそうだ>
世界の軍隊で、兵器システムに人工知能(AI)を取り入れる動きが加速している。未来を担うこの技術が、まもなく新たな冷戦の標的になると主張する研究者が現れた。
ノースダコタ州立大学のジェレミー・ストラウブ助教は、1月30日付でニュースサイト、ザ・カンバセーションに寄稿し、20世紀の米ソ冷戦で主役の座を占めた核兵器は、米ロの次の軍拡競争ではサイバー兵器やAIに取って代わられると論じた。
両大国は、サイバー空間という新たな前線での戦いに多額の資金を投入している。通常兵器の戦力でアメリカにかなわないロシアはとくに、これを格好のチャンスと捉えているようだ。(中略)
ロボット兵士を開発するロシア
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、AIの利用を最優先事項に掲げる。旧ソ連時代の栄光を取り戻し、できればそれを上回ろうとする野心の一環だ。(中略)
AIの軍事利用に関する研究開発は、すでにさまざまな分野で進んでいる。巡航ミサイルや無人航空機(ドローン)をはるか先にある標的に送り込むには複雑な計測や計算が必要となるが、AIはその計算にも用いられているほか、こうしたミサイルやドローンによる攻撃を検知し、反撃するためのシステムにも使用されている。
ロシアでは、装着した兵士に超人的な能力を与える強力な外骨格の作成や、さらには直接的な戦闘に参加するロボット「フョードル」の開発にも、AIが活用されている。この戦闘ロボットは二丁の銃を操り、車両を運転する能力を持ち、さらには宇宙空間にまで活動エリアを広げる可能性があるという。
アメリカも、先進的なAI技術を兵器システムに採用してきた。高度な能力を持つ(その一方で不具合も多い)F-35ライトニングII戦闘機はその一例だ。
米ロを中国が猛追していることは言うまでもない。【1月31日 Newsweek】
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“米ロを中国が猛追している”と言うより、AI活用では中国がアメリカを凌駕し、“本命”に躍り出ようとしている・・・といった指摘もあります。
軍事力の拡充を急ピッチで進める中国は、すでに通常の兵器においても、アメリカの絶対的優位を揺るがすようなレベルに到達しつつあります。
****国際戦略研究所「中国軍近代化 米の空の優位性揺らぐ可能性」****
イギリスの国際戦略研究所は、世界の軍事情勢をまとめた報告書を発表し、中国が新型のステルス戦闘機やミサイルの開発を進めた結果、冷戦終結後、アメリカが守ってきた空の優位性が揺らぐ可能性があると指摘しました。(後略)【2月15日 NHK】
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****中国が新たに建造した軍艦の数、日韓印の合計を超える―露メディア****
2018年2月14日、ロシア・スプートニクによると、米国際戦略研究所(IISS)はこのほど発表した世界の国防予算報告書で、中国が大量の軍用機と軍艦の建造を進め、ここ4年で建造した軍艦の総排水量はフランスを上回ったという。環球時報(電子版)が伝えた。(中略)
中国が今世紀初め以降に建造してきた護衛艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艇の数は、日本、韓国、インドの合計を超えるという。
記事は「中国軍の艦隊はアジアの周辺海域を超え、欧州まで達する能力を獲得した。アフリカのジブチに建造する海軍基地の完成で、軍事能力はさらに拡大する見通しだ」と伝えている。【2月16日 Record china】
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その中国が、特に力を入れているのが「AIの軍事利用」です。
****【紅い脅威・AI軍事革命】(上)近未来戦争を担う人材育成 無人兵器世界一狙う中国****
・・・・10月18日、北京の人民大会堂で行われた第19回共産党大会の開幕式。習氏は読み上げた政治報告で、中国軍を世界一流の軍隊にするために「軍事知能の発展を早急に取り込まなければならない」と強調した。
軍事知能とは「AIの軍事利用」のことを指す。発言は中国軍で最高指示として受け止められ、各部門でAIに関する研究が本格化された。(中略)
習指導部がAIに力を入れる理由について、中国軍関係者はこう語る。
