![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/81/cffea4ea2413fffcf3a2e1bb45229737.jpg)
(マハティール元首相はインスタグラムのアカウントを開始し、写真を投稿し、話題となっているとか。記念すべき第1回目の投稿は、シティ・ハスマ夫人との笑顔のツーショット 【3月16日 マレーシアマガジン】)
【自ら設立した出身政党を“ぶっ壊す”ために、92歳の政界を退いた老兵が再び、立ち上がった】
マレーシアでは近日中に総選挙が行われますが、下記記事によれば、在外マレーシア人の投票のための帰国を妨害しようとする政権側の意図のため、選挙の確定スケジュールは公表されていません。
以前は“夏”と言われていましたが、断食月ラマダン前の5月の線で調整がなされているようです。(下院の任期は6月24日まで。収監中の野党指導者アンワル元副首相は6月に出所予定)
マレーシア・ナジブ首相が政府系ファンド「1MDB」に絡む巨額資金正流用の汚職疑惑の渦中にあること、前回選挙で野党勢力を束ねて与党の長期政権を揺るがしたアンワル元副首相は政治色の濃い犯罪容疑で獄中に拘束されていること、そのアンワル氏に代わって、かつて与党を率いて長期政権の基礎を築いたマハティール元首相(92歳)が、野党を束ねてナジブ首相に闘いを挑んでいること・・・・等々についてはこれまでも取り上げてきたところです。
(1月27日ブログ“マレーシア 今年夏には総選挙 野党をまとめて与党に挑むマハティール元首相92歳”など)
****マレーシア総選挙に中国の影、民主化は遠く****
不正を糊塗する中国頼りのナジブ首相に挑む92歳のマハティール元首相
マレーシアでは、国会解散を前にすでに事実上の選挙戦が突入している。春節の年賀を通じ、街中には各政党の選挙を目論んだポスターが貼られ始めた。
今回、政敵だったマハティール元首相と長年の敵対の歴史に封印、ナジブ首相打倒でマハティール氏と“共闘する”(実際には選挙には出られないが)ことを決断した獄中のカリスマ野党指導者、アンワル・イブラヒム元副首相=中央=のポスターも人々の目にとまる
自ら設立した出身政党を“ぶっ壊す”ために、92歳の政界を退いた老兵が再び、立ち上がった。
5年に1回開かれるマレーシアの総選挙(下院選挙)は、「4月5日解散、5月4日か5日に総選挙」(マレーシア政府筋)を軸に最終調整に入った。
20世紀を代表する東南アジア最後の独裁開発指導者、マレーシアのマハティール元首相が、野党連合「希望同盟」の首相候補として、次期総選挙に出馬することになった。
当選すれば世界最高齢の元首に
かつて自らが会長を務め、さらに後継者として選んだナジブ首相が率いる統一マレー国民組織(UMNO)を母体とする与党連合「国民戦線」(BN)に対抗する。首相に返り咲けば、世界で「最高齢の国家元首」になる。
いまのところ、独立以来60年以上を経て、政権を握ってきた与党連合の優勢が伝えられている。しかし、その足元は問題だらけだ。
地方へのバラマキ予算による不公平な優遇政策に加え、米国司法省が民事訴訟を起こすなど、世界の6カ国以上で捜査が進められている政府系ファンド「1MDB」に絡む巨額資金正流用の世紀の汚職疑惑。
ハリウッド映画やアカデミー賞受賞俳優のディカプリオやスーパーモデルのミランダ・カーも巻き込んだこの汚職疑惑への痛烈な批判は、都市部を中心に収まる様子はない。それどころか政権交代を求める声が最高潮に達している。(中略)
かつて、英国の植民地であったマレーシアだが、ナジブ首相のアキレス腱となり得る45億ドル以上(米司法省捜査)にも達する巨額の公的資金の不正利用の世紀のスキャンダルを暴いたのは実は、英国のメディア。
世間では、米国のウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道を端緒に暴かれたとされているが、ロンドンを拠点とする独立系のオンラインメディア「サラワクレポート」が第1報をセンセーショナルに報道した。(中略)
サラワクレポートの情報源が英国政府、あるいは諜報機関だったかどうか定かではないが、アジアで民主化が遅れるマレーシアを憂慮していたことは、これまでの歴代の英国首相のマレーシア訪問時にも、明らかにされている。
マレーシアでの政権交代の期待が高まる中、ロンドンを本拠地に空運、海運、貿易、不動産などを手がける英国の有数財閥「スワイヤー・グループ」を筆頭株主にするキャセイパシフィック航空(本社・香港)が23日、異例の声明を発表した。
在外マレーシア人の投票を妨害
「マレーシアで発行の航空券は変更不可能なものも含め、選挙投票日に該当する場合、無料で変更、再発券する。マレーシア国籍を有する者に適応する」――。
公式サイトには、「英国はマレーシアの民主化を後押ししている」「マレーシアのマレーシア航空、エアアジアはなぜ、キャセイのように民主化の手助けをしないのか」などとのコメントが寄せられている。
