孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランス 2度目のロックダウン 今春に比べると「緩め」 規制徹底を難しくする根強い個人主義も

2020-11-13 22:29:18 | 欧州情勢

(フランスの新型コロナ新規感染者数推移)

 

【2度目の都市封鎖は緩め」】

日本も新型コロナ第3波といった状況になりつつありますが、周知のように欧州では一足早く猛烈な感染拡大に見舞われています。

 

フランスの感染者数は累計でロシアを抜き世界第4位になったとか。

10月30日からは、今年の春以来となる全土での外出制限(ロックダウン)も始まりました。

 

****フランスの新型コロナ感染者数、ロシア抜き世界で4番目の多さ****

フランスで11日、3万5879人の新型コロナウイルス感染者が確認され、累計は186万5538人と、ロシアを抜いて欧州・ロシア地域で最多となった。ロイターの算出では世界で4番目に多い。

フランスは約2週間前にロックダウン(都市封鎖)を再開。11日の新規感染者数は前日の2万2180人は上回ったが、7日に記録された過去最多の8万6852人は下回った。

過去24時間の入院者は441人で、先週前半の1日当たり1000人超の水準を下回った。

集中治療を受けている人は53人で、10月半ば以降で最も少ない。

過去24時間の死者は328人。10日は1220人だったが、高齢者施設で数日間に亡くなった754人が含まれていた。同国の累計死者数は4万2535人。【11月12日 ロイター】

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ただ、ロックダウンとは言いながらも、その実態は“今春に実施した最初の封鎖に比べて緩やかなスタートになった”【下記 産経】とも。

 

****2度目の都市封鎖 「緩め」スタート 「文化は例外に」の声も フランス****

新型コロナウイルス対策で10月30日、フランスは2度目の都市封鎖に入ったが、家電店などの営業は容認され、今春に実施した最初の封鎖に比べて緩やかなスタートになった。「文化を守れ」と訴え、書店や美術館の継続を求める声も広がっている。

 

パリ中心部の大手家電用品店は30日、外出禁止令が始まったのに、店内に20人近く客がいた。営業が認められる「生活必需品の販売店」扱いのため。DVDや文具コーナーも開いたままで、金融業のルカ・デヌボさん(35)は「街中は意外と人出が多くて驚いた」と話した。

 

生花店も今週末、例外的に営業が認められた。11月1日はカトリックの祝日で「墓参りの日」として定着しているためで、店員は「前回の封鎖では、入荷した花を全て廃棄しなければならなかった。今回は閉店準備の余裕がある」と話した。週明け以降、注文制で営業を続けるという。

 

3〜5月の都市封鎖では、外出への取り締まりのため10万人の警察官が動員されたが、今回は巡回するパトカーはまばら。家族連れに人気の公園も開いている。「社会的距離」という概念が一般化したことに加え、コロナ流行で「規制疲れ」が広がる中、経済や市民生活への負担を軽減したいという政府の配慮がうかがえる。今回は都市封鎖中も、小中学校や高校は授業を続ける。

 

一方、レストランやカフェ、書店、劇場などは今回も閉鎖され、政府への不満が広がる。

 

30日には、ノーベル文学賞を受賞した作家パトリック・モディアノさん、思想家のジャック・アタリさんら出版界の250人が「文化を守れ」と訴え、マクロン大統領に書店の営業を求める公開書簡を発表した。

 

中部ヨンヌ県では、人口約7千人の自治体の首長が、独自に規則を出して小売店営業を許可。「都市部のスーパーの営業が認められるのに、地域を支える小売店を認めないのは不公平」と主張し、政府と争う姿勢を示した。政府は商店営業について、2週間ごとに感染状況を見ながら、規制のあり方を判断する方針。【10月31日 産経】

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もっとも、この“緩いロックダウン”に首都パリでは追加対策も。

 

