孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ドイツ  高評価のコロナ対策の陰で外国人労働者が集団感染 日本におけるコロナ禍の外国人労働者

2020-07-27 23:13:50 | 難民・移民

(九番団地内で食料などを受け取るアンディさん(右)(名古屋市港区)【6月5日 日経】)

 

【ドイツ 劣悪環境の外国人労働者にクラスター発生】

充実した医療態勢を背景に周辺国より死者を大幅に抑え、感染対策が評価されているドイツですが、「外国人労働者」という影の部分はあるようです。

 

****ドイツ農場で174人にコロナ陽性反応 地元住民に無料検査実施へ****

ドイツ当局は26日、バイエルン州にある大規模農場で174人に新型コロナウイルスの陽性反応が確認され、労働者ら480人が隔離中であると明らかにした。不安を抱く地元住民に無料検査を実施するという。

 

同州ディンゴルフィング・ランダウ郡当局は記者会見で、24日からこれまでに出稼ぎ労働者ら計174人が検査で陽性反応を示したと述べた。

 

出稼ぎ労働者の多くはハンガリーやルーマニア、ブルガリア、ウクライナの出身で、農場で密接してキュウリの収穫を行っていたという。

 

当局によると、集団感染は「一集団の人々」に限られているとみられ、より広範囲での感染拡大はまだ起きていない。労働者や経営者ら480人全員が農場内で隔離されており、検査で陰性だった人は感染者とは別の建物に滞在しているという。

 

バイエルン州保健当局によると、農場があるマンミングの住民は希望すれば無料で検査を受けることができるという。休暇に出掛ける予定のある人には、検査が非常に重要になってくると強く呼び掛けている。 【7月27日 AFP】*********************

 

外国人労働者におけるクラスター発生はこれまでも報じられています。

その背景には劣悪な生活環境が指摘されています。

 

****コロナ「優等生」ドイツの陰、1500人集団感染 出稼ぎ外国人、劣悪な生活浮き彫りに****

ドイツの大手食肉処理工場で6月、従業員ら1500人以上の新型コロナウイルス感染が判明した。安価な労働力として雇用される東欧からの出稼ぎ外国人が多く、国内最大規模の集団感染となった。

 

充実した医療態勢を背景に周辺国より死者を大幅に抑え、感染対策が称賛されたドイツ。だが、現地ではコロナ流行下でも多数の外国人労働者が狭い宿舎に詰め込まれ、劣悪な生活を送ってきた。

 

集団感染でその実態が浮き彫りになり、支援団体は大企業の「搾取の象徴」と改善を訴えている。

 

 ▽金属柵に囲まれて

ドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州の人口約2万5千人のフェアル市。現地を訪れた6月末、麦畑に面する古い4階建ての住宅4棟が隔離用の金属柵で取り囲まれていた。(中略)

 

柵は高さ約2メートルで、隔離から抜け出そうとした人が相次ぎ、地元当局が設けた。外には警備員が24時間態勢で見張りに立ち、内側ではこの住宅を宿舎として使う外国人のグループが所在なくたたずむ。多くは欧州連合(EU)域内で経済水準の低いルーマニアやブルガリアの出身者だ。

 

「稼ぐためにドイツに来た。同僚はルーマニア人ばかり。1日10時間、働く。ドイツ人のやらないきつい仕事だ」。柵の中からルーマニア人男性が話す。住宅の入居者は頻繁に入れ替わり、別のルーマニア人男性は「10人近くが暮らす部屋もある」と打ち明けた。

 

現場を見回るミヒャエル・エスケン市長(54)は「(800人のうち)70人が陽性だった。当初は誰がどの部屋に住んでいるか分からなかった」。柵越しに宅配業者が食品を届け、市民有志が生活必需品を差し入れる。

 

 ▽がんじがらめ

工場を調査した専門家はろ過設備のない空気の循環システムが集団感染の要因と指摘するとともに、宿舎の居住条件にも問題があったとの見方を示した。

 

同時に食肉会社が仲介業者と契約し、業者が人材募集から給与支給、宿舎の用意などを一手に引き受ける仕組みにも、搾取の構造だとして国内の注目が集まった。

 

地域で長年、外国人労働者を支援する慈善団体のフォルカー・ブリュッゲンユルゲンさん(56)は6月末、食肉業界で働く外国人の宿舎を訪れた。15平方メートルの部屋にブルガリア人男性3人が暮らし、粗末なベッドがあるだけだった。

 

仲介業者が3人から天引きする家賃は月に計960ユーロ(約11万7千円)。法外な額で、他の部屋に暮らす労働者と合わせて11人が小さな台所を共有していた。

 

仲介業者も多くの場合、ルーマニアやブルガリアなど労働者と同じ国の人間で、食肉の解体など重労働に就く人々に最低レベルの賃金しか支払わない上、通常の2〜3倍に上乗せした家賃を通じてさらに収奪する仕組みという。

 

