孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナワクチン 高まる期待 米・ロシア・中国産ワクチンの状況 政治化する状況も

2020-11-11 23:33:15 | 疾病・保健衛生

(【11月11日 AFP】)

 

【“90%超に有効”とは?】

新型コロナに関しては、日本はいよいよ第3波の状況になっているようですが、まあ、仕方ないでしょう。

経済活動や日常生活をそうそう止める訳にもいきませんから、そのなかで感染の拡大・縮小を今後も繰り返していくのでしょう。

 

ただ、重症化のリスクや死に至る確率などについても、ある程度把握できるようになっていますので、感染が拡大したからといってパニックになる必要もないでしょう。

 

コントロール可能な状況に収める対応・工夫・努力が求められています。

 

ウイルスの根絶が不可能である以上、待たれるのワクチンと治療薬。

そのあたりが整備されれば、通常のカゼやインフルエンザ流行と同程度の感覚で対応することも可能になるでしょう。

 

そうした「人類の希望の灯り」でもワクチンについて、米製薬大手ファイザーから期待がもたれるニュースが発表されたのは周知のところ。

 

****米ファイザーのワクチン 90%以上で有効 来週にも使用許可申請へ****

期待が高まる新型コロナウイルスワクチンの最新情報。

最終段階の臨床試験で初めて有効性が確認され、来週にもアメリカで許可申請の予定。

 

アメリカの製薬大手・ファイザーは9日、ワクチンの最終段階の臨床試験で、参加者の90%以上に感染を予防する効果があったと発表した。

安全上の重大な懸念もなかったとしている。

 

この結果を受けてファイザーは、来週にも製薬各社のワクチンでは初めて、アメリカ当局に緊急使用許可を申請する予定。

 

日本政府は、ファイザーと2021年6月末までに6,000万人分のワクチンの供給を受けることで合意している。【11月10日 FNNプライムオンライン】

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トランプ大統領は、自分を勝たせないために選挙前の発表を遅らせて、選挙後にした・・・と怒っていますが、それはあるかも。

 

そういう対応が「仮に」あったとしても、それは「勝たせないため」というより、現在の世界最悪の感染状況(累計で1千万人超)、しかも今も新感染者数は7日連続過去最多を更新(11月10日の新規感染者は少なくとも13万4000人。ここ1週間、新規感染者の平均は12万人)という状況をもたらしたトランプ大統領が、ワクチン開発を自分の「成果」として選挙利用することへの拒否感というべきでしょう。

 

私がファイザーの立場なら、選挙に利用されない時期まで発表を遅らせます。トランプ大統領は自身の「不徳の致すところ」と考えるべきでしょう。

 

それはともかく、「90%以上で有効」というのは、ワクチンとプラセボ(偽薬)を投与した集団の、その後の感染者数などを比較した場合の「有効性」を示していますが、今一つ分からない感じも。

 

****“90%超に有効”なワクチンの未だ分からないこと****

拙速なワクチン開発は危険

(中略)

 

未だわからないことが多い

しかし、このワクチンは、まだ実用化されたことが一度もないmRNAワクチンというタイプで、まだわからないことも多いという。(注・末尾に追記あり)

 

まず副作用・副反応についてである。

ファイザー社はこれまでのところ重大な懸念は生じていないと言うが、せいぜい数か月という短期的な観察結果である。長期的な副作用についてはまだ分からない。

 

4万人以上の被験者を対象とした臨床試験とはいえ、10万人に1人というような稀な副作用についてはわからない。例えば、重大なアレルギー反応が起こるのか、起こるとすればどの程度の頻度なのか、まだはっきりしないらしい。

 

次に、効果・効能についてである。

90%超の確率で感染を予防できるというが、そもそも感染自体を防げるのか、感染しても発症するのを防げるのか、発症しても重症化を防げるのか、重症化しても命を救えるのか、具体的なところはまだ示されていない。2回接種することが必要のようだが、その後いつまで効果が持続するのかも不明である。

 

