孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ産穀物 黒海からの輸出はロシアの圧力で停滞 ポーランド等は自国農業保護で輸入禁止へ

2023-04-18 23:18:08 | 欧州情勢

(ウクライナ産穀物の大量流入に抗議し、道路を封鎖するポーランドの農家=3日、ポーランド・シュチェチン【4月18日 時事】)

【黒海からの穀物輸出合意 ロシアの圧力で「停止の危機」】
世界有数の穀物輸出国であるウクライナからの穀物輸出がロシアとの戦争で停止したことで、食糧不足・価格高騰といったその影響はアフリカ・中東・国際的支援団体の食糧援助国など世界全体に及びました。

そうした深刻な事態を受けて、ウクライナ産穀物を黒海の港から安全に輸出するための合意が国連とトルコの仲介で昨年7月になされ、その後も合意は延長されてきました。

しかし、ロシアは合意の条件であった自国の食料および肥料輸出に関する制裁解除などの障壁除去が履行されていないとして不満を示し、前回3月の延長は実現するか危ぶまれました。

結果、「一応」延長合意はなされたものの、期間が明示されないという曖昧さが残るものでもありました。

****黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意、少なくとも60日延長が決定****
ウクライナ産穀物を黒海の港から安全に輸出するための合意が(3月)18日、少なくとも60日延長されることが決まった。当初目指していた120日の半分にとどまり、ロシア側は5月半ば以降に再延長するかどうかは西側諸国の経済制裁一部解除が条件になるとの見解を示している。

輸出合意は国連とトルコがロシアとウクライナを仲介する枠組みで、昨年7月に成立した後、1月に120日間延長され、18日がその期限となっていた。

国連とトルコはさらに合意が延長されたと発表したが、期間は明示していない。ウクライナは120日延びたと主張しているが、ロシアは60日の延長を受け入れたと明かした。

ロシアのネベンジャ国連大使は17日、欧州連合(EU)と米国、英国が「穀物輸出合意を継続したいのであれば、ロシアの農業セクターを含む事業活動の全体系に対する制裁を免除するために2カ月間の猶予がある」とコメントした。

さらにネベンジャ氏は、保険分野の制裁解除やロシア船の港利用、ロシアの肥料会社による資金調達などを再び認めることも必要だと指摘した。【3月20日 ロイター】
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ロシアからすれば、制裁を免除するために2カ月間の猶予を与えた・・・という立場で、その履行を求めて延長合意後も圧力をかけています。

****ロシア、黒海穀物輸出合意から離脱の可能性を警告****
ロシアは7日、国連とトルコが仲介した黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意に関し、ロシアの農産物輸出への障害が除かれない限り、離脱する可能性があると警告した。トルコの首都アンカラでの協議で、障害を取り除くことが5月以降の合意延長の必要条件になることを確認した。

ロシアのラブロフ外相は協議で、トルコのチャブシオール外相と合意の条件に関する「失敗」について議論したと言及。西側諸国が農産物輸出の障害を取り除こうとしない場合、ロシアは合意から離脱する可能性があると言及した。

ラブロフ氏は、国連のグテレス事務総長が合意で求めている内容に西側諸国が誠実に対応することを望まないのであれば、ウクライナは輸出のために陸路や河川を経由することを迫られるだろうと警鐘を鳴らした。

その上でロシアは「必要であればこの合意の枠外で動くことになる。トルコやカタールとも協力する機会がある。大統領らが関連計画について協議した」と語った。

チャブシオール氏はラブロフ氏と同席した記者会見で、トルコは5月中旬以降も合意を延長できるように取り組むと表明。「われわれは、ロシアとウクライナの穀物と肥料の輸出のためだけでなく、世界の食糧危機を食い止めるにも合意の継続を重視している」とし、「ロシアの穀物や肥料の輸出の障害を除くべきだという点にも同意している。穀物(輸出)合意をさらに延長するため、課題に対応する必要がある」と述べた。

ラブロフ氏は、ロシアの穀物や肥料の輸出が、保険や国際送金・決済システムのSWIFT(国際銀行間通信協会)にアクセスできなくなったことの悪影響を受けていると主張した。【4月8日 ロイター】
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現実問題として、ロシアによる貨物船の検査妨害(ウクライナ主張)という形で、黒海の港からのウクライナ産穀物輸出が十分に機能しない状況にもなっています。

****黒海での穀物輸出「停止の危機」 ロシアが検査妨害、とウクライナ****
ウクライナのクブラコフ副首相兼インフラ相は17日、黒海を通じたウクライナ産穀物輸出を実現させているロシアとの合意が「停止」の危機にあるとツイッターに投稿した。

ロシアによる貨物船の検査妨害が原因だと批判。ロシアは合意の期限を5月中旬と主張しており、延長の可否は不透明感を増している。

ウクライナメディアによると、インフラ省は声明で「(ロシアが)世界の食料安全保障を危険にさらし、農産物を武器として利用しようとしている」と述べた。

穀物輸出の合意は国連とトルコの仲介で、ロシアとウクライナを含む4者で締結した。今年3月に延長されたが、期限はロシアとウクライナで見解が異なる。トルコ政府によると、クブラコフ氏は18日にトルコでアカル国防相と会談。合意維持に向けて協議するとみられる。

ウクライナ産の農産物を巡っては、ポーランドとハンガリーが自国農業の保護を目的に一部の輸入停止を発表した。スロバキアも17日に停止を決めた。黒海経由の輸出が滞り、地続きの東欧諸国には安価なウクライナ産の穀物が滞留している。【4月18日 共同】
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【陸路で中東欧に向かうウクライナ産穀物 ポーランド等が自国農業保護のため輸入禁止】
記事最後にあるように、黒海からの海上輸出が停滞する状況で、安価なウクライナ産穀物が陸路で中東欧に向かっている結果、ポーランドやハンガリーなどにおいて自国農業への打撃という新たな問題を惹起しています。

