孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  当局対応・デモ隊、双方がエスカレート傾向 首相は不敬罪適用も示唆 注目される25日デモ

2020-11-24 23:01:50 | 東南アジア

(デモ会場に登場した「黄色いアヒル」【11月24日 FNNプライムオンライン】 周囲で片手をあげているデモ参加者は「抵抗」のシンボル「三本指サイン」 ユーモラスな光景とは裏腹に、緊迫する情勢は「危険水域」に近づいているとも)

 

【放水・催涙弾、実弾射撃、一方で警察本部にペンキ エスカレートする攻防】

タイの長期化する若者らの抗議行動については、これまでも数回取り上げています。最近では11月15日ブログ”タイ 長期化する若者らの抗議行動 王室改革をも求める声に「愛」を語るワチュラロンコン国王”など。

 

プラユット政権はコロナ対策を名目にした非常事態宣言を、感染終息後も継続して延長しており、集会禁止などデモ封じ込めを狙ったものと見られています。

 

****新型コロナ対策で発令中のタイの非常事態宣言、8度目の延長…デモ抑え込みも意図か****

タイ政府は23日、新型コロナウイルスの感染対策として全土に発令中の非常事態宣言について、来年の1月15日まで約1か月半延長することを閣議決定した。今年3月に発令された非常事態宣言の延長は、これで8度目となる。

 

非常事態宣言に基づき、タイでは一時、夜間外出禁止や国際線の乗り入れ停止などの措置が取られたが、現在は国内の感染拡大が抑えられていることから、こうした措置は解除された。集会禁止などの措置は続いている。

 

年末年始には多くの人が集まって新年を祝うため、感染が再拡大する恐れが背景にある一方、タイでは学生らによる反政府デモが続いており、非常事態宣言の延長でデモを抑え込む意図もあるとみられる。【11月23日 読売】

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そうした非常事態宣言下でも抗議行動は続いていますが、11月17日には“タイのデモで40人超負傷、警察が放水銃や催涙弾 銃撃も”【11月18日 ロイター】と荒れた展開に。

 

後日の情報では、この日のデモ隊と警察・王室支持派による衝突で55人が負傷し、うち6人が何者かに銃撃されていたことも判明しています。

 

一方、国会で審議されていた、デモの若者らが求める王室改革案は否決されました。

 

****反政府デモ広がるタイ、7つの改憲案を採決 王室改革含む案は否決****

 タイの国会は18日、憲法改正に関わる7つの案について採決を行い、このうち2つを承認した。一方で王室改革を含む案は退けられた。タイでは軍事政権に抗議する全国規模のデモが激しさを増している。

 

若年層が主導するこれらのデモは過去5カ月間にわたって定期的に行われ、2014年の軍事クーデターで政権についたプラユット首相の退陣や国会の解散、憲法の改正などを求めている。

 

デモの参加者はこのほか、長年タブー視され犯罪に問われる可能性もある王室の改革も訴える。国王の権限の縮小を求めるこうした声は、王室に異を唱える動きとしてこの数十年で最も大きなものとなっていた。

 

採決の前日の夜には、首都バンコクにある国会議事堂の外でデモ参加者が警官隊や王室擁護のグループと衝突。催涙ガスや放水銃が使用される事態となった。

 

18日になると警察は実弾を発射したことも確認し、少なくとも2人が撃たれたと明らかにした。初めて実弾が使用されたこの時のデモでは55人が負傷した。

 

採決にかけられた7つの案のうち王室改革に関するものは1つのみで、現行の憲法を破棄したうえで、王室の章を含む新たな憲法を起草するという内容だった。

 

承認には国会議員の半数以上と上院議員の3分の1以上の賛成票が必要だったが、実際の賛成票は国会議員732人中の212票にとどまった。【11月19日 CNN】

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これに対し、デモ隊側は18日には“デモ隊、警察本部にペンキまく=「放水・催涙弾への報復」―タイ”【11月19日 時事】と行動をエスカレートさせています。

 

