孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新疆ウイグル自治区  中国当局が推し進める「中国化」の実態

2023-08-31 23:04:25 | 中国

(新疆ウイグル自治区・カシュガル 市場の刃物は鎖で繋がれている【7月15日 TBS NEWS DIG】)

【新疆ウイグル自治区における「秩序」確立への中国当局の自信 更なる「中国化」を目指す習近平政権】
2009年のウイグル騒乱、2014年のウルムチ南駅爆弾事件など、中国政権にとっては共産党・漢族支配の秩序を揺るがす問題と認識されている新疆ウイグル自治区の状況に関しては、7月15日ブログ“中国・新疆ウイグル自治区での“取材制限なし”が意味するもの”で、新疆ウイグル自治区における「中国化」が完了したこと、「秩序」を確立したことへの中国当局の自信とも言えるような変化を取り上げました。

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中国政府は外国メディアに新疆の現状を見せたくないのか、記者が新疆に入るとたちまち公安関係者に尾行され、取材を妨害される、という状況が続いていた。

しかし、今回私たちは取材を妨害されることもなく、行きたいところに行き、撮りたいものを撮影することができた。

観光地には大量の漢族の旅行客が押し寄せ、漢族の観光客相手にウイグル族の店員がにこやかに商売をしていた。そこに、民族間の緊張は感じられなかった。【7月15日 JNN北京支局カメラマン 室谷陽太氏 TBS NEWS DIG】
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習近平国家主席は新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで開かれた会議に出席し、今後更に少数民族ウイグル族への締め付けを強化する考えを示しています。

****ウイグル締め付け強化へ=習氏、2年連続現地入り―中国****
中国の習近平国家主席は26日、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで開かれた会議で「社会の安定維持を最優先に位置付けなければならない」と述べ、イスラム教を信仰する少数民族ウイグル族への締め付けを強化する考えを示した。米国は人権弾圧を批判するが、習政権はテロ阻止を理由に治安強化を図る。

国営新華社通信によると、南アフリカでの新興5カ国(BRICS)首脳会議に出席した後にウルムチを訪れた習氏は、テロや独立運動を念頭に「イスラム教の中国化」で違法な宗教活動を封じ込めると強調。

「中華民族の共同体意識」を強めるため、「国家の共通言語・文字を使う能力を一歩一歩高める必要がある」として、少数民族への標準中国語教育を徹底するよう指示した。【8月27日 時事】
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習近平氏のウルムチ訪問は、8年ぶりだった昨年に続き2年連続。2014年には、訪問直後にウルムチ南駅で爆発事件が起きています。

【市場の刃物は鎖で繋がれ民家の玄関にはQRコード】
習近平政権が進める「イスラム教の中国化」 「中華民族の共同体意識」強化 「ウイグル族の漢族化」の実態は・・・

****失われる宗教、言葉、尊厳… 記者が見たウイグルで進む「漢族化」の実態  市場の刃物は鎖で繋がれ民家の玄関にはQRコードが…そのワケは?【news23】****
(中略)
市場では刃物に鎖 民家にQRコードのワケは?
新疆ウイグル自治区、カシュガル市。人口の9割をウイグル族が占める、ウイグルらしさが色濃く残る街です。厳しい移動制限を強いていたゼロコロナ政策が終わり、多くの観光客でにぎわっていました。観光客の多くは“漢族”です。

漢族の観光客(女性) 「ウイグルの人たちは、みんなとても親切でフレンドリーです」
漢族の観光客(男性) 「今は漢族とウイグル族の関係は、とても親密です。中国は少数民族と漢族との一体化を重視し、たくさん努力してきましたから」
漢族の観光客(女性) 「ますます民族が融合しています。ウイグル族の人たちも中国語が、だんだん喋れるようになっているし」

“ウイグル族とは、うまくいっている”と口をそろえる漢族の人々。(中略)平穏に見える人々の暮らし。しかし、そこで目に留まったのは・・・

「刃物に鎖がついています。テーブルに固定されていて、持ち出せないようになっています」 市場の全ての刃物が鎖やヒモで固定されていました。

ウイグル族の男性 ーーいつから鎖をつけるようになった? 「結構前からです。5、6年前かな」

2009年にウイグル族と漢族が衝突した「ウルムチ騒乱」以後、中国政府は「テロ対策」の名のもと、ウイグル族に対する監視を強化。刃物を鎖で固定するのもテロ対策の一環だということです。あるウイグル族の男性は、複雑な心境を明かします。

