孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾をめぐる米中間の緊張 バイデン発言、米議会の動き、中国党規約改正で更に一段階進む流れ

2022-09-20 22:11:27 | 東アジア
(8月25日、台湾行政院(内閣)は、中国との緊張が高まる中、2023年の防衛予算を前年比12.9%増の4151億台湾ドル(137億2000万米ドル)とする案を発表した。写真は台湾の年次軍事演習の様子。新北市で7月撮影【8月25日 大紀元】)

【バイデン大統領 再三再四の「台湾防衛」発言】
従来アメリカは台湾有事の際の軍事的対応をあきらかにしないことで、台湾の独立志向と中国の台湾侵攻の両者を牽制・抑制する、いわゆる「あいまい戦略」をとってきており、ホワイトハウスはそのことは今も変わっていないとしていますが、バイデン大統領はこれまで3回、有事の際の台湾防衛を口にしてきました。(そのたびに、ホワイトハウスは、従来からのあいまい戦略に変更はない旨を事後的に弁明)

これだけ繰り返せば、失言ではなく“意図的”発言と思われますが、再び・・・

****バイデン米大統領、台湾防衛を明言****
ジョー・バイデン米大統領は18日、中国が台湾に侵攻した場合、米軍は台湾を防衛すると明言した。一方、ホワイトハウスは従来の政策に変更はないとの見解を示した。

バイデン氏は米CBSの報道番組「60ミニッツ」で、米軍は台湾を防衛するのかという質問に対し、「前例のない攻撃」があれば「イエスだ」と答えた。

バイデン氏は5月の日本での日米首脳会談後の記者会見でも、台湾有事には軍事的に関与すると述べ、ホワイトハウスが火消しを図っていた。

米国は1979年に中国と国交を樹立し、台湾と断交した。一方で、台湾関係法により、台湾に自衛のための武器供与を約束している。

しかし、これまでは台湾防衛をするかどうか明確にしない「戦略的な曖昧さ」を維持し、中国による侵攻と、台湾が正式な独立宣言を行って中国を刺激する事態を回避してきた。

ホワイトハウスの報道官は、バイデン氏の今回の発言が「戦略的な曖昧さ」の変化を意味するのかと問われると、「大統領は今年に入ってから東京でもこのような発言をし、さらにわが国の台湾政策は変わっていないと明言した。それは今も変わらない」と述べた。 【9月19日 AFP】
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【「台湾独立」支持ともとれる発言】
今回発言は「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と、単に「有事の際の台湾防衛」にとどまらず、「台湾独立支持」を示唆したととれるような内容にもなっており、これまで以上に踏み込んだ発言と指摘されています。

****バイデン氏の台湾防衛発言、「独立支持」への転換示唆か****
バイデン米大統領が18日の米CBSテレビでのインタビューで、台湾問題を巡って、再び踏み込んだ発言を行った。ニュースのヘッドラインには、中国が侵攻すれば米軍が台湾を守る、との文字が躍った。

しかし、それよりもずっと重大なのは、米国の政策を台湾独立支持の方向に転換させることをバイデン氏が示唆したとも解釈されることだった。

ホワイトハウスはバイデン氏の発言後、米国の政策に変更はないと必死に説明している。だが、何人かの専門家は、意図的かどうかはともかくとして、バイデン氏によって、台湾の独立にはコミットしないという従来の米国の姿勢は損なわれたのではないか、との見方を示した。

中国の習近平国家主席はずっと前から台湾を支配下に置くと表明し、そのために軍事力行使を辞さない構えを示してきた。台湾政府は中国側の「自国領土の一部」という主張に強く反発しつつ、既に事実上の独立国家である以上、改めて独立宣言をする必要はないとのメッセージを発している。

ブリンケン国務長官、オースティン国防長官ら米政府高官も今年、米国は台湾独立を支持しないとの立場を強調。これは過去数十年間にわたり、中国政府に「挑発によらざる攻撃」を思いとどまらせながら、台湾に正式な独立を宣言しないよう納得させるため、細心の注意を払って続けてきた米国の外交的努力、ワシントン流の言い方なら「二重の抑止」政策の一環だった。

ところが、バイデン氏はCBSテレビ番組「60ミニッツ」で「独立に関しては台湾自らが判断を下す。われわれ米国として台湾独立を促してはいない。それは彼らの決定事項だ」と語った。

<矛盾する姿勢>
バイデン氏に批判的な人々は、バイデン氏が台湾の独立宣言を暗黙で支持したと、中国政府に受け止められると主張する。中国は既に米国が台湾防衛に動くと想定している公算が大きい以上、わざわざ守ると明言する効果より、中国側の敵意を増幅させるデメリットの方が大きいとも指摘した。

シンクタンクのファウンデーション・フォー・ディフェンス・オブ・デモクラシーズの中国専門家、クレイグ・シングルトン氏は「米国の台湾政策は変わらないと言いながら、米軍の台湾防衛を約束し、台湾に独立決定権があると認めるのは矛盾している」と述べ、バイデン氏は台湾自らが独立するかどうか決められると示唆した、と中国が懸念する公算が大きいと付け加えた。

ベン・サス上院議員ら一部の共和党議員は、バイデン氏の発言を称賛するとともに、ホワイトハウスが姿勢を後退させたと非難。一方、米国家安全保障会議(NSC)の報道官は「大統領は米国の『長らく維持してきた1つの中国政策』を直接肯定している」と言い張った。

<求められる説明責任>
台湾外交部はバイデン氏の発言に対して、確固とした支持を示してくれたことへの「心からの感謝」を表明した。

在米中国大使館の報道官は、米国は台湾の独立派勢力に誤ったシグナルを送り、台湾海峡の平和と中米関係を危険にさらしてはならないとくぎを刺した。

シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)の中国専門家、ジュード・ブランチェット氏は、バイデン氏の発言は米国の政策を明瞭化するより、むしろ混乱をもたらしたと話す。

