(ベルギー・ブリュッセルで、テントで生活する亡命希望者(2023年3月2日撮影) 【8月30日 AFP】)
【EU内相理事会 難民受け入れの分担で、反対国はあるものの一応の合意】
「難民」の問題は、現代国際社会の大きな問題のひとつです。現在の「国」を前提にしたシステムではうまく処理できない問題のようにも見えます。
「難民」と言っても、その背景は様々。
紛争の戦火から逃れる難民、政治的迫害から逃れる難民、ギャングなど治安の悪化から逃れる難民、自国では食べていけないということで、よりよい生活を求めて移動する経済難民・・・等々
最後の経済難民については、単なる不法移民に過ぎないという考えもあるでしょうが、出国の必然性に関する線引きは難しいところもあります。
難民の数が増加すると、人道上の配慮の必要性はわかるものの、現実問題として受け入れ国側も対応に苦慮することになります。
あるいは、「苦慮」するまでもなく難民を拒否する国もあります。
欧州各国はドイツなど難民への配慮を重視する国の存在もあって多くの難民を受入れてきましたが、そのことが大きな社会問題をも惹起し、難民・移民に否定的な世論の台頭を招くことにもなっています。
また、難民への対応についてドイツのような寛容な国がある一方で、中東欧諸国は一般に否定的であり、また、中東・北アフリカからの「玄関口」となっているギリシャ・イタリアなどとその他の国の違いもあって、欧州内部でも統一的対応が困難な問題となっています。
一方で、状況は悪化しています。
****地中海渡る移民が急増 今年だけで死者2153人 過去6年で最悪****
アフリカや中東から地中海などを通ってヨーロッパへと渡った移民の数が今年に入って急増していることが国連の調べで明らかになりました。
国連のIOM(国際移住機関)によりますと、今年上半期にボートに乗るなどしてヨーロッパへと渡った移民の数が去年の同時期に比べ50%余り増え、約9万5000人に上り、2018年以降では最多となりました。
そのほとんどが地中海を渡ってきたもので、装備が不十分なボートに定員オーバーで乗っている場合も多く、転覆などにより、今年だけでここ6年では最悪となる2153人の死亡が確認されています。
アフリカ北部のチュニジアやリビアが主な出発地となっていて、イタリアやギリシャを目指す事例が多いということです。
先月には700人余りを乗せてリビアを出発した船が転覆し、数百人が犠牲となった事故も起きています。
移民急増の原因については貧困問題に加え、ウクライナ侵攻による食糧事情の悪化、気候変動により広がる干ばつなどが影響しているものとみられています。【7月26日 テレ朝news】
国連のIOM(国際移住機関)によりますと、今年上半期にボートに乗るなどしてヨーロッパへと渡った移民の数が去年の同時期に比べ50%余り増え、約9万5000人に上り、2018年以降では最多となりました。
そのほとんどが地中海を渡ってきたもので、装備が不十分なボートに定員オーバーで乗っている場合も多く、転覆などにより、今年だけでここ6年では最悪となる2153人の死亡が確認されています。
アフリカ北部のチュニジアやリビアが主な出発地となっていて、イタリアやギリシャを目指す事例が多いということです。
先月には700人余りを乗せてリビアを出発した船が転覆し、数百人が犠牲となった事故も起きています。
移民急増の原因については貧困問題に加え、ウクライナ侵攻による食糧事情の悪化、気候変動により広がる干ばつなどが影響しているものとみられています。【7月26日 テレ朝news】
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難民船事故増大を憂えるローマ教皇フランシスコは8月6日、砂漠に置き去りにされた難民らを念頭に、「地中海は墓場だが、最大の墓場は北アフリカだ」と懸念を表明しています。
EUでは今年6月、この各国の立場が異なる難民問題に関して、各国の分担ルールに関する“一応の”合意がなされました。
****EU内相、難民受け入れの分担で合意****
欧州連合(EU)は8日の内相理事会で、移民・難民受け入れの負担を分担することで合意した。
シリアの戦火を逃れた難民を中心に100万人以上が地中海から流入した2015年の移民危機以降、受け入れ問題で加盟国間の溝が深まっていたが、ようやく合意にこぎ着いた。
イタリアやギリシャなど地中海沿岸国は海から渡ってくる難民への対応で他の国々の支援を求めてきた。両国はこの日、12時間の交渉の末に合意を受け入れた。
