(8月25日、台湾行政院(内閣)は、中国との緊張が高まる中、2023年の防衛予算を前年比12.9%増の4151億台湾ドル(137億2000万米ドル)とする案を発表した。写真は台湾の年次軍事演習の様子。新北市で7月撮影【8月25日 大紀元】)
【バイデン大統領 再三再四の「台湾防衛」発言】
従来アメリカは台湾有事の際の軍事的対応をあきらかにしないことで、台湾の独立志向と中国の台湾侵攻の両者を牽制・抑制する、いわゆる「あいまい戦略」をとってきており、ホワイトハウスはそのことは今も変わっていないとしていますが、バイデン大統領はこれまで3回、有事の際の台湾防衛を口にしてきました。(そのたびに、ホワイトハウスは、従来からのあいまい戦略に変更はない旨を事後的に弁明)
これだけ繰り返せば、失言ではなく“意図的”発言と思われますが、再び・・・
****バイデン米大統領、台湾防衛を明言****
ジョー・バイデン米大統領は18日、中国が台湾に侵攻した場合、米軍は台湾を防衛すると明言した。一方、ホワイトハウスは従来の政策に変更はないとの見解を示した。
バイデン氏は米CBSの報道番組「60ミニッツ」で、米軍は台湾を防衛するのかという質問に対し、「前例のない攻撃」があれば「イエスだ」と答えた。
バイデン氏は5月の日本での日米首脳会談後の記者会見でも、台湾有事には軍事的に関与すると述べ、ホワイトハウスが火消しを図っていた。
米国は1979年に中国と国交を樹立し、台湾と断交した。一方で、台湾関係法により、台湾に自衛のための武器供与を約束している。
しかし、これまでは台湾防衛をするかどうか明確にしない「戦略的な曖昧さ」を維持し、中国による侵攻と、台湾が正式な独立宣言を行って中国を刺激する事態を回避してきた。
ホワイトハウスの報道官は、バイデン氏の今回の発言が「戦略的な曖昧さ」の変化を意味するのかと問われると、「大統領は今年に入ってから東京でもこのような発言をし、さらにわが国の台湾政策は変わっていないと明言した。それは今も変わらない」と述べた。 【9月19日 AFP】
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【「台湾独立」支持ともとれる発言】
今回発言は「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と、単に「有事の際の台湾防衛」にとどまらず、「台湾独立支持」を示唆したととれるような内容にもなっており、これまで以上に踏み込んだ発言と指摘されています。
****バイデン氏の台湾防衛発言、「独立支持」への転換示唆か****
バイデン米大統領が18日の米CBSテレビでのインタビューで、台湾問題を巡って、再び踏み込んだ発言を行った。ニュースのヘッドラインには、中国が侵攻すれば米軍が台湾を守る、との文字が躍った。
しかし、それよりもずっと重大なのは、米国の政策を台湾独立支持の方向に転換させることをバイデン氏が示唆したとも解釈されることだった。
ホワイトハウスはバイデン氏の発言後、米国の政策に変更はないと必死に説明している。だが、何人かの専門家は、意図的かどうかはともかくとして、バイデン氏によって、台湾の独立にはコミットしないという従来の米国の姿勢は損なわれたのではないか、との見方を示した。
中国の習近平国家主席はずっと前から台湾を支配下に置くと表明し、そのために軍事力行使を辞さない構えを示してきた。台湾政府は中国側の「自国領土の一部」という主張に強く反発しつつ、既に事実上の独立国家である以上、改めて独立宣言をする必要はないとのメッセージを発している。
ブリンケン国務長官、オースティン国防長官ら米政府高官も今年、米国は台湾独立を支持しないとの立場を強調。これは過去数十年間にわたり、中国政府に「挑発によらざる攻撃」を思いとどまらせながら、台湾に正式な独立を宣言しないよう納得させるため、細心の注意を払って続けてきた米国の外交的努力、ワシントン流の言い方なら「二重の抑止」政策の一環だった。
ところが、バイデン氏はCBSテレビ番組「60ミニッツ」で「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と語った。
<矛盾する姿勢>
バイデン氏に批判的な人々は、バイデン氏が台湾の独立宣言を暗黙で支持したと、中国政府に受け止められると主張する。中国は既に米国が台湾防衛に動くと想定している公算が大きい以上、わざわざ守ると明言する効果より、中国側の敵意を増幅させるデメリットの方が大きいとも指摘した。
