孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ニジェール  クーデター政権への軍事介入も検討する西アフリカ諸国経済共同体 緊急首脳会議開催

2023-08-10 23:21:49 | アフリカ


(【8月2日 時事】)

【対立を深める軍事政権と西アフリカ諸国経済共同体・フランス】
西アフリカ・ニジェールで、7月26日に大統領警護隊トップのチアニ将軍率いる勢力によって軍事クーデターが起きたこと、
拘束されているバズム大統領の親欧米的姿勢から転換して、ロシアへの接近が予測されていること、
フランスがニジェールにエネルギー政策にかかわる重要な権益を有していること、
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)がバズム大統領の復権を求めて軍事介入も辞さない姿勢を見せていること、
ニジェール同様のクーデターで権力を掌握し、ロシア・ワグネルと協調する隣国マリ・ブルキナファソはクーデターを支持し、ニジェールに対する軍事介入は「ブルキナファソとマリへの宣戦布告とみなす」と警告していること

その後も、チアニ将軍率いる軍事政権と、これに反発するナイジェリアなどの西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、部隊を駐屯させている旧宗主国フランスなどとの間の緊張が続いています。

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)がニジェールに制裁を課したことを受け、隣国のナイジェリアはニジェールへの電力供給を削減しています。

“世界で最も貧しい国の1つでもあるニジェールは、電力のおよそ7割をナイジェリアに依存しているため、政情不安が長引けば国民生活への影響は避けられません。”【8月3日 TBS NEWS DIG】

****ニジェール軍事政権、西アフリカ諸国と対立 「圧力に屈せず」****
西アフリカのニジェールでクーデターを主導し新指導者を宣言したアブドゥラハマネ・チアニ氏は2日、追放したバズム大統領の復権を求める圧力に屈しないと表明した。軍事介入の可能性を示唆する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)との対立姿勢を鮮明にした。

ECOWASは先月30日、クーデターを起こしたニジェールの軍事政権に経済制裁を発動。1週間以内にバズム氏を復権させない場合、武力行使を認める可能性があるとした。

チアニ氏はテレビ演説で、軍事政権は「これらの制裁を全面的に拒否し、いかなる脅しにも動じない。内政干渉を一切許さない」と述べた。制裁は「違法で不当かつ非人道的」と非難した。

ECOWAS当局者は「軍事的な選択肢は最後の手段だが、万一の事態に備えなければならない」と述べた。

ニジェール国営電力会社の2日付文書によると、ナイジェリアは同国への電力供給を停止した。

ECOWASの国防相は2日からナイジェリアの首都アブジャでニジェール情勢について協議している。

ナイジェリアの国防トップ、クリストファー・ムサ将軍は会議で「われわれの決断は民主主義へのコミットメント、違憲の政権交代に対する不寛容、地域安定への専心について強いメッセージを送ることになる」と述べた。【8月3日 ロイター】
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もっとも、制裁を課すナイジェリアの方も、“ナイジェリア国内では、長年続いてきた政府による燃料への補助金が5月に廃止されたことでガソリン価格が3倍以上に高騰。市民による抗議活動が拡大しています。”【8月3日 TBS NEWS DIG】という状況で、ニジェールにかまっている余裕があるのか疑わしいところ。(国内が大変なので、外敵に国民の目を向ける・・・というのも“アリ”ですが)

軍事政権は、フランスと結んでいる5つの軍事協定を破棄しましたが、フランスは「合法的な」政府のみが協定を破棄できるとして、破棄を認めていません。駐留フランス部隊の引き揚げも拒否しています。

