孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トランプ前大統領 ジョージア州で4件目の訴追 これまでの起訴とは趣が異なる裁判になるのか?

2023-08-20 23:26:39 | アメリカ

(トランプ氏の支持者は起訴後も同氏を支持し続けている “起訴はトランプ氏の支持者を活気づけるかもしれないが、ホワイトハウス奪還に必要な中道派有権者の支持を増やす助けにはなりそうにない。”【8月3日 WSJ】)

【ジョージア州の検察当局 トランプ氏に関する4件目の訴追】
トランプ前大統領はこれまでに①ニューヨーク地検による不倫もみ消し事件捜査、②フロリダ連邦地検による秘密公文書秘匿事件捜査、③司法省特別検察官による20年大統領選挙不正介入事件捜査――の3件でそれぞれ起訴されていましたが、8月14日、ジョージア州の検察当局は、同州における2020年大統領選の結果を覆そうと画策したとして、前大統領を起訴しました。

****トランプ氏、4度目の起訴 大統領選巡りジョージア州大番審****
米ジョージア州の大陪審は14日遅く、2020年大統領選の敗北結果を覆そうとしたとして、トランプ前大統領ら19人を起訴した。トランプ氏が起訴されるのは4度目。

起訴状には計41件の訴因が記載されている。19人全員が犯罪組織のメンバーに適用される恐喝罪に問われており、有罪になれば最高20年の禁錮刑を受ける可能性がある。

起訴された19人にはメドウズ元大統領首席補佐官、ジュリアーニ元ニューヨーク市長も含まれる。

米東部時間25日正午までに出頭しなければ、逮捕される。19人の審理を一括して行う方針という。

トランプ氏の弁護士は「今回の大陪審の一方的な発表は、個人的・政治的利害を持つ証人に依拠している」とし「今後、起訴状を精査するが、欠陥があり違憲であることは間違いない」と述べた。

トランプ氏については重罪13件の罪状を認定した。同氏は2021年1月2日、ジョージア州のラッフェンスパーガー州務長官に電話をかけ、僅差で自身が敗北した同州の選挙結果を覆すのに十分な票を「見つける」よう圧力をかけた。州務長官はトランプ氏の要請を拒否した。【8月15日 ロイター】
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****トランプ氏、大統領選の「不正」示す予定の記者会見中止…「怪しげな主張」と止められたか****
米国のトランプ前大統領は17日、21日に開催すると予告していた記者会見を中止すると発表した。

会見では、2020年大統領選で「不正」が行われたことを示す報告書を公表するとしていた。トランプ氏は中止の理由について、「弁護団が報告書を公表するよりも、(裁判所に)正式な法的文書として提出することを望んでいる」としている。

米ABCテレビは、「怪しげな主張を掲げて記者会見を開けば、法的問題を複雑にするだけだ」と法律顧問がキャンセルを促したと報じた。【8月18日 読売】
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トランプ弁護団内でも、トランプ氏の主張について「怪しげな主張」という認識はあるようです。

ただ、トランプ前大統領がいくら起訴されても共和党支持者の間では「政治的陰謀の犠牲者」としてむしろ支持が高まり、選挙資金も集まるという状況は周知のところ。

仮に下級審で有罪とされても最高裁はトランプ大統領の息のかかった判事構成でいかようにも覆せるし、大統領選挙に勝利すれば自身に「恩赦」を与えることもできる・・・そして同氏を有罪にしようとした連中への容赦ない復讐が始まる・・・・といった予測があって、本来は民主主義の根幹を揺るがす前代未聞の事件であるはずのトランプ前大統領起訴の話は今一つ緊張感がありません。

【連邦最高裁・大統領の介入ができないジョージア州RICO法による訴追 有罪になれば刑務所で大統領執務?】
ただ、今回のジョージア州検察の起訴は、マフィアなどの組織的犯罪摘発目的で1970年に制定されたジョージア州法「RICO(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations)」法への違反容疑で、連邦最高裁や大統領が介入することができないということで、これまでの3件の起訴とは法的扱いが異なるとか。

そうなると、「有罪」となればトランプ前大統領は実際に収監され、刑務所の中から選挙活動を行い、勝利しても刑務所で執務するという異常事態になるとか。トランプ前大統領にとっては由々しき事態です。

****トランプは組織犯罪者?4度目の起訴で陣営も焦る事情****
米ジョージア州フルトン郡大陪審はこのほど、2020年大統領選挙関連でトランプ前大統領と側近グループ18人を、マフィアの大掛かりな組織犯罪に見立て「恐喝・捏造・窃取・共謀」など41の罪状で起訴した。その深刻さと特異性にトランプ陣営の間でも動揺と衝撃が広がっている。

