孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国はピークを越えて落ち着きも イタリア北部、イラン・コム、韓国・大邱で急拡大、周辺国へ

2020-02-26 23:49:08 | 疾病・保健衛生

(韓国南東部の大邱で25日、医療関係者らと会う文在寅大統領(左から2人目)=AP)

【ピークを越した中国】 
新型コロナウイルス肺炎の震源地・中国においては、感染拡大はようやくピークを越えて下降局面に入っているようです。

“WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長はスイスのジュネーブで記者会見し、中国での感染拡大は1月23日~2月2日の期間にピークに達し、それ以後の新規感染は「着実に減少している」と表明。

さらに「このウイルスは封じ込めが可能」との見解を示し、流行の中心地とその周辺地域で前例のない封鎖や検疫措置を取ることで感染拡大の阻止に貢献したとして、中国を称賛した。”【2月25日 AFP】

****湖北省除く新規感染者5人に=中国全土の死者、2715人―新型肺炎****
中国政府は26日、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎で、同日午前0時(日本時間同1時)時点で本土の死者が前日比52人増の2715人、感染者が406人増の7万8064人になったと発表した。

湖北省を除くと新たに確認された感染者は5人にとどまり、死者はゼロだった。
 
湖北省以外の新規感染者は減少傾向が続いており、2日連続で一桁となった。31省・直轄市・自治区のうち浙江省や広東省など26地域で新たな感染者が確認されなかった。
 
一方、中国本土の重症患者は前日比で374人減少したものの、依然として8752人に上る。大半が湖北省に集中し、このうち武漢市は7355人。【2月26日 時事】 
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この状況を受けて警戒レベルを緩和する地域が増えています。

****中国、新型肺炎警戒レベル緩和=広東省など15地域****
中国メディアによると、湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎に対応するため最高の警戒度になっていた「緊急対応レベル」が26日までに、広東省など15地域で引き下げられた。

湖北省以外の地域では26日、新たに確認された感染者が5人にとどまるなど感染の勢いが弱まっている。
 
中国では感染症のまん延など公衆衛生上の緊急事態が発生すると、危険度に合わせて4段階で対応する。

新型肺炎の拡大後、全31省・直轄市・自治区が1月末までに最高の「1級」に指定したが、このうち広東省、江蘇省など7地域が「2級」、甘粛省、遼寧省など8地域が「3級」にそれぞれ緩和した。【2月26日 時事】 
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停止していた航空便の運航も再開に向けて動き出しています。

****中国、湖北省以外で航空便の運航を徐々に再開へ=規制当局****
中国民用航空局(CAAC)は25日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて運航を停止していた中国の航空便について、工場や事業の再開に伴い、徐々に運航を再開すると発表した。ただ、新型ウイルスの発生地である湖北省への便は運航停止を継続するという。

CAACは声明で、局長の24日の発言を引用し、他国の航空規制当局に対しても、中国が世界から遮断されないよう、中国行き国際線の運航を再開するよう要請する方針を示した。(後略)【2月25日 ロイター】

春節で地方に帰郷した出稼ぎ労働者が移動制限等で戻らず、経済活動再開のネックとなっていた問題についても、復調しつつあるようです。

****中国の製造業集積地、出稼ぎ労働者が徐々に戻る****
中国で多くの地域が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動制限を緩和する中、東部や南部の製造業の集積地では、地方からの出稼ぎ労働者が戻り始め、ラッシュアワーの道路の交通量が増えている。

(中略)中国の一部の地域は、新型ウイルスのリスクが後退したとして警戒レベルを引き下げ、移動制限を緩和したり、企業の生産再開を支援したりしている。

ロイターが交通運輸省のデータを基に算出したところによると、新型ウイルスの影響で延長されていた春節(旧正月)の連休が上海市などで終わった2月10日以降、およそ1億8000万人の労働者が都市部などで仕事に戻るため、郷里を離れた。

現在では1日当たり1400万人以上のペースで戻っていることを踏まえると、2月の最後の2週間には1億9200万人程度が仕事に復帰していることになり、政府が想定する1億2000万人を上回る。

