(差別的・ヘイト的な言動に対し、「私はウイルスではない」という意味のフランス語のハッシュタグをつけて、被害にあった中国系住民を応援する動きも【2月1日 NHKより】)
【「他人の痛みを感じ取り、できる限りの助けを差し伸べようとする日本人の本質に目を向けるべき」(中国メディア)】
新型コロナウイルス肺炎の感染拡大で、日本政府も31日、湖北省に2週間以内に滞在歴のある外国人と、湖北省発行の中国旅券を所持する外国人は、特段の事情がない限り当分の間、入国を拒否すると表明、対応レベルを上げていますが、これまでのところは中国に対する比較的冷静な支援姿勢が中国において強く印象付けられているようです。
****新型肺炎問題で日本に対して高まる「感謝や再評価の機運」=中国****
中国の武漢市を中心に新型コロナウイルスが猛威を振るっている状況にあるが、多くの中国人は日本の企業や自治体が大量のマスクを中国に寄付したことに心から感謝の意を示している。
中国では日本側のマスク寄贈をきっかけに日本に対する感謝や再評価の機運が高まっているが、こうした機運の高まりの影響を受け、中国メディアの新浪は30日、2008年の四川大地震の時にも日本は中国に対して莫大な支援を差し伸べてくれたと論じる記事を掲載した。
記事は、日本は四川大地震の時に中国に対して12億3000万円もの金銭的な寄付をしたと紹介し、日本は寄付金が最も多い国家の1つだったと指摘。また日本赤十字社のもとに集められた寄付金の金額も非常に大きかったうえに、当時の日本のコンビニエンスストアにはほとんどの店舗に寄付箱が設置され、「都市から農村に至る」まで、すべての店舗から集められた寄付金は四川大地震の被災者の支援に役立てられたと説明した。
日本の各企業も次々に義援金を提供したが、義援金に加えて四川大地震発生後に日本政府は「すぐに」救援隊を派遣したと指摘し、日本の救援隊は被災地に最初に到着した国際救援隊でもあったと紹介した。
さらに記事は、中国と日本との間には歴史問題が存在するが、当時戦争を遂行したのは日本の軍国主義であり、すべての日本人が当時の戦争を望んだわけではないと指摘。他人の痛みを感じ取り、できる限りの助けを差し伸べようとする日本人の本質に目を向けるべきだと論じた。
この記事に対し、中国ネットユーザーは、今回の新型肺炎も含めて中国が被災した時に「日本はこれまでに何度も金銭・物資面で援助してくれたことを個人的に心から感謝している」とのコメントを投稿していた。【2月1日 Searchina】
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****日本はマスク寄付、台湾はマスク確保、中国メディアが「モラル」比較****
中国メディアの環球網は29日、中国版ツイッター・微博(ウェイボー)のアカウントで、新型コロナウイルスへの感染が拡大する中での日本と台湾の対応を比較する文章を投稿した。
文章は同メディアの副編集長によるもので、「比較しなければモラルは見えない。日本人はマスクを寄付し『武漢頑張れ』と書いた。台湾当局は輸出を制限しマスクを確保しようとした。比較しなければモラルは見えない」とつづられている。台湾財政部は23日に、1月24日から2月23日までの1カ月間、マスクの輸出規制を実施すると発表していた。
この投稿には1000件に迫るコメントと、1万を超える“いいね”が付いている。コメント欄には、「今回の件で台湾当局への認識が変わった」「心が寒々するとしか言えない」「台湾人だけど政府のやり方は軽蔑する」などの台湾当局への批判のほか、「日本には感動した。支援をありがとう」といった声が並んだ。(後略)【1月30日 エwコードチャイナ】
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上記のような「日本評価」の記事は最近多々ありますが、とりあえず2件。
なお、台湾云々に関しては、中台間の政治状況を反映して、下記のような話もありますので“どっちもどっち”的なところがあります。
****武漢の台湾人、救出できず 中台関係の冷え込み影響****
中台関係の緊張が台湾側に影を落としている。武漢に取り残された台湾人の救出について交渉は進まぬまま。中台問題のあおりで台湾は世界保健機関(WHO)の会合からも排除されているため、世界的な防疫に抜け穴ができる懸念も指摘されている。
武漢には現在も約400人の台湾人がとどまっているとみられ、台湾の対中窓口機関である海峡交流基金会(海基会)には「持病の薬を使い切ってしまった」など、救出依頼の電話がかかっているという。