「空母、潜水艦、ステルス戦闘機といった分野で、米国はあまりにも先行していて、中国が一生懸命追いつこうとしても、長い時間が必要だ。しかし、近未来の戦争の主役はAIになるかもしれない。新しい技術なので、いまのところ中米両国の差は大きくない。力を入れれば、米国を超えて世界のトップになるチャンスがある」(後略)【3月3日 産経】
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顔認証システムなどで“究極の監視社会”に向かっている中国のAI技術は、軍事面でもアメリカの優位性を揺るがす脅威となりつつあります。と言うより、“米国が中国に追い越された”とも。
*****中国の最先端AIが作り出す戦慄の未来社会****
アメリカで中国の先端AIに対する脅威論が急速に強まっている。
まず、技術的に追い抜かれる可能性が現実的になってきた。さらに中国が先端AIで優位に立つことの影響は、軍事にまで及ぶと予測されている。
個人データの利用に寛容な中国の特異な社会構造が、AIの開発に有利に働いている。中国では、究極の監視社会が実現しようとしている。これは個人の自由に対する深刻な脅威になる。(中略)
「戦場のシンギュラリティ」 新たなAI軍事革命を先導
AI技術は汎用性が高いので、軍事に転用が可能だ。
AIの画像認識技術を応用すると、目標認識が正確になり、兵器の能力が飛躍的に向上する。また、ロボットやドローンなどの無人機が、自ら認識し、判断し、行動できるようになる。
人民解放軍は数千機ものドローン(UAVs)で空母を攻撃する戦法を生み出した。
多数のドローンが衝突せずに飛行するためには、高度のAI技術が必要だ。中国電子科技集団(CETC)は、2017年6月、119機のドローンの編隊飛行のテストに成功した(それまでの記録は67機)。安価なドローンによって、空母のような高価な兵器を攻撃することが可能になる。
AIが戦闘に参加するようになると、戦闘のスピードに人間の頭脳が追随できなくなる。
アメリカのシンクタンク、CNAS(新アメリカ安全保障センター)のエルサ・カニアは、これを、「戦場のシンギュラリティ(技術的特異点)」と呼んでいる。
アメリカは、1990年代に「軍事革命」(RMA)を実現し、他国の追随を許さぬ圧倒的な優位を確立した。これは、ITを活用した精密誘導兵器、サイバー攻撃、宇宙利用、ステルスなどから構成されるものだ。
いま「AI軍事革命」を先導しようとしているのは、人民解放軍だ。(後略)【3月1日 野口悠紀雄氏 DIAMONDonline】
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****【紅い脅威・AI軍事革命】(中)119機の小型無人機、無人潜水機…戦争の概念、躊躇なく変える中国****
・・・・・中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(英語電子版)や欧米メディアが昨年6月に報じた同国の実験は、世界を驚愕させた。
国有企業「中国電子科技集団公司」が人工知能(AI)を活用し、計119機の小型無人機の飛行に成功。米国防総省が同年1月に発表した103機の小型無人機飛行の記録を短期間で塗り替え、世界一の技術力を見せつけたのだ。(中略)
映像を確認した元航空自衛官で軍事評論家の潮匡人(うしお・まさと)氏は「これだけの数の無人機が鳥のように滑らかな動きで等間隔で離陸し、正確に飛行する実験は世界でも例がない。技術力で軍事的優位を保ってきた米国が中国に追い越された衝撃的な瞬間だ」と指摘する。
中国が狙うのは、大量の無人機を主力に航空母艦や航空機を攻撃する戦術の実現だ。人間の兵士は戦場から引き揚げ、無人システムに攻撃を遂行させる。敵に打撃を与える一方、自国の軍隊の人的被害を大幅に軽減できる仕組みだ。
「中国はAIを使って、従来の戦争の概念を躊躇なく変えようとしている。人民解放軍には、AIに操られた無人機を戦争に利用することに対する倫理的な制約は存在しない」。米中の軍事問題などを研究する渡部悦和・元陸上自衛隊東部方面総監はそう断言する。(後略)【3月4日 産経】
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なお、1月5日、シリアに駐屯しているロシア軍が手作りドローンの群れから攻撃を受けています。
「我々は世界があるべき姿を願うのではなく、現実を見つめなければならない」ということであれば、アメリカの軍事力さえも“切り札”とはなりえない(ましてや、日本独自の防衛力強化も)というのが、東アジアの現実のようです。
そうなると、とるべき道は、“より強い方”との関係を重視するか、あるいは、“あるべき姿”によって現実に歯止めをかける努力を本気でするか・・・でしょうか。