【首相 不敬罪の「刑法112条」適用をちらつかせる】

それに伴い、政府対応も硬化の様相。

 

****タイ首相、抗議者にあらゆる法律適用と表明****

タイのプラユット首相は19日、首相更迭や憲法改正、王室改革を要求する抗議者に対し、あらゆる法律を適用して措置を講じると表明した。

タイでは前日、首都バンコクの警察本部前で数万人が抗議活動を繰り広げ、本部の敷地内にペンキをまき散らすなどした。17日のデモで警察の催涙弾や放水銃などによって数十人が負傷したのに続き、議会でデモ隊側が求める国王の権限見直しにつながる可能性があった憲法改正案が否決されたのを受け、怒りの声をあげた。

プラユット首相は声明で「状況は改善しておらず、暴力がエスカレートするリスクがある。対応しなければ、我が国や愛すべき君主制がダメージを受ける可能性がある」と指摘。「政府は行動を強化し、あらゆる法律を適用して法に違反する抗議者に対する措置を講じる」と述べた。

王室侮辱罪を扱う112条がこれに含まれているかどうかは明らかではない。プラユット首相は、国王の要請で112条はしばらく適用されていないとこれまでに述べている。【11月19日 ロイター】

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「あらゆる法律を適用」という表明は、不敬罪を扱う刑法112条の適用を指すのでは・・・とも指摘されています。

 

政府のこうした厳しい方針に沿って、抗議デモに参加した高校生2人が訴追されています。

 

****タイ警察、抗議デモ参加で高校生2人を訴追へ****

タイ警察は20日、先月15日に非常事態宣言に違反して抗議デモに参加したとして、高校生2人を訴追する方針を示した。

2人は学生団体のリーダー。両親・弁護士を伴って取り調べを受けるという。先月15日の抗議デモには約1万人が参加した。

タイのプラユット首相は19日、首相更迭、憲法改正、王室改革を要求する抗議デモの参加者に対し、あらゆる法律を適用して措置を講じると表明していた。

訴追される15歳の高校生は、ロイターに「リーダーを逮捕しても、さらに数百人が立ち上がる。刑務所が足りなくなるだろう」とのメールを送信した。

学生団体は21日も抗議デモを予定しており、この学生もデモに参加する予定。訴追されるもう1人の高校生は17歳。(後略)【11月20日 ロイター】

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【その動向が注目される明日25日の大規模デモ】

緊迫した情勢が続くなかで、明日25日には王室財産管理局の前で大規模な抗議活動が予定されており、デモ参加者は国王が私的に管理している王室財産の返還を求める予定とのこと。

 

また、かつて軍事クーデターの引き金ともなった政治混乱の一方の当事者であるタクシン元首相支持の「赤シャツ隊」も抗議行動に参加する可能性も指摘されています。

すでに、黄色いシャツを着た王室支持派はデモ隊と小競り合いを起こしています。

 

タイの大規模デモは、かつて流血の事態となったことも度々あるだけに、その成り行きが注目されています。

 

****高まる緊張 タイ抗議デモ****

タイで7月から続いている反政府デモをめぐり、緊張が高まっている。警察は先週、デモ隊を鎮圧するために催涙弾を使用した他、刺激剤の入った水を放出。デモ隊6人が警官に撃たれた。

 

首都バンコクでは25日、大規模なデモが予定されている。長らく政情不安が続くタイの現状をまとめた。

 

■態度を硬化させるを強めるデモ隊

時には数万人が参加した4か月に及ぶデモで、参加者らは徐々に態度を硬化させている。デモの指導者らは、妥協するつもりはないと警告。少し前までは考えられなかった反王室スローガンや王室に対する侮辱の言葉も多く聞かれるようになっている。

 

一方、警察の機動隊は先週、デモ隊に対し強硬措置も辞さない構えを見せた。

 

今回のデモは学生主導で、ソーシャルメディアなどで幅広い支持を集めている。専門家らは10年前にバンコクで大規模なデモを展開した「赤シャツ隊」が今回のデモに加わる可能性も指摘している。

 

