孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  バイデン新大統領就任 改めて連帯を訴える 中国・イランは関係改善に期待するも・・・

2021-01-21 23:15:41 | アメリカ

(【1月21日 ハフポスト日本版

左:およそ90万人が集まったトランプ大統領就任式 中央:20万本のフラッグが並ぶ今回 右:およそ180万人が集まったオバマ大統領就任式 トランプ大統領の「ウソ」で塗り固めた4年間は、オバマ氏より大勢が集まったというウソから始まりました。)

 

【異例ずくめの大統領就任式】

当然ながら、今日はアメリカ・バイデン新大統領就任関連のニュースが山ほど。

そうした中から、いくつかの記事を。

 

新型コロナパンデミックのさなかでお就任式、就任を祝う聴衆に代えて20万本ものフラッグが飾られました。犠牲者への追悼の意味もあるとか。

 

コロナの影響の他に、先日の議事堂襲撃のようなトラン支持者による混乱を未然に防ぐ意味合いもあってのことでしょう。

 

****新型コロナは、百万の聴衆を虹色のフラッグに変えた。大統領就任式の様子****

アメリカ大統領就任式が1月20日(現地時間)に開かれ、民主党のジョー・バイデン氏が第46代大統領に就任した。

 

通常は百万人規模の聴衆が集まる就任式も、今回は新型コロナウイルスの感染拡大や、1月6日に起きた議事堂暴動を受けた厳戒態勢のため、全く違った風景となった。

 

通常であれば、連邦議会議員など配られていた20万枚のチケットも、配布取り止めとなった。

就任式が開かれた連邦議会議事堂前のナショナルモールは閉鎖され、普段のような聴衆の姿はなかった。その代わりに、色とりどりのフラッグの列で埋め尽くされ、虹色を描いた。

 

飾られたフラッグはおよそ20万本。新型コロナウイルスで亡くなった40万の国民への追悼や、就任式に参加できなかった招待客や聴衆を表しているという。

 

過去の風景はどうだったのか。4年前のトランプ氏の就任式には多くの聴衆が集まった。その数は、およそ90万人と推計されている。

 

さらに人手が多かったのが、オバマ氏の就任式だ。ABCニュースによると、初当選した2009年には約180万人が集まったという。

 

3つを比べると、こうなる。(冒頭画像)【1月21日 ハフポスト日本版

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上記の就任式風景に象徴されるように、今回就任式はトランプ前大統領は参列せず“思いやりのある”置手紙を残しただけ、パレードも縮小など、異例ずくめとなりました。

 

****バイデン大統領、トランプ氏の置き手紙受け取る 内容は公表せず****

バイデン米新大統領は20日、同日に退任したトランプ前大統領から置き手紙を受け取ったと明らかにした。「とても思いやりのある手紙をもらった」とホワイトハウスで記者団に述べたが、「私的な内容なので、本人と話すまでは公にしない」として説明しなかった。  

 

トランプ氏はこれまで「新政権の幸運を祈る」と述べる一方、昨年11月の大統領選で戦ったバイデン氏を名指ししての祝意は表明していない。20日の離任演説でも直接の言及を避け、バイデン氏の就任式にも出席せずに首都ワシントンを後にした。

 

バイデン氏も就任式の演説で出席したオバマ、ブッシュら歴代大統領に謝意を示す一方で、トランプ氏については言及しなかった。  

 

米国では政権交代時、退任する大統領が新大統領に宛てた私信を執務室の机に置くことが慣例となっている。【1月21日 毎日】

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【就任宣誓の直後に多数の大統領令に署名】

バイデン新大統領はトランプ政治による「失われた4年間」「逆走の4年間」を取り戻すべく、多くの施策に関する大統領令に署名しています。

 

そのひとつひとつを詳しく取り上げることはできませんので、ここでは項目の羅列だけ。

今後、中身に関して取り上げる機会が改めてあると思いますので。

 

****バイデン新大統領の就任初日、大統領令で「脱トランプ政権」前面に****

地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰や、世界保健機関からの脱退撤回、環境保護と新型コロナウイルス対策の強化など、米国のジョー・バイデン新大統領は20日、就任宣誓の直後に多数の大統領令に署名した。

 

就任直後のこうした大統領令への署名には、ドナルド・トランプ前政権からの政策転換を打ち出す狙いがある。

 

