孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

米軍機密情報がSNSに流出 韓国では政治問題化 英ロ衝突の危機やウクライナ情勢に関する内容も

2023-04-10 23:08:43 | アメリカ

(4月9日 FNNプライムオンライン)

【韓国大統領府内の議論を傍受 揺らぐ米韓関係】
アメリカ政府・軍の機密情報流出に関しては、匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト「ウィキリークス」と、その創始者ジュリアン・アサンジ容疑者逮捕をめぐる騒動、2010年にそのウィキリークスで公表されたチェルシー・マニング氏が漏洩したイラクやアフガニスタンでの戦闘における民間人犠牲を出した米軍の空爆等の情報や膨大な外交公電(露骨に相手をののしるような内容も)、2013年に漏洩が明らかになったエドワード・スノーデン氏によるアメリカによる同盟国を含めた各国への情報収集活動・・・などが思い出されます。

今、またアメリカの機密文書がSNSに漏洩したことは、昨日ブログでも韓国の関係で少し触れました。
漏洩したのは、米軍が韓国大統領府内の議論を傍受していた内容の文書。

****米、韓国政府を傍受か=ウクライナ支援巡り****
米軍の機密資料とされる文書がSNSに掲載された問題で、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は9日、文書にウクライナ支援を巡る韓国大統領府内の議論を傍受した内容が含まれていたと報じた。報道を受け、韓国大統領府関係者は「米国側と必要な協議をする予定だ」と明らかにした。

韓国政府はロシアが侵攻するウクライナへ直接兵器は送らない方針を維持してきた。
同紙によれば、ウクライナを支援する米軍の在庫補充のため砲弾の売却を求められた際、韓国政府の方針と米側の希望のはざまで対応に苦慮する韓国大統領府高官の発言などが記載されていた。

高官は、バイデン米大統領が尹錫悦大統領に直接電話をかけ、ウクライナへの兵器支援で圧力をかけることも恐れていたという。
韓国大統領府関係者は、米側への対応策について「過去や他国の事例を見ながら検討する」と述べるにとどめた。尹氏は今月26日にホワイトハウスでバイデン氏と会談する予定で、韓国政府は慎重な対応を取るとみられる。【4月9日 時事】 
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スノーデン氏が明らかにしたアメリカによる同盟国に対する情報活動が今も普段に行われているということでしょう。

融和的な対日外交で野党批判に曝されている尹錫悦大統領としては、北朝鮮の脅威に対し、日米韓の連携を強化しようとしていただけに、そのアメリカが韓国大統領府内の議論を傍受したというのは対応に苦慮するところでしょう。すでに韓国国内の政治問題化しています。

****米当局の傍受疑惑 韓国与党「慎重姿勢」・野党は「深刻な問題」****
米情報当局が韓国政府内の通信を傍受していることを示す機密文書が流出したとされる問題で、韓国の与党「国民の力」では当惑が広がる中、慎重な姿勢を示している。一方、野党は「非常に深刻な問題」として攻勢を強めている。

国民の力の金起炫(キム・ギヒョン)代表は10日、記者団に「まず事実確認が必要だ。傍受があったかどうかに関する調査が先に行われるべきだ」と述べた。また、「第三国が介入している可能性も排除できないため、内容を見極めてから対応することが国益になる」と強調した。

北朝鮮の元駐英公使で同党の国会議員の太永浩(テ・ヨンホ)氏はフェイスブックに「ウクライナと戦争中のロシアが偽ニュースを拡散させた可能性がないかについても考慮すべきだ。韓米の関係悪化で最も得をするのは北、中国、ロシア」と主張した。

ただ、党内には批判論もある。同党の河泰慶(ハ・テギョン)議員はラジオ番組で、「米政府に強く抗議すべきだ。謝罪も求めるべきだ」と述べた。

これに対し、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は党最高委員会議で、「非常に深刻な問題」と批判。「一国の大統領室が傍受されたというのも荒唐無稽なことだが、(米国が)同盟国の大統領執務室を傍受するというのも常識的に納得できない」と指摘。「客観的な内容を確認しながら厳正に対応する」との姿勢を示した。【4月10日 聯合ニュース】
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尹大統領は今月26日に米ワシントンでバイデン大統領と会談する予定で、両首脳は米韓同盟70年を祝うとされていますが、今回問題が影響する可能性もあります。

【ロシアの情報戦か? アメリカ内部の犯行か?】
流出した文書は、上記の韓国大統領府内の議論を傍受したもおだけでなく多岐にわたり、100件を超える可能性があるとも言われています。

****アメリカ機密文書のSNS流出、100件超か…「ファイブ・アイズにとって悪夢だ」****
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7日、中国や中東などに関する米国の機密文書がSNS上に流出していることが新たにわかったと報じた。6日にはウクライナ情勢に関する北大西洋条約機構(NATO)の機密文書の流出が報じられており、専門家によると、流出文書は100件を超える可能性があるという。

報道によると、これらの文書はツイッターやテレグラムなどで見つかった。専門家が文書を検証したところ、中国やインド太平洋、中東、テロに関する機密情報が含まれていた。米国防総省や司法省がSNS上に掲載された経緯について調査を進めている。

