孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナ  ワクチン開発は困難? WHO主導の治療薬治験の結果は間もなく

2020-07-05 23:06:08 | 疾病・保健衛生

(【6月30日 NHK】)

【有効なワクチンはつくれるのか?】
新型コロナを“インフルエンザ同様の普通の病気”にするために待たれるのがワクチンと治療薬。

ワクチンの開発状況については、6月29日ブログ“新型コロナワクチン 進行する開発競争 記録的な早期完成は可能か? 先進国のワクチン争奪戦も”で取り上げたばかりですが、やや残念なニュースも。

****新型コロナ、ワクチンの有効性に不安材料続々 絶望の報告書 *****
自由な海外旅行から東京五輪の実現まで、頼みの綱は「ワクチン」だった。世界中の研究者が必死に開発を続けているなか、なんとも“身も蓋もないレポート”が中国の研究チームによって発表された――。
 
今なお世界中で完成が拡大している新型コロナウイルス。そんな中、新型コロナウイルス発生地の中国で発表されたのが以下の衝撃的なレポートだ。
「新型コロナの抗体は2~3か月経つと急激に減少する」
 
6月18日、英医学誌『ネイチャー・メディシン』に中国・重慶医科大学などの研究チームによる論文が掲載された。
 
研究チームは、今年4月上旬までに重慶で新型コロナに感染して症状が出た患者37人と、症状が出なかった患者37人について、抗体の量の変化などを調査した。
 
それによると、感染後しばらくして作られる「IgG抗体」が80%以上の人で検出された。しかし、退院から2か月後には、抗体が検出された人のうち、症状があった人の96.8%、無症状の人の93.3%で抗体が減少したことが判明した。減少割合は、半数の人で70%を超えたという。

本当にこの研究結果の通りに抗体が減少するなら、再感染のリスクが高いということになる。

◆最低5年、ワクチンを打ちたくありません
現在、世界中で130種類以上の新型コロナウイルスのワクチンの研究開発が進み、日本では創薬ベンチャー「アンジェス」が治験を始め、年内の実用化を目指している。しかし、中国の研究チームの発表により、雲行きが怪しくなってきた。
 
国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが説明する。
「ワクチンとは、毒性がなくなった、もしくは弱められた病原体を体内に注入することで抗体など免疫がつき、対象となる感染症の予防に効果がある医薬品のことです。
 
しかし、いうまでもなく、ワクチンは体内で抗体などが長期間維持されることを前提にしている。ワクチンを打って体内に作られた抗体も中国の論文のように2~3か月で減少してしまうなら、長期的な効果は難しいということになります」
 
もしワクチンが開発されても、短いスパンで抗体が消えるならば、インフルエンザワクチンのように毎年、もしくは毎シーズンのように接種しなくてはならないかもしれない。もしくは減少ペースが早すぎて、まったく効かない可能性もある。

「新型コロナと同じRNAウイルスであるインフルエンザはその年の流行株を予想してワクチンを接種しますが、予想が外れると罹りやすくなります。新型コロナも同じ状況になるかもしれません。仮にインフルエンザとパターンが似ていても、新型コロナの方が致死率が高いので警戒が必要です」(前出・一石さん)
 
その安全性にも疑問が残る。予防医療学が専門である新潟大学名誉教授の岡田正彦さんはこう話す。
「実際に新型コロナに有効か、副反応はあるのかなど大規模な治験を行わなければいけません。そのためには開発後の治験に数年は必要です。1年足らずで作られたワクチンは、その有効性や安全性が充分に検証できていません。

薬もそうですが、国に承認されて5~10年たった後に副作用が判明し、使用禁止になるものや、効果が充分でないと評価されるものも多い。ですから、たとえ、すぐにコロナワクチンが開発されたとしても、私は最低5年、ワクチンを打ちたくありません」

欧米諸国ではすでにワクチン調達競争の動きがあり、安倍晋三首相もワクチン開発を進める米モデルナ社などと交渉し、年末には接種できるようにすると明かしている。

「各国とも、集団免疫をあきらめ、ワクチン頼みになっていますが、中国の報告書によってワクチンは不可能である可能性が生まれました。このままでは打つ手はありません」(医療ジャーナリスト)
 
集団免疫もワクチンも難しいのであれば、新型コロナとの共生はどうなるのだろうか。

「季節性インフルエンザや風邪のように、生活の中に当たり前に存在するようになっていく可能性があります。SARSやMERSの場合は、自然収束に向かいました。しかし新型コロナは未知のウイルスなのでなかなか油断はできません」(前出・一石さん)(後略)【7月4日 NEWSポストセブン】
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新型コロナウイルスについては、まだわかっていないことが多い(わからないことばかりと言うべきか)ので、今回の中国・重慶医科大学などの研究チームによる論文をもって、ワクチンが不可能と断定するのは早計でしょう。

百歩譲って、抗体が2~3か月で減少してしまうとしても、(私の最大の関心事である)海外旅行の直前に投与すれば、旅行期間中は免疫が確保できる・・・といった短期的な使い方もできるかも。

【抗体検査陰性でもT細胞経由の免疫獲得の可能性も】
抗体の残存期間が短いとワクチン以上に難しいのが「集団免疫」

*****コロナ抗体「2~3か月で激減」衝撃データ 再感染リスクは*****
(中略)
感染が広がる中で、注目されてきたのが「集団免疫」という考え方である。
 
それは、免疫を持つ人が一定の割合に達すると感染拡大に歯止めがかかるというものだ。ただ、収束のためには、全体の60%程度の人が免疫を持つ必要があるとされ、短期間では難しいのが実情である。

