(2021年1月6日午後3時46分、米ワシントンDCの連邦議会議事堂 Photo by Masuo Yokota【2022年11月2日 DIAMONDonline】)
【結局「バイデンvs.トランプ」再対決か】
米国のバイデン大統領が25日、ビデオ動画を公開し、2024年大統領選への再選出馬を正式に表明しました。
バイデン大統領の再選出馬は既定路線で、民主党内に有力な対抗馬がなく特に急ぐ必要もないのの、あまり遅くなると資金集め等の選挙戦準備に支障も出る・・・といったことでタイミングを見計らっていました。
聴衆を集めてのスピーチではなく、“ビデオ動画”という形をとったのは、高齢のためか、かねてより“言い間違いが多い”とされていることから、そうしたミスが出ない形式を選んだと言われています。
****バイデン米大統領、再選出馬を正式表明 「民主主義を守る」****
バイデン米大統領(80)は25日、2024年の大統領選への再選出馬を正式に表明した。ネット上に動画を公開した。
バイデン氏は歴代の米大統領ですでに最高齢。2期目の任期終了時の年齢は86歳と、米国男性の平均寿命を約10年上回っており、有権者がさらに4年の任期を託すかが問われることになる。
同氏は動画で米国の民主主義を守ることが自らの仕事だと表明。動画は、トランプ前大統領の支持者が2021年1月6日に連邦議会議事堂に突入した際の映像で始まっている。
バイデン氏は「4年前に出馬した時、私は私たちが米国の魂を懸けた闘いの中にいると言った。私たちはまだ闘いの中にいる」とし「この仕事を終わらせよう。私たちにはそれができる」と訴えた。
同氏は共和党の綱領は米国の自由の脅威だと主張、女性の医療制限や公的年金の削減に反対する意向を示した。トランプ氏のスローガン「米国を再び偉大に(MAGA)」を掲げる「MAGA過激派」も非難した。
昨年11月に次期大統領選への出馬を表明したトランプ氏は、バイデン氏の再出馬表明を受け、自身のソーシャルメディア上で「米国の家庭は半世紀ぶりに最悪のインフレによって壊滅的な打撃を受けている。銀行も破綻している」とバイデン氏の手腕を批判。アフガニスタンからの米軍撤収に言及し、「アフガンで降伏したように、エネルギーの独立を放棄した」と非難した。
民主党内にはバイデン氏の有力対抗馬はいないとみられている。
副大統領候補には、ハリス副大統領が再出馬する。
ロイター/イプソスの世論調査によると、80歳のバイデン米大統領は高齢のため来年の大統領選に出馬すべきでないとの回答が民主党支持者の約半分を占めた。
バイデン氏が再選出馬を表明する動画を公開したのに合わせ、共和党全国委員会(RNC)は2期目のバイデン政権でもたらされるとする「ディストピア的」な動画を公開。
台湾が中国の「侵略」を受け、台北の高層ビルが倒壊する様子や、数万人の移民が米国に不法入国する様子などの合成された映像が映し出され、「これまでで最も弱い大統領がもし再選されたらどうなるか?」と問いかけている。【4月25日 ロイター】
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バイデン大統領の“高齢”は多くが意識するところですし、民主党内には左右の対立もありますが、“バイデン氏は就任から2年余りで、インフラ投資法や対中国を意識した半導体補助金法、銃規制強化法など重要な法整備を超党派で実現。昨年の中間選挙で上院の多数派を維持し、下院でも議席減を最小限にとどめたことで、民主党内の「バイデン降ろし」は影を潜めた。”【4月25日 時事】とのこと。
特に、中間選挙を乗り切ったことで、本人も自信を深めたのでしょう。
こうした“実績”からしても、また、共和党・トランプ氏と闘うためにもバイデン氏が最適ということですが、他の有力候補がいないというのも実情。
おそらく民主党内の可能性のある者は、次の次を狙っているのでしょう。
ただ、“高齢”を考えると、再選しても“任期途中でハリス副大統領に交代“という可能性も、これまで以上に強くなります。思いがけない形で初の女性大統領・・・というのは、話が先走り過ぎ。
一方の共和党では、トランプ氏が訴追によって「弾圧の被害者」として支持を集め、対抗馬と見られていたフロリダ州のデサンティス知事は「失速」気味。
****2024米大統領選、共和党はデサンティスが早々に失速 反トランプ派に危機感****
米国では、共和党員や元共和党員でありながらドナルド・トランプ前大統領を絶対に支持しない「ネバー・トランパーズ」の間に危機感が広がっている。
2016年にトランプ氏が大統領に就任して以来、この一派は一貫して同氏の政治生命を終わらせる活動をしてきた。それにもかかわらず、24年の次回大統領選が始まった今、トランプ氏の勢いが非常に強く、このままでは共和党の大統領候補指名を勝ち取ってしまうのではないかとみられているからだ。