その上で同氏は「正確な言葉づかいが最も大事になる問題の1つは、台湾政策を巡る話だ。台湾が独立を宣言しても米国が台湾を守るという方向にわれわれの外交政策が根本的に変わるのだとすれば、それは単に60ミニッツのインタビューで知らせるより、もっとしっかりした議論がふさわしいテーマになる」と主張した。【9月20日 ロイター】
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当然ながら中国は激しく反発しています。

****米大統領の台湾防衛発言は「約束違反」 中国が反発****
中国政府は19日、ジョー・バイデン大統領が、米国は中国の侵攻から台湾を守ると表明したことについて、米政府の従来方針に「著しく反している」と抗議した。(中略)

中国外務省の毛寧報道官は定例記者会見で、バイデン氏の発言について「台湾の独立を支持しないとする米国の重要な約束に著しく反しており、独立派に重大な誤った信号を送るものだ」と述べた。

その上で「われわれは平和的統一に向けて最大限、真摯(しんし)に努力する用意がある」と強調。「同時に、わが国の分裂を狙ういかなる活動も断固容認せず、あらゆる必要な措置を講じる選択肢を保有している」と語った。

毛氏は「米国に対し、台湾問題は極めて重要かつ繊細であることを十分に認識するよう求める」と述べるとともに、台湾独立を支持しないとの約束を誠実に守るよう要請した。

一方、台湾外交部(外務省)は19日、バイデン氏発言に「心から感謝する」と表明した。 【9月20日 AFP】*******************

習近平国家主席も、こうしたバイデン大統領の発言に対し攻撃性を強化するのか(結果的に米中対立を先鋭化させるのか)、あるいは抑制的に対応するのか、自身の3選を決める党大会が直後にひかえているだけに難しいところ。

【政権以上に強硬な米議会 超党派で台湾支援強化の動き】
アメリカは台湾への武器売却を進めています。

****アメリカ政府 台湾にミサイルなど1500億円規模の売却承認 台湾外交部「大いに歓迎し、感謝」****
アメリカ国務省が台湾に対するミサイルなどの売却を承認しました。

対艦ミサイル「ハープーン」や、空対空ミサイル「サイドワインダー」などで、総額は11億ドル=日本円にして1500億円にのぼります。

これを受け、台湾外交部は「大いに歓迎し、感謝する」としたうえで、「中国が軍事的な挑発を続け、現状を一方的に変えようとしているが、台湾の自衛への決意はこの上なく強固だ」としています。

また、国防部も「台湾海峡とインド太平洋地域の安全と平和を共同で維持したい」とアメリカとの協力関係を強調しています。【9月3日 TBS NEWS DIG】
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アメリカは、再三のバイデン発言、武器売却、ペロシ下院議長訪台など、台湾支援の姿勢を強めていますが、これはバイデン政権の姿勢という以上に、むしろ米議会の方が台湾支援では強硬な姿勢をとっていることのあらわれでもあります。

****台湾支援強化へ強硬姿勢=米上院委、超党派で法案可決―バイデン政権、対応苦慮も****
米上院外交委員会は14日、台湾への軍事支援を大幅に拡大する「台湾政策法案」を賛成多数で可決した。成立には上下両院本会議での可決と、大統領の署名が必要。

米議会が超党派で台湾支援強化に向けた強い姿勢を示した形で、米中対話を模索するバイデン政権は難しい対応を迫られそうだ。

ペロシ米下院議長による8月の訪台に反発した中国は、台湾への軍事的圧力を強め、米国との対話の窓口も閉ざしている。

バイデン政権は台湾への軍事的威嚇をけん制する一方、「一つの中国」政策を堅持する姿勢もたびたび表明。不測の事態を避けるための対話維持を目指しており、法案が中国側に誤ったメッセージを送ることを懸念している。

法案は、台湾軍の装備や訓練などの強化を目的とした4年間で総額約45億ドル(約6400億円)の軍事支援のほか、最大20億ドル(約2850億円)の財政援助を規定。

台湾を北大西洋条約機構(NATO)非加盟の「主要同盟国」に指定することも盛り込み、米台間の軍事協力強化をうたっている。台湾侵攻の動きがあれば、中国共産党幹部らに制裁を科すことも明記した。

親台湾派とされるメネンデス上院外交委員長(民主)は委員会で「頼れる抑止と台湾海峡の安定維持を望むなら、現状を自覚すべきだ」と述べ、台湾への軍事的圧力を強める中国に警戒感を示した。「米国は戦争を望んでいない」とも語り、緊張を激化させているのは中国だとの認識を強調した。【9月15日 時事】
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今回法案は、アメリカによる台湾関与の基盤となっている「台湾関係法」が制定された1979年以降で、米台関係を最も包括的に再構築する内容となっています。

なお、バイデン政権も対中国制裁を検討していることも報じられていますが、実現は難しいという見方も。

****米政権、中国に制裁検討か 台湾侵攻抑止で、実現性疑問視も****
ロイター通信は13日、バイデン米政権が中国の台湾侵攻を抑止するための対中制裁措置を検討していると報じた。関係筋の話として伝えた。

8月上旬のペロシ米下院議長による訪台を受けて中国が軍事行動を激化させた後、喫緊の検討課題となった。世界第2位の経済大国である中国への制裁の実現可能性を疑問視する見方もある。