蔡英文(ツァイインウェン)政権下で中台関係は冷え込み、中国側は当局間の公式の連絡を絶っている。台湾側は海基会や現地の台湾系企業の団体を通じて、台湾人の安否確認や、チャーター便による移送などを働きかけている。
だが、中国政府の対台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室の報道官は、「湖北省では台湾人の感染は確認されていない。台湾人には特別の関心を寄せ、現地で問題解決にあたっている」などと述べるにとどめ、連携は進んでいない。
「一つの中国」原則を主張する中国の圧力により、台湾は以前は認められたWHO総会や関連会合へのオブザーバー参加ができなくなった。そのため、台湾側は「防疫の抜け穴を作ってしまう」と訴えている。【2月1日 朝日】
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【世界に広がる「反中感情」】
一方、韓国では“ヒステリック”ともとれるような激しい反応が起きているようです。
****韓国で54万人以上が署名 中国人の入国禁止求め 新型肺炎を懸念****
新型肺炎の感染拡大を防ぐため、中国人の韓国への入国を全面的に禁止するよう韓国政府に求める申し立てに、28日までに54万人以上の署名が集まった。
韓国では、大統領府のホームページに国民がオンラインで希望を申し立てることができるサービスがあり、1件の請願に対して20万人以上の署名集まると、政府は何らかの回答を正式に示すことになっている。(後略)【1月28日 ロイター】
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*****韓国次官の服がビリビリに!?武漢帰国者の受け入れ、韓国では大もめ****
2020年1月30日、韓国・東亜日報などによると、韓国の忠清南道で29日、新型コロナウイルス感染が拡大している中国・武漢から帰国する韓国人の受け入れをめぐり、市民と政府関係者との間で激しいもみ合いが起きた。
記事によると、韓国・保健福祉部の金剛立(キム・ガンリプ)次官は同日午後、武漢滞在の韓国人の受け入れに関する政府の方針を説明するため忠清北道の病院を訪れた。金次官は、病院前で「受け入れ反対」を主張し座り込みをしている住民らの元へ行き、「みなさんの懸念が取り越し苦労になるよう最善を尽くす。安心できる最善の措置を講じるために最善を尽くす」と説得した。しかし住民らは「政府はただちに撤回せよ」と書かれたプラカードを掲げて強く抗議したという。
さらに住民らは、その場を離れようとする金次官を阻止するため、髪の毛をつかむ、服を強く引っ張り引き裂くなどした。ペットボトルや紙コップ、汚物を投げつける住民もいて現場は大混乱となった。警察数十人が駆けつけるまで騒動は収まらなかったという。(後略)【1月30日 レコードチャイナ】
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こうした状況で、単に新型肺炎予防という以上の「反中感情」とも言うべきものが世界各地で噴出しています。
*****新型コロナウイルスで「反中感情」世界に広がる 入店拒否やネット誹謗も*****
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大とともに、世界中に反中国感情が広がりつつある。中国人観光客が入店を断られるケースや、ネット上で変わった動物の肉を食べる習慣をあざける投稿なども見られる。
これまでに中国から十数カ国に感染が拡大しているが、その多くは中国との関係が微妙になっている東南アジア諸国だ。これらの国では、中国による巨額のインフラ投資や南シナ海の領有権を巡る問題などで、同国に対する懸念が生じていた。
カナダのトロントでは、中国系カナダ人への差別をやめるよう当局が警告せざるを得なくなった。欧州でも中国系市民が街頭で偏見にさらされたり、新聞が敵意ある見出しを掲載するなどの事態が起きた。
シンガポール経営大学で人類学を教えるCharlotte Setijadi氏は「東洋通を気取る人によるさまざまな思い込みと、政治不信、医学的な不安がかなり強力な(反中感情を生む)組み合わせになっている」と指摘する。
中国当局が新型コロナウイルスは武漢市の野生動物を違法に取引する市場から感染したと発表したことから、ソーシャルメディアでは、こうした動物の肉を美味として求めたり、漢方薬の原材料として珍重したりする中国の風習が嘲笑されている。
中国人が最も観光で訪れるタイではツイッターで、あるユーザーが「コウモリを食べるのはやめろ」と書き込んだ。別のユーザーは、男性が生肉を食べている動画をアップして「中国人が新しい病気をつくり出しても驚かない」とつぶやいた。