懸念を誘っているのは、トランプ氏の有力な対抗馬になると目されてきたフロリダ州のデサンティス知事の人気が失速気味であることだ。
デサンティス氏は、保守的な価値観を堅持するためのいわゆる「文化戦争」に夢中になっている間に、政治資金調達や支持率、党候補指名のための味方議員獲得といった面でトランプ氏に圧倒されるリスクが出てきている。
4月上旬の共和党員と無党派層を対象としたロイター/イプソス調査では、トランプ氏支持率は58%とデサンティス氏の21%を大きく引き離した。共和党員のみに対する別の幾つかの調査でも、ここ数週間でトランプ氏のデサンティス氏に対する優位が強まった。
このためネバー・トランパーズのデサンティス氏への期待感は弱まりつつあり、中には実質的に白旗を挙げた向きもいる。(中略)
訴追問題が転機
昨年11月の議会中間選挙で、トランプ氏の推薦した共和党議員が何人も敗北し、同氏の求心力に陰りが見えた以上、次の大統領候補は別の誰かを探そうとの機運が党内に生まれた。
そこで格好の人物とみなされたのが、保守的な政策実現を約束してフロリダ州知事再選を果たしたデサンティス氏だ。
ところが今年4月、トランプ氏が不倫相手とされる女性に口止め料を支払ったことを巡る業務記録改ざんなどの疑いで起訴されると、共和党は一致結束して同氏を擁護。ワシントンの連邦議員だけでなく、デサンティス氏の地元フロリダ州議会でもトランプ氏支持者が急増した。(中略)
トランプ氏側近によると、同氏の選挙資金調達にも弾みが付き、今年第1・四半期の調達額は1900万ドル近くに達した。その大半は同氏訴追後に調達されている。多くの共和党員は訴追が政治的動機に基づいていると考えている。
これに対してデサンティス氏は、学校で性的少数者について教えることを制限したり、この政策を批判したウォルト・ディズニーに対して州が長年付与してきた特別待遇を奪う取り組みを進めたりして、トランプ氏の中核的な支持層にアピールを試みているが、成功していないように見える。
ディズニーとの対立を巡ってはトランプ氏が今週、デサンティス氏を「敗者」だとこき下ろしたのに、デサンティス氏は言い返さないばかりか、訴追問題でトランプ氏の援護に回った。
共和党ストラテジストでずっとトランプ氏に批判的なサラ・ロングウェル氏は「デサンティス氏は訴追問題でトランプ氏側に立ったことで、『トランプ劇場』における助演俳優になってしまっている。つまり(トランプ氏に比べて)弱々しく見える」と解説する。(後略)【4月25日 Newsweek】
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【有権者が望んでいない再対決組み合わせ 「疲労」と「恐怖」】
かくして、2024年大統領選挙は再び「バイデンvs.トランプ」となりそうですが、以前も書いたように、バイデン・民主党サイドとしては、この再対決の構図は“トランプ阻止”で党内をまとめ、トランプ氏に否定的な中間層も広く取り込める“望ましい構図”でしょう。今後、トランプ氏の訴追が相次ぐであろうことも“本選”ではバイデン氏に有利となるでしょう。
ただ、有権者の立場で言えば、「他に誰かいないのか?」と言いたくなる組み合わせです。
****バイデン氏もトランプ氏も再出馬望まず、米世論調査****
ロイター/イプソスの世論調査によると、80歳のバイデン米大統領は高齢のため来年の大統領選に出馬すべきでないとの回答が民主党支持者の約半分を占めた。
また国民の約3分の2がバイデン氏もトランプ前大統領も再出馬すべきでないと考えていることが明らかになった。
民主党支持者の44%がバイデン氏は再選を目指すべきではないとし、共和党支持者の34%はトランプ氏の再出馬に否定的だった。
バイデン氏を大統領として評価するとの割合は41%で、民主党支持者の間では74%だが共和党支持者では10%にとどまった。
バイデン氏は大統領として過去最高齢で、再選されれれば2期目の任期終了時には86歳になっている。世論調査では民主党支持者の61%が同氏は大統領としては年を取りすぎていると答えた。
これに対し共和党支持者の35%が76歳のトランプ氏は高齢すぎると回答した。
トランプ氏は共和党の候補指名争いでトップを走り、支持率が50%と24%のデサンティス・フロリダ州知事を引き離している。
本選でバイデン氏とトランプ氏の対決となった場合の支持率は、バイデン氏が43%、トランプ氏は38%となっている。無党派層の支持ではバイデン氏がリードしている。
バイデン氏対デサンティス氏の勝負となった場合、バイデン氏の43%に対し、デサンティス氏は34%とさらに差が広がった。(後略)【4月25日 ロイター】
また国民の約3分の2がバイデン氏もトランプ前大統領も再出馬すべきでないと考えていることが明らかになった。