バイデン政権は2月にロシアがウクライナに侵攻した後、対中制裁の検討を始めた。詳しい内容は不明で、欧州やアジア各国と連携しつつ中国を過度に刺激しない方法を探っているという。台湾も欧州各国に、中国が攻撃した場合の行動を計画するよう要求している。【9月14日 共同】
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【中国も「台湾統一」を党規約に明記か】
一方の中国も、来月中旬の党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があるとの報道も。

****中国共産党「党規約」に「台湾統一」初めて盛り込む可能性****
中国で来月開かれる共産党大会で「台湾統一を達成することはゆるぎない党の任務」という文言が党の規約に初めて入る可能性があると香港メディアが伝えました。

中国では来月、5年に一度の党大会が開かれますがこの際、中国共産党の最高規則にあたる党規約を改正し「重大な戦略的思想」を盛り込むことを決めています。

いまの規約では台湾について「香港、マカオ、台湾、海外同胞を含む全国民の団結を継続的に強化する」とだけ記されていますが、15日付けの香港メディアは今度の改正で「台湾問題を解決し、祖国の完全統一を実現することは、党の揺るぎない歴史的任務だ」という表現が盛り込まれる可能性があると伝えました。

「台湾統一」という文言が盛り込まれるのは初めてのことで、規約に明記することで台湾統一に向けたより具体的な行動をとる根拠とされる可能性があります。

また、習近平国家主席は今回の党大会で、異例の3期目に入る見通しですが、自身の続投を正当化する根拠のひとつとして台湾問題の「解決」を強調する狙いがあるものとみられます。【9月16日 TBS NEWS DIG】
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党規約明記となれば、自身の続投を正当化する根拠ともなりますが、自身がその規約に縛られて更にエスカレートせざるを得なくなる可能性も。

台湾有事という事態は不可避的に日本も関与せざるを得なくなりますので、あまり想像したくはない事態であり、また、いかに中国・習近平政権と言えど、おいそれと踏み込めるものでもありませんが、米中間の緊張はまた1段階あがったようにも見えます。
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ロシア  ウクライナ情勢をめぐり、戦局でも、国際関係でも色濃い苦境

2022-09-19 23:22:55 | ロシア
(ウクライナ軍の攻撃ドローン「R18」【9月18日 YAHOO!ニュース】)

【ロシア ドローンも弾薬も兵士も不足】
アメリカの空軍戦力の主力が従来の有人戦闘機から無人機ドローンに変わりつつあること、アゼルバイジャンがトルコ製ドローンを駆使してアルメニア軍を大破したことで戦闘の形が変わったと言われていること・・・など、ドローンが現代の戦闘の重要な部分を担うようになっていますが、そのあたりは野戦砲など「古いタイプ」の兵器が目立つウクライナの戦地でも同様のようです。

****戦場のウクライナ兵に直接聞いた…“電光石火作戦”でロシア軍敗走 陰の主役は「中国製ドローン」だった【報道1930】****
(中略)(ウクライナ軍の戦果について)こう語るのはウクライナ軍の空中偵察部隊チーム長、マジャル氏。ヘルソンでウクライナ軍が攻勢を見せているのは、米国供与の高機動ロケット砲システム=ハイマースが届いたことに加え、ドローンが重要な役割を果たしているという。

マジャル氏 「見てください。ドローンを持った兵士です。私の後ろにいる兵士らは、1つのシフトで50回くらいドローンを飛ばします。ドローンは攻撃や砲撃を受けたり、ドローン妨害装置が使われることもあるので、手動で操作することが多いです。つまり、ナビゲーション、距離計や高度計を使わないで、カメラだけで操作している状態です。戦闘地では必要不可欠なスキルです」

マジャル氏は実際にドローンを飛ばしている映像を送ってくれた。 「これは中国製の民間用ドローンで、MAVIC3です。DJI社が製造しています。」

ドローンは「偵察用」「爆弾を落として戻ってくるタイプ」「自爆型」など何種類かを駆使して攻撃を行っていると明らかにした。そして、ドローンは消耗品なので質、量ともにもっと必要だと語る。

「様々なドローンはありますが、その中に、100キロも飛べるドローンや高高度ドローンがあり、ドローン妨害装置の電波が届かないので有利なのですが、このようなプロフェショナルなドローンは、非常に数が少なく不足しています」(BS-TBS『報道1930』 9月13日放送より)【9月14日 TBS NEWS DIG】
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戦闘のさなかに兵士がカメラ映像を観ながらピコピコ操作している・・・というのは奇妙な絵でもありますが、それが現代の戦闘の一端でもあるようです。これからはゲームオタク的な人材が優れた兵士になるのかも。

その重要な武器である無人機でもロシアは不足をきたしており、イランに頼っているとか。ただ、イラン製は信頼性に欠けるとも。

****イランのロシアへの無人航空機提供の脅威と限界****
イランはウクライナでの使用のために無人機をロシアに送った。しかし、米高官によれば、そのいくつかはすでに機能不全を起こしたと言う。(中略)

ロシア軍がイランに重要技術を頼らなければならないのは、その武器在庫がどれほど足りないかを示すものだ

イランとロシアの軍事協力が、無人機をイランがロシアに提供するなど進んでいる。イランとロシアの同盟関係ができつつあるのではないかと懸念する向きもあるが、イランとロシアの関係は伝統的に相互不信が強く、信頼関係に裏打ちされた同盟関係になることは考え難いように思われる。

今回の無人機の取引は、ロシア側の無人機需要と制裁下のイラン側の輸出収益確保願望が一致したので成立したものと考えていいのではないかと判断できる。【9月13日 WEDGE】
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同様の現象は戦闘に不可欠な弾薬でも起きています。ロシアが弾薬で頼ったのは、あの北朝鮮。