****ニジェール軍事政権、フランスとの軍事協定を破棄****
西アフリカ・ニジェールの軍事政権は3日、フランスと結んでいる5つの軍事協定を破棄した。この地域におけるイスラム過激派対策を根底から揺るがす恐れがある。

軍兵士らによ先週のクーデターは旧宗主国フランスへの反発が強まる中で起きた。同じくクーデターが発生した隣国ブルキナファソ、マリと状況が似ている。

フランスは国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」とつながりがある勢力に対抗するため、ニジェールに1000─1500人規模の軍部隊を駐留させている。(後略)【8月4日 ロイター】
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****「合法的な」政府のみ協定破棄可能と仏政府****
フランス外務省は4日、ニジェールの軍事政権がフランスとの軍事協定の破棄を発表したことを受け「合法的な」政府のみが協定を破棄できると述べ、駐留フランス部隊の引き揚げを否定した。フランスメディアが伝えた。【8月4日 共同】
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【ECOWAS設定の期限を過ぎて、軍事政権に譲歩なし 軍事介入への警戒強める】
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は8月6日を期限として、秩序回復を求めていました。

****対ニジェール軍事計画を策定 西アフリカ共同体「外交を優先」****
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は4日、クーデターが起きたニジェールに関し、6日までに情勢が沈静化しない場合の軍事介入の可能性を協議し、計画を策定したと明らかにした。関連委員会のムサ委員長は「外交が機能することを望む」と述べ、非軍事手段での解決を優先的に目指す考えを示した。ロイター通信が伝えた。

ECOWASは7月30日、ニジェールの軍事政権に対してバズム大統領に権力を返還するよう要求。期限を8月6日とし、以降は軍事介入も辞さないと警告していた。【8月5日 共同】
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しかし、ニジェール軍事政権はこれに応じず、軍事介入への警戒を強めています。
ロシア・ワグネルの名前も取り沙汰されています。

****ニジェールのクーデター部隊、ワグネルに協力要請か…周辺国は軍事介入の構え****
クーデターが進行中の西アフリカのニジェールは6日、周辺15か国で構成する西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が求めている投降期限を迎えた。クーデター部隊が投降する兆しはなく、ECOWASが軍事介入に踏み切る可能性が高まっている。

AP通信は6日、クーデター部隊が、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」に協力を要請したと報じた。クーデター指導部が2日、ワグネルがアフリカでの活動拠点としている隣国マリを訪れた際、ワグネル関係者と連絡を取り合ったという。

ECOWASはクーデター部隊との交渉に失敗し、4日、軍事介入の方針を再確認した。英BBCによると、ECOWASは2017年、ガンビアに対して軍事介入を行っている。軍事政権のマリとブルキナファソは、クーデター部隊を支持しており、ECOWASが武力行使すれば、両国も介入に乗り出す可能性がある。【8月6日 読売】
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****ニジェール軍事政権が領空閉鎖、大統領復職拒否で「介入の恐れ」****
ニジェールの軍事政権は6日、追放したバズム大統領の復権を拒否し、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)による軍事介入の恐れがあるとして領空を閉鎖した。ECOWASは、同日までに大統領を復権させなければ軍事介入する可能性があると警告していた。

首都ニアメーのスタジアムには軍事政権の支持者ら数千人が集まり、外部からの圧力に屈しない決定に歓声を上げた。

ECOWASの幹部は4日、ニジェール情勢沈静化に向けた軍事介入の可能性を巡り協議し、いつどのように部隊を展開するなど一連の計画を策定したと明らかにした。

軍事政権の代表者は6日夜に国営テレビで「介入の脅威が一段と明らかになっており、きょうから領空を閉鎖する」と発表。

介入に備え、中央アフリカの2カ国で軍の事前配備があったと述べたが、詳細は明らかにしなかった。領土の一体性を守る用意があると表明した。

ECOWASは今後どのような措置をとるのかに関するコメント要請に応じなかった。報道官は同日夜に声明を発表すると述べていた。【8月7日 ロイター】
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一方、期限切れを迎えて、西アフリカ諸国は10日に臨時首脳会議を開催し今後の対応を協議することに。

【アメリカ 仲介に乗り出す 軍事政権とナイジェリア特使の会談も】
ニジェールを地域の対テロ作戦の拠点としてきたアメリカは仲介の姿勢を見せています。

****ニジェール政変、アメリカが仲介役に乗り出す 高官が軍政側と会談****
米国務省のヌーランド副長官代行は7日、アフリカ西部ニジェールでクーデターを起こした軍事政権の幹部らと首都ニアメーで会談したと明らかにした。バイデン政権は、軟禁状態とみられるバズム大統領への権力返還を軍政に求めている。