シンクタンクのファウンデーション・フォー・ディフェンス・オブ・デモクラシーズの中国専門家、クレイグ・シングルトン氏は「米国の台湾政策は変わらないと言いながら、米軍の台湾防衛を約束し、台湾に独立決定権があると認めるのは矛盾している」と述べ、バイデン氏は台湾自らが独立するかどうか決められると示唆した、と中国が懸念する公算が大きいと付け加えた。
ベン・サス上院議員ら一部の共和党議員は、バイデン氏の発言を称賛するとともに、ホワイトハウスが姿勢を後退させたと非難。一方、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は「大統領は米国の『長らく維持してきた1つの中国政策』を直接肯定している」と言い張った。
<求められる説明責任>
台湾外交部はバイデン氏の発言に対して、確固とした支持を示してくれたことへの「心からの感謝」を表明した。
在米中国大使館の報道官は、米国は台湾の独立派勢力に誤ったシグナルを送り、台湾海峡の平和と中米関係を危険にさらしてはならないとくぎを刺した。
シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ジュード・ブランチェット氏は、バイデン氏の発言は米国の政策を明瞭化するより、むしろ混乱をもたらしたと話す。
その上で同氏は「正確な言葉づかいが最も大事になる問題の1つは、台湾政策を巡る話だ。台湾が独立を宣言しても米国が台湾を守るという方向にわれわれの外交政策が根本的に変わるのだとすれば、それは単に60ミニッツのインタビューで知らせるより、もっとしっかりした議論がふさわしいテーマになる」と主張した。【9月20日 ロイター】
しかし、それよりもずっと重大なのは、米国の政策を台湾独立支持の方向に転換させることをバイデン氏が示唆したとも解釈されることだった。
ホワイトハウスはバイデン氏の発言後、米国の政策に変更はないと必死に説明している。だが、何人かの専門家は、意図的かどうかはともかくとして、バイデン氏によって、台湾の独立にはコミットしないという従来の米国の姿勢は損なわれたのではないか、との見方を示した。
中国の習近平国家主席はずっと前から台湾を支配下に置くと表明し、そのために軍事力行使を辞さない構えを示してきた。台湾政府は中国側の「自国領土の一部」という主張に強く反発しつつ、既に事実上の独立国家である以上、改めて独立宣言をする必要はないとのメッセージを発している。
ブリンケン国務長官、オースティン国防長官ら米政府高官も今年、米国は台湾独立を支持しないとの立場を強調。これは過去数十年間にわたり、中国政府に「挑発によらざる攻撃」を思いとどまらせながら、台湾に正式な独立を宣言しないよう納得させるため、細心の注意を払って続けてきた米国の外交的努力、ワシントン流の言い方なら「二重の抑止」政策の一環だった。
ところが、バイデン氏はCBSテレビ番組「60ミニッツ」で「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と語った。
<矛盾する姿勢>
バイデン氏に批判的な人々は、バイデン氏が台湾の独立宣言を暗黙で支持したと、中国政府に受け止められると主張する。中国は既に米国が台湾防衛に動くと想定している公算が大きい以上、わざわざ守ると明言する効果より、中国側の敵意を増幅させるデメリットの方が大きいとも指摘した。
シンクタンクのファウンデーション・フォー・ディフェンス・オブ・デモクラシーズの中国専門家、クレイグ・シングルトン氏は「米国の台湾政策は変わらないと言いながら、米軍の台湾防衛を約束し、台湾に独立決定権があると認めるのは矛盾している」と述べ、バイデン氏は台湾自らが独立するかどうか決められると示唆した、と中国が懸念する公算が大きいと付け加えた。
ベン・サス上院議員ら一部の共和党議員は、バイデン氏の発言を称賛するとともに、ホワイトハウスが姿勢を後退させたと非難。一方、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は「大統領は米国の『長らく維持してきた1つの中国政策』を直接肯定している」と言い張った。
<求められる説明責任>
台湾外交部はバイデン氏の発言に対して、確固とした支持を示してくれたことへの「心からの感謝」を表明した。
在米中国大使館の報道官は、米国は台湾の独立派勢力に誤ったシグナルを送り、台湾海峡の平和と中米関係を危険にさらしてはならないとくぎを刺した。
シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ジュード・ブランチェット氏は、バイデン氏の発言は米国の政策を明瞭化するより、むしろ混乱をもたらしたと話す。
その上で同氏は「正確な言葉づかいが最も大事になる問題の1つは、台湾政策を巡る話だ。台湾が独立を宣言しても米国が台湾を守るという方向にわれわれの外交政策が根本的に変わるのだとすれば、それは単に60ミニッツのインタビューで知らせるより、もっとしっかりした議論がふさわしいテーマになる」と主張した。【9月20日 ロイター】