****ロシア、武器不足浮き彫り 北朝鮮から弾薬「数百万発」調達へ協議*****
バイデン米政権は6日、ウクライナに侵略を続けるロシアが北朝鮮から大量の弾薬の調達を打診していることを明らかにした。ロシアはイランから無人機を調達したことも判明している。経済制裁の影響で兵器や弾薬の不足に悩むロシアが、権威主義国家に支援を求める実態が浮き彫りになった。(中略)

電子機器の禁輸など対露経済制裁が弾薬の製造や在庫に影響を与えていると指摘されており、バイデン政権は、ロシアがイランに続き北朝鮮にも触手を伸ばしたことについて、「ロシアが補給の最前線でさまざまな困難に直面している証左」(国防総省のライダー報道官)と注視している。(後略)【9月7日 産経】
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北朝鮮製弾薬には不発弾が多いとのことで、ウクライナ軍の攻勢に苦しむロシア軍にとっては、更に悩みの種にも。

「もしウクライナの最前線に届いたのなら、試射を行っても不思議ではありません。その結果、延坪島砲撃事件と同じくらいの高率で不発弾があることが判明すると、部隊全体が不安に包まれるはずです。士気は更に低下することになるでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)【9月16日 デイリー新潮】

ロシア軍が不足しているのは武器・弾薬だけでなく、そもそも兵士も足りません。

“(ウクライナ軍参謀本部)報告によると、ロシア軍は受刑者の動員を計画。重罪を犯した受刑者は6カ月の兵役で、ほかの受刑者は3カ月の兵役につけば、「犯罪歴を取り消す」などの条件を示しているという。また、薬物やアルコールの依存症の人たちも、数多く動員されているとしている。”【9月14日 日系メディア】

当然のようにロシア国内強硬派からは「戦時動員をかけて戦争のための人員を確保すべし」との声も出てきていますが、プーチン政権としては「特殊作戦」の失敗を認め、「戦争」に対する国民の忌避感を煽る危険があるため、そうした方策はとりたくないところ。

****ロシア、予備兵動員の議論否定 ウクライナによる領土奪還でも****
ロシア大統領府のペスコフ報道官は13日、ウクライナ軍が同国北東部ハリコフ地方のほぼ全域をロシアから奪還したのを受け、ウクライナに予備兵を動員するかどうかについて「現時点ではない、その議論はしていない」と語った。 

7カ月近くに及ぶウクライナとの戦闘でロシアは最悪の敗北の一つを喫し、ウクライナでの兵力強化のため全国から兵士を動員するように求める圧力が高まっている。 

ロシアのメディアは12日、政権与党の統一ロシアのシェレメト下院議員が勝利には「総動員」が必要と言及したことを報じた。 

野党の共産党のジュガーノフ委員長は13日、党ウェブサイトで発表した声明で、欧米と北大西洋条約機構(NATO)に対する「戦争」と呼ぶものに勝利するには「何よりもわれわれの力と資源を最大限に動員することが必要だ」と記した。 

ペスコフ氏は、動員を求める民族主義的な論客による軍指導部への批判は「多元主義」の一つの例であり、ロシア人は全体としてプーチン大統領を支持し続けていると主張した。 

プーチン氏はこれまでのところ、過去5年間に兵役に就いた約200万人のロシアの予備兵を動員していない。動員した場合、限定的な軍事作戦と称してきたのが実際には全面戦争であることを認めることになる。【9月14日 ロイター】
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プーチン大統領としては、もしウクライナで失敗したら軍の責任にするつもりのようです。

【戦局好転で強気増すウクライナ】
戦況の方は周知のようにウクライナ軍が電撃的な攻勢で目覚ましい成果をあげています。

****ウクライナ軍の反攻続く=東部ドンバスのロシア軍もろく****
ロイター通信によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ドンバス地方のロシア軍を脅かす北東部ハリコフ州のオスキル川東岸に軍が前進したと表明した。18日夜の演説で「一連の勝利の後、現状は小休止しているように見えるが、これはさらなる(勝利への)準備だ」と宣言した。
 
米シンクタンクの戦争研究所は17日、ロシアがハリコフ、ルガンスク両州に大規模な援軍を出せなかったとして「ウクライナ北東部の大部分で、ロシア軍はウクライナの反攻に対し非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態になっている」と分析した。英国防省によると、ロシア軍は攻撃対象を民間施設などに拡大している。【9月19日 時事】
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この状況を受けてウクライナ国民の領土奪還の思いは更に強まっています。

****領土割譲「認めない」87%に ウクライナ世論調査 軍の攻勢で****
ウクライナの世論調査会社「キーウ国際社会学研究所」が15日、発表した最新の世論調査結果で、回答した人の87%が、どんなに戦争が長引いても領土をロシアに提供することを「認めない」と答えた。

3月時点より5ポイント増加したという。ウクライナ軍が今月に入って東部と南部で領土を奪還したため、国民の士気が高まっているとみられる。(中略)

同社幹部は調査結果について、「国民に(戦争に対する)疲労はなく、ウクライナに(ロシアとの)和平を押しつけることは意味がない」とするコメントを発表した。【9月16日 毎日】
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ゼレンスキー政権も強気姿勢を強めています。

****ロシア排除・中立化拒否、ウクライナが「安全の保証」で新提案****
ウクライナ大統領府は13日、ロシアに再侵略を許さないことを目的にした自国の「安全の保証」に関する作業部会の提案を公表した。

安全の保証を確約する国際条約からロシアを排除し、自国の中立化も拒否しているのが特徴で、3月末の提案から様変わりした。タス通信によると、露大統領報道官は14日、提案が「ロシアにとって主要な脅威になる」と反発した。(中略)

提案ではウクライナが侵略されないようにするため、米英仏独やカナダ、トルコ、豪州などと「キーウ安全保障盟約」と名付けた法的拘束力のある国際条約の締結を提唱した。ロシアの参加には言及していない。