ヌーランド氏は「交渉による解決を要請した」と説明した。米政府高官による軍政側との対面会談は初めてで、バイデン政権が仲介役に乗り出した格好だ。

米国は、民主主義体制だったニジェールを地域の対テロ作戦やロシアの影響力拡大を防ぐための重要拠点としてきた。米軍は無人航空機(ドローン)の拠点などの基地二つを持ち、約1100人の米兵を駐留させている。ニジェール軍への訓練や助言なども行っていたが、現在は支援を停止している。

ヌーランド氏は、軍政の将軍ら4人と2時間以上にわたって会談。「非常に困難なものだった」と説明した。将軍らは米軍の特殊部隊と長年にわたって密接な協力関係にあったといい、「事態のリスクについて詳細に説明した。十分に理解されることを望んでいる」と語った。

軍政はロシアの民間軍事会社「ワグネル」に支援を依頼したと報じられており、ヌーランド氏は懸念も伝達した。クーデターを首謀したチアニ将軍との会談も求めたが、認められなかったという。軟禁下にあるバズム氏との面会も要請しているとした。ブリンケン米国務長官は2日にバズム氏と電話協議している。

米国務省は2日、ニアメーにある米大使館の一部の職員に国外退避を命令。同省のミラー報道官は7日の記者会見で、4日に職員とともに米国民ら約100人の退避が完了したと説明した。【8月8日 毎日】
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バズム大統領と米国務長官の電話協議を認めるということは、軍事政権も何らかの糸口を求めているということでしょうか。

ただ、軍事政権は8日、西アフリカ諸国、アフリカ連合(AU)、国連の合同外交代表団の入国を拒否し、対決姿勢を強めています。

****ニジェール軍事政権、国連などの合同代表団の入国拒否****
軍によるクーデターが起きた西アフリカのニジェールで、権力を掌握した軍事政権は8日、西アフリカ諸国、アフリカ連合(AU)、国連の合同外交代表団の入国を拒否した。これを受け、ニジェール軍事政権に対する新たな制裁措置が導入された。

ニジェールの軍事政権は合同代表団の入国拒否について、国民の怒りを踏まえると代表団の身の安全を保証できないためと説明。アフリカ連合の報道官は代表団の入国が拒否されたことを確認した。

ニジェール軍事政権が国連や米国などによる対話の呼びかけを拒否したことを受け、ナイジェリアのティヌブ大統領は、政権奪取に関与した団体や個人に圧力を掛けることを目的とした制裁措置をナイジェリア中央銀行を通して発動させた。

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、ニジェール情勢について協議するため、10日にナイジェリアの首都アブジャで臨時首脳会議を開く。ECOWASの国防防責任者は先週4日、軍事行動計画について合意しており、臨時首脳会議で協議される可能性がある。

国連のグテレス事務総長はECOWASによる調停努力を強く支持すると表明したほか、米国のブリンケン国務長官はフランスのラジオ局RFIに対し、外交が事態解決の最善策だと述べた。

ブリンケン長官はその後、英BBCに対し、ニジェールで起きたことはロシアや、ロシアの民間軍事会社ワグネルに扇動されたものではないと考えているとしながらも、ワグネルがニジェールの不安定な情勢に乗じてサハラ砂漠南部のサヘル地域で影響力を拡大させる可能性を懸念していると語った。【8月9日 ロイター】
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そうした強硬姿勢の一方で、軍事政権は西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)議長であるナイジェリアのティヌブ大統領の特使2人と、10日のECOWAS臨時首脳会議直前に会談を行っており、落としどころを探る動きも。

****ニジェール軍事政権、ナイジェリア特使と会談 地域の臨時首脳会議控え****
クーデターで権力を掌握した西アフリカ・ニジェールの軍事政権は9日、ナイジェリア政府の特使2人との会談に応じた。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が10日、ニジェールへの軍事介入を巡り首脳会議を開くのを前に対話の機運が生まれた。