見逃してはいけない起訴状の2つのワード
(中略)今回4回目の起訴は、過去3回とくらべ、内容、規模、深刻度において際立った特徴がある。すなわち、ジョージア州検察局で捜査を指揮してきたファニ・ウィリス女性検事が当初から、トランプ氏をマフィアの組織犯罪並みの〝首領〟と位置づけ、指揮下の側近グループとの共謀により、大統領選挙結果について大規模な転覆工作を企てたと断じた点にある。

そして去る14日夜、トランプ氏のほか、一網打尽に正式起訴された共謀者の中には、元ニューヨーク市長でトランプ大統領の個人弁護士だったルドルフ・ジュリアーニ、同大統領の首席補佐官だったマーク・メドウズ、当時司法次官補で司法長官就任もうわさされたジェフリー・クラーク各被告ら重要人物も含まれている。

さらに、公表された起訴状(全文98ページ)の中に、過去3回の起訴状にはなかった重要な「キーワード」が何度か登場する点も見逃せない。それが、「enterprise」と「organization」という2つの特殊用語だ。

今回、検察側が捜査対象にした「enterprise」は、単なる事業や企業の意味ではなく、マフィア摘発などでしばしば登場する「リスクをともなう大がかりな企て」であり、「organization」はその目的達成のために「周到に結成された一団」を意味している。

起訴状はまず、41項目におよぶ「罪状」の中で最も重きをなす第1項目で、トランプ氏ら19人の名前を列挙した上で、マフィアなどの組織的犯罪摘発目的で1970年制定された州法「RICO(Racketeer Influenced and Corrupt Organizations)」法に違反したと説明。

具体的に「トランプらは、大統領選挙での敗北を認めず、選挙結果をトランプへ有利に変更させるために意図的に共謀した。この共謀行為は、ジョージア州フルトン郡、および他州において2件以上の恐喝活動を引き起こす共通の計画と目的を包含していた」と述べた。

そして、こうした大がかりな犯行を「enterprise」と定義し、計画を実行に移すためのトランプ被告らのグループをひとまとめにして「organization=一団」と位置付けた。

しかも、起訴状の中では、この「一団」について、随所で「犯罪集団criminal organization」と形容されており、2年半がかりで捜査に取り組んできた検察当局の執念と意気込みを感じさせるものとなっている。

〝共謀者〟たちの罪は
続いて起訴状は、各被告の具体的罪状に言及している。  

まず、〝首領〟のトランプ氏については、13項目の罪状を挙げているが、このうち主なものは、以下の5項目だ: 1.2020年大統領選の50州における開票結果の集計作業が完了し、バイデン候補の当選が判明したにもかかわらず、虚偽の「勝利宣言」を繰り返した 
2.ジョージア州および他州における開票結果を覆させるために画策、共謀した 
3.大統領選敗北確定後の21年1月2日、大統領執務室からジョージア州の州務長官を電話で呼び出し、1時間にわたり、(同州での勝利確定のために)「あとトランプ支持票1万1780票を見つけ出してほしい」などと具体的数字を挙げて強要した 
4.ジョージア州で確定した「バイデン候補選挙人団」を「共和党選挙人団」とすり替えるよう同州議会共和党議員らに働きかけた 
5.当時のマイク・ペンス副大統領に圧力をかけ、大統領選挙人団の最終認定に臨む上院議長としての立場を利用として、バイデン選挙人団を否認するよう要求した  

大統領の個人弁護士として暗躍してきたルドルフ・ジュリアーニ氏は、13項の罪状で起訴され・・・(中略)、司法次官補だったジェフリー・クラーク被告は・・・(中略)の罪状で起訴された。  

このほか、一味の罪状として(1)ジョージア州コーヒー郡の投票マシン・システムに事前にアクセスして手を加え、投票実施を妨害した、(2)「大規模な選挙不正」という虚偽の情報を各州で拡散させた、(3)ジョージア州選挙管理委員会スタッフの自宅に押しかけ、脅迫し、「選挙不正」を認めさせようとした、(4)投票集計用コンピューター・ソフトウェア、投票イメージ情報、個人投票情報などを窃取した、(5)複数州で法的正統性のない「トランプ選挙人団」を組織、実際に州議会内で非公開の協議を行った――など、悪質極まる具体例が起訴状で列挙されている。まさに「犯罪集団」そのものの犯行ぶりが暴露されたかたちとなっている。

刑務所から大統領執務の可能性も
(中略)トランプ氏は起訴発表後、過去3回の起訴の時と同様、「バイデンにそそのかされた政治的魔女狩りだ」「(来年大統領選に向けた)自分の政治キャンペーンの真最中に仕掛けられたものであり、民主党による腐敗しきった捜査にほかならない」と即座に一蹴して見せ、意に介さないかのような反応を見せた。  