ネット検索大手のバイドゥ<BIDU.O>がまとめたデータによると、南部の経済・輸出の中心地である広東省と、繊維や機械の生産が盛んな東部の浙江省では先週以降、出稼ぎ労働者の流入が大幅に加速している。(中略)

企業活動の再開は徐々に進んでいるが、サプライチェーンの混乱や需要減退、人手不足を背景に、生産水準は通常よりも大幅に低い状態だ。(後略)【2月25日 ロイター】
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【日韓からの逆輸入警戒も】
国内の状況改善とは逆に、日本・韓国などの中国以外での感染拡大が続いており、中国当局には日韓などからの「逆輸入」に警戒感を示しています。

****中国 一部の地方政府 日韓からの感染者の逆流入を警戒****
中国では、新型コロナウイルスの感染が深刻な湖北省以外では25日、3週間ぶりに死者が確認されず、感染の拡大が収まりつつあります。

こうした中、中国の一部の地方政府は、感染者が増えている韓国や日本からの訪問者に対する管理を強化するなど、逆に流入することに警戒しています。

(中略)このうち朝鮮半島に近く、韓国との直行便もある山東省威海の当局は、国籍にかかわらず日本と韓国から市内を訪れた人を14日間、ホテルに集中隔離する措置を取ると25日、発表しました。

また、朝鮮族が多い吉林省の延辺朝鮮族自治州の当局は、韓国からの団体旅行は一切受け付けないとしています。

さらに、日系企業も多い江蘇省の蘇州では、日本や韓国からの訪問者に対して、どのような経路で訪れたのかを報告させ、滞在先で14日間の経過観察を求める通知を出すなど、中国へ逆に流入することに警戒しています。(後略)【2月26日 NHK】
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武漢封鎖に乗り出したときには、すでに多くの人々が武漢から中国全土に移動しており、「手遅れ」ではないか・・・・と思ったのですが、現状からすれば武漢封鎖は感染拡大防止には奏功したようです。

感染の拡大が収まりつつある中国ですが、気になるニュースも。

****新型ウイルス 退院後14%が再び陽性に 中国 広東省****
中国南部の広東省政府は、新型コロナウイルスの感染患者で、治療を受け、退院した人の14%に再びウイルスの陽性反応が出たと発表しました。

発表によりますと、陽性反応が出ていても、すでに体に抗体ができていれば、ほかの人に感染させるリスクは低いものの、高齢者では、抗体ができるのに時間がかかるため、ほかの人に感染させるリスクがあるとしています。

そのうえで、再び陽性反応が出た人は完全に治ったとは言えないため、病院に対して、患者が退院してからも14日間は医学的に経過を観察できる場所に待機させるよう求めています。【2月26日 NHK】
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【パンデミックほぼ不可避」】
中国が湖北省以外で感染拡大に歯止めがかかってきた一方で、感染は中国以外で拡大しつつあります。

“世界保健機関(WHO)は24日、中国で新型コロナウイルスによる感染症の流行が「ピークに達した」との見解を示した。一方、同国外での感染者急増に「深い懸念」を表明し、各国に対しパンデミック(世界的な大流行)に備えるよう呼び掛けた。”【2月25日 AFP】

“新型コロナウイルスまん延、独専門家「パンデミックほぼ不可避」”【2月26日 レコードチャイナ】
“米疾病対策センター「パンデミックに近づきつつある」”【2月26日 FNN】

なかでも感染拡大の中心地となりつつあるのが、イタリア北部、イラン・コム、韓国・大邱(そして日本)です。

****イタリア周辺国にも感染拡大=死者11人、国境は封鎖せず****
イタリア市民保護局は25日、新型コロナウイルスによる死者が計11人となり、感染者は死者を含めて322人になったと明らかにした。ANSA通信が報じた。報道によると、ドイツやスイス、ルーマニアでも同日、感染が1件ずつ確認され、欧州での感染が広まりつつある。
 