マハティール元首相が公然と批判するように、ナジブ政権は「史上最悪のダーティーな選挙」を強権を振りかざし、展開している。
その1つが、海外で就労、居住する在外マレーシア人の投票妨害だ。
(中略)マレーシア政府は、いまだに国会解散による総選挙の日程を公表していない。事前に日程の猶予を与えれば、在外マレーシア人が帰国し、反ナジブ票を投じるからだ。
キャセイパシフィック航空は、こうした状況から、政府が日程ギリギリで選挙日を公表しても、選挙日に在外マレーシア人、あるいは、国内にいるマレーシア人が投票できるよう側面から、「マレーシアの民主化」を後押ししているのだ。
マハティール元首相も、ここ数カ月間、英国をはじめとする欧州の政府と密に接見、折衝している。
中国にすり寄るナジブ首相
一方のナジブ首相の神頼みは、中国だ。
マレーシアの対中関係は極めて緊密。最大の要因は、習近平国家主席が提唱する「一帯一路」にナジブ政権がコミットしたからだ。
中国はマレーシアの最大の貿易相手国となり、中国の投資は、習近平国家主席が現職に就き、ナジブ首相を「過去最高の指導者」と持ち上げた2012年頃から活発化。(中略)
しかし、中国マネーの流入は国内政策に大きく影響を与える。
マハティール元首相は「中国マネー獲得との引き換えに中国の影響力が増大し、国内企業は衰退の一途を辿り、マレーシアの最も価値のある土地の大半が外国人に専有され、それらは外国の土地になるだろう」と話す。
(中略)マレーシアの「一帯一路」戦略への参入は、ナジブ首相と習近平国家主席との首脳会談によるトップダウンで始まった。
中国がナジブ首相が設立した政府系ファンドの「1MDB」の巨額債務を救済するため、チャイナマネーに依存せざるを得なかったところから、中国のマレーシアへの「一帯一路」戦略が動き出したのが背景にある。
トランプ氏の登場で中国の影響力が増した
マレーシアの民主化の後退は、アジアの民主化を提唱したバラク・オバマ米前大統領の後に登場したドナルド・トランプ大統領が、東南アジアでの米国のプレゼンスを低下させてしまったのも大きい。それに反比例する形で中国の影響力が増大した。
一帯一路政策の下、東南アジアでの存在感を高め、人権や民主化に口を出さない中国の台頭は、マレーシアが強権政治を蔓延らせる環境を手助けしているとも言える。(後略)【3月30日 末永 恵氏 JB Press】
******************
中国の影響云々は、東南アジアや南アジア諸国では共通する現象ですが、マハティール元首相の批判に対し、同氏が在任中に日本との関係を強めたことをふまえて、「(日本からの投資が多いからと言って)私たちの国を日本に売っている主張する人は誰もいない」と反論していることは、前回ブログでも紹介しました。
【政権側 フェイクニュース厳罰法案にゲリマンダー】
選挙予測については、与党優勢ながらも、“野党に近いシンクタンクの世論調査では、統一マレー国民組織(UMNO)を中心とする与党連合の支持率は、昨年12月の41・1%から今年2月には28・5%に下落。野党連合の支持率は逆に、9・9%から14・1%に伸びた。国営のベルナマラジオが2月から3月にかけて実施した世論調査では「与党連合が勝つ」が37%、「野党連合が勝つ」が32%だった。野党連合が勝てば1957年の独立以来、初の政権交代となる。”【3月27日 朝日】と、マハティール・野党側も健闘しているようです。
政権・与党側は、上記記事にもある“在外マレーシア人の投票帰国妨害”のほか、フェイクニュース厳罰法案による言論統制、選挙区区割りの変更(ゲリマンダー)など、あの手この手で政権維持を確実なものとしようとしています。
****マレーシア、フェイクニュースに厳罰法案 言論統制か****
マレーシア連邦議会下院は29日、事実に基づかない情報発信への罰則を強化する「フェイク(偽)ニュース対策法案」を審議した。来月2日予定の再審議で、与党連合による賛成多数で可決される見通し。
ナジブ政権は近く、下院を解散して総選挙に踏み切るとみられるが、新法制定の背景には、選挙運動をにらんだ現政権による言論統制強化の思惑も透けてみえる。(中略)
偽ニュースの対象は、映像や音声も含むあらゆる媒体で、「言葉や概念などを示唆するもの」とされており、定義が曖昧で拡大解釈も可能にみえる。
マレーシアでは、政府が報道機関を許認可などで統制し、多くの新聞やテレビは政府系企業の所有だ。そのため市民には、オンラインニュースや、ソーシャルメディアで情報取得する傾向が強まっている。ネットは、ナジブ氏の公的資金流用疑惑に関連するニュースが拡大する“温床”にもなっている。
ナジブ首相は28日、次期総選挙に向けた選挙区の見直し案を下院に提出し、賛成多数で可決された。
野党連合「希望連盟」を首相候補として率いるマハティール元首相らは同日、集会を開き、「権力の乱用だ」と猛反発した。(後略)【3月30日 産経】
