(韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は24日午後、米国を国賓として訪問するため、ソウル南方、京畿道・城南のソウル空港(軍用空港)から大統領専用機でワシントンへ出発した。出発前にあいさつする尹大統領夫妻。5泊7日の訪米で、26日(現地時間)にバイデン米大統領と韓米首脳会談を行い、27日には米上下両院合同会議で演説を行う。【4月24日 聯合ニュース】)
【韓国大統領の12年ぶりの「国賓」訪米】
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は24~29日の日程で、アメリカを国賓として訪問します。韓国大統領の「国賓」訪米は2011年の李明博(イ・ミョンバク)大統領以来、12年ぶりとなります。
外交的には(あるいは、格式を重視する立場からは)この「国賓待遇」ということが重視されるようです。
****「反日」をやめた韓国大統領をアメリカが“国賓”待遇…!「米韓首脳会談」実現でも韓国大統領の支持率が下がり続ける特殊事情【元駐韓大使が解説】****
「国賓訪米」を勝ち取った韓国外交
尹錫悦大統領の訪米が迫っている。
米国のホワイトハウスが「尹錫悦大統領の米国国賓訪問日程が来月(4月)26日に予定された」「日程に国賓晩餐が含まれる」と発表したのは3月7日のことだった。これは尹錫悦政権が日韓の元徴用工問題解決案を発表した翌日である。
米大統領は、任期中に数回の国賓招待を行うが、バイデン大統領になってから、国賓訪問はフランスのマクロン大統領に次いで2人目である。実際に米国を訪問し、尹大統領が厚遇を受ければ、韓国人の自尊心をくすぐり尹大統領への評価につながるだろう。
しかし、韓国国民は訪日の際、尹大統領が一方的に譲歩し、日本からの見返りが少なかったのではないかと不満を抱いており、尹大統領の支持層である保守系も訪日を評価することに躊躇しているようである。
尹大統領が訪米で外交への信頼を取り戻し、日米韓の結束に支持を取り付けられるかが訪米の大きな課題である。
さらに、懸念材料が浮上している。韓国の大統領室に対する諜報活動を行っていた米国政府の機密文書が流出した。 これによれば、米国政府の圧力を懸念して、韓国大統領室の国家安保室長と外交秘書官が、ウクライナへの殺傷武器支援を不可とする原則をかいくぐり、ひそかに許与する策を検討していたことが記されている。
そのため、米国が同盟国・韓国に行っていた諜報活動に対する追及を韓国政府が幕引きしようとしていることへの不満も高まった。
その結果、韓国ギャラップの世論調査によれば、尹大統領への支持率はさらに下がり27%になった。
尹大統領が訪米するだけで評価されるとの期待は既に持てなくなった。尹大統領訪米で外交への信頼を取り戻し、日米韓の結束に支持を取り付けるためには韓国の立場を会談でより明確に反映させる必要があるだろう。(後略)【4月18日 現代ビジネス】
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なお、21日発表の韓国ギャラップの世論調査による大統領支持率は、国賓訪米が一定に評価され、4ポイント改善して31%となっています。もっとも、24日発表の別調査によれば、前週から1ポイント下落した32.6%でした。
【尹大統領 北朝鮮への強い警戒感から日本との関係改善を急ぐ 韓国国内で受け入れられるか?】
韓国ギャラップの世論調査の数字で見ると、2月末の37%からジリジリと数字を下げていました。
数字が伸び悩む、あるいは低下する大きな理由のひとつは、尹大統領が進める日本との関係改善に対し、やはり韓国国内に批判・戸惑いが根強くあるためでしょう。
韓国の尹大統領は、訪米を前に米紙ワシントン・ポストと行ったインタビューで「(日本が)100年前の(植民地支配の)歴史のためひざまずかなければならないという考えは受け入れられない」と述べています。
****尹大統領 日本に「100年前のことでひざまずけ」とは言えない****
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は24日に報じられた米紙ワシントン・ポストとのインタビューで、韓日関係の正常化に絡み「今、欧州では残酷な戦争を経験しても未来のために当事国が協力している」とし、「100年前のことで(日本に対し)『無条件にだめ』だとか『無条件にひざまずけ』というのは受け入れられない」と述べた。大統領室が伝えた。