さらに、「抗体依存性感染増強」の有無もはっきりしていない。

通常、ワクチンを接種してできた抗体は、我々を感染症から守ってくれる。しかし、ウイルスによっては、抗体が存在すると却って感染力を増す場合がある。

 

例えば、デングウイルスは日本でも2014年に問題となったが、それに対して開発されたワクチンが一時期東南アジアなどで使われた。しかし、このワクチンは「抗体依存性感染増強」のリスクが認められ、使用が制限されている状況だという。

 

検証可能な形でのデータ共有が大事

増田教授は「そもそも新型コロナウイルスのワクチンについては、学会発表や論文に先行して、部分的な情報だけが流布するのが昨今の風潮になっている。科学的視点から検証可能な形でデータや情報の共有が行われることが望ましい。」と今回の発表について述べている。

 

例えば、ファイザーは、これまでのところ、年齢階層別の有効性までは発表していないという。英・ガーディアン紙は「一般的にワクチンは高齢者になればなるほど効きが悪くなる傾向がある」が、この点の詳細はファイザーの新たな発表を待たなければわからないと報じている。

 

また、90%超に有効というが、残る10%弱の人々にそうでないのは何故かも明らかになっていないとガーディアン紙は指摘している。単なる確率の問題なのか、効かない人に何か共通点があるのか、これらについても発表を待つ必要があるという。(中略)

 

繰り返すが、期待は大きい。

不明の点のいくつかは、遠からず出されるであろう詳細な発表によって明らかになると思われる。ファイザーが予定通り承認申請をすれば来月にも接種が始められるとの見通しをアメリカのアザー厚生長官は示したというから、期待が一層高まるのもやむを得ないと思う。

 

しかし、断片的な情報で一喜一憂せず、開発途上の過度の楽観は最後まで禁物ということを実際には肝に銘じるのが大切なようだ。

 

(追記)増田教授によれば、ウイルスに対する従来のワクチンは、

・弱毒化したウイルスを生きたまま使うもの(麻疹など)

・ウイルスをホルマリン処理し感染性を失わせたもの(ポリオなど)

・ウイルスを分解してタンパクを精製したもの(インフルエンザなど)

・ウイルスタンパクを遺伝子工学の手法で製造したもの(B型肝炎など)

のいずれかである。

 

どれもウイルスのタンパクを含んでおり、それがヒトの免疫反応を促す。しかし、今回のワクチンはmRNAワクチンというタイプである。これは、タンパクの設計図となるmRNAという物質を接種して、ヒトの体内でウイルスタンパクを作らせようとするワクチンである。

 

ファイザーが開発中のものは超低温(マイナス70℃)で輸送・保管する必要があるとされる。そうだとすれば、実際に接種するという話になった時、日本でも一般開業医では取り扱いが難しく、ロジスティック上の大問題が生じる可能性があるという。【11月11日 FNNプライムオンライン】

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【ロシアのワクチンも予防効果は92%とも】

ファイザーに対応するように、ロシアも

 

****ロシア、国産新型コロナワクチンの予防効果は92%と発表****

ロシア直接投資基金(RDIF)は11日、国立ガマレヤ研究所が開発している新型コロナウイルス感染症ワクチン「スプートニクV」について、第3相治験の中間結果で感染を防ぐ有効性が92%だったと発表した。

RDIFのキリル・ドミトリエフ総裁は非常に有効なワクチンであることをデータが示していると述べた。

治験は2回の接種を受けた1万6000人の被験者のデータに基づいており、20人の陽性が確認された時点で何人がワクチンもしくはプラセボ(偽薬)を投与されたか調べた。

一方米ファイザーは94人が陽性となった時点で予防効果が90%になったとしており、RDIFの治験はこの数を大きく下回っている。ファイザーは陽性被験者が164人に達するまで治験を続けるとしている。

RDIFは発表文でワクチンの治験はさらに6カ月継続するとし、結果を査読(ピアレビュー)後に主要な国際学術誌に公表すると説明した。【11月11日 ロイター】

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これまでの試験に関しては、9月末時点の報道では、発熱などの軽度な副反応も、被験者の14~15%にとどまっているとのこと。

 