****パリ、新型コロナで追加対策 夜間営業を制限****

フランスの首都パリのアンヌ・イダルゴ市長は5日、新型コロナウイルス対策の一環で追加の制限措置を導入する方針を示した。夜間営業を禁止する店舗を増やす。

仏BFMテレビに明らかにした。飲食物の持ち帰りサービスを行う一部の店舗の営業を夜10時までとする。

同国のマクロン大統領は先月、全土で再び都市封鎖(ロックダウン)を実施すると発表したが、パリでは依然として夜間に外出する人が多く、追加の対策が必要だと判断した。

同市長は「ルールを守らない人がおり、大勢の人々の健康を危険にさらしている。新たな制限措置が必要だ」と述べた。

フランスで4日に報告された新規の新型コロナ感染者は4万0558人。4日に報告された死者は385人、累計の死者は3万8674人となった。【11月5日 ロイター】

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【規制に従わない人も多い実情】

規制が“緩く”なるのは、今春のような厳しい対応には国民の抵抗が強いこと、新型コロナに対する一定の認識が進み今春のようなパニック状態にはないことなどがあるとおもわれますが、個人主義が強いフランスではその“緩い規制”にも従わない人も多く、規制の徹底が難しい状況もあるようです。

 

そのあたりの状況について、元フジテレビ女子アナでフランス人を夫に持つ中村江里子氏が“怒って”います。

 

****中村江里子、夫に怒り「嫌味の一つも言いたくなる」ロックダウンしてから「まだ数日です」****

パリ在住の元フジテレビアナウンサーでタレント、中村江里子(51)が9日、ブログを更新。ロックダウン中にも関わらず、ディナーの誘いを断ることをためらった夫に対して怒りをあらわにした。

 

フランスは先月30日から12月1日までの約1カ月間にわたり、2回目のロックダウン(都市封鎖)に踏み切っているが、中村は夫から「あのね、ディナーの誘いが2件きているんだ…。勿論、断ったけれども…エリコはどう思う?」と聞かれたという。

 

中村は「彼が『断ったけれども…』と言う前から私は鬼の形相になっていたのでしょう 『まさか、今じゃないよね?ロックダウンが終わったらってことよね?勿論…』そうじゃないことはわかっていたけど、嫌味の一つも言いたくなる。私が怒っていた理由は…これです」と明らかにし、「この状況が数カ月続いたら…レストランやカフェに行きたくなるし、誰かに会いたいし、騒ぎたくなると思う」と理解を示しつつも、「でも…まだ数日です」とたしなめた。

 

続けて「レストランやカフェやバーが一体何のために休業となってしまっているのかをよく考えるべきだと思っています。なぜ、もうちょっと我慢できないのか? レストランよりも誰かの家に集まることの方が私は危険だと思っています。私の怒りがすごいので(笑)、彼は一体誰から誘われたのか結局、名前を言いませんでした」と振り返った。

 

また、「この数日で、あちらこちらで自宅でのディナーが開催され始めていると聞きました。パリの郊外に住む友人は近所のカフェも営業をしていて、人が集まって飲んでいると…。

 

『それぞれの考え方があり、それを変えることは出来ないし、他の誰かを批判するつもりもないけど…ロックダウンしても成果がなければフランス人は政府のせいにするでしょう?甘えすぎよ!!』という…怒りでした」と、フランスに住む人たちについても憤りを覚えたことをつづった。【11月9日 SANSPO,COM】

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『ロックダウンしても成果がなければフランス人は政府のせいにするでしょう?甘えすぎよ!!』というのも、いかにもフランス人の国民性を示しており笑えます。

 

調査によれば、“1度目の時よりもロックダウンを軽視していることが確認された”とも。

 

****フランス人の過半数がロックダウン違反、コロナ入院患者は第1波上回る****

フランスが新型コロナウイルスの第2波に見舞われ、入院患者数が第1波を上回る中、フランス人の過半数が2度目の全国的なロックダウン(都市封鎖)措置に違反したことがあるとする調査結果が12日、発表された。

 

調査会社Ifopが2度目のロックダウンの折り返し地点に合わせて実施した調査で、フランス人は、1度目の時よりもロックダウンを軽視していることが確認された。

 

調査によると、60%が少なくとも1回はロックダウンに違反したことがあると回答。外出許可証に虚偽の理由を記載したり、家族や友人と会ったりするなどしたという。1回目のロックダウンの時は、違反したと回答したのは40%未満だった。

 

フランスでは新型ウイルスによる死者は4万2000人を超えており、11日だけでも329人が死亡した。11日時点で集中治療を受けている患者は4789人に上る。

 