安全の保証は、ウクライナのNATO加盟が実現するまで「暫定的に」必要だと強調し、ウクライナは「中立化」などの義務を負わないとも明記した。

ウクライナが3月29日のロシアとの停戦協議で提示した安全の保証に関する国際条約案では、ウクライナのNATO加盟を嫌うロシアに配慮し、ウクライナが「中立化」を確約する見返りに、自国の安全を保証してもらう内容だった。

新たな提案では、条約の適用範囲についても、「国際的に承認された領土」と位置付け、ロシアが2014年に併合した南部クリミアや、東部の親露派武装集団が実効支配する地域にも対象を拡大した。日本にも対露制裁など非軍事での貢献に期待感を示した。

ウクライナの副首相は13日、フランスのテレビ局とのインタビューで、ロシア側から、改めて停戦協議の打診があったことを明らかにし、ウクライナは拒否したと説明した。双方の停戦協議は5月中旬以降、中断している。【9月15日 読売】
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【旧ソ連構成国不安定化で明らかなロシアの影響力低下】
一方のロシアは前述のように兵士も不足する状況で、紛争を抱える旧ソ連構成国へ派遣している平和維持部隊から兵士をウクライナにまわそうともしていますが、そのことで派遣先の状況が不安定化し、結果的にロシアの影響力低下を明らかにすることにもなっています。

****上海協力機構、参加国間で紛争=ウクライナ侵攻でロシア影響力低下****
中ロが主導する上海協力機構(SCO)首脳会議は16日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで2日間の日程を終えた。イランの正式加盟も決まり、採択された首脳宣言は「SCO拡大は地域安定に寄与する」と結束を強調した。

しかし、現実には開幕直前からアルメニアとアゼルバイジャン、キルギスとタジキスタンという参加国同士の国境紛争が起き、不安要素が残った。

「情勢悪化を非常に懸念している」。プーチン大統領は16日、サマルカンドで会談したアゼルバイジャンのアリエフ大統領に訴えた。SCO首脳会議を欠席したアルメニアのパシニャン首相とは事前に電話で協議しており、双方に自制を呼び掛けた形だ。

13日に再燃した両国の係争地ナゴルノカラバフの紛争は沈静化に向かったが、戦死者はアルメニア側135人、アゼルバイジャン側80人の計215人に上った。
 
キルギスとタジクは14日から国境地帯で交戦。相手による攻撃で始まったと非難し合った。ロシア紙コメルサントによると、衝突は「過去12年間で150件以上」と珍しくないが、SCO首脳会議に合わせてキルギスのジャパロフ、タジクのラフモン両大統領が急きょ会談する事態に。キルギス側の発表では、少なくとも36人が死亡している。

衝突したのはいずれも旧ソ連構成国。ロシア軍は、ウクライナ侵攻が長期化し、戦闘による死傷者が「7万〜8万人」(米国防総省)とも推計される。ロシアはナゴルノカラバフに派遣した平和維持部隊などからも兵士をかき集めていると言われ、それが地域の不安定化につながっているもようだ。

米シンクタンクの戦争研究所は15日、プーチン政権が2月に侵攻開始後、「旧ソ連圏に駐留するロシア軍部隊の大半が流出した」と指摘した。ロシアは今も勢力圏と見なすアルメニアやキルギス、タジクなどに在外基地を置くが、戦争研究所は引き揚げの動きが「旧ソ連圏でロシアの影響力を低下させるとみられる」と分析した。【9月18日 時事】 
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【上海協力機構(SCO)首脳会議 目立った中国との温度差】
その上海協力機構(SCO)首脳会議では、プーチン大統領に対し、インド・モディ首相からは「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略への苦言が。

****プーチン氏「早く停戦できるよう最善尽くす」…侵略に苦言のモディ印首相との会談で言及****
ロシアのプーチン大統領とインドのモディ首相は16日、中央アジアのウズベキスタンで会談した。モディ氏が「今は戦争の時ではない」とウクライナ侵略に苦言を呈したのに対し、プーチン氏は「あなたの立場と懸念は分かっている。できる限り早く停戦できるように最善を尽くす」と述べた。

両者が対面で会談するのはプーチン氏が訪印した昨年12月以来で、ウクライナ侵略開始後は初めて。
インドは、武器調達をロシアに依存し、伝統的な友好関係にある。インドは、これまでも「対話と外交による解決」の重要性をロシアに訴える一方、米欧日による対露制裁には加わってこなかった。

プーチン氏が停戦条件を明示せず停戦に言及するのは異例だ。ただ、侵略が継続している理由について「ウクライナ政府が停戦協議を拒否すると宣言した」と述べ、責任転嫁する主張を崩しておらず、停戦が実現するかどうかは不透明だ。

モディ氏は「食料と肥料、燃料の確保が世界的な問題となっている」と述べた。侵略の長期化で国民生活に悪影響が及んでいることへの懸念が発言の背景にあるとみられる。【9月17日 読売】
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一方、ロシアにとって孤立化を避けるための頼みの綱でもある中国・習近平との会談では、(プーチン大統領も予想していたことでしょうが)積極的な支援策は引き出せず、深入りを避けたい中国との温度差を目立つ形にも。

****中露、ウクライナで温度差 プーチン氏「懸念を理解」****
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、15日にウズベキスタンで行われた首脳会談で中露の良好な関係を高く評価した。

ただ、ロシアが侵攻したウクライナの情勢に関しては、習氏が公の場での言及を避けた。プーチン氏も「中国側の疑問と懸念は理解している」と述べるなど、ウクライナを巡る両国の温度差が透けてみえた。