ワシントン・ポストによると、尹大統領は約90分にわたり行われたインタビューで、日本に関する決定について詳しく説明し、大統領選の期間中に自身の考えについて透明に伝えたと話したという。
同紙はまた、尹大統領が「韓国の安全保障上の不安があまりにも緊急な事案であるため、日本政府との協力を先送りすることはできなかった」とし、「これに対して批判的な人々は絶対に納得しないだろう」と述べたとも伝えた。
(中略)大統領室によると尹大統領は韓日関係の改善と関連し「わが国の憲法の自由民主主義という精神に照らしてみれば必ずしなければならないこと」とし、「価値を共有する国家同士は歴史問題であれ懸案問題であれ意思疎通を通じて解決できる」と述べた。 また「私は(大統領)選挙の時、国民にこれを公約として掲げた」と強調したという。
大統領室は尹大統領の発言を紹介したほか、別途の資料を配布し、尹大統領が「100年前のこと」と発言した背景について「このようなアプローチは未来の韓日関係に役立たないという趣旨だった」と説明した。
大統領室は「韓日関係の正常化は必ずしなければならず、遅らせることができないこと」とし、「欧州では残酷な戦争を経験しても未来のために戦争当事国が協力するように、韓日関係の改善は未来に向けて進むべき道」と繰り返し強調した。
また1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が日本の国会で行った演説で、「50年にも満たない不幸な歴史のために、1500年にわたる交流と協力の歴史全体を無意味なものにするということは、実に愚かなこと」と述べたと紹介し、尹大統領の発言はこれと同様の意味と伝えた。【4月24日 聯合ニュース】
ワシントン・ポストによると、尹大統領は約90分にわたり行われたインタビューで、日本に関する決定について詳しく説明し、大統領選の期間中に自身の考えについて透明に伝えたと話したという。
同紙はまた、尹大統領が「韓国の安全保障上の不安があまりにも緊急な事案であるため、日本政府との協力を先送りすることはできなかった」とし、「これに対して批判的な人々は絶対に納得しないだろう」と述べたとも伝えた。
(中略)大統領室によると尹大統領は韓日関係の改善と関連し「わが国の憲法の自由民主主義という精神に照らしてみれば必ずしなければならないこと」とし、「価値を共有する国家同士は歴史問題であれ懸案問題であれ意思疎通を通じて解決できる」と述べた。 また「私は(大統領)選挙の時、国民にこれを公約として掲げた」と強調したという。
大統領室は尹大統領の発言を紹介したほか、別途の資料を配布し、尹大統領が「100年前のこと」と発言した背景について「このようなアプローチは未来の韓日関係に役立たないという趣旨だった」と説明した。
大統領室は「韓日関係の正常化は必ずしなければならず、遅らせることができないこと」とし、「欧州では残酷な戦争を経験しても未来のために戦争当事国が協力するように、韓日関係の改善は未来に向けて進むべき道」と繰り返し強調した。
また1998年に当時の金大中(キム・デジュン)大統領が日本の国会で行った演説で、「50年にも満たない不幸な歴史のために、1500年にわたる交流と協力の歴史全体を無意味なものにするということは、実に愚かなこと」と述べたと紹介し、尹大統領の発言はこれと同様の意味と伝えた。【4月24日 聯合ニュース】
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尹大統領は3月21日の閣議でも「日本は数十回にわたって歴史問題で反省と謝罪を表明している」と約20分にわたって熱弁を振るい、物議を醸したことがあります。
日本からすれば発言内容は、いずれも「当然」であり、やっと正常に戻りつつあるというところですが、「韓国国内で、これが受け入れられるのだろうか?」という不安も。
対日政策が批判を浴びて政権が求心力を失えば、せっかく動き始めた日韓関係改善も振り出しに戻ってしまいかねません。尹大統領が日本との関係改善を急ぐ背景には、北朝鮮への強い警戒感があります。
“野党はこうした大統領の姿勢を「国を売り飛ばす大統領だ」と批判している”【4月24日 読売】とのこと。尹大統領は信念を貫くタイプのようですが、それが吉と出るか、凶と出るか・・・。
政府レベルの日韓関係正常化の方は、着実に進んでいます。
****日本を「ホワイト国」に復帰 韓国政府 経済協力正常化すすむ****
韓国政府はきょう、輸出手続きを簡略化できるいわゆる「ホワイト国」に日本を復帰させました。
日韓両国は、いわゆる元徴用工を巡る問題などで関係が悪化していた2019年、互いを輸出管理の優遇対象である「ホワイト国」から外していました。