ベトナムのダナンでは「あなた方の国が病気を広めたので、われわれは中国からの客へのサービスを提供しない」と英語で張り紙したホテルまで出現し、その後当局から張り紙を撤去するよう命じられたと、ホテルの支配人がフェイスブックで明らかにした。
ベトナムは中国に支配された歴史がある上に、今も南シナ海で紛争を抱えており、特に中国との関係が緊迫している。
ただベトナムに限った話ではない。東南アジアの政府当局者や学者などを対象に実施した調査が今月公表され、実に全体の6割が、中国への不信感を示した。
多くの国では、武漢市のある湖北省からの旅行者にビザ発給を制限している。それでも飽き足らない韓国やマレーシアの一部の人々は、中国人の入国を全面的に禁止してほしいと当局に要請するネット署名運動に参加した。
フィリピン南部のサマール島は30日、中国だけでなく新型肺炎の感染者が出た全ての国からの観光客の訪問を禁じる異例の措置を打ち出した。
フランスのパリも中国人に人気の旅行先の一つで、中国人在住者も多い。同国では、アジア系の人々が公共交通機関内でのひどい扱いの実情を知ってもらおうと、ツイッターに「私はウイルスではありません」というハッシュタグで投稿を行っている。
フランス生まれの中国・カンボジア系で、クリエイティブ系の仕事をする41歳の女性は、パリの地下鉄で隣に座った男性が席を立ち、スカーフで口を覆ったのを見た時は「本当にショックだった。(不浄という)烙印を押されていると感じた」と打ち明けた。【1月31日 Newsweek】
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日本でも、「中国人お断り」的な反応は見られます。
****「ウイルスが通るぞ」中傷…アジア人種差別に広まった欧州(1)****
(中略)確定患者7人が確認された日本では、神奈川県箱根温泉のある菓子店で「中国人立入禁止」と書かれた紙が張り出されて論争を呼んだ。箱根温泉は多くの中国人が訪れる日本の代表的な温泉地だ。
日本メディアによると、この店の主人は今月17日から中国語で「中国人は入店禁止。ウイルスをばらまかれるのは嫌だ」という内容を店先に張り出した。この張り紙の内容がSNSに出回って非難を受けた店主は「物議をかもすような言葉は控える」としつつも中国人入店禁止の姿勢は変えないと明らかにした。(後略)【1月30日 中央日報日本語版】
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【欧州ではアジア人差別的な言動も】
欧州にあっては、中国人と他の東洋人の区別がつかないということもあってか、アジア系全体に対する露骨な嫌悪感が広まっているとも。
****新型肺炎でアジア系差別 「#私はウイルスじゃない」拡散―仏****
欧州初の新型コロナウイルス感染が確認されたフランスで、アジア系住民に対する人種差別が問題となっている。
「握手を拒否された」などと嘆く声が聞かれる一方、「差別ではなく予防だ」と正当化する声も。ツイッターでは「#私はウイルスじゃない」と人種差別を糾弾するハッシュタグ(検索用の目印)が拡散している。
パリ中心部の公園を散歩中に人種差別行為に遭遇したというジャーナリストのマキシム・シャオさんはツイッターで、周りの人が「近づかない方がいい、ウイルスに感染しているかも」と話しているのを聞いたと投稿。「露骨に避けられるのはアジア人だからだ」と指摘した。
ベトナムから南仏に留学中の女子高生フェン・トランさんは仏紙パリジャンに対し、バスの中で複数の女子にからかわれたと打ち明けた。「(肺炎による)死者が増えて、私も感染していずれ死ぬような言い方をされた」と嘆いた。
一方で、パリジャンによれば、ツイッターでは「武漢の中国人かソウルの韓国人かなんて分からないからアジア人の隣には座らない。差別ではなく予防だ」などとする投稿も散見される。
ある救急医は同紙に対し、「『アジア系の団体観光客と擦れ違ったが大丈夫か』と電話相談があったが、感染リスクはかなり低い」と強調し、過剰反応を控えるよう呼び掛けた。【1月30日 時事】
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****「まるでアジア系全員が保菌者扱い」新型肺炎で人種差別相次ぐ、欧州****
中国で新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以来、フランスの中国系社会では、街中やソーシャルメディア上で人種差別(レイシズム)的な言葉を浴びせられたと訴える声が相次いでいる。イタリアの中国系社会の著名人らも、同胞に向けられた「潜在的人種差別」について警告している。