具体的には各国が受け入れる移民・難民の人数枠を設けるが、受け入れを義務化せず、受け入れを拒否する国は代わりに、受け入れ国に1人当たり約2万ユーロの現金や資材、人材を提供すると定めた。
合意案は2024年のEU欧州議会選挙前に最終決定される見通し。【6月9日 ロイター】
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要するに、受け入れない国は難民一人当たり300万円ほどのカネを出せ・・・というものです。
ただ、“合意”とはいっても反対する国はあります。欧州議会での承認はこれからです。
****EUの難民受け入れ分担案「承服できない」 ハンガリー首相****
欧州連合(EU)の加盟国内相が合意した、難民と移民の受け入れに関する規則を改定し受け入れを分担する案について、ハンガリーのオルバン・ビクトル(Viktor Orban)首相は9日、「承服できない」と反発した。
オルバン氏はフェイスブック(Facebook)に「EUは権力を乱用している。ハンガリーに移民を強制移送しようとしている。承服できない。ハンガリーを無理やり移民国家に変えようとしている」と投稿した。
EU加盟国は過去数年にわたり、難民をめぐる方針で対立してきた。内相らは8日にルクセンブルクで開かれた会合で、難民らの受け入れの負担をより公平に分担することで合意した。合意案は今後、人口の合計がEU全人口の少なくとも65%に当たる国々の承認を受けなければならない。
加盟国間の相互支援を義務付けるこの案では、二つの選択肢のうち一つを選ぶことができるとしている。優先される選択肢は、主にEU圏の外側に位置するギリシャやイタリアにたどり着いた難民を分担して受け入れること。
受け入れを望まない国は、難民1人当たり2万ユーロ(約300万円)を、EUが運用する基金に納めるという二つ目の選択肢を選ぶこともできる。
ポーランドとハンガリーは同案に反対。ブルガリア、マルタ、リトアニア、スロバキアは棄権していた。【6月9日 AFP】
ポーランドとハンガリーは同案に反対。ブルガリア、マルタ、リトアニア、スロバキアは棄権していた。【6月9日 AFP】
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【難民受け入れの限界を訴える国々】
反対はあるものの、難民受け入れの限界を訴える国も。
****亡命希望の単身男性、シェルター受け入れ一時停止 ベルギー****
ベルギー政府は29日、亡命希望の単身男性について、国内シェルターでの受け入れを一時的に停止すると発表した。シェルター不足を受けた措置。
ベルギーでは昨年から亡命希望者の流入が急増しており、すでに逼迫(ひっぱく)していた受け入れ制度の負担が深刻化している。
ニコール・デムーア難民・移民担当国務長官は今回の措置について、入国する家族や子どもの数が増えることが予想されるためと説明した。「子どもたちが路上で倒れるような事態は避けたい」としている。
また、欧州連合加盟国内での難民・移民の受け入れに関する負担が不平等だと指摘した。
「わが国は長年、相応以上の受け入れをしてきたが、これ以上続けるのは不可能だ。今年はこれまでに1万9000人以上の亡命希望者が登録している。一方、人口が同じぐらいのポルトガルの受け入れ人数は1500人だ」
EU加盟国は6月上旬、長らく停滞していた亡命希望者受け入れに関する規則の改正で合意した。亡命希望者の受け入れ負担をEU全体で分担し、受け入れを拒む国は受け入れ国に金銭を支払うことが盛り込まれている。
だが、改正案の採択をめぐり、加盟国間で激しい議論となっているほか、欧州議会による承認も必要となる。 【8月30日 AFP】
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****これ以上の治安悪化は国民が許さない…EU諸国がこれまでの「難民擁護」を見直しはじめたワケ「生活苦」で海を渡る人たちをどうするべきか****
甲板までぎっしりと人が埋まっていた
6月14日未明、地中海でリビアからイタリアへ向かおうとしている難民船が転覆し、500人超が死亡したとみられる。15日の段階で確認された死者は79人、救助されたのが100人ちょっと。(中略)
なぜ今回は大きく報道されなかったのか
ところが今回は、過去最悪レベルの事故となりそうなのに、人権を声高に叫ぶNGOのコメントもなく、事実を淡々と報道するにとどまっている。