ウイグル族の男性 「鎖をつけられることで、心理的に抑圧されている気持ちになる。尊厳が奪われている」

監視の目は、ウイグル族の人々が暮らす住宅にも・・・
記者 「民家の玄関には、QRコードが貼ってあります。QRコードを読み込んでみると担当する警察官の電話番号と名前が書いてあります」

一軒一軒、住民を監視・管理する態勢が整っていることをうかがわせます。さらに、こうした抑圧政策は宗教にも・・・

破壊されたモスクも・・・ 「宗教の中国化」とは?
記者 「こちらはモスクだということですが、完全に壊されています」
イスラム教徒であるウイグル族にとって大切なモスク。その多くが、取り壊されたり閉鎖に追いやられていました。何が起きているのか?近所の人に尋ねても、皆、かたくなに口を閉ざします。

閉鎖されたモスクの近所に住む人 ーーモスクはありますか? 「ありません」 ーー見に行きたいのですが、ないですか? 「ありません」 

残された数少ないモスクも、様変わりしていました。2015年に撮影されたウルムチ市内の様子には、当時、ウイグル文字で書かれていた看板に、2023年には漢字表記が追加されています。別のモスクの壁には「愛国愛教」=「国と宗教を愛せ」の文字。こうした流れをつくっているのは、2015年に中国政府が打ち出した「宗教の中国化」です。

習近平国家主席 「我が国の宗教の中国化の方向を堅持し、宗教が社会主義社会に適応するよう積極的に導く」

信仰を中国共産党の指導のもとに置くというもので、以来、宗教活動に対する統制が強くなっています。そのため人々の姿にも変化が。

2015年に撮影されたウルムチ市内の様子には、宗教上の慣習に従って、女性たちはヒジャブで頭を覆っています。8年後の2023年は、ヒジャブをつけている女性は、ほとんどいません。ヒジャブは「過激派」のように見えるという理由で政府が許さないのだといいます。失われていたのは、宗教だけではありません。

学校の授業は中国語 進む「漢族化」の実態
子どもたちが暗唱しているのは、唐の時代の詩人「李白」の詩。学校では、中国語を使うようにという指導が徹底されていました。

ウイグル族の子ども ーー授業は全て中国語? 「そうです」 ーーウイグル語は? 「学校でウイグル語をしゃべっちゃいけないんだ」 ーーなんで? 「学校のルールだから。先生たちもウイグル語は使っちゃダメなんだよ」

ウイグル族の子ども ーー中国語を勉強するのは好き? 「好きじゃないけど勉強しなきゃいけないんだ」 ーーなんで好きじゃないの? 「難しいから」 ーーウイグル語の方が楽? 「そうだよ」

中国語ができないと、就職などが不利になるといいます。
漢族の女性 「今、就職するには中国語が必要です。ウイグル族も中国語が喋れないと仕事ができないんです」

伝統の街並がテーマパーク化 失われる宗教・言葉・尊厳
レストランを訪ねると・・・
記者 「レストランの入り口には、警備員がいて金属探知機が置かれています」

新疆では、どこの街にも金属探知機が置かれ、装甲車や警察官の姿が多くみられます。しかし、住民によると、これでも警備は数年前より緩くなったのだといいます。

今、中国政府は、新疆ウイグル自治区の経済発展、特に観光産業に力を入れています。伝統的なウイグルの街並みは壊され、代わりにテーマパークのような観光施設が登場していました。

新しく整備された民宿街。経営しているのは漢族です。政府の支援があるため、ビジネスはやりやすいと話します。(中略)

観光用に再開発された地区には「中国共産党に感謝」の看板。
漢族の男性 「インフラの建設に国が多くのお金を投資しています」 ーー発展の変化は大きいですか? 「ここの発展はとてもはやいです」

