孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ大統領選挙  コロナで増える「郵便投票」を逆手にとって、トランプ居座りの最悪シナリオも

2020-07-26 23:25:25 | アメリカ

(オハイオ州クリーブランドで選管事務所前の投票箱に投票用紙を入れる有権者(4月28日)【5月25日 WSJ】)

 

【世論調査では劣勢なトランプ大統領だが・・・】

アメリカの・・・と言うより、世界の政治・社会・経済を大きく左右するアメリカ大統領選挙がいよいよ迫ってきました。

 

先ほど観たTVニュースでも、アメリカの経済制裁に加え、新型コロナ、さらには最近の不審な火災などに苦しむイランの苦境を取り上げていましたが、露骨なイラン敵視政策をとるトランプ大統領がいる限り好転はおそらくのぞめません。日々の生活に苦しむイラン国民はかたずをのんでアメリカ大統領選挙の行方を注視しているでしょう。

 

アメリカとの対立を深める中国指導部も同様でしょう。

逆にイスラエル・ネタニヤフ首相は再選を期待していることでしょう。

独仏など欧州首脳はトランプ氏に早く退陣して欲しいというのが本音でしょう。

 

****米大統領選まであと100日 激動の国内、窮地に立つトランプ氏****

2020年米大統領選挙は26日、11月3日の投票日まであと100日となった。

 

ドナルド・トランプ大統領は世論調査での支持率が落ち込み、目玉イベントである共和党大会中止を強いられた上、対立候補に打撃を与えられずにおり、再選の雲行きは怪しい。

 

トランプ氏は23日夜、南部フロリダ州で来月予定していた共和党全国大会を、新型コロナウイルス感染拡大への懸念から中止すると発表した。

 

だが米国の新型ウイルス流行は、トランプ氏から派手なパフォーマンスの場を奪ったのみならず、経済への深刻な打撃と、14万人を超えて増え続ける死者、政府に対する国民の信頼喪失ももたらしている。

 

これに、人種差別や警察の暴力に抗議し爆発的に広がったデモ、極左グループ主導の暴動、右翼の陰謀論活発化、ロシアによる選挙干渉の恐れも重なり、米国は今や、激動の1960年代以降で最も深刻な社会不安に見舞われている。

 

「勝つこと」には飽きないと豪語するトランプ氏はここにきて、大統領選で民主党候補のジョー・バイデン前副大統領に敗北する屈辱を味わう可能性に直面している。

 

トランプ氏はバイデン氏を「寝ぼけている」だとか、知能がないとこき下ろしているが、複数の世論調査ではそのバイデン氏に支持率で10ポイント以上引き離されている。

 

米国で人種差別と性差別に対する歴史的な抗議運動が巻き起こった2020年に、74歳のトランプ氏と77歳のバイデン氏が対戦することは時宜にかなっていないようにも思える。

 

トランプ氏は極端に恵まれた環境に生まれた大富豪であり、対するバイデン氏は上院議員を約30年、バラク・オバマ前政権で副大統領を2期務めた典型的な職業政治家だ。

 

だがトランプ氏とバイデン氏の戦いはそれでも、混乱と怒りを抱えた米有権者が耐えうる限りの動乱をもたらすだろう。

 

■支持率低迷も望みは消えず

トランプ氏は、新型ウイルスの流行に伴う経済活動の停止による雇用の大量喪失、人種問題をめぐる情勢不安、政府に対する信用低下への対応を迫られている。

 

目下最大の問題である新型ウイルス流行については、米国人の3人に2人がトランプ氏の指導力を信頼していないことが世論調査で示されている。

 

おまけに、トランプ氏は弾劾訴追された後に再選を目指す初の米国大統領でもあり、支持率は一貫して40%前半にとどまっている。

 

しかし、再選の望みが絶たれたと考える人はいない。

 

笑いものにされていた2016年の大統領選では、共和党の主流派候補らをやすやすと抑え、同党の候補指名を獲得。本選では当初、遅れを取ったものの、民主党の経験豊富なヒラリー・クリントン候補を打ち負かした。

 

トランプ氏は今回の選挙戦についても自信を見せる。先週末、米FOXニュースに出演した際「私は負けない。世論調査はフェイク(偽)だからだ」と発言。「世論調査は2016年もフェイクだったし、今はもっとフェイクだ」と述べた。

 

