孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

シエラレオネ  大統領選挙与党候補支持者から「われわれは中国人だ!」とのシュプレヒコール

2018-03-24 22:15:56 | アフリカ

(【3月6日 The New York Times】シエラレオネ 与党側大統領候補の選挙運動)

解任直前のティラーソン米国務長官の警告
昨日ブログでは、モルディブ・南アジアにおける中国の影響力拡大、インドとのせめぎあいを取り上げましたが、中国の影響力が強まっているのは世界共通で、特に、毛沢東時代以来、伝統的に中国外交が力点を置いてきたアフリカではその傾向が顕著です。

中国のアフリカの投資拡大を懸念するアメリカは、アメリカ・ティラーソン“前”米国務長官が今月初めに警告を表明もしています。

****中国のアフリカ投資で警告=米長官「慎重に検討を****
アフリカ歴訪中のティラーソン米国務長官は8日、エチオピアの首都アディスアベバのアフリカ連合(AU)本部で記者会見した。

中国による巨額の対アフリカ投資について、地元の雇用創出や職業訓練プログラムにさほど貢献していないと述べ、「アフリカの国々はそれら投資の(契約)条項を慎重に検討することが重要だ」と警告した。【3月9日 時事】 
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ただ、トランプ米大統領がアフリカ諸国などへの「シットホール(shithole)」(肥だめ国家)といった嘲りを隠そうとしないなかでは、流れが中国に傾くのもやむを得ないところです。

中国批判への王毅外相の反論 「雪中に炭を送る」「義を優先している」「ウィンウィン」】
よく言われる“中国からの債務が増大することで、返済が困難になり、結果、中国の支配が強まる”といった批判については、中国・王毅外相は以下のように反論しています。

****中国の融資でアフリカ諸国の債務増大か、中国外相が反論****
中国の王毅(ワン・イー)外交部長(外相)は現地時間(1月)14日、アンゴラのアウグスト外相とルアンダで会談し、共同記者会見に臨んだ。新華網が伝えた。

アンゴラなどアフリカ諸国への中国の融資が関係国の債務負担を増大させているとの見方について、王部長は次のように答えた。

こうした見方は下心のあるもので、全くの偽りだ。近年、中国アフリカ協力が日増しに拡大・深化するにともない、中国側は確かに融資面でアフリカ諸国への支えを強化してきた。中国側はこの過程において、終始いくつかの基本原則に従っているということを強調する必要がある。

第1に、アフリカ自身の発展のニーズに応えること。
どの国も経済的テイクオフと工業化の初期段階において多大な資金を必要とする。アフリカも当然例外ではない。

中国側はアフリカ諸国の示した意向に基づき、できる範囲内で融資を行い、アフリカ各国の経済・社会発展に「雪中に炭を送る」役割を果たし、各国から一致した評価と歓迎を得ている。

第2に、いかなる政治的条件もつけないこと。
中国はアフリカ諸国と同様、外国に経済的命脈を握られて不公正な待遇を受け、さらには搾取・抑圧された悲惨な経験がある。

したがって中国の対アフリカ援助と協力は、西側諸国のような手段は取らず、ましてや他国に強要することはなく、終始アフリカを尊重し、アフリカを助け、義と利を相兼ね、義を優先している。

第3に、互恵・ウィンウィンの原則を堅持すること。
中国アフリカ協力は本質的に南南協力だ。南南協力の重要な特徴が対等性と互恵・ウィンウィンであり、そうして初めて真に持続・永続し、双方の共同発展を実現できる。

このために中国はアフリカを資金面で支える際、常に真剣なフィージビリティスタディと市場化論証を経て、各協力事業がしかるべき経済的・社会的効果を得るよう確保している。

現在のアフリカ諸国の債務は長期的蓄積の結果だ。債務問題解決の構想もすでに明確だ。つまり持続可能な発展の道を歩み、経済の多元的発展を実現することだ。

中国側はこれを揺るぎなく支持し、かつアフリカの自力での発展能力の向上、経済・社会発展の好循環の実現のために努力したいと考えている。

われわれはアフリカ経済が去年すでに上昇に転じ、アフリカ諸国がいずれも持続可能な発展の重要性に気づいていることを喜ばしく思っている。【1月15日 Record china】
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中国の融資が「雪中に炭を送る」ものか、「義を優先している」のか、「ウィンウィン」か・・・、あるいは、中国の対応を特徴づける「いかなる政治的条件もつけないこと」というのは、結局、非民主的・独裁政権を補強することになっているのでは・・・といった疑問は多々あるところでしょうが、欧米のように上から目線でとやかく言うこともなくカネを出してくれる中国が歓迎されているのは確かでしょう。