しかし、ニューヨーク・タイムズ紙など複数の有力メディア報道によると、トランプ氏は内実、過去4回の起訴の中で、今回のケースを最も恐れているといわれる。  

その理由として、以下のような点が挙げられる: 
1.ジョージア州RICO法によると、被告が有罪となった場合、必須条件として「最高刑期20年、最低で5年」が定められており、連邦控訴審、連邦最高裁などの介入により覆されることはない 
2.トランプ氏ら被告19人が今月25日に、罪状認否のため、ジョージア州地裁への出頭を命じられており、その際、過去3回の起訴の時と異なり、例外なく全員が一人ずつ、容疑者としての警察記録保存用に「mug shot」と呼ばれる顔写真の撮影が義務付けられる。写真は公表される 
3.来年3月に予定される公判は、連邦裁判所での公判と異なり、審議の模様がTV中継されることになっている 
4.トランプ氏は来年以降に連邦裁判所で有罪判決を受けたとしても、次期大統領選で勝利し、25年1月20日に再び大統領に就任した場合、大統領権限で自らを「恩赦」するか、その時点の副大統領に同様措置を取らせ、罪から逃れる可能性が指摘される。しかし、ジョージア州法に依拠した裁判で有罪判決を受けた場合、連邦政府介入の道は閉ざされる  
5.もし、24年11月の大統領選より以前にトランプ氏がジョージア州で有罪判決を受け、服役を命じられた場合、刑務所内の独房から選挙活動継続を余儀なくされることになる  

上記のような理由を踏まえ、政治メディア「The Hill」は専門家のコメントとして次のように報じている:  
「とにかく、彼が有罪判決を受け服役しながら大統領に返り咲いた場合、米国政治史上、国民がかつて経験したことのない前代未聞の異常事態となることが予想される。刑務所内からの選挙活動や(当選後の)大統領執務という、目を覆いたくなるようなシナリオは誰も考えたくないが、彼が現段階で、共和党指名候補レースで独走態勢にあり、大統領再任もありうるだけにやむを得ないだろう。

いずれにしても、今回のジョージア州フルトン郡大陪審で起訴されたことは、トランプにとって最大の脅威となることは確かだ」(後略)【8月20日 斎藤 彰氏 WEDGE】
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ただ、共謀した犯罪集団を裁くLICO法裁判は非常に複雑で時間がかかるものになりがちで、“RICO法違反の裁判は時間がかかり、複雑になりがちなだけに、トランプ前大統領の裁判は、陪審員にとって非常にわかりにくく、居心地の悪いものになるだろうと、ストリクラー氏は言う。それも、陪審員の選任が済めば――の話だが。
「事件が理解できるようになる、そのはるか前に、陪審員は寝てしまうはず」だと、ストリクラー弁護士は予言した。”【8月18日 BBC】という指摘も。

【支持者を煽る起訴・公判関係者を脅すようなトランプ氏SNS 実際に担当判事へ殺害予告する者も】
トランプ支持者の間では、これらの起訴は政治的陰謀、魔女狩りであるとの認識で、担当判事への殺害予告も。
日本と違って発砲事件など日常茶飯事のアメリカですから、「お前を殺しに行く」と言われると単なる脅しではなく現実味があると考える必要があります。

****トランプ前米大統領の裁判担当する判事に殺害予告、テキサスの女性逮捕****
ドナルド・トランプ前米大統領に対する刑事裁判の審理を担当するタニヤ・チャトカン裁判長の殺害を予告したとして、テキサス州の女性が16日、訴追され、同州の連邦地裁に勾留を命じられた。

米国土安全保障省連邦防護局の捜査員が11日にテキサス州の連邦地裁に提出した告発状によると、アビゲイル・ジョー・シュリ容疑者(43)は今月5日、ワシントン地裁に電話をかけ、チャトカン判事を脅し、その人種を侮蔑するメッセージを残した疑い。発信元を捜査員が追跡した結果、容疑者は脅迫電話をかけたことを認めたという。

チャトカン判事は現在、トランプ前大統領が2020年大統領選の結果を覆すために共謀したとされる事件の裁判を担当している。

このチャトカン判事に向かってシュリ容疑者は、「お前に狙いを定めてるんだ。殺してやりたい」と脅した。さらに、「トランプが2024年に当選しなかったら、お前を殺しに行く」とも述べたという。