その背景にあるのは、EU各国政府の難民政策の変化だ。そして、主要メディアはいつものごとく、政府に歩調を合わせているのだろう。あるいは、もう難民の悲劇は珍しくなく、ニュースの価値がないのかもしれない。(中略)
国境の管理というのは、主権国家の重要な仕事の一つであり、それが機能しないと、いったい自国に誰が何人住んでいるのかがわからず、国家の体をなさなくなるが、現在、EUはまさにその瀬戸際のところにいる。(中略)
大半の難民は、生命の危険があるからではなく…
(難民認定)審査に通れば一定期間の滞在が可能になる。ただし、母国の状況が好転すれば戻ることが前提だ。片や審査に通らなかった人たちは、本来ならば出国しなければならないが、現在はそれがほとんど機能していない。
なお、誰もが難民になれるわけではなく、現在、シリア、アフガニスタン、イラクなど、本当に生命の危険があるとされている国以外の難民はチャンスが少ない。単に「生活が苦しい」では難民申請はできない。
ところが実際には、チャンスが少ない国々の生活苦に苛まれた人たちが、命がけでEUに侵入してきて、さまざまな理由で申請を行うため、収拾がつかなくなっている。前述の遭難船の乗客も、エジプト人とパキスタン人が多かったというが、どちらも、本来なら難民申請が受理されにくい国だ。
前述の“EU各国の難民政策の変化”とは、主だったものを挙げると下記のようになる。
スウェーデンはこれまで半世紀近く、来る者はすべて受け入れ、難民と移民はほぼ同意語だったが、現在180度の方向転換中。理由は治安の劇的な悪化だ。特に銃を使った犯罪が急増している。そこで、移民・難民の8割減を目指し、来年からは原則として永住権は与えない。
また、犯罪者や麻薬常習者はもとより、売春に関わった者、過激派と接点のある者などは、すでに与えた滞在許可も剝奪。帰化は特に難しくする。なお、これまで多くの移民や難民を受け入れていたデンマークも、すでにスウェーデンと同じ方針だ。
行き場のない難民を押し付け合っている
一方、EUの外壁に位置するハンガリーはセルビアとの国境に、EUの南方の飛び地ともいえるギリシャはトルコとの国境に、それぞれ柵を造った。
ただ、ギリシャは海上でも、トルコ当局との間で、難民船の熾烈しれつな押し戻し合戦を展開している。それを一部のEU国が非人道的であると非難していたが、だからといってそれらの国々が積極的にその難民を手分けして引き受けるわけでもない。ギリシャにしてみれば、柵を造れないだけに、海からの難民は深刻な問題だ。
英国では法律が改正され、今後、不法入国者は難民申請ができないばかりか、見つかれば逮捕状なしに最大28日間拘束され、追放になるという(例外は18歳以下と病人など)。また、ドーバー海峡を越えて侵入する難民を防ぐため、フランスに5億4000万ユーロ(3年分)を提供し、厳重に監視してもらうことも決まった。
さらに、これまで中東やアフリカから一番多く難民が流れ着いているイタリアでは、現メローニ政権が難民そのものよりも、難民を運んで暴利を得ている組織の取り締まりを強化するという。ただ、彼らは国際的なプロの犯罪組織なので、そう簡単に尻尾を掴ませるかどうかは不明だ。
いずれにせよ、これまでドイツの主導もあり、難民の権利や人道を掲げ続けていたEUだが、今や受け入れ能力が限界を超え、治安が悪化し、国民の不満が膨張してきたことで、急速な仕切り直しが始まっている。
“入ってきた者勝ち”になっているドイツ
そんな中、今なおドイツだけが従来の方針を固持しており、それどころか、21年12月に社民党政権になって以来、難民擁護はさらにエスカレートしている。最近になって難民申請の条件も帰化の条件も緩和された上、審査中に殺人を犯した難民希望者でさえ、「母国に送り返すと死刑になるかもしれない」という理由で送還を拒否している状態だ。
ドイツは、政治的に迫害されている人を庇護するということを憲法に明記している唯一の国で、元々、難民には親切だったが、今ではまさに“入ってきた者勝ち”だ。
そんなわけで、これまでなかなか統一した難民・移民対策を編み出せなかったEUだったが、6月8日、ようやく各国の内相が集い、大筋の方針が合意を見た。結果を言うなら、今後、EUは難民受け入れにブレーキをかけることになる(これはドイツの影響力の低下とも無関係ではないだろう)。
新しい法案によれば、難民はこれまでEU域内のどこかに着地すれば、そこで難民申請ができたが、今後はEU国境が厳重に見張られ、難民(希望者)はEU域内に入る前に、国境のところに新設される施設に収容される。そして、脱走しないよう監視され、身元確認が行われ、難民として認められるチャンスがあるかどうかが審査される。
