【3月18日 NHK】
【「投票率70%、得票率70%」達成で正当性を国内外に】
ロシアでは今日18日、大統領選挙の投票が行われています。
プーチン大統領の高い支持率に加え、汚職批判で若者らの支持が高く、一定に現体制批判の受け皿ともなりうるアレクセイ・ナワリヌイ氏が有罪判決を理由に立候補できない形に追い込まれたこともあって、4期目を目指すプーチン大統領の圧勝が確実視されていることは、2月11日ブログ「ロシア プーチン圧勝確実で“面白味にかける”大統領選挙 焦点は投票率か」や各メディア報道でも取り上げられているとおりです。
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世論調査基金(FOM)、3月3〜4日の調査によると、
1位 プーチン 64%
2位 ジリノフスキー 6.6%
3位 グルディニン 6.5%
4位 ソプチャク 1.2%
他の候補は、1%以下。【3月16日 北野幸伯氏 MAG2NEWS】
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2月11日ブログでも取り上げたように、得票率もさることながら、焦点は投票率でしょう。立候補が認められなかったナワリヌイ氏は投票ボイコットを呼びかけており、投票率を押し下げることでプーチン政権への批判としたい構えです。
逆に、プーチン大統領は「投票率70%、得票率70%」を実現することで、正当性を国内外に示し、強い政権基盤を維持したいところです。ロシア各地の工場労働者や地方自治体の職員が報酬を受け取って政治集会に出席したり、バスで投票所に連れていかれたり・・・といった違法な動員も行われており、なんとか“圧倒的支持”を演出しようとしています。
西側との対立色を深める政策や社会保障費を削る再軍備を正当化するためにも、高い投票率のもとで再選を果たすことが必要とされています。
プーチン大統領は18年間の権力掌握中に敵を押しつぶしてきており、「投票率が低ければ、政府の成功自体が人々を政治から追いやっている証拠になる」(モスクワ国際関係大学のバレリー・ソロベイ教授)とも。【3月16日 WSJより】
しかし、得票率70%はともかく、投票率70%はかなり高いハードルです。
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大半の人はプーチン氏を支持しているが、それは彼らがわざわざ足を運び、同氏に投票することを意味する訳ではないと、独立系世論調査機関レバダ・センターのレフ・グドコフ所長は指摘。「プーチン氏は力強い支持を得ているが、それは受動的な支持であり、能動的なものではない」という。【3月16日 WSJ】
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****過去4回の投票率と得票率は****
プーチン氏にとって通算3回目の立候補となった前回、6年前(2012年)の選挙は投票率が65.34%、プーチン氏の得票率が63.60%でした。
その前の選挙は2008年。ロシアでは憲法の規定で連続3選が禁止されているため、プーチン氏に代わって当時第1副首相を務めていた側近のメドベージェフ氏が立候補し、投票率69.81%、得票率70.28%で勝利しました。
2004年、プーチン氏の2期目の選挙は投票率が64.38%、プーチン氏の得票率は71.31%でした。
そして、プーチン氏が初めて立候補した2000年の大統領選挙は投票率が68.70%、プーチン氏の得票率が52.94%でした。
2000年以降の過去4回の大統領選挙で投票率が70%を超えたことは、1度もありません。また、プーチン氏の得票率が70%を超えたのは2004年に1度だけとなっています。【3月18日 NHK】
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【投票率アップにあの手この手】
“プーチン氏は、投票のあと、記者団から、「どれくらいの得票率が自分にとってよい結果だと考えていますか」と質問されたのに対し、「大統領職を行う権利が与えられるのであればどのような得票率でもよい」と述べるにとどまり、陣営が掲げているとされる投票率と得票率でともに70%を達成するという目標には触れませんでした。”【3月18日 NHK】と、(達成できなかった場合を考慮して)目標を明示することは避けていますが、投票率アップになりふり構わない対応も。
投票所での野菜・パンの格安販売、無料がん検診やコンサート・チケットなど・・・。
****ロシア大統領選 投票率アップにあの手この手****
ロシア各地の投票所では、投票率を上げようと、有権者を投票所に呼び込むためのあの手この手の取り組みが行われています。
このうちモスクワ市内の学校では、投票所と同じ建物内に無料でがん検診を受けられるコーナーが設けられました。
検診はモスクワ市が初めて企画したもので、女性は18歳以上、男性は40歳以上であれば誰でも受けられ、投票開始の午前8時から次々と有権者が訪れていました。
女性の1人は「ふだんは仕事で忙しく、病院に行く時間がないので、投票と一緒に検診を受けられるのはとても便利です」と話していました。
また、モスクワ郊外の別の投票所では、25歳以下の有権者であれば人気歌手のコンサートのチケットがもらえる仕組みが用意されました。
有権者は、投票所の外に貼られているコンサートのポスターを背景に、スマートフォンで「自撮り」をしてSNSに投稿し、投票したことを証明すれば、後日、チケットがもらえるということです。
投票を終えた19歳の女子学生は、「コンサートのチケットをもらえるなんて期待していなかったのでうれしいです。経済の発展に期待して、プーチン大統領に投票しました」と話していました。【3月18日 NHK】
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アップル製品も“景品”にされているとか。
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ロシア有数の寒冷地域ヤマロ・ネネツ自治管区では選挙絡みのコンテストが開催される予定。
有権者の住民は投票ブースの横断幕をバックに写真を撮影し、同国で最も人気のあるソーシャルネットワークの一つ「フコンタクテ」に投稿できる。「いいね」を多く集めた写真の撮影者は、アップル製品や自転車やデジタルカメラなど1300を超える景品から一つを受け取る。主催者は地元当局が創設した民間ファンドだ。【3月16日 WSJ】
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ピョンチャンオリンピックのフィギュアスケート女子シングルの銀メダリスト、メドベージェワ選手を起用して投票を呼びかけるテレビCMも連日放送すされています。
こうした“なりふり構わぬ”手法に“こうした試みは旧ソ連時代の選挙を彷彿させる。当時の選挙はフェスティバルとして行われ、投票所ではバンドが演奏し、共産党公認の候補に投票した有権者は店頭入手がままならなかったソーセージやビールや衣料を買うことができた。”【同上】との批判も。
投票は日本時間の19日午前3時に締め切られて即日開票され、19日朝には大勢が判明する見通しです。
午後7時のNHKニュースでは、現時点の投票率は前回選挙を上回っているとのことでした。
【50%付近を低迷する日本の国政選挙投票率】
【総務省HP】
こうした投票率アップに関する“なりふり構わぬ”手法の記事を見ていて思ったのですが、投票率の低さが問題となっているのは日本も同じですから、この際日本もロシアを見倣って、法律の範囲内で、格安販売、無料がん検診や景品応募などやってみたらどうでしょうか?