シエラレオネ大統領選挙 「われわれは中国人だ!」とのシュプレヒコール
・・・・で、西アフリカのシエラレオネの話。

シエラレオネでは1991年から2002年、反政府勢力・革命統一戦線(RUF)と政府軍との交戦がダイヤモンドの鉱山の支配権をめぐって大規模な内戦に発展し、7万5000人以上の死者を出しています。

更に、2014年にはギニア、リベリア、シエラレオネの3か国を中心にエボラ出血熱が大流行し、これらの国で合わせて約2万8,000人以上が感染し、約1万1300人が死亡し、シエラレオネのみでの死者は約3900人とされています。

こうした苦難の歴史もあって、シエラレオネは「世界で最も平均寿命が短い国」の一つとなっています。(2014年度で46歳、WHO報告) 当然に最貧国のひとつでもあります。

そのシエラレオネでは今月7日、大統領選挙が行われましたが、その選挙運動のなかで与党候補支持者から「われわれは中国人だ」という声があがった・・・とのこと。

****アフリカの選挙で「われわれは中国人」の叫び声、何があった****
2018年3月8日、西アフリカのシエラレオネで7日行われた大統領選挙をめぐり、環球網は選挙期間中に数百人もの人々が「われわれは中国人だ」と叫び声を上げる場面があったことを伝えた。

記事は英紙ガーディアンの報道を引用したもので、叫び声を上げたのは与党候補者のもとに集まった支持者たちだ。

同国は現政権下で中国との貿易が拡大し、木材と魚類の輸出において中国は最大の取引相手に数えられる存在。
中国企業によって未開発の土地に道路も建設されており、多くの人々にとって中国は「国が困難に直面している時に大量の資金を投入してくれるパートナー」なのだという。

記事によると、支持者のある男性は「『われわれは中国人』と叫んだのは感謝と団結を示すため。唯一知っている『宣誓』という形で中国人に対する気持ちを表そうと思った」とコメント。

記事はまた、同国の元外相が昨年、「中国はわが国にとって全天候型の友人」と語ったことも紹介している。【3月8日 Record china】
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7日の第1回投票では当選者が決まらず、今月27日に与党候補を含めて決戦投票が行われることになっています。

****We Are Chinese”シエラレオネ 大統領選に中国の影が蠢く****
あの手この手で影響力の拡大を図る中国の攻勢は止まらない

レックス・ティラーソン米国務長官は解任通告される直前、最初で最後のアフリカ公式訪問を行い、アフリカ諸国は中国との取引で「国家主権を失う」ことに注意する必要があるとクギを刺した。この警告は特に、3月27日に大統領選挙の決選投票が予定されているシエラレオネによく当てはまりそうだ。
 
3月7日の第1回投票で当選者が決まらなかったため、決選投票は与党・全人民会議党(APC)とシェラレオネ人民党の新人候補同士の一騎打ちになる。
 
第1回投票で僅差の2位になったAPCには、意外な方面からの支持がある。シエラレオネの国民だけでなく、最大の貿易相手国である中国からも支持されているのだ。
 
先日もAPCの支持者と同じ服装で選挙運動に加わる中国系男性の動画が、シエラレオネに対する中国の直接的な内政干渉ではないかと問題視され、ちょっとした騒ぎになった。
 
APCと中国共産党の親密な関係を裏付けるこの種の出来事は、かなり前から続いている。17年には、中国共産党からAPCへの寄付で7階建ての「友好ビル」の建設が始まった。
 
今年のある集会では、APCの支持者が一斉に「われわれは中国人だ!」と叫び、シエラレオネに巨額の支援や投資を行ってきた中国への支持を表明した。
 
アーネスト・コロマ大統領の政権下で、中国のシェラレオネ投資は大幅に増えた。中国はこの時期、新しい高速道路や病院、総工費3億1800万ドルの空港建設に巨額の資金をつぎ込んだ。
 
空港建設プロジェクトに対しては、強い批判の声が上がっている。世界銀行とIMFは、シエラレオネはまだ壊滅的なエボラ出血熱の大流行から回復する途上にあり、この巨額プロジェクトは資源の無駄遣いだと指摘した。ティラーソンはこのような事例を念頭に、アフリカにおける中国の「略奪的な融資慣行」を非難した。
 
アフリカ全体への援助額は依然としてアメリカが首位だが、シエラレオネがエボラ熱流行と鉄鉱石の国際価格急落で大打撃を受けた14年に最も手厚い援助を行ったのは中国だった。コロマは16年、中国の影響力拡大を歓迎する姿勢を示し、中国の投資を次のように称賛した。
 