署名された大統領令の中には、連邦政府の施設でのマスク着用義務化、イスラム教徒が多数を占める国々からの入国禁止の解除、環境保護と新型コロナウイルス対策の強化、メキシコとの国境の壁建設の中止、連邦政府における民族的少数派の多様性と平等性の拡充するための取り組みなどが含まれた。

 

ロン・クレイン首席補佐官は先日、ホワイトハウスの新しい幹部に渡したメモの中で、新型コロナ対策や米国の経済不況、気候変動や国内の人種的不公平について「緊急の対応を必要としている」とし、「バイデン氏は最初の10日間で、これらの危機に対応するため決然とした行動を取り、世界における米国の地位を取り戻す」と述べている。

 

バイデン氏の側近らも、「同氏がトランプ政権が残した最も甚大な傷を修復するためだけでなく、国を前へ進め始めるために行動を起こしていく」と明らかにしていた。

 

バイデン氏が就任初日から署名した大統領令は以下の通り。

■新型コロナウイルス
・「100日間マスクチャレンジ」
・世界保健機関脱退撤回
・コロナ対策で連邦政府の連携を再構築

■経済救済策
・立ち退き・差し押さえの猶予期間延長
・学生ローンの返済猶予期間を9月30日まで延長

■気候・環境対策
・地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に復帰
・「キーストーンXLパイプライン」の建設許可の撤回、アラスカ州・北極圏国立野生生物保護区の石油・ガス鉱区リース権売却一時停止、気候危機への取り組み

■移民
・「ドリーマー」*計画の保護
・イスラム教徒の入国禁止解除**
・メキシコ国境沿いの壁の建設中止
・トランプ前政権の厳格な移民法執行を変更
・リベリア人グループ強制送還の延期

* 未成年時に親に連れられ不法入国した移民
** 一部のイスラム諸国国民に対する入国禁止令

■人権
・人種間の平等を促進する取り組みに着手
・市民権を持たない住民を米国勢調査から除外するトランプ氏の計画を撤回
・性自認や性的指向に基づく差別の予防・撤廃

■規制
・トランプ政権が退陣間際に発した規制関連の大統領令を見直す大統領覚書を発出

■倫理
・政府に対する国民の信頼の回復と維持(行政府被任命者の倫理誓約)【1月21日 AFP】

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【中国・イランは期待、ロシア・北朝鮮は反応なし】

トランプ大統領に振り回された感もあった各国首脳から多くの祝意・関係改善への期待が寄せられるなかで、トランプ大統領がプーチン大統領に心酔していたとか、何か弱みを握られていたのではいかとか、いろんな話もあったロシアは様子見、北朝鮮は今のところ反応なしといったあたりが目立ちます。

 

****各国首脳、協調に期待 露と北朝鮮は反応なし バイデン米大統領就任****

「米国第一主義」を掲げたトランプ前政権時代に関係が悪化した欧州各国や、貿易戦争など泥沼の対立に陥った中国の首脳は、国際協調や地球環境を重視するバイデン新大統領の就任を歓迎した。

 

フランスのマクロン大統領は20日、バイデン氏が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」復帰に向けた大統領令に署名したことを祝福。「パリ協定にお帰りなさい。地球を守る行動を取るために、私たちは結束しよう」とツイッターに書き込んだ。ドイツのメルケル首相も、「友好関係と協力の新しい一章を楽しみにしている」と期待を寄せた。

 

バイデン氏は20日、トランプ前政権が7月の世界保健機関(WHO)脱退に向けて進めていた手続きも停止した。WHOのテドロス事務局長はツイッターに「より健康で公正で安全で持続可能な世界に乾杯!」と投稿し、喜びを表現した。

 

中国も、バイデン政権下での関係改善に期待する。中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)報道局長は21日、バイデン氏に祝意を示し、「国際社会は中米関係が正しい軌道に戻ることを期待している」と述べた。気候変動問題や新型コロナウイルス対策などの世界的な課題を巡っても連携を呼びかけた。

 

ただ、台湾や新疆ウイグル自治区の問題など、中国が譲れない「核心的利益」を巡る両国の溝は深く、早期に対話を再開できるかは不透明だ。

 