米英豪など機密情報を共有する英語圏5か国は「ファイブ・アイズ」と呼ばれる。米情報当局高官はニューヨーク・タイムズに対し、今回の流出は「ファイブ・アイズにとって悪夢だ」と語った。

国防総省当局者は、ロシアのウクライナ侵略に関する流出文書について、同省が作成したものがあると認めた上で、ウクライナ軍の死者数を多く、ロシア軍の死者数を少なく書き換えるなど一部が改ざんされていると指摘したという。

今回の流出について、ロシアによる情報戦の一環だとの見方も出ている。ロイター通信によると、ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問は文書に「非常に多くの偽情報」が含まれていると指摘し、ロシアの情報操作との見方を示した。【4月8日 読売】
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今のところ、ロシアによる情報戦云々は憶測にすぎず、アメリカ人による内部犯行の可能性もあります。

****米、軍事機密文書の流出元の特定急ぐ ロシアが関与か、米国人との見方も****
(中略)米国の軍事・情報機関の機密文書がインターネット上に公開された問題で、米政府の当局者らは流出元の特定を急いでおり、専門家や米当局者の間には米国人が関与したとの見方がある。

当局者らによると、漏えいした文書がウクライナでの戦争や中国、中東、アフリカなど幅広い内容を網羅していることが、同盟国ではなく米国の人物がリークした可能性を示唆しているという。

元米国防総省高官のマイケル・マルロイ氏はロイターに対し「文書の多くは米国のみが管理していたため、焦点は米国によるリークかどうか」と語った。

ただ、当局者らによると、調査は初期段階にあり、親ロシア派が関与した可能性も排除していないという。

文書漏えいが判明して以来、ロイターは「ディスコード」、「4チャン」をはじめとするソーシャルメディアで先月以来公開された「機密」あるいは「極秘」と記された50件以上の文書を精査した。文書の一部は何週間も前に投稿されていたが、その存在は7日に米紙ニューヨーク・タイムズが初めて報じた。

米国防総省は9日の声明で、写真データとして公開された「機密や極秘の内容を含んでいると見受けられる」文書の真偽を検証していると説明。同省の付託で司法省が刑事捜査を開始したという。(後略)【4月10日 Newsweek】
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【隠されていた英ロ衝突の危機も 機密流出がなければ国民には知らされず】
報道されている流出文書内容には気になるものもいくつか。

****「ロシア戦闘機が英偵察機を撃墜寸前だった」と米機密文書に記載****
ロシアの戦闘機が去年9月、クリミア沖でイギリスの偵察機を撃墜する寸前だった可能性があることが分かりました。

アメリカのワシントン・ポストは9日、去年9月29日、ウクライナ南部クリミア沖で、ロシア軍の戦闘機Su27がイギリスの偵察機RC135にミサイルを発射し、撃墜する寸前だったことを示すアメリカの機密文書がSNS上に流出したと伝えました。

また、機密文書には黒海上空での監視活動の詳細が記されているということです。

イギリス国防省は当時、ロシア機によるミサイルの発射は「誤作動」だとして、撃墜寸前であったとは公表していません。

ウクライナ情勢などに関するアメリカの機密文書がSNS上に流出したと見られる問題を巡っては、新たな文書が次々と確認されていて、国防総省や司法省が調査を進めています。【4月10日 テレ朝news】
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ウクライナをめぐる緊張の高まりが、イギリスなど支援国を巻き込んだ世界規模の戦争に発展する危険性を示す事実ですが、イギリス政府は「誤作動」だとして公表せず。

機密漏洩が各国政府の活動を大きく制約し、今韓国で問題となっているような、あらたな国際問題を惹起する可能性がある・・・というのは事実であり、政府の立場からは明白な犯罪行為です。

ただ、部外者にとっては評価が難しい側面も。
上記の英ロ衝突の危険性などは、機密流出がなければ国民には知らされません。

【ウクライナ関連情報も 対空ミサイル枯渇でロシアに制空権を許す可能性】
流出文書のなかには、ウクライナの現状を伝えるものも。

****ウクライナ、5月にも対空ミサイル枯渇か 流出資料で警告****
ウクライナの対空ミサイルが枯渇し、ロシアが長期にわたり目指してきたウクライナの制空権を5月にも掌握する可能性がある。ソーシャルメディアに流出した米国防総省のものとされる資料から明らかになった。(中略)

ウクライナ空軍の報道官を務めるユーリ・イーナト大佐は、流出文書に含まれる情報の信ぴょう性に関し、ウクライナでは機密情報であることからコメントはできないと述べた。一方でウクライナの防空システムが深刻な問題に直面していることを確認し、欧米のパートナー国による支援の加速を必要としていると続けた。

同氏は「空を巡る戦いで負ければ、ウクライナにとって非常に深刻な結果が待っている」とし、「先延ばしすべき時ではない」とした。【4月10日 Newsweek】
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その他、イスラエルの情報機関モサドが司法制度改革への抗議を促しているとする3月1日付の米中央情報局(CIA)からの報告も含まれています。

部外者としては、「犯人捜し」より、流出文書が示す内容の真偽に興味がありますが、もともとが「機密」情報ですから、政府側は関知せずという立場でしょう。

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