ジャン・カステックス首相はオンライン記者会見で、「第2波は極めて強い」「いまや、死者の4人に1人の死因はコロナだ」と述べた。

 

さらに、新型ウイルスの入院患者数は現在、4月に記録された3万2000人を上回っていると指摘し、病院の収容能力が逼迫(ひっぱく)していると警鐘を鳴らした。 【11月13日 AFP】

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“60%が少なくとも1回はロックダウンに違反したことがある”という絶対値はともかく、今春より数字が大きくなっているあたり、「コロナ慣れ」みたいなものも感じられます。

 

強迫神経症的に「コロナ、コロナ」と大騒ぎするのもいかがなものかと思いますので、ある意味、自然な流れでしょう。

 

【欧米に強い「個人主義」】

個人主義から一律・強制的なコロナ対応に従わないというのはアメリカも同様です。

 

****NY出張中にホテルで見たハグや大声の会話 危機感を訴えたら、その返事は****

(中略)

■個人の自由か公衆衛生か

そんな状況の米国に出張してきた筆者自身も、自分事として危機感を募らせている。

日本から消毒液やマスク、うがい薬や解熱剤などを大量に持ち込んだ。渡米直前にPCRテストを受けて陰性の結果を得て、インフルエンザ予防接種も受け、海外旅行保険にも入った。しかし渡米初日から、米国側のコロナ対策には不安を感じることが多かった。(中略)

 

コロナ感染防止に向けた決まりや取り組みはちゃんと存在していた。確かに、多くの人がマスクの着用を習慣化している。少し安心したが、数日すると、厳しい現状が見えてきた。

 

ホテル内のエレベーターには「4人制限」を気にせずに利用客が乗り込んでくる。缶詰状態でも平気で会話する人が結構いて、思わず呼吸を止めた。

 

箱詰めされた朝食は閉鎖中のはずのレストラン内で食べる人が多く、全く意味がない。520室の約半分が埋まっているらしく、このホテルには常に人が多い。

 

ホテルの外では、ハグ、握手、大きな声での会話が日常的な風景となっている。最も危機感を抱いたのは、会話をするときに、わざわざマスクをあごまで下げてしまう人が結構多いことだった。

 

感染防止策を徹底している人と、そうでない人との意識の差が大きくて、恐怖を覚えた。

 

予防意識が比較的浸透しているとされるニューヨークでこうなのだから、他の州での状況が心配になる。コロナ対策の重要性を軽視しているとされるトランプ大統領の支持者にはマスクをしない人も多いというから言葉がでない。

 

自分の身は自分で守る。全ては個人任せの対応になっている。ホテルのフロントに危機感を訴えると、納得はできなかったが、回答は分かりやすかった。

 

「米国は個人主義を重んじる国なので、自由を縛り付けられることに抵抗を感じる人が多い。それよりも公衆衛生を重んじるという考え方を本当に理解できている人がどれほどいるのか、私には分からない。ただ、コロナの影響で、そういう人が増えてきていることは確かで、バイデンが選挙で勝利したことにも表れている」

 

そのうえで、こう言われた。

「ホテル内でのあなたの安全を守ることに私たちは最大限の努力をすることを約束します。ただ、あなたの部屋が10階にあるとしても、エレベーターが混んでいれば階段を使う。ホテル周辺でマスクをしていない人がいるなら、そこを避ける。あなたの安全ですから、自分を守る努力をしてください」

 

予防するのも、しないのも、自己責任ということなの?やっぱり緩い。米国が世界で最も感染者を出している背景が、なんとなく分かった気がした。(後略)【11月13日 GLOBE+】

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同調圧力が強い日本とは異なるこのあたりの感覚は、意識が低い云々というより、個人の自由に関する思い入れの強さの違いよるものでしょう。

 

****コロナ規制が個人の自由を侵害、アリト米最高裁判事が懸念****

米連邦最高裁判所のアリト判事は12日夜、新型コロナウイルス感染防止のための諸規制が、信教の自由を含む個人の自由に制限をかけることに懸念を示した。

アリト氏は、保守系法曹団体「フェデラリスト・ソサエティー」の年次会合に向けた講演で「信教の自由は一部で急速に嫌われた権利になりつつある」と発言。

「新型コロナ危機は、憲法への一種のストレステストとなっている」と述べ、パンデミックを受けた行動制限などの規制が過去に例がないほど「厳しく、広範囲で長期的」だと指摘した。