会談冒頭でプーチン氏は「この半年間で世界は劇的に変化しているが、変わらないものが一つある。それは中露の友情だ」と発言。台湾情勢に関しても「ロシアは米国や従属国による挑発を非難する」と述べ、中国への支持を鮮明にした。習氏も「激変する世界で、中国はロシアとともに大国の模範を示し、主導的役割を果たす」と応じるなど、蜜月ぶりをアピールした。

しかし、ウクライナ情勢に話が及ぶと、プーチン氏は「中国の中立的立場を高く評価する」と述べ、中国がロシアを完全には支持していないことを暗に認めた。習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。

ウクライナ侵攻で中国は、対露制裁を発動した米欧などを非難する一方、ロシアへの支持も表明していない。ロシアに巻き込まれる形で国際社会で孤立したり、米欧の制裁対象とされたりすることを避けたいのが本音だ。タス通信によると、米国務省のプライス報道官は15日の記者会見で「現時点で中国がロシアに軍事支援や制裁回避手段を組織的に提供している兆候は見られない」と述べた。

他方で習氏には、米国への対抗軸を形成する上でロシアとの連携を必要としている事情がある。

ウズベクで16日に行われた上海協力機構(SCO)首脳会議で、習氏は米国による対中包囲網の形成を念頭に「陣営対立を作り出すことや、地域の安定を破壊する企てを食い止めるべきだ」と発言した。SCOの参加国拡大にも意欲を見せている。

習氏は同日、ウズベクでイランのライシ大統領とも個別に会談し、「内政不干渉の原則を守り、途上国の共通の利益を擁護したい」と強調した。

「地域の安全や広範な途上国、新興国の共通利益を守る必要がある」。プーチン氏との会談でこう訴えた習氏は、ロシアと連携し、米国と異なる価値観を持つ発展途上国をまとめ上げていく考えとみられる。【9月16日 産経】
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****“同床異夢”の中露首脳会談 表向きは対欧米での共闘だが…習氏が気にする「プーチンリスク」****
(中略)習近平指導部としては対欧米でロシアとの協力が重要と感じている一方、そうすることによって欧米だけでなく、ASEANやアフリカなど第3諸国からどう思われるかということを気にしている。

中国が最も懸念しているのは米国の存在以上に、諸外国の中国からの離反であり、ウクライナ侵攻という国際法違反を犯したロシアを第3諸国がどう見ているかを注視している。

習政権としては、“国際法違反を犯したロシアに隠れ蓑を与える中国”というイメージが先行することは避けたく、何が何でもロシアとの共闘というわけではない。(後略)【9月19日 治安太郎氏 まいどなニュース】
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プーチン大統領にとっては、戦局も国際関係も、苦しい状況が色濃くなっています。
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韓国と中国の微妙な関係  特に韓国若年層に強い反中国感情 それでも無視できない中国の経済的引力

2022-09-18 23:20:27 | 東アジア
(【CRI online】16日、ソウルで会談した韓国の尹錫悦大統領(左)と中国の栗戦書・全人代常務委員長(右))

【韓国若年層 中国への否定的な認識 最大理由はキムチ起源?】
韓国と日本の間の国民レベルの不信感・反発がよく話題になりますが、その韓国では、特に若年層では日本に対する以上に中国に対する嫌悪感・反発が強いということもしばしば言われるところです。

ただ、最大の原因がキムチの起源をめぐる論争ということで、歴史問題を抱える日韓関係の問題とは根深さと言うか、やや質的に違うようにも思えます。

もっとも、韓国・中国の間にも2千年近い圧力・侵略・攻撃などの歴史があり、韓国人のDNAには嫌中感情あるいは中国への恐怖が刷り込まれているとも言われるように、キムチ論争も“軽いもの”とも一概に言えないのかも。

****韓国の若者は中国が嫌い?好感度が日本や北朝鮮より低い理由=韓国ネット「あの屈辱が忘れられない」****
2022年8月22日、韓国・東亜日報は「韓国の20~30代の多くが中国に否定的な認識を持っている」と伝えた。

記事によると、韓国の世論調査機関「リサーチアンドリサーチ」は11~14日に全国の20~39歳の成人男女420人を対象に調査を行った。その結果、中国に対する好感度は2.73点(10点満点、10点に近づくほど好感度が高い)にとどまり、米国(6.76点)だけでなく、日本(3.98点)や北朝鮮(2.89点)より低かった。中国に0~4点をつけた回答者は全体の78.8%に達したという。

中国に否定的な認識を持つ理由としては「キムチと韓服(韓国の伝統衣装)を中国起源と主張する(48.2%)」が最も多く挙げられた。2位以下には「香港民主化デモ鎮圧や新疆ウイグル自治区などの人権侵害問題(35%)」「先端技術・人材・情報の流出と知的財産権の侵害(29.3%)」「中国共産党の一党統治などの政治体制(26.4%)」「高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国配備に対する経済報復(18.8%)」が続いた。

現在の中韓関係を「悪い」と評価した回答者は58.9%に達し、「良い(5.3%)」を大きく上回った。関係悪化の原因としては「韓国に対する中国政府の高圧的外交と態度(52.9%)」が最も多く挙げられた。

「中韓関係の改善が必要だ」と考える人は75.3%に達したが、改善のために最も必要なものとしては「中国が経済・安全保障分野で韓国への威圧的な態度を変えなければならない」との回答が60.2%で最も多かった。

一方、回答者の78.8%が「中国は経済の面で重要な存在であるため協力するべき」との考えを示した。経済協力の理由としては「人口が多く市場が巨大であるため(42.3%)」「韓国の経済・貿易の対中依存度が高いため(36.7%)」が主に挙げられた。