すべての医薬品がそうであるように、副作用ゼロということはあり得ません。

感染のリスクを大きく下回る範囲に副作用リスクが抑えられるなら許容されるべきものでしょう。

 

(今朝のTVでは、“38℃ぐらい”あるいは“38℃以下の”発熱が15%程度・・・とか言っていましたが(記憶は曖昧です)、もし「軽微」とは言え38℃の熱が15%ぐらい出るとなると、ちょっと接種を考えてしまうかも。)

 

なお、試験と並行して、ロシアは9月8日、リスクの高い一般市民への接種をすでに開始しています。

ただ、量産化の問題も報じられています。

 

****ロシア、国産コロナワクチンで量産に問題-接種ペースが鈍化****

モスクワでの「スプートニクV」接種件数はピーク時から20-25%減

「一部の問題は必要な装置の有無に関係」-プーチン大統領

 

ロシアのプーチン大統領は29日、新型コロナウイルス感染症(COVID19)の国産ワクチンについて、量産体制に問題が生じていると明らかにした。モスクワでの接種ペースは鈍化している。

  

プーチン大統領はVTBキャピタル主催のフォーラムで「当面の唯一の課題は求められる生産量をいかに確保するかだ」とした上で、「一部の問題は必要な装置の有無に関係している」と語った。

 

モスクワの国立ガマレヤ疫学・微生物学研究所とロシア直接投資基金(RDIF)が開発したワクチン「スプートニクV」は既にフロントラインワーカー(最前線で働く人々)の感染予防に使用されているが、量産で支障が出た。ただプーチン大統領は年内に一般市民への接種が始まる可能性があると説明した。

  

事情に詳しい関係者によると、モスクワでのスプートニクV接種件数はピーク時の1日当たり1000件から20-25%減少している。

  

ロイター通信はロシア当局がスプートニクVの臨床試験で新たな被験者への接種を停止したと先に報じた。モスクワでの臨床試験実施を支援している団体クロカス・メディカルの匿名の担当者を引用した。

  

ただRDIFが配布した資料によると、クロカス・メディカルのアレクセイ・ブチリン氏は試験中断を否定し、ワクチンの供給量は十分にあると述べた。ロシア保健省も第3相試験は継続中だと説明している。【10月30日 Bloomberg】

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ロシアの新規感染者数は2万人超と過去最多を更新(11月10日 ロイターより)する状況ですから、最近求心力低下も云々されるプーチン大統領にとってワクチンの世界に先駆けた実用化は「切り札」的な存在でしょう。

 

いずれにしても、試験に内容・結果についての透明性が求められています。

 

【ブラジルで次期大統領選挙をめぐる「政治問題」化している中国ワクチンの試験】

アメリカ、ロシアときたら、次は中国。

中国のワクチンは、ブラジルでも試験が行われていますが、ワクチンとは関係ないと言われていますが、死者がでたとの報道も。

 

ブラジルでは、ワクチンが完全に次期大統領選挙絡みで「政治化」しており、中国製ワクチン導入を進める州当局を批判しているボルソナロ大統領は死者の発生・試験の中断を「勝利」だと誇っています。

 

****ブラジル当局、中国製ワクチンの治験を停止 大統領は「勝利」と****

ブラジルの国家衛生監督庁(ANVISA)は9日、中国製の新型コロナウイルスワクチンの臨床試験を停止すると発表した。

 

ANVISAは、10月29日に被験者の1人に「重篤な有害事象」が起きたと発表。詳細は明かさなかったものの、この被験者が死亡したとの報道も流れた。

 

しかし治験を行っている研究所は地元メディアに対し、被験者の死は治験そのものとは関係がないと話している。

 

かねてこの臨床試験を批判してきたジャイル・ボルソナロ大統領は、ANVISAの決定は「自分の勝利」だと述べた。ボルソナロ大統領は、このワクチンの中国との関連を非難し、完成してもブラジルでは購入しないとしている。

 

ブラジルは新型ウイルスの被害が特に広がっている国のひとつ。米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、ブラジルの感染報告は約570万件と、アメリカとインドに続いて世界で3番目に多く、死者も16万3000人近くに上っている。