アリト氏は、新型コロナウイルスの重大性を軽視するつもりはないと断った上で、新型コロナの流行は「個人の自由に以前は考えられなかったような制約」をもたらしたと指摘した。

米国の新型コロナ感染者は1040万人を超え、死者は24万人以上となっている。【11月13日 ロイター】

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話をフランスに戻すと、11月8日に新規感染者86,852人とピークに達したのちは急減し、その後増減・・・このまま減少するのかどうか・・・まだ不透明です。

 

【コロナのストレスがアジア人差別に向かう風潮も】

そうしたなか、気になる風潮も。

 

****コロナ封鎖のフランス ネットで中国系攻撃呼びかけ アジア人差別「第2波」で再発****

新型コロナウイルス「第2波」流行が広がるフランスで、中国系住民への攻撃を促すインターネットの書き込みが相次ぎ、検察が捜査を開始した。今月始めには国会議員100人が、「コロナ禍でアジア系への人種差別が広がっている」と連名書簡で警告し、波紋が広がっている。

 

中国系を標的とした書き込みは10月28日、マクロン仏大統領が外出禁止令を宣言したのと前後して見つかった。「路上で会った中国人をすべて攻撃せよ」「漫画はやめる。これからはアジア人狩りだ」などと記されていた。パリ検察筋は「人種差別に基づく攻撃挑発の疑いで、捜査を始めた」と明かした。

 

仏メディアによると、パリ市内で女性が「コロナ禍はお前のせい」と罵倒されて殴られたり、公園で卓球をしていた高校生が襲われたりするケースが報告されている。

 

パリ内外では今年始めにも、中国での第1波拡大に伴ってアジア系への嫌がらせが急増。マスク姿の女性が遠ざけられたり、中国系経営のすし店に白ペンキがぶちまけられたりなどの被害が出た。

 

公開書簡は仏紙リベラシオン(電子版)に掲載され、「コロナ流行の第2波で、アジア系がかつてないほど標的にされている」と主張。差別発言が攻撃的になっていることを懸念し、被害防止のため、差別的な行為や発言を見かけたら、当局に届け出るよう訴えた。【11月9日 産経】

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中国人も日本人も区別化つかない・・・というか、差別的憎悪はアジア人全般に向いているようにも。

日本大使館は、現地滞在の日本人に対して安全に注意するよう呼びかける警告を出しています。

 

****フランスのSNSで「アジア人を攻撃せよ」、日本大使館が警告=中国メディア****

中国のポータルサイト・百度に12日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、欧米でアジア人に対する差別が激しくなっており、フランスのSNSでは「アジア人を攻撃せよ」を市民に呼び掛ける書き込みが拡散しているとする記事を掲載した。

記事は、近ごろフランスのSNS上で市民に「アジア人を攻撃せよ」と呼びかける言論が拡散しており、フランス在住のアジア人の生活に大きな影響を及ぼしていると紹介。「どうやら、フランスでは人種主義がすでに爆発してしまっているようだ」と伝えた。

そして、この件についてフランスの一部大手メディアが速やかに反応し「フランスはアジア人を差別しているわけではない」、「われわれは変わらずアジア人を歓迎している」といった論調を展開しているとする一方で「フランスの人種差別はこれまでにも存在しており、差別はすでに深く根差していることは紛れもない事実だ」と評している。

また、以前に米ニューヨークの地下鉄駅で、現地在住の日本人ピアニストが現地人から集団暴行を受けて負傷した事件があったことに触れ、欧州でも同様の事態が発生する可能性が高まっていると認識したフランスの日本大使館が、現地滞在の日本人に対して安全に注意するよう呼びかける警告を発していたことを紹介した。

 記事は、多くのフランス政府関係者や医学専門家がたびたび「新型コロナをレッテル化してはならない」との考えを示すとともに、フランス政府もソーシャルネットワークにおける差別の制御に努めてきたとする一方で「しかし、現実の状況は、実に多くの人が自由の旗印を振りかざして差別的発言を繰り返しているのだ」と伝えている。【11月13日 Searchina】

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日本にも、「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼んでストレス発散している人たちも大勢いますので、同じようなものでしょう。

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