「安全保障の面で中国は協力対象か」との質問には「そう思わない(49.7%)」と「そう思う(48.7%)」が拮抗した。ただ、「非常にそう思う」と回答した割合が8.3%であったのに対し「全くそう思わない」は27.2%に達した。協力が必要な理由としては「北朝鮮の核問題解決のため(40.8%)」が最も多かった。

専門家は「若い世代は現実的な感覚を持っている」とし、「中国の形態が改善されれば中韓関係は改善の糸口を見つけられるだろう」と話したという。

これに韓国のネットユーザーからは「昔は日本のほうが嫌いだったけど、今は中国よりずっと好感が持てる」「経済が今より多少苦しくなったとしても、中国とは距離を置いた方がいい」「若い人だけではない。40代以上も同意見」「中国が韓国を助けてくれたことなんてある?」など、調査結果に納得の声が上がっている。

また「これもすべて文在寅(ムン・ジェイン)前政権のせい。中国に媚びへつらい過ぎた」「中国を国賓訪問した文前大統領は一人飯をさせられてもへらへら笑っていた。あの屈辱が今でも忘れられない」との意見も見られた。【8月22日 レコードチャイナ】
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【最近の秋夕(チュソク)をめぐる論争 「高句麗」「渤海」の歴史認識】
最近でも“キムチ論争”的な軋轢が。

****「起源は中国にある!」韓国の名節“秋夕”を巡って中韓がオンライン上で激しく対決****
韓国では旧暦8月15日が先祖の霊を祀る秋夕(チュソク)と呼ばれる1年の間で最も重要な祝日だ。会社やお店は休みにすることも多く、墓参のために帰郷する人も多い。

今年は9月10日が秋夕当日で、9月9〜12日が連休だった。朝鮮半島の伝統行事のため、秋夕の祝いは当然、北朝鮮にもある。

そんな伝統行事に茶々を入れる事態が発生し、韓国内で大きな怒りがわき上がっている。

なんと中国ネット民が「秋夕は中国伝統文化の模倣」と主張し、強く批判したのだ。

発端は、アメリカのバークレー大学にある韓国食堂の秋夕記念メニューに「Korean Mid-Autumn Festival」というフレーズが掲載されたことにある。アメリカ在住の中国人が、その写真を中国版Twitterである「ウェイボー」に掲載したのだ。

すると、中国ネット民の間では「韓国の秋夕ではなく、中国の中秋節が正式名称だ」と、連日のバッシングを加えた。中国のオンライン上では、「韓国の伝統行事だと?韓国が中秋節を盗んでいる」「また、中国の伝統文化が盗まれた」など批判一色の様相だ。

これには、韓国内でも「秋夕は新羅(シルラ)時代に誕生して、新羅は中国を重んじていたから、間違いではないが…」「秋夕で着る服も食べる物も違うのに起源を主張されても」「また、中国か」など、一部主張を認める声も上がりながらも、批判の色が濃くなった。

昨今、加熱する一方の中韓オンライン対決は、お互いに揚げ足を取りながら日夜激論が繰り広げられている。もう少し相手を尊重できるようになればいいのだが…。【9月17日 サーチコリア】
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日本を含め、東アジア文化の多くが中国に起源を持ち、それぞれの国でその国の事情に合わせて進化・成熟してきたことは今更言うまでもないことで、その起源をめぐって争うというのは“子供のケンカ”のようにも。

ただ、そういう“子供のケンカ”をしたくなる背景・国民感情が問題なのでしょう。

下記の「高句麗」と「渤海国」をめぐる問題になると、“子供のケンカ”とは言っていられない歴史認識の問題にもなります。

****中韓またもや「歴史問題」で衝突、中国が抗議受け入れ最悪の事態を回避***
中国国家博物館は15日、開催中の特別展「東方吉金—中韓日古代青銅器展」に展示されていた韓国古代史年表を撤去した。年表に「高句麗」と「渤海国」に関連する記述が削除されていたことに対する韓国側の抗議を受け入れた。

同特別展は中韓国交正常化30周年と日中国交正常化50周年を記念して中国国家博物館で7月26日に始まった。韓国国立中央博物館や日本の東京国立博物館から運ばれた青銅器も展示されている。

韓国が資料として提供した歴史年表には、高句麗と渤海国に関連する記述があったが、会場の展示された年表には、高句麗と渤海国に関連する部分が削除されていたとして、韓国国内で反発が発生していた。韓国国立中央博物館は、歴史年表における高句麗と渤海国の削除の問題が是正されなければ、韓国からの出展品を引き揚げると発表した。

高句麗は紀元前に成立したとされる国で、西暦668年に滅亡した。渤海国の建国は698年で滅亡は928年だった。いずれの国の版図も、現在の中国東北地方、ロシアの一部、北朝鮮にまたがっていた。中国の学術界で1990年代後半から、高句麗や渤海国について「古代中国にいた少数民族であるツングース系の夫余人の一部が興した政権」、「高句麗は中国の一部であり中国の地方政権である」などの見解が次々に発表されたことで、韓国側は強く反発した。

両国の感情的対立が高まったことを受け、中国は2002年に武大偉外交部副部長(副大臣、当時)を韓国に派遣して崔英鎮(チェ・ヨンジン)外交次官との会談を行った。武副部長が「中国は中央及び地方政府次元の高句麗史関連記述に対する韓国側の関心に理解を表明し、必要な措置を取っていく」などと説明したことで、対立は一応、下火になった。

韓国外交部(外務省)は中国国家博物館の特別展の年表問題について、中国側からは「なんらかの意図があって、意図的に行ったわけではない」と説明があったと発表した。さらに、中国側と「中韓両国が2004までに達成した歴史問題の共通認識についての合意」を確認したと表明した。

中国外交部(外務省)の毛寧報道官は13日の定例記者会見で同件に関連して、「高句麗問題は学術問題だ」と主張して、「学術問題は学術分野で専門的に議論し、意思疎通することができ、政治的に騒ぎ立てる必要はない」と述べた。