「米新政権が過去4年間の汚点を除去することを期待している」。イランのロウハニ大統領は20日の閣議でこう述べ、バイデン政権の誕生を歓迎した。

 

トランプ氏は2018年にイラン核合意から離脱し、厳しい経済制裁をイランに科してきた。これに対しバイデン氏は、イランが合意上の義務からの逸脱をやめれば米国としても核合意に復帰する姿勢を示している。ただ、イランは核開発を強化する法律を成立させるなど、合意からの逸脱を加速させており、バイデン氏は難しいかじ取りを迫られる。

 

ロシアのプーチン大統領はすぐにコメントを出さず、ペスコフ大統領報道官は20日、「ロシアにとっては何も変わらない」と述べた。

 

ロシアにとって唯一の明るい材料は、2月5日で期限が切れる新戦略兵器削減条約(新START)の延長にバイデン政権が前向きなことだ。露外務省はバイデン氏の就任直後に改めて5年の延長を求める声明を出し、対話を呼びかけた。

 

だが、これ以外の問題では、ロシアに強硬的とみられるバイデン氏への警戒感が広がっている。

 

北朝鮮の国営メディアはバイデン氏の大統領選での勝利や大統領就任に対して、公式な反応をまだ示していない。(後略)【1月21日 毎日】

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【人権・民主主義重視で中国との関係は困難にも】

上記記事にあるように、アメリカとの関係が悪化している中国・イランは期待を寄せていますが、同時に難しい問題が残されているのも事実です。

 

中国との関係では、トランプ大統領の貿易戦争や軍事的緊張の側面はバイデン新政権では和らぐことも推測されていますが、一方で中国が譲れない「人権問題」が前面に出てくることも予想されています。

人権・民主主義は、貿易や軍事のように適当なところで妥協・取引が難しい問題にもなります。

 

****中国、バイデン新政権に不快感 ウイグル族虐殺認定巡り****

中国外務省の華春瑩報道局長は20日の記者会見で、中国政府による少数民族ウイグル族らへの弾圧をジェノサイド(民族大量虐殺)とした米国の認定について「紙くずだ」と強く反発した。

 

バイデン新政権の国務長官候補ブリンケン元国務副長官が認定に同意したことに関し、内政に干渉しないよう求め、不快感を示した。

 

習近平指導部はトランプ政権が、中国が譲歩できない「核心的利益」と位置付ける新疆ウイグル自治区や台湾、香港を巡る問題で次々と強硬政策を取ったことを深刻視。華氏は「米側がこうした問題を利用して中国の利益を損なうことに断固反対する」と述べた。【1月20日 共同】

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また、「中国と対立する民主主義国家」台湾重視のスタンスはトランプ政権から引き続くようで、これも中国を強く刺激します。

 

****台湾代表、米大統領就任式に出席 正式招待は79年断交後初****

20日に行われたジョー・バイデン米新大統領の就任式に、台湾の駐米大使に相当する駐米台北経済文化代表処の蕭美琴代表が正式に招待され、出席した。台湾政府は21日、米中国交正常化により1979年に米台が断交して以来初の正式招待で、今後の先例になるとの見方を示した。

 

蕭代表は、就任式会場で撮影した自身の動画をインターネットに投稿。「台湾の人々と政府を代表して、バイデン大統領と(カマラ)ハリス副大統領の就任式に出席することを光栄に思う」と語り、「民主主義はわれわれの共通言語であり、自由はわれわれの共通目標だ」と続けた。

 

台湾外交部は、台湾の駐米代表が米大統領就任式の実行委員会から「正式な招待を受けた」のは数十年ぶりだと発表。与党・民主進歩党は「42年ぶりの新たな進展」だと評価した。

 

蔡英文総統は、バイデン大統領の就任宣誓後にツイッターを更新し、「より良い方向を目指すための国際的な力として、共に取り組んでいく準備はできている」とバイデン氏に呼び掛けた。 【1月21日 AFP】

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【アメリカとの交渉に向け、圧力をかけるイラン 米国内には強い抵抗感も】

イランは、バイデン新政権との交渉に期待すると同時に、交渉のカードとして新たな挑発も見せています。

 

****バイデン就任直前にホルムズ海峡の緊張高めたイランの狙い****

1月4日、イランは二つの新たな挑発に出た。

 