「スウェーデンでは、都市封鎖や経済活動の制限を行わず、集団免疫戦略をとり続けてきました。そのため多くの感染者が出ましたが、それでも6月時点での抗体保有率はわずか6%前後にすぎません。
 
そもそも、今回の中国の研究結果を見れば抗体は数か月で消える可能性があるので、スウェーデンの取り組みは“労多くして功少なし”だったかもしれません」(前出・一石さん)
 
独自路線を歩むスウェーデンは世界中からの注目を集めてきたが、結果的には感染率、死亡率ともにアメリカと並び、世界最悪レベル。集団免疫戦略が失敗の様相を呈している理由は、「抗体の消滅」にあるのかもしれない。【6月3日 NEWSポストセブン】
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集団免疫獲得を目指して、他の欧州諸国のようにロックダウン(都市封鎖)を行わず、経済活動の制限も行ってこなかったスウェーデンは、近隣諸国より大きな犠牲者を出しながら、抗体保有率はわずか6%前後にすぎず、経済状態も悪化し(貿易依存度が高いため、相手国の経済が減速すれば、それに連動しやすい事情が大きいと思われます。)今や「失敗事例」とみなされています。

ただ、抗体検査で陰性とされた人でも、いくらかの免疫をもっている可能性があるとする研究結果もあるようです。

****新型ウイルスの免疫、予想上回る人が保持=スウェーデン研究****
新型コロナウイルスの抗体検査で陰性とされた人でも、いくらかの免疫をもっている可能性があるとする研究結果が出た。

スウェーデンのカロリンスカ研究所の研究では、抗体検査で陽性と判定された人数の2倍の人々に、特異なT細胞が見つかった。感染した細胞を特定して破壊するT細胞だ。

これは、COVID-19(新型ウイルスの感染症)の症状が軽かった人や無症状だった人にすらみられた。
しかし、これがその個人を守るだけなのか、他人にCOVID-19をうつすのを防ぐ作用があるのかは、まだ明らかではない。(中略)

バガート助教によると、COVID-19の免疫をめぐる議論は抗体が軸になっている。Y字形をしたタンパク質で、「標的を撃ち落すミサイル」のように働く抗体だという。それらは、新型ウイルスにくっつき、細胞に入り込む前に中和する。

抗体が新型ウイルスを中和できなかった場合は、ウイルスは細胞内に入り、その細胞をウイルスの製造工場にしてしまう。

一方、T細胞は、すでに感染した細胞を狙って完全に破壊し、健康な細胞に広がるのを食い止める。
T細胞は抗体と同様、記憶力をもつ免疫システムのごく一部だ。特定のウイルスを一度認識すると、そのウイルスに感染した細胞を素早く狙い、殺してしまう。(中略)

T細胞は非常に複雑で、抗体よりずっと特定しにくい。専門的な研究室で何日にもわたり、わずかな検体を手作業で検査することが求められる。
そのため、T細胞の大規模な検査は今のところ現実的ではない。【7月3日 BBC】
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「T細胞・・・・うーん、どうだろうか・・・」って感じですが、まあ、今後の研究に期待しましょう。

【WHO主導の治療薬治験 2週間以内に結果が】
一方、治療薬については、WHO主導で行われている国際協力研究の結果が2週間以内に出るとのことです。

****WHO「2週間以内に治験結果出る」 公平な分配を重視****
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は3日、記者会見し、新型コロナウイルスの治療薬候補を扱う「連帯治験」の暫定結果が2週間以内に出る見通しだと述べた。

この日の会見は国連欧州本部記者会が主催し、約3カ月半ぶりにWHO本部に記者たちを入れて行われた。

「連帯治験」はWHOが設けた国際協力の枠組みで、39カ国が参加し、5500人近い患者が協力。エボラ出血熱のために開発されたレムデシビルや抗HIV薬など、既存の薬が新型コロナウイルスに効くかを試す5部門で進められ、このうち抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンについては治療薬としての研究を既に止めた。

テドロス氏は会見で「科学は世界の公共の利益だ」と述べ、治療薬やワクチンの公平分配を重視する考えを強調した。

WHOの緊急対応責任者マイク・ライアン氏は同日の会見で、ワクチン実用化の見通しについて「今の段階で予言するのは賢くない」とする一方、「年内に効果を示すワクチンが出るかもしれない」と述べた。

また「治験と並行して生産態勢を整えられるかどうかが問題だ」と語った。【7月4日 朝日】
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治療薬「候補」は多々ありますが、何が効いて、何がだめなのか・・・一定の指針は得られるのかも。

【必要とされる国際協力の枠組みだが・・・・】
治療薬やワクチンの公平分配については、下記のような取り組みも。

****コロナ薬の普及へ特許権の共有を G7資金援助案も、実現には壁****
新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発・普及を見据え、特許権を国際的に共有して途上国などに安価に供給しやすくする構想が動き始めた。

日本が提唱し、G7が資金援助して特許料の一部を穴埋めする案も浮上。開発企業の賛同を得られるかは未知数で、実現にはなお高い壁がある。
 
日本は4月、医薬品の「特許権プール」と呼ばれる仕組みを提唱し、G7が検討に入った。途上国への医薬品供給を支援する国際機関「ユニットエイド」が開発企業と交渉した上で特許権を管理し、途上国に製法などを公開する。有効なワクチンや治療薬が開発されれば安価で大量に供給できるようにするのが狙いだ。【7月4日 共同】
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すでに各国が先を争って青田買いするような状況で、「自国第一」主義が横行する可能性も。

ただ、資金的に治療薬やワクチンを購入する余力がない途上国で感染が残る限り、先進国もコロナの不安からは解放されませんので、やはり世界全体で取り組む枠組みが必要でしょう。

そんなときに「自国第一」を掲げて憚らない政治指導者が目立つのは残念なことですが。

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