 

治験中断はブラジルだけ

中国の北京科学生物制品有限公司(シノヴァク・バイオテック)が開発しているこのワクチンは、臨床試験の最終段階に入っているワクチン候補のひとつ。

 

ブラジル以外でもインドネシアとトルコで治験が行われているほか、中国国内では緊急使用認可が出ており、数千人が接種している。現時点で、インドネシアとトルコは臨床試験を停止していない。(中略)

 

ブラジルでこのワクチンの治験を行っているブタンタン研究所のディマス・コヴァス所長は地元メディアに対し、治験の一時停止は被験者の死によるものだが、死因はワクチンとは関係ないと説明した。

コヴァス所長の主張は、サン・パウロ州の保健高官も支持している。

 

またコヴァス氏は、このワクチンによる有害事象は出ていないと話した。その上で、研究所はANVISAから治験停止について相談を受けておらず、今回の決定に「憤然と」していると述べた。

 

シノヴァクは10日、ブラジルでの出来事について同国と連絡を取っていると明らかにした。

声明でシノヴァクは、「ブタンタン研究所の所長は重篤な有害事象とワクチンは関係ないとの見方を示している。ブラジルでの治験は、同国の医薬品の臨床試験に関する基準(GCP)を厳格に守って行われており、ワクチンの安全性には自信がある」と述べている。

 

新型ウイルス問題が政治化

臨床試験が中断されることは珍しくない。9月には英アストラゼネカとオックスフォード大学が開発中のワクチンで有害事象が発生し、臨床試験が一時中断。数日後には安全に治験を継続できると判断された。

 

このワクチンをめぐっては、ブラジルでの治験でボランティアが1人死亡しているが、安全性の懸念はなかったとされている。

 

ボルソナロ大統領は、アストラゼネカ製のワクチンを好んでいると公の場で発言する一方、中国製のワクチンは購入しないと述べている。

 

BBCのケイティー・ワトソン南米特派員は、ブラジルでは新型ウイルス問題が非常に政治化しており、ANVISAの決定が科学的か政治的かについても、多くの人が疑問を抱いていると説明。

 

また、新型ウイルスを軽視するボルソナロ大統領にとっては、ブラジル最大の人口と富を抱えるサン・パウロ州のジョン・ドリア知事が逆の方向を示しているのも懸念材料だと報じた。

 

ドリア知事は他の州と同様に独自のロックダウンを展開したほか、シノヴァクの臨床試験を支持している。

ワトソン特派員によると、ドリア知事は2022年の大統領選に出馬するとみられているという。【11月11日 BBC】

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日本で死者発生を「勝利」と言ったら首が飛びますが、“ブラジルのトランプ”ボルソナロ大統領の場合は「またか」といったところ。

 

ブラジルではロックダウンについても、実施する州当局(知事が次期大統領選挙に出馬予定)と反対する大統領が揉めていました。まあ、日本でも小池都知事と政府の間で確執があったりもしますから・・・。

 

なお、この死者は自殺だったとの報道も。

 

****中国ワクチン被験者の死因は自殺 ブラジル衛生当局、治験中断継続****

・・・・ブラジルのメディアは10日、この被験者の死因は自殺だったと報じた。

シノバックは10日、「事態とワクチンは無関係」との声明を出したが、同監督庁は治験の中断を続けるとしている。(後略)【11月11日 共同】

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ボルソナロ大統領は“「(新型コロナ感染で)亡くなった方については気の毒に思う。本当にそう思う。だが、われわれはみんないつか死ぬ。現実から逃げても仕方がない。ホモの国みたいなことはやめなければならない。(中略)顔を上げて闘わなければいけない。ホモみたいなのは大嫌いだ」と続けた。”【11月11日 AFP】

 

ブラジルのような貧困層が多い国でロックダウンの導入は、コロナ感染以上の問題を惹起することも考えられ、大統領の考え方には賛成できるものもあります。しかし、いつものことながら、この種の無分別・差別的な発言はなんとかしてほしいものです。

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