先月の日韓首脳会談を受け韓国側が経済協力の正常化に向けて具体的な措置を取ったもので、日本の復帰に関する改正案がきょう官報に掲載されました。
韓国政府は先月も日本の輸出管理厳格化を受けたWTO=世界貿易機関への提訴を取り下げていました。
両国は今週も、輸出管理に関する政策対話を実施する予定で、今後は韓国をホワイト国に復帰させる日本側の手続きが進むとみられます。【4月24日 FNNプライムオンライン】
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【日本に対する以上に中国・北朝鮮への好感度が低い韓国若年層】
かねてより言われているように、韓国の特に若い層は日本文化を好意的に受入れており、日本への好感度もそんなに悪くありません。むしろ中国への嫌悪感が目だっています。また、北朝鮮との統一についてもネガティブです。
****20〜30代6割「南北統一必要でない」 北より中国の好感度低く=韓国****
韓国市民団体「正しい言論市民行動」が23日発表した20〜30代を対象にした調査の結果によると、北朝鮮との統一について「必ず必要というわけではない」と回答した人が61%に上った。「必ず必要」は24%、「分からない」は14%だった。
朝鮮半島情勢に影響を与える主要国に対する好感度では、中国に対する好感度が最も低く、北朝鮮も下回った。中国に対し91%が「好感を持っていない」と回答。北朝鮮に対しては88%、米国には67%。日本には63%が「好感を持っていない」と答えた。
北朝鮮について「脅威だ」と答えたのは83%、中国が脅威だとの回答は77%に上った。米国が「安全保障で助けになる」との回答は74%だった。日本の場合は「脅威だ」との回答が53%で、「安全保障で助けになる」は37%だった。
また、韓国社会について82%が「対立が深刻だ」と答えた。保守と進歩(革新)の対立を上げたのは83%で、与野党の対立、貧富の差による階層の対立はそれぞれ84%に上った。
労働組合の活動に対する評価は「否定的」が42%で、「肯定的」(34%)を上回った。韓国社会の公正性については「不公正だ」が69%で。「公正だ」(20%)を大きく上回った。
調査は韓国世論評判研究所が13〜18日に20〜39歳の男女1001人を対象に実施した。【4月23日 聯合ニュース】
朝鮮半島情勢に影響を与える主要国に対する好感度では、中国に対する好感度が最も低く、北朝鮮も下回った。中国に対し91%が「好感を持っていない」と回答。北朝鮮に対しては88%、米国には67%。日本には63%が「好感を持っていない」と答えた。
北朝鮮について「脅威だ」と答えたのは83%、中国が脅威だとの回答は77%に上った。米国が「安全保障で助けになる」との回答は74%だった。日本の場合は「脅威だ」との回答が53%で、「安全保障で助けになる」は37%だった。
また、韓国社会について82%が「対立が深刻だ」と答えた。保守と進歩(革新)の対立を上げたのは83%で、与野党の対立、貧富の差による階層の対立はそれぞれ84%に上った。
労働組合の活動に対する評価は「否定的」が42%で、「肯定的」(34%)を上回った。韓国社会の公正性については「不公正だ」が69%で。「公正だ」(20%)を大きく上回った。
調査は韓国世論評判研究所が13〜18日に20〜39歳の男女1001人を対象に実施した。【4月23日 聯合ニュース】
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「好感を持っていない」が“米国には67%。日本には63%”・・・アメリカより日本の好感度が高い!? びっくりしたのですが、これは「誤記」ではないでしょうか。
YAHOO!ニュース(コリア・レポート編集長 辺真一氏)の記事“韓国人の対日イメージが好転 北朝鮮と中国を上回り、米国に次いで2位に浮上”では“周辺諸国に対する好感度は1位が相も変わらず米国(67%)で、2位が日本(37%)となっていた。以下、北朝鮮(12%)、中国(9%)と続いている。”ということです。
こちらが正しいとすれば、【聯合ニュース】記事は、アメリカの「好感を持っていない」と「好感を持っている」の数字が逆になっています。
(どういう訳か、この調査結果の報道は「誤記」が多く、【レコードチャイナ】記事では、日本の数字が逆になっています。)
それにしても、日本の好感度37%という数字は「反日」全盛期からすれば驚異的な数字です。
【台湾情勢に関する尹大統領の発言めぐり中韓の批判合戦】