ローマでは25日、フランスやスロベニアなど伊周辺国の閣僚会合が行われ、現時点ではイタリアとの国境封鎖は実施しない方針を決定した。

スペランツァ伊保健相は25日、会合後の記者会見で、国民に出国規制を設けないと明らかにした。その上で、感染防止対策は「どの国も単独では行動できず、協力しなければならない」と訴えた。
 
AFP通信によると、ドイツの患者は伊北部ミラノで感染した疑いが強いという。今月中旬に中国人旅行者1人が死亡したフランスでは25日、新たな感染者2人、スペインでも新たに1人がそれぞれ確認された。
 
仏環境省高官は地元ラジオに出演し、感染者数が多い伊北部への旅行を予定している国民に対し「可能なら延期を勧める」と述べた。

伊政府は、北部ロンバルディア州を中心に複数の自治体を封鎖して感染防止に努めたものの、25日には中部トスカーナ州や南部シチリア州でも感染が確認された。【2月26日 時事】
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オーストリアとクロアチアでもイタリアが関連した感染が確認されています。

イタリア国境は封鎖しないとのことですが、イタリア国内では感染が広がっている北部11自治体が「出入り禁止」の封鎖状態にもなっています。

****イタリアの11自治体、出入り禁じられ「封鎖状態」****
(中略)ロンバルディア州とベネト州内の計11自治体では、州政府により他自治体との出入りが禁じられ、事実上、封鎖状態となっている。観光都市のミラノやベネチアは含まれていない。

伊政府が22日の閣議決定で、感染の拡大防止に必要な対策を講じる権限を州政府に付与したことに基づく措置だ。
 
11自治体内での住民の移動は制限されていないが、州政府はレストランや商業施設の営業、イベントなどの開催を禁止する特別措置も取っており、多くの住民が外出を控えている。
 
ただ、11自治体以外でも、ミラノで午後6時以降の飲食店の営業が禁止されるなど、影響が広がっている。【2月25日 読売】
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イランでは感染拡大の事実を政府が隠蔽しているとの批判が国内で起きています。
また、汗をぬぐいながら記者会見した保健省次官が感染していた・・・との話題も。

****新型コロナ イランで感染拡大 「実態隠蔽」疑念と批判****
イランで肺炎を引き起こす新型コロナウイルスへの感染が急増している。ロイター通信によると、同国内で初めて感染が確認されたのは19日だが、25日までに16人が死亡し、中国に次いで最も多い国となった。

感染者は95人に増え、SNSでは多数の政府批判が出ているほか、周辺国の対応も本格化している。
 
イランでは24日、新型コロナウイルスの対策に関して記者会見した保健省次官が感染していたことが判明。中東のメディアは25日、次官が会見中に何度も額をハンカチでぬぐうなど、体調を崩していると思われる映像を放映した。
 
感染拡大の原因とみられているのが、首都テヘランに近い中部コムだ。イスラム教シーア派の聖地があり、巡礼や留学で多数の外国人がやってくる。コムの医療当局者はロイターに、感染者の人数に関する情報提供は保健省に禁じられていると述べた。
 
24日にはクウェートやバーレーン、イラクやアフガニスタンなどで感染者が初確認されたが、いずれもイランへの滞在歴がある人だった。シーア派の聖地があり、多数のイラン人が訪れるイラクのほか、トルコもイランとの国境を一時閉鎖。トルコやクウェートはイランとの航空便の運航を制限した。
 
テヘランに住む大学院生の男性は「多数の政府批判が連日、SNS上で展開されている」とし、1月にウクライナ旅客機を撃墜した事実を数日間隠したのと同様に、政府は感染規模の実態を明かしていないのでは−といった疑念も出ているという。
 
イランでは米制裁により経済低迷が深刻化しており、周辺国のヒトやモノの往来制限が長引けば、経済悪化がさらに進む懸念も強まる。ポンペオ米国務長官は25日、「イランは感染拡大に関する重要な事実の公表を抑えているとの情報がある」とし、強い懸念を表明した。【2月26日 産経】
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死者に比べて公表感染者数が異様に少ないことから、一昨日ブログでも触れたように、実際には更に多数の感染者が存在していることが疑われます。