漢族の女性 ーーウイグルの人たちが流暢に中国語を話すのにびっくりしましたが? 「みんな中国人だから、標準語を喋るのはもちろんです」

当のウイグル族の人たちは、どう思っているのでしょうか。

ウイグル族の男性 ーーウイグル族の習慣や宗教に変化は、ありましたか? 「質問の意図がわかりません」

ウイグル族の女性 ーー話を聞いてはダメですか?敏感だからですか? 「・・・(手で振り払う)」

人々が本音を口にすることはありませんでした。

習近平国家主席 「中華民族共同体意識の強化を主軸とし、党の民族対策を強化し改善する。中華民族の偉大な復興を全面的に推進し団結奮闘しよう」

ウイグルで進んでいたのは、宗教活動を制限され中国語を使うことを強いられ、中華民族の一員として生きていくことを余儀なくされる「ウイグル族の漢族化」。

その流れを止めることはできないのか。「ウイグル族側に選択肢はない」ある住民はそっと打ち明けました。【7月15日 JNN北京支局カメラマン 室谷陽太氏 TBS NEWS DIG】
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【AIなどを駆使した「ハイテク警察国家」】
アメリカ国務省は世界各国の人権侵害についてまとめた2020年版の年次報告書において、新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族に対する「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と「人道に対する罪」があったと明記しています。
そして新疆においては、AI使用した監視システムがフル稼働しています。

****米が「ジェノサイド」認定した中国のウイグル弾圧 〜AI使用した監視システムとは〜****
欧米諸国が「ジェノサイド」と非難するウイグル弾圧。収容施設内で何が行われていたのか。AIを使った中国当局による監視態勢はどのようなものなのか。様々な証言や専門家の分析をもとに新疆ウイグル自治区でおきた人権侵害の実像にせまる。

●中国側が「職業訓練所」とする施設
こん棒を振りかざす警官とみられる人中国北西部の新疆ウイグル自治区にある収容施設内で撮影されたとする1枚の写真。同様の施設で働いていた人の証言によると、看守らがこん棒でウイグルの人々を殴るなどの暴力は日常茶飯事で、拷問や性的暴行なども行われていたという。国連は2017年以降にこうした収容所に入れられた人は100万人以上いると推計する。

●新疆ウイグル自治区とは
地図新疆ウイグル自治区には多くのイスラム教徒が住み、日本のおよそ4.5倍の面積を占める。また天然ガスなどの地下資源が豊富で、中国のエネルギー供給上大変重要な地域だといえる。

そして、この地域には冒頭の写真が撮影されたようなウイグルの人々が収容される施設、中国側が「職業訓練所」と呼ぶ場所が多く存在するとされる。

●「職業訓練所」の中では何が
施設で中国語教師をしていたケルビヌル・シディクさん2017年、9か月間ほど施設内で中国語を教えていたというウイグル自治区出身のケルビヌル・シディクさんに話を聞いた。

「拘束された人は電気が流れるタイガーチェアと呼ばれる鉄の椅子などで拷問を受けます」
「何の罪も無いのに強制的な取り調べで、罪を犯したように発言せざるを得ません」
「30人以上いる部屋では狭いので順番に寝て、中央のバケツをトイレとして使いました」
「部屋には鍵がかかり、自由に出入りはできません。手足に鎖をつながれ動物のように移動させられます」

劣悪な環境の施設内での拷問。さらに拷問だけではなく女性への性的暴行も多くあったという。
シディクさん自身も不妊手術を強制的に受けさせられたほか、看守による収容者への性的暴行も日常的にあったと証言する。

●「ハイテク警察国家」中国
ウイグル問題に詳しい専門家は施設に収容される人たちが、何か罪を犯したわけではなく、当局に日常生活を監視され「怪しい」とされ、と収容されるケースが多いと指摘する。その生活の監視に使われているのがAIだ。

2022年5月にネット上に流出した「新疆公安ファイル」と呼ばれる収容施設の内部写真などを含む資料の分析を進めるゼンツ博士は「ハイテク警察国家と化した(中国当局の)新疆での戦略は非常に広い範囲で情報を収集することにある」と指摘する。

ゼンツ博士によると、新疆ウイグル自治区には街のいたる所にAI搭載の監視カメラがあり最新の顔認証の技術で人物特定がされるという。さらに個人のスマートフォンからは、当局により入れさせられる監視アプリにより、電車や車での移動、家の出入りなど人々の動きを細かく追跡していると説明した。

例えば、私たちが話を聞くことができた新疆ウイグル自治区に住む男性は、「スマホに(別の)新しいアプリを入れるとすぐ当局から電話が掛かってきて使用目的をきかれた」とスマートフォンは常に監視されていると話した。

このようにスマホが監視のツールになるならば、スマホを使わないほうが安全なのだろうか。ゼンツ博士によると、スマホを急に使わなくなると当局からかえって「怪しい」と目を付けられるというのだ。