ここ2回ほどの国政院選挙の投票率は52~54%程度で、50%を切りそうなあたりにまで落ち込んでいます。
地方選挙では10%台もあるようです。こんな選挙で最多得票を得たからといって、有権者の信任を得たとは言えません。
投票率が50%を切る選挙など、無効にしてもいいぐらいです。
国民の“政治離れ”“政治不信”を示すこのことは、民主主義にとってどの政党が勝利するかより重要な問題をはらんでいます。
市役所の放送で「選挙へ行きましょう!」と繰り返しているだけでは能がありません。
【日本にとってはプーチンの政治決断しかないが、現実にはプーチンでも前進なし】
なお、プーチン圧勝が予想される結果にかんして、以下のような指摘もありますが、どうでしょうか・・・。
****プーチン再選で、日本は困らない****
安倍―プーチンで、日ロは現在、良好な関係にあります。欧米とロシアの関係が最悪にも関わらず、日ロ関係はいい。これは、安倍総理が「自立外交」をしている証拠ですね。
ロシアとの関係は、特に「対中国」で大事です。日米関係が良く、日ロ関係も良ければ、中国は尖閣強奪に動けない。既述のように、安倍―プーチンで日ロ関係は良好。だから、「プーチン再選」で、日本は困りません。【3月16日 北野幸伯氏 MAG2NEWS】
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“安倍―プーチンで日ロ関係は良好”とは言いつつも、北方領土での共同経済活動なども一向に進展せず、ロシア側のガードは固くなる一方のようにも見えます。
****ロシア外相「迎撃ミサイルは日ロ平和条約の障害」****
ロシアのラブロフ外相はNHKなどのインタビューに応じ、日本がアメリカから導入する地上配備型の新型迎撃ミサイルシステムが、北方領土問題を含む平和条約の締結交渉を前進させるうえでの障害になっている、と指摘しました。
そのうえで、北東アジア周辺の安全保障問題はロシアも含めた多国間の対話によって解決すべきだという考えを強調しました。
ロシアのラブロフ外相は21日に日本で河野外務大臣と会談するのを前に、15日、NHKなどのインタビューに応じました。
ラブロフ外相は「日本とロシアが戦略的かつ友好的な関係を拡大するという目標に向かって前進するためには、アメリカのミサイル防衛システムが日本に配備される問題も検討しなければならない」と述べ、日本がアメリカから導入する地上配備型の新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」が、北方領土問題を含む平和条約の締結交渉を前進させるうえでの障害になっている、と改めて指摘しました。
そのうえで「北東アジアを含めた地域の安全保障問題は、日米などの同盟だけで解決すべきではない。すべての関係国が1つのテーブルについて交渉を始めることが大事だ」と述べ、ロシアも含めた多国間の対話によって解決すべきだという考えを強調しました。
共同経済活動 さらに大規模事業の検討必要
日本が平和条約の締結に向けた環境整備のためにロシア側に提案した、北方領土での共同経済活動のうち、海産物の養殖や温室野菜の栽培など優先的に取り組む5つの事業については「規模がそこまで大きくない」と述べ、さらに大規模な事業を検討する必要性を指摘しました。
そのうえで、共同経済活動を実施するにあたって、日本が両国の法的立場を害さないための特別な制度を求めていることについては「必要がない」と述べ、小規模の事業であればロシアの法律に従って実施すべきだという考えを示しました。
北朝鮮への圧力維持「適切でない」
5月までに開かれる見通しの米朝首脳会談については「希望を感じている」と期待を示しました。
その一方で「トランプ大統領が、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長と会談しすべての問題を解決する用意があると言ったが、同時にアメリカは北朝鮮に対して圧力を継続しなければならないと表明した。これは適切ではない」と述べ、前向きな動きがあるにもかかわらずアメリカが北朝鮮に対して制裁と圧力を維持する方針を掲げていることは、適切でないと批判しました。【3月17日 NHK】
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ただ、プーチン大統領以外のロシア政治家はさらに民族主義的で、北方領土問題の前進は“強い”プーチン大統領の政治決断に待つしかない・・・というのが現状ですから、“プーチン再選で、日本は困らない”と言えばそうなんでしょうが・・・。