 ▽人々の欲

「労働者の多くは十分な教育を受けていない貧しい人々だ。自国で職に就けずにこの国へ来たが、ドイツ語も不十分で最低賃金しか得られず、2級労働者の扱いを受けている」とブリュッゲンユルゲンさん。

 

ドイツがコロナ危機を乗り越えたことを誇りに思うが、でもだからこそ今回の集団感染にやるせない気持ちでいる。

 

国内では5月以降、複数の食肉処理工場で集団感染が発生し、労働者を取り巻く環境に問題があることは分かっていた。だが、地元の食肉処理工場ではその後も安全軽視がまかり通り、その結果、多数が感染したからだ。 

 

地元のタクシー運転手フランク・ルドルフさん(55)は「あの会社は外国人労働者に依存している。彼らが良い扱いを受けていないことを地元の誰もが知っていたが、大企業に対して何も言えなかった」と語った。

 

7月に入り、労働者が金属柵で隔離された地域では規制が解除され、工場も段階的に操業を再開した。

 

ハイル労働相は集団感染を受け、食肉業界で仲介業者が絡む契約を禁じる法を整備すると述べた。ただ、外国人労働者の存在と店頭の食肉価格の関係は密接だ。「安い肉を求める私たちの欲がこの仕組みを後押ししている」。ブリュッゲンユルゲンさんがうなずくように話した。【7月23日 47NEWS】

**********************

 

外国人労働者の安い労働力に依存しながら、劣悪な生活・職場環境に放置してきたことではシンガポールも同じで、そのシンガポールは外国人労働者からの感染拡大というしっぺ返しを受け、その環境整備見直しを迫られています。

 

【日本 コロナ禍の「雇用調整弁」としての外国人労働者】

「コロナ禍」という緊急事態において、そのしわ寄せは弱者に集中しますが、その弱者の最たるものが外国人労働者です。そうした事情は大なり小なり、ドイツでもシンガポールでも、そして日本でも同じです。

 

****コロナで失業外国人、職探し難しく困窮 支援の動きも****

新型コロナウイルスによる雇用情勢の悪化が、非正規で働く外国人を直撃している。

 

製造業を筆頭に働き先が豊富な中部地方は外国人労働者が多く集まるが、仕事を失うケースが相次ぎ、日本語に不慣れなことから再就職や公的給付の手続きでも苦労しがちだ。民間団体や自治体がさまざまな形で生活や再就職の支援を進めている。

 

「先が見えない。どうすればいいのか……」。インドネシア出身で名古屋市港区に住むアンディ・アブドゥル・ハリック・シュクルさん(31)は勤め先の自動車部品関連工場が4月から休業になり、月8万円ほどあった収入が途絶えた。上司からは「操業が再開すれば声をかける」と告げられたが、いまだに連絡がない。

 

アンディさんは2019年9月、日本で通訳の仕事をする妻とともに来日した。住民の約3割を外国人が占める「九番団地」(港区)に暮らし、8月に妻の出産を控える。

 

日本語の勉強を続けているが複雑な会話はまだ難しく、探せる仕事が少ない。「子どもの服やおむつなども買えていない。妻も今月から産休だ。早く復職して妻を支えたい」と焦りがにじむ。

 

この団地に住む外国人の支援を続ける民間団体「まなびや@KYUBAN」が4月末にアンケート調査をしたところ、9割を超える外国人住民が「新型コロナの影響で仕事が減った」と答えた。同月初旬の調査(約6割)から大幅に増えており、外国人労働者の雇用状況の悪化がうかがえる。

 

代表の川口祐有子さん(44)は「外国人は非正規雇用が多く、景気悪化の影響を受けやすい。団地内には日本語が不自由な人も多い。雇用環境はこれからさらに悪化していくだろう」とみる。

 

失業した外国人の生活を助けるため、川口さんらは4月以降、定期的に団地内の公園で卵や缶詰などを配布している。当初は5月で終える予定だったが、企業や個人などから食料や資金の寄付があり、当面は続ける。(中略)

 

言葉の壁も大きく、公的支援を受けるのも容易ではない。同県豊田市の保見団地で5月末に相談会を開いたNPO法人「トルシーダ」によると、団地に住む外国人からは「記入方法が分からず(1人10万円の)特別定額給付金を申し込めない」などの声が上がる。

 

相談会にはポルトガル語やスペイン語の通訳が立ち会い、申請書の記入などを手伝った。同法人の担当者は「家賃も払えないほど生活に困窮する人が出てきている。

 

コロナの世界的な流行による渡航制限で、(08年の)リーマン・ショックのときのように母国に戻ることもできない。食料や就業などさまざまな支援が必要だ」と話している。(後略)【6月5日 日経】
***********************

 

****日系人、「雇用の調整弁」今も ブラジルから定住化、30年 コロナ禍、職も住も同時に失う****

新型コロナウイルスの影響で失職し、住まいまで失う日系ブラジル人らが増えている。経済危機のたびに繰り返される苦境は、日本が定住者として日系人を迎え入れて30年たってもなお、多くが「雇用の調整弁」として不安定な立場に置かれている現実を映し出している。