■2つの「見えない敵」

トランプ氏が「見えない敵」と呼ぶ新型コロナウイルスは、高層ビルなどの大きく形あるものの扱いに慣れている不動産王の同氏にとって、やっかいな問題だ。

 

しかしトランプ氏は、対立候補のバイデン氏の扱いにも同じように苦戦している。

 

バイデン氏は東部デラウェア州の自宅を離れることのないユニークな選挙戦を展開。選挙集会は開かず、インタビューもほとんど受けず、記者会見の開催はさらに少ない。

 

当初は新型ウイルス対策でのソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)措置として始まったこの手法は、失言で有名なバイデン氏に図らずも有利に働き、今では「地下壕(ごう)戦法」とやゆされるまでになった。

 

バイデン氏はこの戦法により、リスクを冒すことなく、「#HidenBiden(隠れるバイデン)」のハッシュタグを使った嘲笑の声を無視しながら、トランプ氏が墓穴を掘る様子を傍観していられる。

 

■恐怖をあおり再選狙う

新型ウイルスの懸念により、トランプ氏の政治的アイデンティティーの要である大規模な選挙集会が立ち消えになると同時に、同氏のトレードマークである虚勢や他人への中傷も、死者の増加や経済危機に直面する国民には以前のように受けなくなっている。

 

追い詰められたトランプ氏は恐怖をあおる策に出ており、暴力犯罪が多発する混沌とした未来像を描き、ツイッターへの投稿でバイデン氏が「米国人の生き方を破壊」しようとしていると主張した。

 

11月の選挙では、新型ウイルスの感染予防策や郵送投票により投票が複雑化し、集計が遅れる見通しだ。先週、FOXニュースに出演したトランプ氏は「選挙を不正操作する」試みが続いていると改めて主張。

 

さらには、歴代大統領全員がしてきたように選挙結果を受け入れるかとの問いに対し「結果を見る必要がある」と答えた。 【7月26日 AFP】AFPBB News

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個人的には、個々の政策云々以前の問題で、ウソを平気で並べ立てるような人格が破綻している人物にこれ以上世界で最も影響力が大きい地位にいてほしくないと思っています。

 

上記記事にもあるように、最近の世論調査の数字は、そういう意味では期待できるものにはなっていますが、「隠れトランプ支持者」も多いとされますので、どうなるのか不安も。

 

****米世論調査、バイデン氏が2桁リード 新型コロナも争点に****

11月に行われる米大統領選でジョー・バイデン前副大統領の支持率が52%とドナルド・トランプ大統領の40%を12ポイントリードしていることがわかった。CNNが直近に行われた登録有権者の見方を計測した全米規模の電話による世論調査5つを集計した。

 

世論調査は米国で新型コロナウイルスの感染件数が上昇しているなかで行われた。トランプ氏は状況はコントロール下にあるとしており、経済活動や学校などの完全な再開を求めている。

 

新型コロナウイルスの感染拡大はバイデン氏にとって追い風となっている。世論調査では有権者は新型コロナウイルスでバイデン氏の対応のほうを好んでいる。

 

FOXニュースの世論調査では、米国が直面している最も重要な問題について新型コロナウイルスと答えた有権者の割合は29%だった。最も重要な問題は経済と答えた人の割合は15%、人種や警察に関連した問題と答えた人の割合は10%だった。

 

新型コロナウイルスへの対応では過半数がトランプ氏よりバイデン氏を支持した。ワシントン・ポスト紙とABCニュースの世論調査によれば、バイデン氏を信頼すると答えた人の割合は54%、トランプ氏を信頼すると答えた人の割合は34%。

 

トランプ氏の新型コロナウイルスへの対応を評価する人の割合が下がっている。NBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙が先週発表した世論調査では、支持する人の割合は37%、支持しない人の割合は59%だった。6月の調査では支持する人の割合は43%、支持しない人の割合は55%だった。【7月22日 CNN】

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調査によって数字にはバラつきがありますが、バイデン氏有利はどの調査も同じです。

トランプ氏がセールスポイントとしてきた経済でも、コロナ禍の問題もあって、トランプ氏に翳りが見えます。

 

非常に不謹慎ではありますが、11月の選挙まではトランプ氏の足を引っ張るアメリカのコロナ情勢がこのまま続いてもらえないか・・・と思ったりも。もちろん良くない考えです。一日も早い改善を期待すべきです。