数か月にわたり続くデモの参加者らは、軍政下に制定された憲法の改正やプラユット・チャンオーチャー首相の退陣のみならず、これまでタブーとされてきた王室改革も求めている。

 

バンコクにあるチュラロンコン大学のシリパン・ノックスワン・サワディー教授は、デモ隊は王室改革を求めることでタブーを打ち破り、すでに新たな政治文化の出現を可能にし、タイの歴史上前例のない表現の自由を推し進めていると説明した。

 

■政府は「行き当たりばったり」

政府は7月に始まったデモに対し、慎重に対応している。緊急事態宣言を出しては撤回したり、デモの指導者らを逮捕しては釈放したりしている。

 

ナレースワン大学のポール・チャンバース氏は「デモが始まって以来、政府は行き当たりばったりの対応をしている」と述べた。

 

これまでのタイのデモとは異なり、今回のデモは都市部中流階級の若者が中心となっている。

 

2010年にバンコク中心部で起きた赤シャツ隊のデモでは、取り締まりの過程で90人が死亡した。当局は、国際的なイメージが傷ついたこのときの事態を繰り返さないよう警戒しているようだ。

 

ただし、最近になって政府は強硬な姿勢を強め、王室の名誉を傷つける行為を禁じる不敬罪の「刑法112条」をちらつかせ始めている。

 

■支持者らと交流する国王

今回のデモ以前は、マハ・ワチラロンコン国王が公の場に姿を見せることはあまりなかった。だが、最近は人前に頻繁に姿を見せるようになり、支持者らと交流し、タイ国民への「愛」を宣言している。

 

それでも、現国王が議論を呼ぶ存在であることに変わりはない。在位70年に及んだ父親のプミポン・アドゥンヤデート前国王のような絶大な人気を得るには至っておらず、王室の財産や軍の一部を直接自身のコントロール下に置くことで権力を強化しようとしている。

 

ワチラロンコン国王が、頻繁にドイツに滞在していることも問題となっている。さらに新型コロナウイルスの流行下で、国民のことを十分気にかけていないとの批判も上がっている。

 

■暴力的な結末に至るのか?

1970年代に2回、そして1992年と2010年に発生したタイのデモは、どれも流血の事態に終わった。このため専門家らは今回も同様の事態になることを懸念している。

 

チャンバース氏は「極右王室支持派団体」がすでに民主派のデモ参加者に嫌がらせをしていると指摘している。 【11月24日 AFP】

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デモでは「黄色いアヒル」が抗議のシンボルともなっており、一見するとユーモラスな雰囲気もありますが、その内情は「危険水鬼」に近づいているとも指摘されています。

 

****黄色いアヒル登場も…危険水域に入り始めたタイ反政府デモ****

反政府デモが続くタイの情勢が徐々に緊迫化している。11月17日にはデモ隊と警察・王室支持派が衝突し55人が負傷、うち6人が何者かに銃撃されていたことが判明した。

 

プラユット政権はさらなるデモの取り締まり強化を宣言し、不敬罪適用の可能性も浮上している。11月25日に予定されている大規模デモの行方が注目されている。

 

黄色いアヒルが「シンボル」に

11月18日、バンコク中心部で行われた反政府デモの会場に、巨大な黄色いアヒルのゴムボートが大挙して登場し注目を集めた。アヒルのゴムボートは数千人のデモ隊の頭上を波打つように移動し、多くの参加者を沸かせた。この黄色いアヒルはいまデモ隊の間で「抗議のシンボル」となっている。

 

きっかけとなったのは17日に国会議事堂前で行われたデモだった。警察がデモ隊に向けて放水車や催涙弾を使用した際に、参加者の一部がアヒルのゴムボートを盾代わりに使ったのだ。その様子がメディアやSNSで一斉に拡散すると、黄色いアヒルはデモ隊を守ってくれたヒーローとして称賛された。

 

この日からアヒルは「抗議のシンボル」となり、いまではデモ会場でアヒルを模したグッズを身につける参加者も増えている。

 