軍事政権は前日、西アフリカ諸国、アフリカ連合(AU)、国連の合同外交代表団の入国を拒否していたが、この日はECOWAS議長を務めるナイジェリアのティヌブ大統領の特使2人と首都ニアメーで会談した。ナイジェリア政府筋が明らかにした。

一方、軍事政権はフランスがニジェールの領空を侵犯し、軍の拠点を攻撃し、「テロリスト」を解放して国を弱体化させていると非難。

フランス外務省はこれらの主張を否定し、ニジェール軍との協定の下で航空機を飛行させ、合法的な政府の要請でニジェールにフランス軍部隊を駐留させていると反論した。

ナイジェリアの特使は国境が閉鎖されているニジェールに入国を認められ、そのうち1人が軍事政権の指導者、アブドゥラハマネ・チアニ氏と会談。帰国後記者団に、軍事政権とナイジェリア政府が対話できるよう最善を尽くしていくと述べた。

クーデターで追放されたバズム大統領の政党は、大統領とその家族が大統領公邸で、軍事政権による「残酷」で「非人道的」な拘束下に置かれていると非難。

米国務省のミラー報道官は、米国はバズム大統領の安全について懸念しており、軍事政権の権力返還を引き続き求めていると述べた。「地域のパートナーやその他の政府との関与を続けている」とした。(後略)【8月10日 ロイター】
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ニジェールの元反政府指導者で政治家のリッサ・アグ・ブラ氏が9日、軍事政権に反対する運動を立ち上げたと発表、状況を複雑化させる形にもなっています。

****ニジェールの元反政府指導者、軍事政権に対抗する運動開始****
クーデターが起きた西アフリカ・ニジェールの元反政府指導者で政治家のリッサ・アグ・ブラ氏は9日、軍事政権に反対する運動を立ち上げたと発表した。同氏は声明で「共和国抵抗評議会(CRR)」は追放されたバズム大統領の復権を目指すと表明した。

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)や、ニジェールの憲法秩序を回復しようとする国外の当事者を支持するとした。またECOWASが有益な目的を果たせるよう協力する考えを示した。CRRのメンバーによると、ニジェールの政治家も複数参加している。

アグ・ブラ氏は1990年代から2000年代にかけて、ニジェール北部の砂漠地帯で活動する遊牧民族トゥアレグによる反政府武装闘争で主導的な役割を果たした。その後はバズム政権などで政府の傘下に入った。

CRRがどの程度支持されているかは不明だが、北部で影響力を持つトゥアレグに対するアグ・ブラ氏の影響力を踏まえると、軍事政権に懸念要因となる可能性がある。【8月9日 ロイター】
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西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の首脳会議を前に、軍事政権は国営テレビで閣僚名簿を発表してECOWASを牽制する動きも。

【西アフリカ共同体の緊急首脳会議 現在開催中】
そうした状況で、今現在西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の緊急首脳会議が開催されています。

****西アフリカ共同体が緊急首脳会議開始****
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は10日、クーデターが起きたニジェール情勢を巡り、ナイジェリアの首都アブジャで緊急首脳会議を開催した。ロイター通信が報じた。軍事介入を含め対応策を議論する。【8月10日 共同】
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もし、軍事介入となると、軍事政権に反対する西アフリカ諸国、支持するマリ・ブルキナファソ、展開次第によっては更にフランスも巻き込んで、「アフリカ大戦」とも呼ばれたかつてのコンゴ戦争のような各国入り乱れる混乱に至る可能性もあります。

もっとも、ECOWASも即軍事介入というのも難しいので、その含みを持たせながら、当面は外交優先の様子見という形になるのか・・・ ただし、軍事介入しないかぎりバズム大統領の復権はなく、外交で得られるのはせいぜい同氏の国外脱出容認ぐらいでしょう。

“西アフリカでは、ニジェールのクーデターに始まり、政治的・経済的にも比較的安定していたセネガルで野党指導者の支持者と治安当局との衝突が拡大するなど政情不安が拡大していて、地域の不安定化の加速が懸念されています。”【8月3日 TBS NEWS DIG】


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