 

【負けても居座りのシナリオも カギになりそうな「郵便投票」】

そのコロナ絡みで大きな問題になりそうなのが「郵便投票」の問題。

一般的には、郵便投票で投票率が上がればバイデン氏に有利とされており、トランプ大統領は郵便投票拡大に反対しています。

 

もっとも、どちらに有利になるかには異論も。

 

****トランプ大統領の危険な賭け****

・・・・スタンフォード大学の研究グループがことし4月に発表した論文には、郵便投票によって投票率は上がるものの、共和党・民主党のどちらかの党にとって有利に働くことはないという研究成果がまとめられている。

 

長年、共和党の選挙戦略に携わってきた政治コンサルタントのジョン・パドナー氏は、郵便投票は、むしろ共和党に有利に働くと分析している。

 

「都市部に多い民主党の支持者よりも、遠くの投票所までわざわざ足を運ばなければならない共和党の支持者のほうが、郵便投票のメリットを受けることになる」

 

そのうえで、パドナー氏は、トランプ大統領の言動は、結果的に自身の支持者の投票の機会を減らし、自身の首を絞めることにもなりかねないと指摘している。

 

「投票日よりも前にみずからの陣営に投票をしてもらうというのは、選挙戦略の定石だ。トランプ大統領が『郵便投票は不正の温床』だと訴え続けることは、郵便投票は不正だと共和党の支持者にも投票を控えさせる効果があり、非常に危険なことだ」(後略)【7月3日 NHK】

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トランプ大統領がもし敗れた場合、その結果を認めるのか?という問題が出ています。

トランプ大統領は現時点で、選挙結果を認めるかどうかを明確にしていません。

 

****米民主主義の危機 大統領選で敗北してもトランプは辞めない****

<大統領選挙で負けたら辞めるか、という質問に「単純にイエスとは言えない」「不正が行われるかもしれない」と、このまま居座る気満々。コロナ対策の郵便投票を不正の温床と批判しているのも、辞めないための狡猾な伏線だ>

ドナルド・トランプ大統領が11月の大統領選で負けても辞めない可能性を考えて、米国民は備えをしておかなければならない――反トランプを掲げる非営利団体「スタンドアップ・アメリカ」はこう訴えている。

 

トランプは7月19日に放送されたFOXニュースのインタビューの中で、選挙に敗れたらどうするかという度重なる質問に、はっきりと答えなかった。

草の根運動を展開する同団体はこれを受け、トランプは「アメリカの民主主義を脅かす」存在だと非難している。

 

トランプは選挙結果を受け入れるかという問いに対し、単純にイエスとは言えない」と答えた。「選挙で不正が行われれば辞めない」などと最後まで言い逃れを続けた。

 

スタンドアップ・アメリカはトランプのこうした発言について、票が投じられる前から、有権者の間に投票結果に対する疑念を植えつける「狡猾な」やり方だと批判している。

 

11月の大統領選に関する各種世論調査では現在、民主党の指名獲得を確実にしているジョー・バイデンが優勢となっている。

 

トランプは(コロナ禍の影響で)急増している郵便投票について、本選の結果の正当性を損なうことになると証拠もなく繰り返し主張。「外国政府が数百万枚の郵便投票用紙を偽造して、一大スキャンダルになる!」などと根拠のない主張を行ってきた。

 

<2024年以降も居座る>

トランプは2016年の大統領選についても、自分が一般投票で(クリントンに)負けたのは「何百万もの」不正投票があったせいだと主張したが、実際に不正投票があったことを示唆する証拠は出ていない。

 

また米大統領は2期までという任期制限があるが、トランプは2期を超えて大統領の座にとどまる可能性も示唆しており、ツイッターに(2期目が終わる)2024年以降の4年毎の選挙スローガンを掲げる映像や、「トランプ2188」「トランプ9000」「トランプ4Eva(フォーエバー)」などの言葉を投稿している。

 

スタンドアップ・アメリカのショーン・エルドリッジ創業者兼社長は声明を発表し、トランプが選挙結果を受け入れるかどうか明言を拒んだことは、彼が「法の秩序をまったく尊重していない」ことを示していると批判した。

 