 

「助かった」。先月まで神奈川県で働いていた日系ブラジル人の男性(41)は最近、身を寄せた知人の事務所で約1カ月ぶりに布団で寝た。新型コロナ禍で仕事と家を失い、車やカフェで寝泊まりしてきたからだ。

 

2018年に来日して電気関連の資格を取り、建設現場で仕事を請け負ってきた。しかし、コロナで現場がなくなり、3月に30万円あった収入は月10万円ほどに。たまらず家賃6万5千円のアパートを出たため、政府の10万円の給付金の申請書も受け取れていない。

 

静岡県牧之原市で自動車部品工場に勤めていた40代の日系ブラジル人夫婦は5月に派遣切りにあい、寮を退去させられた。小学生の長女は、休校中だったため級友にお別れもできないまま、家族で親戚のいる千葉県に移り住んだ。いま夫婦はアルバイトで働く。

 

日系人が困窮しやすい背景には、多くが派遣社員など非正規雇用に就いている実情がある。複数の派遣会社幹部は「先にクビをきられるのは外国人」と口をそろえる。

 

派遣会社などが用意したアパートで暮らす日系人も多く、職と同時に住まいも失いやすい。人口の約2割が日系人ら外国人の群馬県大泉町では、職と住まいを失った人が1カ月だけ無料で泊まれて食事もとれる一時保護所づくりを有志が進めている。

 

日系人の事情に詳しい武蔵大のアンジェロ・イシ教授によると、ブラジルで出される日本の求人は派遣会社のものが多く、渡航後も派遣会社の生活支援を受けて働く人が多い。日本で触れるポルトガル語メディアなどの求人広告は「ほぼ100%非正規」で、日本語が十分にできないことが多いため、自力で正規の仕事に就くことも難しいという。(中略)

 

NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は「政府は日系人を使い捨ての労働力とみており、長期的視点の政策がなかった。日本社会を担う人々として自ら労働市場にアクセスできるよう、もっと職業訓練日本語教育が必要だ」と指摘する。【6月30日 朝日】

********************

 

シンガポールの場合ははっきりしていると言うか、ドライと言うか・・・・

“シンガポールのリー・シェンロン首相は、外国人労働者は雇用調整弁であると言及し、好景気期は需要が大きく、不況期には外国人労働者を減少させ、国内雇用を優先できると緩衝的な役割を果たしているとの見解を示しています。”【2018年11月22日 外国人総研HP】

 

ただ、そうした外国人労働者を雇用調整弁とみなす考え方は、社会の格差、二重構造を容認することにもなります。

現実的には、外国人労働者の子供たちの教育の問題、日本語しか話せない母国を見たこともない彼らをどう扱うのかといった問題などを惹起し、社会の不安定化要因ともなります。

 

****教育不足「非正規の再生産」****

日本は1990年、出入国管理法の改正で、かつて開拓移民などとして南米などに渡った人の子や孫は、「定住者」などの在留資格で来日して就労制限なく働けるようにした。文字通り定住する人も増えたが、実際は経済情勢によって生活が翻弄(ほんろう)され続けてきた。

 

08年のリーマン・ショック時は派遣切りが相次ぎ、政府は日系人に帰国費を一部支給する代わりに再入国を制限。今回のコロナ禍でも、政府は日系人ら定住者の入国を、外国人一般と同様に制限した。

 

イシ教授は「日系人は30年も頑張ってきたが、(日本人などと差をつけられて)そういう存在か、と感じた」と話す。

 

「非正規の再生産」(イシ教授)も課題だ。群馬県伊勢崎市の日系ブラジル人3世の女性(19)は日本で生まれ育ったが、日本の公立校でいじめにあい、主にブラジル人学校に通った。日本の高校には進まず工場でアルバイトを始めたが、コロナで職を失った。

 

ブラジル人学校は、現状では日本語が十分学べず、進学や正規雇用の機会が限られる課題も指摘されている。浜松市ブラジル人学校「イーエーエス浜松」は大半の保護者が派遣社員で、コロナで少なくとも5家族ほどが派遣切りに遭い、数人の子どもが学校をやめたという。

 

政府は昨年、特定技能の在留資格をつくり、本格的に外国人受け入れ拡大にかじを切った。日系人の受け入れはその試金石ともいえるが、30年たっても不安定な立場に置かれたままだ。

 

NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は「政府は日系人を使い捨ての労働力とみており、長期的視点の政策がなかった。日本社会を担う人々として自ら労働市場にアクセスできるよう、もっと職業訓練日本語教育が必要だ」と指摘する。【同上】

********************

 

そうした第二世代を考え、家族の同行を認めないということになると、人権的な問題ともなります。

 

最終的には「人間として」そういう状況をどう考えるのかという問題でしょう。

いろんな問題を考慮すれば、日本国籍の者と同様に扱うというのが、ある意味一番安全・簡単な方法でしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする