(【10月27日 ANN】ミシガン州知事拉致を計画したとしても話題になった武装市民グループ「ミリシア」(その多くはトランプ支持者)の訓練風景 「ミリシア」は投票所の「監視」も行うとしています。)
【選挙の混乱への不安】
アメリカ大統領選挙については、トランプ政治によって国民の分断が深刻化し、選挙結果を受けて混乱が生じかねないこと、増加した郵便投票の扱いなどをめぐって結果が不透明化し、訴訟などにもつれ込むことも推測されていることなどは今更の話です。
以前から、「誰が大統領に選ばれるえらばれるかより、選挙が無事に終わるのかどうかが問題」とも言われてきましたが、そうした心配が現実のものともなっています。
新型コロナ禍、人種問題に関するデモ・暴動、さらに選挙の混乱・・・下記は、一昨日ブログで紹介した、そうしたアメリカの社会不安を反映して記事。
****米の銃器販売、過去最多の水準に 理由はコロナ以外にも****
米国で銃器の売り上げが記録的なペースで急増している。購入のために必要な連邦捜査局(FBI)による身元調査の件数が、1~9月だけで昨年1年間の合計を超えた。
専門家は、新型コロナウイルスの感染拡大のほか、白人警官が黒人を死亡させた事件後に一部の都市で暴動が広がったことや、11月3日に大統領選を控えていることが背景にあると指摘している。(中略)
銃の問題に詳しいジョージア州立大のティモシー・リットン教授は「人びとを銃の購入に駆り立てるのは『不安』だ」と指摘。
「新型コロナが国中に広がり、警察や消防、行政府に対する不信感が募った。また、ミネアポリスの黒人男性死亡事件を契機に、過激派組織が秩序を崩壊させる場面を目にし、市民に不安が広がっている」と説明する。
大統領選の年は、新政権が銃規制を強めるのではないかという懸念から、銃器がよく売れる傾向にある。リットン氏は「選挙後に市民同士の衝突があるのではないか、という報道も市民の不安をあおる一因になっている」とも話す。
米国では大統領選を前に緊張が高まっており、小売り大手のウォルマートは、店頭から銃器や弾薬を全て撤去。購入自体は可能だが、広報担当者は取材に、「いくつかの都市で暴動が起きており、従業員やスタッフの安全対策として移動させた」とする声明を出した。【10月31日 朝日】
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「選挙後に市民同士の衝突があるのではないか」という不安・・・どこかの強権支配国家や統治が不十分な途上国ならいざしらず、民主主義の守護者であったはずのアメリカで・・・
【現実のものとなっている脅威 それを煽るトランプ大統領】
ただ、今日もそうした不安を一笑に付すこともできかねるようなニュースも。
****トランプ氏支持者の車列、バイデン陣営バス取り囲む FBIが捜査****
米連邦捜査局(FBI)は1日、トランプ米大統領の再選を支持する旗を掲げた車列がテキサス州の高速道路で、民主党大統領候補のバイデン前副大統領の陣営スタッフを乗せたバスを取り囲んだとされる問題を捜査していると明らかにした。
前週末30日に起きたもので、当時の状況をとらえた動画では、トランプ氏支持の旗を掲げたピックアップトラックやSUV(スポーツ多目的車)の一団が、サンアントニオからオースティンに向かって高速道路を走行中のバイデン陣営のキャンペーンバスを取り囲む様子が写っている。
バイデン陣営は、トランプ氏支持者の車列がバスを減速させ、道路脇に出させようとしたとしている。陣営によると、バスに乗っていたスタッフの通報を受けて地元の法執行当局が駆けつけ、目的地への到着を支援した。
バスにはバイデン氏も副大統領候補のハリス上院議員も乗っていなかったが、同陣営はテキサス州で予定していた少なくとも2つのイベントを中止した。
トランプ大統領は31日、事件の動画をリツイートし、「テキサスを愛している!」と書き込んだ。
バイデン氏は1日、遊説先のフィラデルフィアで、支持者のこうした行為をトランプ氏が支持するのは異常で、社会の分断を招くと批判。「こんなことはこれまで決してなかった。少なくとも、こうしたことが良いことだと考える大統領はこれまでにいなかった」と述べた。
テキサス州は長年、共和党の牙城とされてきたが、今回の選挙では予想外に両候補が接戦を繰り広げている。【11月2日 ロイター】
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問題は、こうした行為をトランプ大統領が煽っていること。
“トランプ大統領は演説で、この支持者の行動を称賛しました。
トランプ大統領「私たちの仲間がバスを守った。なぜなら良い人たちだからだ。何百台もの車がトランプの文字とアメリカ国旗をつけていた」
その上で、トランプ大統領は「アメリカ国旗をつけていなければ敵対勢力だ」などと持論を展開しました。”【11月2日 日テレNEWS24】
“私たちの仲間がバスを守った”・・・何を言いたいのでしょうか?
白人至上主義などについても同様の擁護ととられる言動を続けてきたトランプ大統領ですから、今更驚きはしませんが、およそ民主主義国のリーダーの発言とは思えません。
更には・・・
****トランプ支持者がバイデン邸に... 現場は騒然****
一方、選挙戦最終盤で両候補が激しく競り合う中、1日には民主党・バイデン候補の自宅前に、トランプ支持者の車列が集結する一幕があった。
デラウェア州のバイデン氏の自宅前には、トランプ大統領への支持を示す旗や看板を掲げた車が、少なくとも数十台集まった。
周辺は閑静な住宅街で、車列の一行がクラクションを激しく鳴らしたり、窓を開けて大声で叫んだりしたため、地元の警察が駆けつけるなど、一時騒然となった。
このような車列は、首都ワシントンやテキサス州など各地に現れていて、両陣営の対立が浮き彫りになっている。【11月2日 FNNプライムオンライン】
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【揺らぐ民主主義 「トランプ大統領の四年間と、白人のみに訴るえ選挙戦術は、このプロセスを加速させた。」】
分断の根底にあるのは、以前からアメリカ社会にある人種問題などですが、トランプ大統領はこれを煽り、深めることで自身の再選を果たそうとしており、これによってアメリカ民主主義は危機的状況にも陥っています。
****「自由主義」が死んだ世界****
米欧アジアを「狂気」が覆う時代に
米国のドナルド・トランプ大統領の四年間の治世により、世界の自由主義(リベラリズム)秩序が終焉に向かっている。
政治面で見ると、民主主義各国で自由・民主主義に基礎を置く政治制度が揺らぎ、国際的な平和解決メカニズムヘの不信が高まっている。
すでに欧州では、民主的中道の右派・左派政党が交代で政権を担うという「リベラル・コンセンサス」が次々と崩壊している。
国際経済でも、米国による世界貿易機関(WTO)軽視や一方的な経済制裁の乱発により、世界経済の自由主義体制が大揺れである。
第二次世界大戦後の世界を主導した日米欧の自由主義は、中国共産党の一党独裁体制やロシアのウラジーミル・プーチン大統領のような、権威主義的独裁体制の台頭にさらされている。
自由主義の「後」の形はまだ見えないが、新型コロナウイルスの世界的感染で、各国経済が大打撃を受けたこともあり、「一九三〇年代のような大混乱の再来」という悲観的な予想も出始めている。
米国の民主主義が「大変」なのは、「選挙で投票する」という最も基本的なことが、難行苦行になったことからもうかがえる。
全米各州の期日前投票は二~三時間待ちが常態化した。投票所には、トランプ大統領に奨励されて、威嚇に来る白人男性グループもいる。銃を待った男性、ビデオでずっと投票者を撮影している人々など、第三世界並みの投票妨
害行動が各地で起きている。
共和党が知事を務める州では今年、黒人が多い地区に限って投票所が意図的に減らされた。待ち時聞は八~十時間のところもある。黒人有権者にとっては「闘争」だ。
著名な政治評論家、デビッド・ブルックス氏は「アトランティック」誌への寄稿で、「米国の民主主義制度への信頼がかかっている」と表現した。「もし制度への信頼が失われれば、社会は崩壊する」というのだ。
選挙で敗北を宣言された側の支持層は、間違いなく制度への不信を募らせるから、米国の民主主義の危機は相当長期にわたって続くだろう。
自由主義陣営の盟主だった米国が、こんな曲がり角に来てしまったのは、トランプ大統領の個性を超えた、長い歴史がある。要約すれば、「黒人の投票権」が拡大するにつれ、保守的な白大層は恐怖を強めていった。
米国は「一人一票」が自動的に保証されていない。投票には有権者登録が必要だ。一九六五年の「投票権法」によって、有権者登録における人種差別が禁止されるまで、大半の黒人は投票ができなかった。現在でもいくつかの州は、黒人の登録のハードルが高い。
南部の白人は、同法に衝撃を受けた。当時の大統領は民主党のリンドン・ジョンソンだ。これを契機に、白人は民主党から共和党に鞍替えした。
彼らが恐れていた通り、黒人の政治的権利はどんどん強まり、ついには黒人のバラク・オバマ大統領を生んでしまった。
共和党支持層の多くは、「人種差別主義者」と呼ばれるのを断固として拒否する。
だが、「あなたは何者か?」とアイデンティティを問われると、まず「白人だ」と答える。そこで、「アイデンティティ政治」という言葉が生まれた。平たく言えば、「白人第一主義」である。
米国のシンクタンク「公共宗教調査研究所」の調査によると、高等教育を受けていない白人の問では、「自分のアイデンティティ」として「白人であること」を挙げた人が多かった。これはトランプ支持層の中核である。
この人たちの問ではまた、「指導者はルールを破ってもかまわない」とする考えが六割に達した。
大統領はまさに、アイデンティティ政治の中で理想のヒーローだ。
対する民主党側には、黒人、ヒスパニック、性的マイノリティーなど様々な少数派が集まるようになった。「米国政治の分断」という言葉が定着して久しいが、根っ子に人種問題がある以上、分断が深まることはあってもなくなることはない。
トランプ大統領の四年間と、白人のみに訴える選挙戦術は、このプロセスを加速させた。(後略)【「選択」11月号】
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「ならず者集団」のような一部トランプ支持者だけを取り上げるのは片手落ちでしょうから、保守派は左派過激主義者と呼ぶグループの策動に関する記事も。
****トランプ当選で「戦略的混乱」? 米大統領選をめぐる暴動示唆の計画書が明らかに…予想される3つのシナリオ****
「民主主義を守るための大衆行動」が暴動に?
アメリカ大統領選挙は、結果がどうなろうと暴動が起きることが懸念されている中で「大衆行動を準備せよ」と指示しているグループもあることが分かった。
ミネソタ州の「ミネソタ行動せよ」という左派系のグループは、保守派のニュースサイト「ブライトバート・ニュース」が“部外秘”とした行動計画書を入手して公表した。
「ミネソタ州の民主主義防衛計画」という表題の計画書は、「ミネソタ州の選挙結果がどうあれ、民主主義を守るための大衆行動を起こさなければならない」とその構成員に呼びかけている。
「計画書」は、その行動が過激化することを次のように示している。
この大衆行動は、(州の最大都市)ミネアポリスを中心に社会不安を引き起こすことになる。状況は不安の本質や州の対応にもよるが、一気に制御できない渦巻化してゆく。
つまりは暴動にもなることも示唆しているわけだが、そのシナリオには3つある。
予想される3つの“暴動”シナリオ
まず、バイデン・トランプ両候補の得票が拮抗して勝敗が付かない場合、右派勢力が介入しようとするのを阻止する。それはミネソタ州にとどまらず、他州での民主主義運動にも連帯行動を起こす。
また、バイデン氏が勝利してトランプ陣営がそれを認めない場合、右派勢力が暴動を起こす可能性があるので、それに対応する。
問題は万一、トランプ大統領が勝利した場合で、「計画書」は「我々は大衆を動員して、戦略的混乱を起こす」としている。
「ミネソタ行動せよ」は、2020年5月にミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイド氏が警察官に窒息させられて殺された事件で、抗議運動の中心になったグループ。このグループの圧力で、ミネアポリス市議会は警察組織を解体する議決をしている。
「計画書」は、選挙当日から1月20日の大統領就任式までの行動を記しているが、この間「装備(武器?)を準備し、練度を高め、素早く効果的に大衆動員ができるようにしておくこと」と構成員に指示している。
これは、たまたま左派系のグループの「計画書」だったが、右派グループも同様の準備をしていることは容易に考えられる。(後略)【11月2日 木村太郎氏 FNNプライムオンライン】
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Qアノンといった陰謀論が横行し、フェイクニュースが溢れるなかで保守派のニュースサイトが入手したとされる「極秘行動計画書」なるものの真偽のほどはわかりません。
昨日ブログで、中国の香港支配強化について、“今回の香港は、ヒトラーのラインランド進駐と同じようなものとみられている。”【10月30日 WEDGE】という表現がありましたが、その並びで言えば、トランプ政治が煽り深める分断と暴力は、ヒトラー・ナチスが権力を掌握していく過程を彷彿とさせるものがあります。
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