******************
トランプ大統領は困った風潮を生み出しています。最近では、政権に都合が悪いニュースを流すと“フェイクニュースだ!”と取り締まるのが各国で流行っています。
選挙区再編については、野党側のパップ・オブ・ホープとアンワル元副首相の妻であるワン・アジザワン・イスマイル氏は、「選挙の勝利が盗まれる可能性があると我々は信じている」と批判しています。【3月30日 バングラデシュ デジタル ニュース】
【イスラム化の流れを覆せるかも焦点】
こうした政権・与党側の“画策”もあって、野党側が政権を奪取するのは容易ではありませんが、今回選挙での野党勢力の伸長は、マレーシアのイスラム原理主義への接近を止める効果もあると指摘も。
****マレーシア総選挙の焦点はイスラム化の流れを覆せるかだ****
(中略)実際、ナジブ氏が勝利するというのが専門家の下馬評だ。ある世論調査では、UMNOが憲法改正が可能となる3分の2の議席数を奪還するとの予測が出ている。
マハティール氏はUMNOを離脱し、新たにマレーシア統一プリブミ党(PPBM)を結成。野党連合の希望同盟(PH)を率いることで、ナジブ政権を倒そうとしているが、残された時間は少ない。
野党連合に参加していない主要野党の全マレーシア・イスラム党(PAS)は、15%程度の支持率しか得ていない。にもかかわらず、党是であるイスラム原理主義に基づく政策のいくつかをナジブ政権にのませている。
だが、今回の総選挙で野党連合が高い得票率を得れば、PASの重要性は低下。イスラム原理主義を交渉カードにした危険な駆け引きから、マレーシアは抜け出せるかもしれない。(後略)【03/31号 東洋経済Plus】
****************
【マハティール氏「アンワル氏とは過去にいさかいもあったが・・・・」】
92歳ということで“老害”との批判もあるマハティール元首相ですが、今後の取り組み等について下記のように語っています。
****マハティール野党、猛追中 マレーシア、来月にも総選挙****
マレーシアのマハティール元首相(92)が、野党の立場から再び政権の座を狙う総選挙が4月下旬にも実施される見通しになった。
世論調査ではナジブ首相率いる与党連合が優勢だが、5期22年間にわたり首相を務め、人気の根強いマハティール氏が野党連合の首相候補となったことで、その差は縮まりつつある。
マハティール氏は遊説で政府系ファンド「1MDB」を巡るナジブ氏の不正流用疑惑を持ち出し、汚職撲滅には政権交代が必要だと主張。
26日にはクアラルンプール近郊のプトラジャヤで朝日新聞のインタビューに応じ、師弟関係にあったナジブ氏を「三権分立を無視している」と批判。
与党側も、マハティール氏自身が汚職にまみれていたなどと反論している。(中略)
■「与党は汚職まみれ」「首相の任期制限を」
マハティール氏は26日のインタビューで首相を目指す理由や現政権への不満を語った。概要は次の通り。
――なぜ再び首相を目指すのか。
ナジブ首相の不正流用疑惑を聞き、助言しようとしたが受け入れられず、反ナジブ氏の運動をするために新党を立ち上げた。多くの人から何とかしてほしいと頼まれた。
今はナジブ首相が三権すべてをコントロールし、与党も汚職まみれだ。長らく在籍した政党だが、もう戻るつもりはない。
――首相になったら何をするのか。
首相があまりに力を持ちすぎないようにする。任期を2期に制限し、国会の権限を強めて汚職が起こりにくくする。2年間で道筋をつけて、その後は首相を辞めて顧問になるつもりだ。次の首相には、アンワル元副首相がなるべきだ。アンワル氏とは過去にいさかいもあったが、今はナジブ首相を辞めさせる必要があるとの認識で一致している。
――外交政策は。
私が首相の時代は中立政策をとった。だが、ナジブ首相は中国からお金を借り、中国(の影響力)から自由でなくなっている。我々は中立に戻るべきだ。もちろん中国とのいい関係は望んでいる。
――選挙の勝算は。
人々の支持という意味では勝てる。世論はナジブ首相の退陣を求めている。しかし、政権は選挙の区割りを変えたり、官僚を脅したりするなど様々な工作をしている。
――高齢を心配する声があるが。
私は歩き回れるし、きちんと話もできる。私にはまだ指導者としての能力がある。
(後略)【3月27日 朝日】
**********************
マハティール氏は2年限りで、次期首相はアンワル元副首相へ・・・とのことのようです。
かつてアンワル氏が“元”ではなく現役だった頃も、そのような路線が考えられていました。
しかし、両者は対立し、アンワル氏はマハティール氏によって与党を追放され、同性愛疑惑などで収監を繰り返すことにもなっています。
今回、その因縁の両者が長年の確執を水に流して、ナジブ政権(ナジブ氏もマハティール氏の弟子ですが)打倒に手を携えて・・・という訳ですが、どうでしょうか。
We'll see what happens.