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当然ながら中国は激しく反発しています。
****米大統領の台湾防衛発言は「約束違反」 中国が反発****
中国政府は19日、ジョー・バイデン大統領が、米国は中国の侵攻から台湾を守ると表明したことについて、米政府の従来方針に「著しく反している」と抗議した。(中略)
中国外務省の毛寧報道官は定例記者会見で、バイデン氏の発言について「台湾の独立を支持しないとする米国の重要な約束に著しく反しており、独立派に重大な誤った信号を送るものだ」と述べた。
その上で「われわれは平和的統一に向けて最大限、真摯(しんし)に努力する用意がある」と強調。「同時に、わが国の分裂を狙ういかなる活動も断固容認せず、あらゆる必要な措置を講じる選択肢を保有している」と語った。
毛氏は「米国に対し、台湾問題は極めて重要かつ繊細であることを十分に認識するよう求める」と述べるとともに、台湾独立を支持しないとの約束を誠実に守るよう要請した。
一方、台湾外交部(外務省)は19日、バイデン氏発言に「心から感謝する」と表明した。 【9月20日 AFP】*******************
習近平国家主席も、こうしたバイデン大統領の発言に対し攻撃性を強化するのか(結果的に米中対立を先鋭化させるのか)、あるいは抑制的に対応するのか、自身の3選を決める党大会が直後にひかえているだけに難しいところ。
【政権以上に強硬な米議会 超党派で台湾支援強化の動き】
アメリカは台湾への武器売却を進めています。
****アメリカ政府 台湾にミサイルなど1500億円規模の売却承認 台湾外交部「大いに歓迎し、感謝」****
アメリカ国務省が台湾に対するミサイルなどの売却を承認しました。
対艦ミサイル「ハープーン」や、空対空ミサイル「サイドワインダー」などで、総額は11億ドル=日本円にして1500億円にのぼります。
これを受け、台湾外交部は「大いに歓迎し、感謝する」としたうえで、「中国が軍事的な挑発を続け、現状を一方的に変えようとしているが、台湾の自衛への決意はこの上なく強固だ」としています。
また、国防部も「台湾海峡とインド太平洋地域の安全と平和を共同で維持したい」とアメリカとの協力関係を強調しています。【9月3日 TBS NEWS DIG】
対艦ミサイル「ハープーン」や、空対空ミサイル「サイドワインダー」などで、総額は11億ドル=日本円にして1500億円にのぼります。
これを受け、台湾外交部は「大いに歓迎し、感謝する」としたうえで、「中国が軍事的な挑発を続け、現状を一方的に変えようとしているが、台湾の自衛への決意はこの上なく強固だ」としています。
また、国防部も「台湾海峡とインド太平洋地域の安全と平和を共同で維持したい」とアメリカとの協力関係を強調しています。【9月3日 TBS NEWS DIG】
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アメリカは、再三のバイデン発言、武器売却、ペロシ下院議長訪台など、台湾支援の姿勢を強めていますが、これはバイデン政権の姿勢という以上に、むしろ米議会の方が台湾支援では強硬な姿勢をとっていることのあらわれでもあります。
****台湾支援強化へ強硬姿勢=米上院委、超党派で法案可決―バイデン政権、対応苦慮も****
米上院外交委員会は14日、台湾への軍事支援を大幅に拡大する「台湾政策法案」を賛成多数で可決した。成立には上下両院本会議での可決と、大統領の署名が必要。
米議会が超党派で台湾支援強化に向けた強い姿勢を示した形で、米中対話を模索するバイデン政権は難しい対応を迫られそうだ。
ペロシ米下院議長による8月の訪台に反発した中国は、台湾への軍事的圧力を強め、米国との対話の窓口も閉ざしている。
バイデン政権は台湾への軍事的威嚇をけん制する一方、「一つの中国」政策を堅持する姿勢もたびたび表明。不測の事態を避けるための対話維持を目指しており、法案が中国側に誤ったメッセージを送ることを懸念している。
法案は、台湾軍の装備や訓練などの強化を目的とした4年間で総額約45億ドル(約6400億円)の軍事支援のほか、最大20億ドル(約2850億円)の財政援助を規定。
台湾を北大西洋条約機構(NATO)非加盟の「主要同盟国」に指定することも盛り込み、米台間の軍事協力強化をうたっている。台湾侵攻の動きがあれば、中国共産党幹部らに制裁を科すことも明記した。