「中国のような友好国の支援のおかげで、復興計画を推進できた。社会資本や公共サービスを再建し、市場の正常な機能を取り戻すために民間部門への支援を実施することができた」

自由選挙への直接介入?
中国との密接な関係が決選投票で与党の勝利を後押しするかどうかははっきりしない。APCはエボラ熱と鉄鉱石価格の下落に加え、約1100人の死者を出した17年の首都フリータウンの大洪水の余波で苦戦を強いられている。
 
「われわれは中国人だ!」というシュプレヒコールは国民の一部に親中派がいることを裏付けるものだが、ティラーソンの言う中国の「略奪的な融資慣行」や、現地のシエラレオネ人より中国人労働者を優先的に雇用するやり方を懸念する人々が多いのも確かなようだ。
 
ザンビアでは同じような懸念を背景に、11年の大統領選で中国の大き過ぎる存在感を攻撃したマイケル・サタが当選した。サタは選挙戦中、「ザンビアは中国の省になってしまった」と訴えていた。
 
仮にシエラレオネ人民党の候補が大統領選で勝ったとしても、中国の影響力拡大が一気に失速する可能性は低いだろう。両国関係はAPCと中国共産党の関係より深く、1961年のシエラレオネ独立までさかのぼる。
 
それでも27日の決選投票でAPCが敗北した場合、その選挙結果は中国のシエラレオネ投資に対する拒絶ではないとしても、もっと重要で不吉な試み・・・中国共産党による自由選挙への直接介入に対する拒絶の意味合いを持つ可能性がある。
 
中国のシエラレオネの政治への介入は、アフリカにおける中国の影響力拡大のもう1つの側面だ。ケニアではテレビ放送ネットワークを通じて「ソフトパワー」を拡大させ、ジブチでは海軍基地を建設して軍事的影響力を強化した。
 
シエラレオネがテイラーソンの警告に耳を傾けるかどうか、その答えはもうすぐ出る。【3月27日号 Newsweek日本語版】
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大統領選挙に“ブロックチェーン技術”を利用
なお、7日に行われた大統領選挙は、“ブロックチェーン技術”が利用されたことでも話題となっていますが、残念ながら、私は仮想通貨でよく目にする“ブロックチェーン技術”なるものが全く理解できませんので、下記記事を紹介するだけにしておきます。

****ブロックチェーン技術が大統領選挙に初採用、その実態は・・・・****
西アフリカのシエラレオネ共和国は先週、部分的にとは言え、ブロックチェーン技術を大統領選挙に導入した最初の国になった。

だがいくつかのトップニュースの見出しとは裏腹に、ブロックチェーンを使って投票がされたわけではない。ある意味、ブロックチェーンによって投票が検証されたに過ぎない。

コインデスク(CoinDesk)によれば、独自のブロックチェーン技術を使った投票システムを手がけるスイス企業アゴラ(Agora)は、集計された投票数と比較するために、他とは独立した形で投票数を提供する「公認オブザーバー」の1つだった。

しかも、このシステムが投票を追跡したのは、シエラレオネで最も人口の多い地区に限られていた。

それでも今回の事実は、アゴラにとって実に良い宣伝になった。同社はアフリカやヨーロッパの他の国でも、このソフトウェアの販売を促進しているからだ。

ブロックチェーン技術の選挙への適用は、大きな可能性を秘めている。不正の余地のない監査証跡が得られるからだ。シエラレオネでの試験は少なくとも、正しい方向への第一歩にはなった。

だが、まずはデータをどのようにして入力するかが非常に重要だ。シエラレオネでは280人の任命された人々が手で投票を数え、そのデータを許可されたブロックチェーンに書き込んだ。

この方法では理論的には人間が数字を改ざんする可能性がある。アゴラの最高経営責任者(CEO)がコインデスクに語ったところによると、今後のバージョンの投票システムでは、不正を働く余地が今よりも少なくなるそうだ。【MIT Technology Review】
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“シエラレオネ国民投票の記録プロセスは、以下のようなものだった:有権者が紙の投票用紙を箱に入れる、それが選挙監視員の前で開票され声に出して数え上げられる、アゴラは「ブロックチェーンを用いたデジタル機器に手動で各投票を入力する」。同社はミディアムへの投稿で、投票箱がNEC地域集計センターに持ち込まれた後は、アゴラの役割は何も無かったと主張している。”【3月22日 COINTELEGRAPH】

選挙での不正疑惑から選挙後に騒動が起こるのはよくあることですが、ブロックチェーン技術利用が不正防止に役立ち、混乱を未然に防ぐ一助となるのなら、結構な話です。なんのことか理解できませんが。
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