一つは、濃縮ウランの濃縮度の20%への引き上げプロセスの開始である。濃縮度を5%から一層上げることは、米国が脱退した2015年のイラン核合意に対するさらなる違反であり、兵器級の濃縮ウラン(90%の濃縮度)の生産に一歩近づくことになる。

 

もう一つは、革命防衛隊の海軍が、「海洋汚染防止法に違反し続けた」として韓国(昨年、海賊対策でアデン湾に派遣している艦艇の活動範囲をホルムズ海峡に拡大した)のタンカーを拿捕、5名の韓国人を含む20名の乗組員全員を拘束したことである。(中略)

 

今回、濃縮ウランの濃度を20%に引き上げたり、韓国のタンカーを拿捕したりしたのは、イランが米国との交渉を有利に進めるために国際社会に圧力を掛けて国際社会がバイデン新政権に圧力を掛けるよう仕向けようと目論んだのではないだろうか。(後略)【1月21日 WEDGE】

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中国同様、イランに対しても、単にトランプ氏個人の問題ではなく、アメリカ国内世論・議会に強い抵抗感がありますので、バイデン新大統領としても扱いが難しいと推測されます。

 

【ファウチ所長 トランプ大統領のもとで事実や科学的な知見に基づく姿勢を保つことはたやすくなかった】

バイデン新政権の施策の中身については、改めて別機会で取り上げていきますが、コロナ対策の中心にいた米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長の発言が印象的でした。

 

ファウチ氏は、WHOのオンライン執行理事会に米国代表として出席、バイデン政権はトランプ前政権が決めたWHO脱退を取り消し、「新型コロナウイルス対策のために協働し、連帯する用意がある」と強調しました。

 

また、トランプ前政権の「米国第一」から転換し、バイデン新政権が新型コロナウイルスワクチンの公平な供給を目的とした国際的な枠組み「COVAX」への参加を検討していることを明らかにしました。

 

****トランプ氏と事実や科学で対立、辛かったと述懐 ファウチ所長****

 米国の新型コロナウイルス対策の推進役の1人であるファウチ米国立アレルギー感染症研究所長は21日までに、トランプ政権下での自らの処し方に触れ、事実や科学的な知見に基づく姿勢を保つことはたやすくなかったと振り返った。

 

米ハーバード・ビジネス・レビュー誌との会見で述べた。「全米向けテレビ放送の前でトランプ大統領と矛盾する発言を示すのは愉快なことではなかった」と指摘。「喜びなどなかった」と述べた。

 

同所長は、自らが奉仕する政権が誰に率いられてあろうとも真実を告げることを信条にしていたとも述懐。

 

トランプ政権下での体験に言及し、大統領が語るかもしれない事柄と感情が絡まず事実に基づいた行動を示したとしても直接的な対立の立場にしばしば追い込まれるようなことは特に辛かったとし、そういう自らの姿勢を貫くのは容易ではなかったとまとめた。【1月21日 CNN】

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【連帯の呼びかけ】

最後に、バイデン新大統領の就任演説から

 

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今日のこの1月の日に、私も全身全霊を込めています。アメリカをひとつにまとめるため。国民の連帯、国の連帯を実現するため。この大義のため、すべてのアメリカ人に協力を呼びかけます。怒り、不満、憎悪、過激主義、無法状態、暴力、病気、失業、そして希望の喪失――。こうした敵に立ち向かうため、みんなで連帯してほしいと。(中略)

 

この時期に「連帯」などと言うと、ばかげた幻想だと思う人もいるのは承知しています。私たちを分断する力は深く浸透していますし、その力は本物です。

 

ただ、決して新しいものではありません。私たちの歴史は、誰もが平等に作られたというアメリカの理想と、その一方で人種差別や移民排斥主義や恐怖によって国が引き裂かれてきたという厳しく醜い現実が、常にせめぎ合う中で作られてきました。この戦いは絶え間ないもので、勝利は決して確実ではありません。

 

南北戦争や大恐慌、世界大戦、9/11、困難と犠牲と失敗が相次ぐ中、それでも常に私たちの善性がまさってきました。

 

大変だったその時々に、必要な人数が集まり、力を合わせて、この国を前進させてきたのです。今回もまたそれができます。歴史と信念と理性が道を示してくれます。連帯の道を。(後略)【1月21日 BBC】

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