親台湾派とされるメネンデス上院外交委員長(民主)は委員会で「頼れる抑止と台湾海峡の安定維持を望むなら、現状を自覚すべきだ」と述べ、台湾への軍事的圧力を強める中国に警戒感を示した。「米国は戦争を望んでいない」とも語り、緊張を激化させているのは中国だとの認識を強調した。【9月15日 時事】
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今回法案は、アメリカによる台湾関与の基盤となっている「台湾関係法」が制定された1979年以降で、米台関係を最も包括的に再構築する内容となっています。
なお、バイデン政権も対中国制裁を検討していることも報じられていますが、実現は難しいという見方も。
****米政権、中国に制裁検討か 台湾侵攻抑止で、実現性疑問視も****
ロイター通信は13日、バイデン米政権が中国の台湾侵攻を抑止するための対中制裁措置を検討していると報じた。関係筋の話として伝えた。
ロイター通信は13日、バイデン米政権が中国の台湾侵攻を抑止するための対中制裁措置を検討していると報じた。関係筋の話として伝えた。
8月上旬のペロシ米下院議長による訪台を受けて中国が軍事行動を激化させた後、喫緊の検討課題となった。世界第2位の経済大国である中国への制裁の実現可能性を疑問視する見方もある。
バイデン政権は2月にロシアがウクライナに侵攻した後、対中制裁の検討を始めた。詳しい内容は不明で、欧州やアジア各国と連携しつつ中国を過度に刺激しない方法を探っているという。台湾も欧州各国に、中国が攻撃した場合の行動を計画するよう要求している。【9月14日 共同】
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【中国も「台湾統一」を党規約に明記か】
一方の中国も、来月中旬の党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があるとの報道も。
****中国共産党「党規約」に「台湾統一」初めて盛り込む可能性****
中国で来月開かれる共産党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があると香港メディアが伝えました。
中国では来月、5年に一度の党大会が開かれますがこの際、中国共産党の最高規則にあたる党規約を改正し「重大な戦略的思想」を盛り込むことを決めています。
いまの規約では台湾について「香港、マカオ、台湾、海外同胞を含む全国民の団結を継続的に強化する」とだけ記されていますが、15日付けの香港メディアは今度の改正で「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは、党の揺るぎない歴史的任務だ」という表現が盛り込まれる可能性があると伝えました。
「台湾統一」という文言が盛り込まれるのは初めてのことで、規約に明記することで台湾統一に向けたより具体的な行動をとる根拠とされる可能性があります。
また、習近平国家主席は今回の党大会で、異例の3期目に入る見通しですが、自身の続投を正当化する根拠のひとつとして台湾問題の「解決」を強調する狙いがあるものとみられます。【9月16日 TBS NEWS DIG】
中国では来月、5年に一度の党大会が開かれますがこの際、中国共産党の最高規則にあたる党規約を改正し「重大な戦略的思想」を盛り込むことを決めています。
いまの規約では台湾について「香港、マカオ、台湾、海外同胞を含む全国民の団結を継続的に強化する」とだけ記されていますが、15日付けの香港メディアは今度の改正で「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは、党の揺るぎない歴史的任務だ」という表現が盛り込まれる可能性があると伝えました。
「台湾統一」という文言が盛り込まれるのは初めてのことで、規約に明記することで台湾統一に向けたより具体的な行動をとる根拠とされる可能性があります。
また、習近平国家主席は今回の党大会で、異例の3期目に入る見通しですが、自身の続投を正当化する根拠のひとつとして台湾問題の「解決」を強調する狙いがあるものとみられます。【9月16日 TBS NEWS DIG】
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党規約明記となれば、自身の続投を正当化する根拠ともなりますが、自身がその規約に縛られて更にエスカレートせざるを得なくなる可能性も。
台湾有事という事態は不可避的に日本も関与せざるを得なくなりますので、あまり想像したくはない事態であり、また、いかに中国・習近平政権と言えど、おいそれと踏み込めるものでもありませんが、米中間の緊張はまた1段階あがったようにも見えます。