イランのケースの難しさは、これも一昨日ブログでも触れたように、感染の中心となっているコムがイラン・イスラムにとって宗教指導部が集中する聖地であることでしょう。

“(コムは)何事につけ優遇されている聖地、宗教関係者が集中する宗教的中心都市、保守強硬派の牙城ですから、武漢のような当該都市に多大な犠牲を強いる封じ込め対策がとれるのか? 聖地コムで宗教施設閉鎖ができるのか? という問題も出てくるかも。”【2月24日ブログから再録】

****イラン 水たばこの提供禁止 新型ウイルスの感染拡大で***
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されているイランでは、伝統的なしこう品で社交の場には欠かせない水たばこの提供が一部で禁止されるなど感染を防ぐ取り組みが続いています。

イラン保健省は26日、これまでに新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは前日より44人増えて139人、このうち死亡した人は4人増え19人となったと明らかにしました。死者の数は、中国を除くと最も多くなっています。

こうした中、国営通信によりますと、首都テヘランの警察は、26日からレストランやカフェで、客に水たばこを提供することを禁止したということです。

水たばこは伝統的なしこう品で社交の場には欠かせませんが、吸い口やホースなどの器具が使い回しされることから今回の禁止は感染を食い止める措置とみられています。水たばこの禁止は国内の複数の州でとられたということです。

イランでは感染が確認されて以降映画館が閉鎖されたり、中には、結婚式を禁止にする都市も出てきていて、各地で人が集まることによる感染を防ぐ取り組みが続いています。(後略)【2月26日 NHK】
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素人考えでも思いつくのは、感染防止対策として禁止すべきは水タバコや結婚式ではなく、モスクでの金曜日の集団礼拝だろう・・・ということ。

しかしモスク礼拝禁止は、イスラムを基盤とする現体制にとっては“アンタッチャブル”でしょう。
コムも封鎖できず、モスクでの礼拝も続くとなると、イランの感染拡大は更に進むようにも。

一方、韓国では急ピッチで感染が拡大。、“26日1日で新たに284人確認したことを発表し、1日に増加した人数としては、これまでで最も多くなりました。これで感染者数の合計は、1261人となりました。”【2月26日 NHK】
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韓国での感染拡大の原因として挙げられているのが、大邱での新興宗教「新天地イエス教会」の集団ミサ。
それも踏まえてカトリック教会のミサが中止になっています。

****国のカトリック教会 全てのミサを中止=新型コロナ対策で****
韓国のカトリック教会が、国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、信者が参加するミサを中止したことが26日、分かった。このようなミサの中止は韓国カトリック教会の236年の歴史で初めて。

韓国天主教(カトリック)主教会議によると、16の教区のうちソウル大教区など14の教区が25日までに一定期間のミサ中止に踏み切った。残る2教区も26日にミサ中止を決定した。【2月26日 聯合ニュース】
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朴政権のMERS対応に関して、朴槿恵政権を誰よりも声高に批判したのが、野党代表であった文在寅現大統領でした。
その文在寅現大統領が今度は「新型コロナウイルス」で国民批判を受ける立場に。

****朴槿恵政権のMERS対応批判が、新型コロナで特大ブーメランに****
(中略)その彼が2016年大統領に就任し「攻守交替」、つまり、政府を批判する側から、政府の指揮を執る立場となった。そして2020年初頭に、新型コロナウイルス問題が急浮上してきた。

文大統領としてはMERS騒動の際の自身の発言や世論の動向を意識せずにはいられなかったはずだ。新型コロナに対する現政府の対応が、前政権のMERS対応と比較されることは間違いない。

首尾よくここを切り抜けなければ、かつて自分が前政権に対して投げつけた厳しい批判が、自身への特大ブーメランとなって跳ね返ってくることになりかねない。

しかも4月の総選挙を目前に控えたこの時期だ。何としても「朴槿惠政権よりはいい」という評価を受けなければならない――文大統領はプレッシャーさえ感じているのではないだろうか。【2月26日 崔 碩栄氏 JBpress】
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