民主党支持者の44%がバイデン氏は再選を目指すべきではないとし、共和党支持者の34%はトランプ氏の再出馬に否定的だった。
バイデン氏を大統領として評価するとの割合は41%で、民主党支持者の間では74%だが共和党支持者では10%にとどまった。
バイデン氏は大統領として過去最高齢で、再選されれれば2期目の任期終了時には86歳になっている。世論調査では民主党支持者の61%が同氏は大統領としては年を取りすぎていると答えた。
これに対し共和党支持者の35%が76歳のトランプ氏は高齢すぎると回答した。
トランプ氏は共和党の候補指名争いでトップを走り、支持率が50%と24%のデサンティス・フロリダ州知事を引き離している。
本選でバイデン氏とトランプ氏の対決となった場合の支持率は、バイデン氏が43%、トランプ氏は38%となっている。無党派層の支持ではバイデン氏がリードしている。
バイデン氏対デサンティス氏の勝負となった場合、バイデン氏の43%に対し、デサンティス氏は34%とさらに差が広がった。(後略)【4月25日 ロイター】
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****バイデン氏とトランプ氏が再戦なら…「疲弊」「恐怖」 米世論調査****
2024年の米大統領選に向けて、民主党のバイデン大統領(80)と共和党のトランプ前大統領(76)との「再戦」を考えた場合の気持ちを問う世論調査(複数回答可)があり、38%が「疲弊」と答えた。
上位には「恐怖」(29%)、「悲しみ」(23%)、「怒り」(23%)などマイナスな回答が並んだ。バイデン氏は近く再選に向けて出馬表明すると報じられ、トランプ氏も党候補指名レースのトップを走っているが、世論は「再戦」を望んでいないことが浮き彫りになった。(後略)【4月24日 毎日】
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【「分断」の深刻化、それを煽る「仕掛け人」で現実味を増す「内戦」の危険】
「疲弊」「恐怖」の再対決の結果がどうなるのかは私が知る由もありませんが、おそらく今でも深刻な「分断」が更に深まることは予想されます。
「分断」が行きつく先は・・・「内戦」
****国の分断を回避するために今、アメリカが考えていること 世論調査で浮き彫りになる米国人の変化****
(経口妊娠中絶薬「ミフェプリストン」をめぐり)米国で人工妊娠中絶の是非を巡る対立がさらに深まっている。(中略)
今回の対立も最終的には連邦最高裁判所(最高裁)に持ち込まれる可能性が高く、その判断に注目が集まっている。最高裁は昨年6月、49年ぶりに中絶の権利の合憲性を否定する判決を下しているからだ。
この判決が出るとリベラル陣営は激怒し、米国社会は大混乱に陥ったことは記憶に新しい。ニューヨーク・タイムズは当時「(アメリカ合衆国ではなく)アメリカ分裂国になってしまった」と評したほどだ。直後にビジネスインサイダーが実施した世論調査でも43%が「10年以内に内戦が発生するだろう」と回答した。
トランプ氏の起訴をめぐっても
残念ながら、最近の米国には頭痛の種が尽きない。 トランプ前大統領の起訴も国を2分する前代未聞の出来事だ。
4月3日に公表されたCNNの世論調査によれば、民主党支持層の94%が「よくやった」と回答したのに対し、共和党支持層の79%が「間違った起訴」との判断を下した。(中略)
米国で愛国心の低下が顕著になっているのも気になるところだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が3月22日に公表した世論調査によれば、「愛国心は極めて重要」と回答した割合は38%にとどまった。同様の調査を実施した1998年に70%が「極めて重要」と回答しており、その落差は際立っている。(中略)
多様な人種、移民、宗教からなる米国で愛国心は国を1つにつなぎとめる唯一の精神的なよりどころとされてきた。だが、個人主義が浸透した結果、米国人としての共通の価値観よりも、それぞれが持つ異なる人種的、文化的バックグラウンドに関心が集まる傾向が強まったと言われている。(後略)【4月21日 藤和彦氏 デイリー新潮】
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もちろん、アメリカが現実に内戦状態になるとは私は今でも思っていません。
ただ、以前なら内戦に関する記事は読む気にもならなかったのが、今では何が書かれているのか気になるところも。
巷では、バーバラ・ウオルター・カリフォルニア大学教授の著書『アメリカは内戦に向かうのか』がベストセラーになっているとか。