容疑者はさらに、首都ワシントンの民主党員全員と性的少数者(LGBTQ+)コミュニティーを脅したほか、民主党のシーラ・ジャクソン・リー下院議員(テキサス州選出)についても殺害すると脅したという。ジャクソン議員はヒューストン市長選に出馬している。(後略)
【8月17日 BBC】
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シュリ容疑者にまともな判断能力があるのかは知りませんが、こうした者を焚きつけているのが、またしてもトランプ前大統領です。

****トランプ前大統領の威圧的なSNS投稿、検察が問題視 証人への圧力など懸念****
(中略)2020年大統領選の結果を覆そうとしたとしてトランプ前大統領は1日、以下の四つの罪(中略)で起訴された。前大統領は3日にワシントンの連邦地裁に出廷し、無罪を主張した。

翌4日午後、トランプ前大統領は自ら運営するソーシャルメディア「トゥルースソーシャル」で、「こっちをやっつけようとするなら、こっちがお前をやっつけにいく!」とすべて大文字で強調しながら書いた。

これを受けて、前大統領を起訴している司法省のジャック・スミス特別検察官は4日夜、前大統領が今後、大陪審記録など非公開資料を公開してしまう懸念があると、裁判所に「protective order(保護命令、秘密保持命令)」を出すよう対応を求めた。

特別検察官の事務所は、トランプ前大統領はこれまでにも自分に敵対するとみなす判事や弁護士や証人に攻撃的な発言を繰り返してきたと指摘。その振る舞いは「証人を威圧し沈黙させかねず、あるいは本件の公平な真理に悪影響を与える」おそれがあるとした。

その根拠として特別検察官は、前大統領による4日の投稿を挙げ、これは起訴されている事件にかかわる人たちを標的にしたものだと主張した。

これに対して前大統領の弁護団は、4日の投稿は裁判関係者ではなく、政治的に対立する相手に向けられたものだと反論した。弁護団は「指摘されている投稿は、政治的発言そのものだ」として、前大統領を攻撃している「うそつきな特殊利益団体」や対立候補の政治行動委員会に向けられたものだと主張した。

前大統領に対する公判を担当するワシントン連邦地裁のタニヤ・チャトカン判事は、現地時間7日午後5時までに回答するよう、弁護団に指示した。弁護団は回答期限の3日延長を求めたが、判事はこれを退けた。

チャトカン判事はこれまで、大統領選の結果を覆そうとした2021年1月6日の連邦議会襲撃事件について、その参加者に対して厳しい判決を下してきた。

判事は8月28日に検察と弁護団を呼びよせ、具体的な審理に入る公判期日を決める見通し。
検察側はすでに、この裁判には素早い審理がふさわしいと述べている。しかし、前大統領を担当するジョン・ローロ弁護士は、なるべく長い準備期間が必要だと反論。検察側は捜査に3年かけたのだから、弁護側にも相応の時間が必要で、検察が示す審理日程は「ばかげている」としている。

特別検察官を「狂人」と攻撃
トランプ前大統領は4日、アラバマ州で開いた支援者集会で、スミス特別検察官を「狂った人間」で「悪者」だなどとさまざまに攻撃した。

こうした中で特別検察官側は連邦地裁に、前大統領の4日の投稿は「特定的に、もしくは示唆する形」で、自分の刑事裁判の関係者に対するものだったと指摘。検察側が地裁に請求する保護命令は、「過剰に制約的」なものではなく、前大統領や弁護団がマスコミで事件について言及することは制限せず、証拠開示請求で得た内容を弁護に利用することも認められるとした。

「今回の保全命令請求が意図するのは、弁護団が証拠開示請求で得た内容を不適切な形で流布もしくは利用することを防ぐことのみ」だと検察側は説明し、その「不適切な流布もしくは利用」の対象には「国民も含まれる」とした。(中略)

トランプ前大統領が訴えられている裁判は、刑事・民事で合わせて5件が進行中ということになる。一連の訴訟に伴い、前大統領の主要政治資金団体が今年だけで払った弁護士費用は4000万ドル以上だという。

トランプ前大統領は2024年11月の大統領選で再選を目指しており、現時点で共和党の候補指名獲得レースで圧倒的なリードを維持している。【8月6日 BBC】
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このままいけば共和党候補はトランプ氏で決まりですし、本選も・・・
アメリカだけでなく世界の政治がまたこの人の手に委ねられる可能性が高まっています。

ポリティカルコレクトネスを並べ立てる「woke」(意識高い系)の連中から政治を取り戻せ・・・というドロドロした怨念に支えられたトランプ支持は、ブラックホールのように全ての批判を呑み込んで更に巨大化するモンスターのような感じもありますが、共和党・民主党支持者を合計した数字に匹敵する割合になっているという無党派層が本選でどのような判断をするのか・・・・・TV中継もされるというジョージア州の公判などが影響するのか?
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