「人道的」では成り立たなくなっている
その結果、あるとみなされた人だけが難民申請に進み、その他の人はEUには入れず、もちろん申請もできない。現在、密航の多いチュニジア、モロッコ、エジプト、バングラデシュなどからの難民希望者のほとんどは、ここで門前払いになるだろう。
もちろん、この法案にドイツは最後まで反対した。現内相は社民党のフェーザー氏だが、氏は子連れの難民に限り、国境での収監と審査を免除するよう強く主張。子供は学校へ行くべきであり、国境で閉じ込められ、犯罪者扱いされるのは非人道的であるという理由だ。
ただ、EUは現在、まさにこの「人道」を行き過ぎであるとして、縮小しようとしており、フェーザー氏の主張はあっさりと却下。法案が欧州議会に回った時点で、若干の修正はあるかもしれないが、無制限に難民を入れ続けようとするドイツはすでに孤立している。
もっとも現実問題として、難民希望者や不法入国者の母国送還は簡単ではない。新しい規則ができたからといって、彼らが素直に祖国に戻るはずはないし、罪を犯した難民でさえ、彼らの母国が引き取らない限り送り返せないのが現在の国際法だ。
しかも実を言うと、国境のところに造るという施設も、EUの内側なのか、外側なのかさえ決まっていない。つまり、すべてが絵に描いた餅になる可能性もありうる。
そこで内相会議の3日後、EUは苦肉の策として、チュニジア政府に10億ユーロを援助し、その代わりに、チュニジア政府が海岸線を監視し、難民を出さないようにするという協定を結んだ。
「日本も難民受け入れを」という声もあるが…
(中略)そもそも彼らが危険を冒してまで国を離れる原因は、貧困である。だから、チュニジア政府にお金を積んで出航を阻止してもらったところで、抜本的な解決にはならない。
本来なら、現地の生産性を上げ、人々が出ていかなくても済むような援助が必要であることは、皆が百も承知だが、しかし欧米(日本も)とて戦後70年間、何もしなかったわけではない。特にアフリカには莫大な開発援助を注ぎ込んだが、それがいまだに実を結んでいないだけだ(それはアフリカだけのせいではないが)。
なお、日本はもっと難民を受け入れるべきだなどという声もあるが、ヨーロッパと同じ過ちを繰り返さなければならない理由はどこにもない。資金援助も、お金はどこかに蒸発してしまう可能性が高いので要注意だ。しかし、日本にできることもある。
その支援は、貧しい人々に行き届いているのか
例えば、経済発展を望んでいるアフリカ諸国に熱効率の良い火力発電所を建てること。電気は殖産興業に役立つばかりか、夜も灯りが確保でき、また、薪やら動物の糞でなく電気で調理ができるようになるだけで、人々の生活は画期的に向上する。
(中略)どこの国でも、電気があってこそ産業が発展し、インフラが整備され、教育が向上し、情報が行き届き、民主主義も進んでいく。火力発電所の建設は真の援助として、難民受け入れよりもずっと効果的で、素晴らしい方法だと思う。ところが、発展途上国が切望しているせっかくの火力プラントに対し、日本政府はCO2を排出するという理由で融資を止めてしまった。
CO2削減は先進国の理念が結集したものだが、そもそも世界で本当に困った人たちを助けていない。先進国の人々は無視しているが、薪で調理をしている人たちにとっては、煤すすの健康被害のほうがCO2よりも危急の問題であることすら、先進国の人々は無視している。
日本政府が途上国を応援するなら、現地のエリートたちの利益ではなく、貧しい人々が本当に必要としているものを提供すべきだ。そして、それこそが回り回って、間違いなく難民の命を救うことにもつながる。【6月27日 川口マーン 惠美氏 PRESIDENT Online】
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上記の川口マーン恵美氏はドイツ在住の日本人作家で、かねてより寛容なドイツの難民政策や脱原発政策を辛辣に批判している方ですので、その前提で読む必要があります。(自身が「外国人」として暮らす環境にありながら、何が彼女をそこまで外国人嫌いにさせるのかは不思議ではありますが)
日本の難民政策に関しても、これまで万単位で受入れてきた欧州各国と、ほとんど鎖国状態を貫いている日本を同列に扱うことには異論もあります。
さはさりながら、欧州各国で「限界」「パンク状態」の声が強くなっているのは事実でしょう。