韓国世論の中国への反感はキムチ起源論争や米軍のミサイル防衛システムTHAAD配備をめぐる中国の強圧的対応などがあってのことですが、日本との関係改善を進める伊大統領も中国に対して厳しい姿勢を見せており、台湾をめぐる「力による現状変更の試みのために緊張が生じた」との発言は中国・韓国の批判合戦の様相を呈しています。
****尹大統領の発言めぐり中国と韓国が批判合戦 台湾問題に言及で***
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が海外メディアのインタビューで台湾問題に言及したことをめぐり、中国と韓国が20日、批判合戦を展開した。
中国外務省の汪文斌副報道局長が定例記者会見で「中国の内政問題だ。他人が口出しすることではない」と強くけん制したのに対して、韓国外務省は「中国の国家としての格を疑わせる深刻な外交的欠礼だ」と激しく反発した。
尹氏の発言があったのはロイター通信が19日に配信したインタビュー。尹氏は台湾海峡の緊張について「(中国による)力による現状変更の試みのために緊張が生じたが、われわれは国際社会とともに、このような変化には絶対反対する」などと述べた。
韓国外務省は「韓国首脳が国際社会の普遍的な原則に言及したのに対し、中国外務省の報道官は口にしてはならない発言をした」とも批判。韓国メディアは「国家の格という単語を使いながら、韓国政府が中国の外交当局を批判したのは最近では例がない」(保守系の朝鮮日報)などと報じている。
検事総長経験者の尹氏は自由と民主主義、法の支配を重視する。安全保障面で日米韓による連携を目指す姿勢が鮮明だ。26日には米首都ワシントンで、バイデン米大統領との首脳会談を控える。【4月21日 毎日】
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更に21日は・・・
“台湾問題での非難は「危険な結末」招く 中国外相”【4月21日 AFP】
****韓国「言動を慎重に」 中国と台湾情勢巡り再び応酬****
韓国外交部の当局者は21日、中国の秦剛国務委員兼外相が同日開かれたフォーラムで「台湾問題で火遊びする者は必ず身を焦がす」などと発言したことを巡り、「韓国政府は韓中両国の国の品格を守り礼儀正しく相互尊重、互恵、共通の利益に基づいて相互協力を推進していくという立場を一貫して堅持する」とし「中国側もこれに応じて言動に慎重を期すことを願う」と述べた。(後略)【4月21日 聯合ニュース】
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これでも終わらず・・・
****中国外務次官、韓国大統領の台湾問題巡る発言に厳重抗議****
中国の孫衛東外務次官が韓国の尹錫悦大統領の台湾問題を巡る発言に対して厳重な抗議を申し入れた、と中国外務省が23日発表した。
尹氏はロイターのインタビューで、力による現状変更の試みによって台湾周辺の緊張が高まっており、そうした試みには絶対反対すると表明。さらに「台湾問題は中台間だけでなく、北朝鮮と同じような国際問題だ」と語った。
これに対して孫氏は「全く容認できない」と反論し、「南北朝鮮はそれぞれが国連に加盟する主権国家であり、朝鮮半島問題と台湾問題は本質的に完全な別物で、比較の対象にならないことは周知の事実だ」と強調した。
尹氏の発言を巡っては先週も中国外務省が韓国は台湾に関する問題に関して「賢明に」対処するべきだとの見解を示し、韓国側が中国大使を呼んで抗議するなど、両国間で応酬が続いている。【4月24日 ロイター】
尹氏はロイターのインタビューで、力による現状変更の試みによって台湾周辺の緊張が高まっており、そうした試みには絶対反対すると表明。さらに「台湾問題は中台間だけでなく、北朝鮮と同じような国際問題だ」と語った。
これに対して孫氏は「全く容認できない」と反論し、「南北朝鮮はそれぞれが国連に加盟する主権国家であり、朝鮮半島問題と台湾問題は本質的に完全な別物で、比較の対象にならないことは周知の事実だ」と強調した。
尹氏の発言を巡っては先週も中国外務省が韓国は台湾に関する問題に関して「賢明に」対処するべきだとの見解を示し、韓国側が中国大使を呼んで抗議するなど、両国間で応酬が続いている。【4月24日 ロイター】
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お互い、国民世論・面子もあって、後に退かない構えのようです。伊大統領の訪米中の発言次第では更にヒートアップする可能性も。