****ウクライナ産穀物 周辺3カ国が輸入禁止に 国内農家打撃で****
ウクライナ産穀物の流入により自国産の価格が下落していることを受け、ポーランドなど周辺3カ国がウクライナ産穀物などの輸入停止に踏み切りました。

ウクライナ産穀物を巡ってはロシアのウクライナ侵攻以降、黒海経由での輸出が困難になりました。

EU=ヨーロッパ連合は関税を免除して輸出を促進していますが、東ヨーロッパや中央ヨーロッパの国々では価格の安いウクライナ産が国内に流通したことで自国産の価格が下落し、地元農家の不満が高まっています。

こうした状況を受けてポーランドとハンガリーは15日、自国の農家を保護するためウクライナ産穀物や農産物の輸入禁止を発表し、スロバキアも17日、同様の発表に踏み切りました。

ウクライナとEUは反発していますがブルガリアも輸入禁止を検討していて、ウクライナ産穀物を巡る混乱は今後も続くとみられます。【4月18日 テレ朝news】
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事態打開のためにウクライナはポーランドとの協議に臨んでいます。

****ウクライナ、ポーランドと協議へ 穀物輸入禁止巡り****
ポーランドが自国の農業部門保護を目的にウクライナからの穀物やその他の食品の輸入禁止を発表したことを巡り、ウクライナは輸入禁止撤回を求める「第一歩」として、17日からポーランドの首都ワルシャワで行われる協議に参加する。ポーランド経由での穀物輸送再開が目的で、関係者によると、協議は18日まで続く公算が高いという。

ポーランドとハンガリーは15日、ウクライナからの輸入を一部禁止すると発表。スロバキアも17日、同様の措置を実施すると発表したほか、中欧・東欧の他の国々も検討しているという。

ロシアのウクライナ侵攻で黒海の港が封鎖された後、安価なウクライナ産穀物が中欧諸国に滞留し、地元農家の打撃となっている。

EUの執行機関である欧州委員会は16日、ポーランドとハンガリーが自国の農業部門保護を目的にウクライナからの穀物やその他の食品の輸入禁止を発表したことについて、一方的な行動は容認できないと警告した。

ウクライナのソルスキー農業政策・食料相によると、ウクライナの食料品輸出のうち、ポーランド向けが占める割合は約10%、ハンガリー向けが約6%という。【4月18日 ロイター】
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ロシア寄りのハンガリーは別として、ポーランドもスロバキアも自国保有のミグ戦闘機をウクライナに供与するということで、これまでウクライナを積極的に支援してきた国です。

ただ、そのことと、自国農業の保護はまた別の話になります。

****安価なウクライナ産穀物、ポーランド流入で農民反発…副首相「自国民の利益も守る」****
ロイター通信によると、ポーランド政府は15日、ウクライナ産の穀物など農産物の輸入とポーランド国内の通過の禁止を決め、同日から適用を始めた。

ポーランドでは、欧州連合(EU)のウクライナ支援策として関税を免除した安価なウクライナ産穀物が大量に流入し、農民が反発を強めていた。

同通信によると、ポーランドのヤロスワフ・カチンスキ副首相は、「ウクライナを支援することは変わらないが、自国民の利益を守るのも国家の義務だ」と述べ、ウクライナ側に理解を求めた。

これに対し、ウクライナ農業政策・食料省は「ウクライナの農家が最も困難な状況にある」との声明を出した。

ハンガリーとスロバキア政府も15〜17日、ウクライナ産穀物の輸入を停止する方針を示した。EUは16日、「一方的な措置は受け入れられない」として、ポーランドなどの対応を批判した。【4月18日 読売】
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ロシア産石油・天然ガスの輸入規制の問題は暖冬ということもあってこの冬は大きな問題とならずにすみましたが、長引く戦争はいろんな形で問題を引き起こします。

EUがウクライナ支援で結束を維持するのは容易なことではありません。

****ウクライナ産穀物、輸入停止=周辺国で「支援疲れ」鮮明―EUは反発****
ポーランドとハンガリーが18日までに相次いでウクライナ産穀物の輸入停止を打ち出した。

両国とも国内市場を保護するための6月末までの限定的な措置としているが、ウクライナ支援で「主導的役割」(欧州メディア)を果たしてきたポーランドがこうした対応に踏み切ったことで、周辺国の「支援疲れ」が鮮明になった形だ。

一方で欧州連合(EU)は反発している。(中略)

ウクライナは世界有数の穀倉地帯だが、ロシアによる侵攻の影響で主要ルートだった黒海経由の穀物輸出が滞り、食料危機の懸念が高まった。

EUはこれを受け、ウクライナのEU向け輸出品に対する関税を停止。域内を経由した第三国への輸出も推進した。

この結果、ウクライナ産品が近隣のEU諸国に大量に流入し、市場価格の下落を招いた。ポーランドでは農家の抗議行動も起きたという。

同国は年内に総選挙を控えており、輸入停止を通じて有権者の支持をつなぎ留める狙いもありそうだ。

EU欧州委員会の報道官は17日の会見で「通商政策の判断はEUに独占的権限がある」と強調。加盟国が単独で対応するのは「不可能」と指摘し、両国を暗に批判した。

しかし、既に同様の対応は他国にも広がっている。スロバキアは17日、ウクライナ産穀物などの輸入停止を決定。ブルガリアのメディアによると、同国も検討中だという。【4月18日 時事】 
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