****「白人の地位格下げ」で10年以内に勃発する「アメリカ民族内戦」のおぞましすぎる末路【米国一流政治学者が予言】****
「10年以内に内戦勃発」
「トランプ起訴」の是非は、民主党支持層と共和党支持層で激しい意見対立を生んだ。さらに対立を深めかねない人工妊娠中絶をめぐる問題がアメリカで浮上している。
すでに「10年以内に米国で内戦が発生するだろう」とする意見が4割にも上っているが、本当に内戦状態に突入するのか。(中略)
「格下げ」される白人の怒り
日本でも「米国で内戦が起きるのでは」との懸念が高まる中、このほど『アメリカは内戦に向かうのか(日本語版)』(東洋経済新報社・2023年3月)という物騒なタイトルの書籍が出版された。アメリカではすでにベストセラーになっている。
アメリカを代表する政治学者による憂国の書だ。
著者のバーバラ・ウオルター・カリフォルニア大学教授(政治学)は、世界の内戦に共通する要因を見つけ出し、米国が内戦の危機の瀬戸際にあることを論じている。
ウオルター氏が見つけ出した最初の要因は“アノクラシー”という政治形態だ。アノクラシーとは「部分的民主主義」と訳されるが、民主政が専制政に移行する過程などを指す。
ウオルター氏によれば、2021年1月に発生した連邦議会襲撃事件により米国はアノクラシーの状態に陥ったという。
アノクラシーとともに内戦を引き起こす共通の要因は「格下げ」だ。
格下げとは、社会の支配的階層にあった人々(土着の民)がその地位を失い、二級市民に転落していく現象のことだ。
米国では今でも白人がマジョリテイーだが、2012年に新生児に占める非白人の比率が5割を超え、全人口ベースでも2045年に非白人の比率が過半数になると予測されている。
内戦の「仕掛け人」の正体
それだけではない。 1989年以降、非大卒の白人労働者の生活の質を示すほぼすべての指標(所得、持ち家、結婚比率など)が低下しているのだ。
ウオルター氏によれば、人々を政治的暴力に駆り立てるのは「失う」ことの痛みだ。
名誉毀損防止同盟によれば、昨年、全米で白人至上主義に絡む事件が6751件発生した。前年に比べ約40%急増し、過去最多を記録した。
内戦勃発のリスクが高まる状況下でウオルター氏が最も危険視するのは「民族主義仕掛け人」の存在だ。
その典型がトランプ氏であることは言うまでもない。
「黒人はみな貧しくて暴力的、メキシコ人はみな犯罪者だ」と決めつけるトランプ氏のやり方はアイデンテイー・ポリテイクス(人種や民族、宗派などの利益を代弁する政治)の典型だ。
現在の共和党は白人のための政党になったと言っても過言ではない。(中略)
だが、いま米国が奇しくも(スンニ派なのか、シーア派なのかが、極めて敏感に意識されるようになり、内戦となった)20年前のイラクと同様の状態となり、白人なのか、非白人なのかという意識が敏感になり「アイデンティティ・ポリティクス」が鮮明になる状況は、「イラク戦争の呪い」ではないかと思いたくもなる。
予言どおりに事態は進んでいる… ウオルター氏は、『アメリカは内戦に向かうのか』(英語版)を2022年1月に上梓しているが、その中で「内戦前夜に過激派は国の混乱を加速させるために公共施設(交通、電力などの設備)に攻撃を繰り返す」と警告を発している。
それを裏付けるように、今年2月にアメリカ各州で国家転覆を狙う「加速主義者」による電力インフラへの執拗な攻撃が相次いだ。
「米国で内戦が勃発する」と考えたくもないが、考えたくないことがしばしば起きることは歴史が証明するところだ。(後略)【4月25日 藤和彦氏 現代ビジネス】
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【「分断」克服・「内戦」回避のカギと“禁じ手”】
ウオルター氏は内戦を克服した事例として、南アフリカのアパルトヘイト廃止をあげ、黒人側の「英雄」マンデラ氏と協力してことにあたった、地位を失いつつあった白人側のデクラーク大統領(当時)を高く評価しているようです。(両者は共同でノーベル平和賞を受賞しています)
アメリカの2024年大統領選挙後、ポピュリズム的に「怒り」を扇動するのではなく、南アのデクラーク元大統領に相当するような「分断」克服、「内戦」回避に本気で尽力できる指導者が、地位を失いつつある白人の政党・共和党側に出現するか・・・・が、事態収拾のカギになりそうです。
ただ、「分断」克服・「内戦」回避の“禁じ手”は、共通の敵を外につくること。
“1930年代の米国も社会の分断にあえいでいたが、皮肉なことに、起死回生の機会を提供したのは第二次世界大戦だった。日独伊という「強大な敵」が登場したことで、米国社会は一致団結することができたという経緯がある。”【4月21日 藤和彦氏 デイリー新潮】
そして今、アメリカ議会・世論が一致できるのは「中国の脅威」
この“禁じ手”は、アメリカ内戦以上に恐ろしい。