新型ウイルスの感染者が複数確認された仏パリでは、今週末にアジア人街で予定されていた春節(旧正月)のパレードが延期された。30日の主催者発表によると「衛生上の理由」から2〜3か月延期されるという。
しかし、パレードを主催する在仏中国人協会のサシャ・リンロン氏によると、延期は衛生上の理由からだけではなく「侮辱によってぶち壊しにされないため」でもあったという。
「外国人嫌悪が入り混じった集団ヒステリーがあり、フランスのアジア系住民に対する人種差別発言に歯止めがきかなくなっている。まるでアジア系住民全員が保菌者のような言われ方で、近寄るなと言わんばかりだ」(リンロン氏)
現地紙クーリエ・ピカールは26日、日曜版の一面の見出しに「黄色人種警報」と付け、謝罪に追い込まれた。
ソーシャルメディア上でもたくさんの証言が、リンロン氏の言葉を裏付けている。「エロディー」とだけ名乗る女性はAFPに対し、25日の街角で見た光景を語った。「買い物をしていたら何メートルか先で、高齢カップルがアジア系レジ係の接客を拒否し、母国に帰れと言い放った。レジ係の女性はショックで泣きだした」
アジア系の人々に対するこうした言動を非難するため、フランス国内のツイッター上にはハッシュタグ「#JeNeSuisPasUnVirus(私はウイルスじゃない)」が登場し、トレンド入りした。
在仏中国人の若者たちの団体、法国中国青年協会のラエティティア・チ氏は「中国人でなくともアジア人というだけで、非礼な扱いまたは人種差別的な行為を受けたという証言がたくさん舞い込んでいる。彼らは中国人と一緒くたに扱われ、しかもそのままウイルスと同一視されている」と訴えた。
新型ウイルスの感染拡大以降、イタリアでも中国人に対するいじめや嫌がらせ、差別が相次いで報じられている。
日刊紙スタンパによると、ミラノの中国系住民約3万人を代弁することが多いイタリア商業連盟の会員フランチェスコ・ウー氏は「極めて不愉快でばかばかしく、腹立たしいことだ」と憤っている。
イタリアでは、ベネチアで中国人旅行者らがつばを吐きかけられたり、トリノに住むある一家がウイルス感染者だと責め立てられたり、ミラノで母親らがイタリア人の子どもを中国系の同級生らに近づけないようソーシャルメディアで呼び掛けたり、といった人種差別が報じられている。
ウー氏は、「全く不当だし、子どもが巻き込まれているだけにいっそうひどい。無知と潜在的人種差別とが入り交じっている」と非難した。 【1月31日 AFP】
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イタリアの名門音楽院が東洋人の学生に対し授業への出席を禁止する措置をとり、差別だとの批判があがっているとも。
渡航歴に関係なく中国人、韓国人、日本人など、東洋人全員を対象にした措置で、2月5日に学内の医師の診察を受け、問題がなければ再登校できるとのことで、「全ての学生の健康を守るための判断だ」(院長)とも。【2月1日 日テレNEWS24より】
一連の反応には、予防措置としての対応のほか、また、中国人と他の東洋人の区別がつかないという事情の他、何か心の奥底に潜んでいた感情が今回の事態で表に出てきた・・・という印象も。
【同じ中国人同士でも 根が深いヘイト感情】
なお、こうしたヒステリックな反応は別に人種間だけではなく、中国国内において、同じ中国人同士でも見られますので、人種的問題より更に根は深いのかも。
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一方、「ヘイト」は中国内でも広がっている。中国メディアによると、いくつかの地方政府がウイルス発源地である武漢から来た人々を「懸賞金」までかけて探し出そうと躍起になっている。
河北省の省都である石家荘市井ケイ鉱区は今月14日以降、武漢から帰ってきた人のうち「未登録者」を申告した人に2000人民元(約3万1400円)を支給しているほか、正定県も申告者に1000元を支給している。
湖北省近接地域では湖北省に通じるトンネルを土で埋めて遮断した。武漢人が住んでいる家の入口にこれを知らせる立て札やプラカードなどを掲げて往来を禁止する場合もあった。【1月30日 中央日報日本語版】
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今後の対策について言えば、同じような防御対応をとるにしても「心苦しいが、こういう状況なので・・・」というのと、「ウイルス野郎、来るんじゃねえ!」というのでは、基本的な部分で異なる・・・・という話です。
前者であれば、可能な限りの支援対応も併用可能でしょう。