こうして不透明な基準でアプリで「怪しい行為」があると判断され、当局に通知が行き、施設に収容されるケースも少なくないという。

●宗教政策としての監視
中でも監視が厳しくなっているのがイスラム教徒が礼拝を行う「モスク」などでの信仰活動だという。これはモスクに設置された監視カメラの画像だが、ゼンツ博士はモスクの訪問や、スマホへのコーランの保存など個人の信仰活動も監視カメラやAIの顔認識機能を使い常時記録されているという。

●モスクの破壊
さらにモスクが破壊されるケースも指摘されていて、新疆ウイグル自治区での弾圧を長年調査しているオーストラリア戦略政策研究所は、2017年以降、1万6000以上のモスクが壊されるなどしたと推定している。

4つのモスクの衛星写真を比較すると、それぞれ2012年から2016年に撮影されたものにはドーム型の天井やミナレットと呼ばれる高い塔などイスラム建築の特徴を含む。しかし、2016年以降の写真では、4つのモスクのうち、3つが完全に取り壊され更地に。残りの1つもドーム型の天井や高い塔などイスラム建築の要素が取り払われている。

2016年以降というのは中国当局が宗教政策として、国家レベルで信仰表現への介入を強めた時期と重なり、モスクの破壊もイスラム教の建築物を排除することが目的だったとみられる。

こうした宗教的弾圧も含めたウイグルの状況について、アメリカ政府は2021年にウイグルの人たちに対する「ジェノサイド」(=大量虐殺)だと認定し非難している。

こうした厳しい人権弾圧が行われているとの指摘・証言が多くある中、中国政府は弾圧との指摘について「今世紀最大のデマ」、「数々の流出資料や証言も全てねつ造やウソだ」と主張している。さらに2019年には施設に収容されていた人たちは「全員卒業した」と述べ、施設の運用を終えたとしている。

しかし、ゼンツ博士は、収容施設に入れられた人で今にいたるまで行方が分からないままの人が大勢いると指摘する。

さらに、日本に住むウイグルの人の中には今でももなお、新疆にいる家族に連絡すると家族の身を危険にさらすことになると話す人もいる。

千葉県でレストランを営むローズさんは「(家族が)今も拘束されてるか分からない。自分の家族が生きているかも分からない」「ウイグル人みんなに電話したけど出ない、唯一出た人には「なぜ電話するの?死んで欲しいのか?」と言われた」と証言する。

日本ウイグル協会会長のアフメットさんは「いつ家に警察が入ってくるのかわからない世界になってる。いつでも自分が連れて行かれる危険性はあるという恐怖心の中で人々が生活をしている」とウイグルの人々の心境を語る。アフメットさんはまたこの問題の解決には「外部からの圧力」が不可欠だと訴えた。

●中国…“多数派工作”で批判封じ込め
しかし、去年10月には国連人権理事会でウイグルの人権弾圧を正式に議題として取り上げることを西側諸国が提案したが、否決された。これは中国に近いとされるアフリカや中東諸国が反対したためだ。

今や世界第2位の経済大国となった中国は、経済支援により途上国を中心に影響力を拡大している。これに伴い、中国が重要なポジションを務める国際機関では、中国の不利益になる問題は議題になりにくい側面もある。

●日本政府が示す「懸念」
2023年4月の日中外相会談で林外務大臣は、ウイグルの人権弾圧について、日本政府は「深刻な懸念を表明した」と述べた。日本政府はこの「深刻な懸念」という表現をここ数年繰り返している。

アフメットさんは、日本について「ウイグルの人々に対するジェノサイド(=大量虐殺)であると認定することなどさらに踏み込んだ圧力をかけてほしい」と強調した。【8月2日 日テレnews】
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アメリカでは、新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、同自治区が関与する産品輸入を原則禁止する「ウイグル強制労働防止法」が2022年6月21日から施行されました。

最近の話題としてはカナダ。

****カナダ人権機関、ラルフローレンを調査 ウイグル強制労働巡り****
カナダ企業の海外活動に関する人権侵害を調査する機関、「責任ある企業のためのカナダ・オンブズパーソン(CORE)」は15日、米高級衣料大手ラルフローレンのカナダ法人対する調査を開始したと発表した。同社のサプライチェーン(供給網)と中国における運営が、新疆ウイグル自治区での強制労働を利用したり、その恩恵を受けていたりする疑いがあるため。(後略)【8月16日 ロイター】
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