タイ情勢が徐々に緊迫化

こうした可愛らしいアヒルの姿とは対照的に、反政府デモを取り巻く状況は以前にも増して緊迫化している。

 

理由の一つはデモ隊に対する警察側の対応の変化だ。11月17日に国会議事堂前で開かれた集会では、デモ隊が国会に近づくためにバリケードを突破しようと試みると、警察側はすぐさま放水や催涙弾を使用した。

 

これまでのデモで警察側は放水等の対抗手段を取ることには抑制的だったが、この日はデモ開始から1時間もたたずに鎮圧のために強硬手段に出た。こうした行動の変化は、治部隊側が従来の抑制的な方針を転換した可能性を示している。

 

また王室支持派による抗議活動も緊張の激化に拍車をかけている。国会前のデモでは、黄色いシャツを着た王室支持派とデモ隊による小競り合いが発生し、双方がペットボトルを投げ合うなど一時騒然とした。

 

また、デモ隊と警察・王室支持派による衝突で55人が負傷し、うち6人が何者かに銃撃されていたことも判明した。この負傷者数は、一連の抗議デモでは最悪の被害となった。

 

デモ隊側も徐々に行動をエスカレートさせている。警察がデモ隊に向けて放水をした翌日の18日、数千人のデモ隊が報復として警察本部の建物を取り囲み、看板や壁にペンキを投げつけた。また外壁にもカラースプレーで抗議のメッセージを書き込んだ。

 

さらにデモ隊の一部は、警察本部だけでなく、付近の道路や横断歩道、鉄道の高架橋の柱、寺院の壁にも抗議の落書きをした。ワチラロンコン国王の母親であるシリキット王太后の肖像写真の前に、王室を侮辱する言葉を書きなぐった参加者もいた。

 

王室批判禁じる「不敬罪」復活か

抗議行動が過熱したのを受けて、政権側はデモの取り締まり強化を宣言した。プラユット首相は19日、声明で「政府が真剣に平和解決を模索してきたが、事態は一向に収束する気配を見せない」とデモ隊を批判した。

 

その上で、デモが暴力に発展して国家と王室を傷つけるおそれがあるとして「あらゆる法律を適用し、違反する抗議者に対する措置を講じる」と牽制した。タイ国内では、これが不敬罪を扱う刑法112条の適用を指すのではないかとの憶測が広がっている。

 

タイには不敬罪(刑法112条)が存在し、国王や王妃などを中傷・侮辱したと判断されると最高で15年、最低でも3年の禁固刑が科される可能性がある。最近は不敬罪による逮捕・起訴はほとんどなく、プラユット首相は過去に不敬罪について、ワチラロンコン国王の要請で適用されていないと述べていた。

 

それが一転、不敬罪適用への具体的な動きが始まっていて、バンコク首都圏警察は刑法112条に関する捜査を担当する委員会を立ち上げた。デモ隊側は、不敬罪が王室に関する議論を制限しているとして撤廃を求めている。

 

首相による声明発表の翌日、反政府デモに参加していた一部のグループが次回以降のデモに参加しないと表明した。グループは、デモで度々取り上げられる王室批判は受け入れられるものではなく、またデモ隊が警察本部にペンキを投げつけたのも過剰な行為だと批判した。これらのグループの一時撤退は、不敬罪適用への警戒心の表れとみられている。

 

一部に離反の動きはあるものの、デモ隊側に攻勢を弱める気配は見られない。11月25日には、バンコクの王室財産管理局前で再び大規模デモを行い、国王が私的に管理している莫大な王室資産の返還を求める計画だ。一方で王室支持派も同日にデモを開催すると発表していて、再び衝突が起きる懸念も出ている。

 

反政府デモ隊とタイ政府当局、王室支持派による一触即発の状況が今後も続く。【11月24日 FNNプライムオンライン】

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デモ隊、当局側の対応、犠牲者の発生の有無、さらには政府の不敬罪・刑法112条の適用の有無など、ひとつの分水嶺ともなる可能性がある、明日25日の大規模デモです。

 

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