「トランプはこの5年間、外国政府に干渉をそそのかしたり、有権者の不正について根拠のない主張をしたり、2016年の選挙結果について嘘をついたりして、この国の選挙を台無しにしようとしてきた。アメリカ国民は、トランプが負けを認めることを拒んだ場合に備えるべきだ。我々はそれに立ち向かう備えをしておくつもりだ」(後略)【7月21日 Newsweek】

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更に困惑させるのは、「郵便投票」の問題を逆手にとって、自身に不利な結果が出そうな場合は、国家安全保障上の非常事態を宣言して大統領職に居座ることも・・・という指摘も。その具体的シナリオも想定されているようです。

 

****トランプは負けても大統領を続投する****

一般投票で負けても居座るためにトランプが「予言」している巧妙なシナリオとは

 

(中略)勝敗のカギを握る激戦州でも、トランプの形勢は不利になりつつある。

それでもトランプが大統領の座を維持する方法は、大きく分けて2つある。

 

第1の方法は投票抑圧だ。

有権者登録を難しくしたり、郵便投票(新型コロナウイルス感染症が流行中の今は特に必要とされている)の採用を阻止したり、有権者の市民権に疑いをかけたり、投票所に大行列ができるよう仕組むといった、既に実行に移されつつある戦略だ。

 

第2の方法は、もっとひどい。こちらは選挙後に起こる可能性のあるシナリオだが、私たちは今からそれを警戒し

なければならない。

 

トランプは既に、自分が一般投票に敗北し、十分な数の選挙人の確保にも失敗した場合でも、大統領の座にとどまる仕組みづくりに着手しているのだ。(中略)

 

激戦4州に捜査が入る?

具体的なシナリオはこうだ。

 

バイデンが一般投票で勝利し、選挙人を過半数確保する上でカギとなる激戦州アリゾナ、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニアでも、それなりの(しかし圧倒的ではない)得票差で勝利する。

 

するとトランプは、選挙に不正があったと声を上げる。バイデンが勝利した激戦州では、中国が郵便投票に細工をして選挙に不正介入したと言うのだ(実際、トランプは6月22日のツイードで、郵便投票には外国政府が印刷した投票用紙が大量に交ざり込むと「予言」している)。

 

これは国家安全保障上の非常事態だと、トランプは宣言する。そして司法省に、激戦4州における「不正」を捜査するよう命じる。この4州の州議会は、いずれも共和党が多数派を握っているため、「国家安全保障に関する捜査」が終了するまで、選挙人の任命を行わないと決定する。

 

民主党は裁判を起こして、4州でのバイデンの勝利を確認する判決を求める。連邦最高裁は票の再集計こそ認めないが、大統領には国家緊急権に基づき捜査を命じる権限があると認定する。その一方で、選挙入団による投票は予定どおり12月14日に行われなくてはならないと判示する。

 

だが、激戦4州では司法省の捜査が終了していないため、これらの州の選挙人は投票に参加しない。このためバイデンもトランプも、勝利に必要な「選挙入団の過半数」を獲得することができない。

 

この場合、合衆国憲法は、大統領の選出を下院に委ねることを定めている。ただし、1人1票ではなく、各州に1票が与えられる。つまり民主党の下院議員が多い州はバイデンに、共和党のド院議員が多い州はトランプに投票する

ことになる。

 

現在、共和党の下院議員が過半数を占める州は26で、民主党のほうが多い州は23。ペンシルベニアは同数だ。従っ

て、たとえペンシルベニアがバイデンに投票することにしたとしても、トランプが26票、ハイテンが24票を獲得して、トランプが大統領選の勝利を手にする。(後略)【7月28日号 Newsweek日本語版】

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なんとも滅茶苦茶な話ですが、トランプ大統領だったら・・・と思わざるを得ないところが、この人の最大の欠陥です。

 

まるでアフリカの独裁国家の選挙のようですが、アメリカにおいてそういうシナリオを心配しなければいけないことがすでに大問題です。もっともアフリカからは「失礼な。トランプと一緒にするな」と怒られるかも。

 

これまでもアメリカ大統領選挙では集計をめぐって「もう少し考えたら?」と言いたくなる様々な問題が起きています。

 

トランプ陣営による“中国が郵便投票に細工をして選挙に不正介入”云々の問題は別にしても、郵便投票の場合、署名ミス、到着期限、活動家の投票回収など、様々な問題を惹起しますので、僅差の場合、相当に混乱することも予想されます。

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