韓国外交部は「今回の事件の動向と歴史論争の問題については、今後も注視していく」考えを明らかにした。【9月18日 レコードチャイナ】
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私個人の印象では「高句麗」は朝鮮、「渤海」(日本とは渤海使・遣渤海使の頻回の往来で、非常に関係が深い国です)は中国のイメージがありましたが、そうした現在の国境線・国家を基準にした区分があまり意味ないことなのでしょう。

【ペロシ米下院議長と会わなかった伊大統領、中国・栗戦書全人代委員長とは会談 伊政権を引き寄せる中国の経済的引力】
国際政治・外交レベルで中国と韓国の間で懸案となっているのは在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備問題です。

****中国序列3位と会談=THAAD議論、配慮示す―韓国大統領****
韓国の尹錫悦大統領は16日、中国共産党序列3位の栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当)とソウルの大統領府で会談した。

中国が反対する在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備問題に関して議論し、意思疎通を通じて関係の悪化を避ける姿勢を示した。大統領府が発表した。

尹氏は「国交正常化30周年を迎え、成長してきた韓中関係を今後30年間、相互尊重と互恵の精神で質的にもさらに発展させていきたい」と表明。THAAD問題に関して「両者が緊密な意思疎通を通じて韓中関係の障害にならないようにしないといけない」と指摘した。栗氏も「意思疎通の必要性に共感した」という。両者は北朝鮮の核問題も議論した。【9月16日 時事】
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在韓米軍のTHAAD韓国配備については2016年に表面化し、中国が激しく反発、「限韓令」と言われる韓国からの輸入規制措置・非関税障壁・韓流排除・韓国企業の営業阻止などの露骨な報復を行っています。

中国側の反発の強さ・露骨さは、日本に対するものとは異なり、中国側の韓国に対する“上から目線”をうかがわせる感じもありました。

この問題はいったんは鎮静化したものの、最近また再燃するかたちでくすぶっています。

今回の会談におけるTHAADをめぐる具体的なやりとりもさることながら、ペロシ米下院議長が訪韓した際には会わなかった尹錫悦大統領が、同じような地位にある中国共産党序列3位の栗戦書・全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当)とは会談したというあたりに、アメリカと中国の間にあって腐心する韓国政権の苦悩もうかがえます。また、中国の“引力”の強さも。

****中国・栗戦書全人代委員長が訪韓―実質的進展は共産党大会終了後か、焦点は依然としてTHAAD****
中国全国人民代表大会常務委員会の栗戦書委員長が15日から17日にかけて韓国を訪問し、(ユン・ソンニョル)大統領や金振杓(キム・ジンピョ)国会議長ととの会談も行った。

しかし中韓関係の実施的な進展は10月16日に始まる中国共産党全国代表大会(中国共産党大会)の終了後との見方が出ている。また、中韓関係の今後を決める大きな要因は、韓国国内での高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備という。

韓国にとって、とりわけ重要なことは中国との経済関係の推進だ。中興大学国際政治研究所の盧信吉助教授は、「チップ4」が焦点の一つとの見方を示した。

「チップ4」とは米国が推進する半導体関連の国際戦略で、中国を可能な限り排除しながら米国と台湾、韓国、日本が永続的な同盟を結ぶ内容だ。

韓国はチップ4に参加することができるが、その場合には中国との関係は後退する。盧助教授によると、韓国は半導体の対中輸出に「風穴」を開ける方向で動いているという。

尹大統領は栗委員長に対して、習近平国家主席の都合のよい時期の韓国訪問を招待した。しかし盧助教授は、習近平主席が早い時期に訪韓しても実質的な成果は得られないとの見方を示した。

中国共産党大会で習近平氏が相当な支持を得て、指導者としての地位をさらに確固たるものにする、すなわち国内を固めた上でないと、中国は外交戦略の調整に乗り出せないという。

韓国にとっては、北朝鮮問題などを考えれば米国との関係は極めて重要だが、経済を考えれば中国との関係は極めて重要だ。

8月上旬にはペロシ米下院議長が中国の猛反発にもかかわらず台湾を訪問したが、続いて韓国を訪れた際に、尹大統領はペロシ議長に直接の対面はしなかった。しかし今回、中国の栗委員長とは対談した。

ペロシ議長は米国政界中で3番目の地位にある人物で、栗委員長は中国政界中で3番目の地位にある人物だ。韓国側の両者に対する対応の違いも注目された。東京国際大学国際戦略研究所の李克賢准教授は尹大統領が、栗委員長に直接会ったのは、政治的・経済的利益を考慮したものだとの考えを示した。

李准教授は「中国は(韓国の)最大の貿易相手国であり、米国は韓国の電気自動車生産の利益を損ねている。経済的には当然、韓国は米国よりも中国に接近するだろう」と指摘。

李准教授はさらに、北朝鮮問題では、中国の影響力が米国よりもずっと大きいとの考えを示した。尹大統領がペロシ議長に会わなかったのは、韓国が台湾問題について米国の立場とは異なることを中国に示す狙いがあったという。

尹大統領は選挙期間中には、親米的な立場を強調した。そのため、ペロシ議長とは会わず栗委員長とは会談したことを、意外視する声も出た。

李准教授は尹大統領の方向性の転換について「就任後は現実的な路線を取り、中国に傾いている」と指摘。現実を重視して、可能な限りバランスを取ろうとしているのが、現在の尹大統領の方針という。

中韓にとっての最大の「摩擦の原因」は、米軍によるTHAADの韓国国内配備だ。

中国政府外交部(中国外務省)は8月に、韓国政府はTHAADの追加配備は行わず、韓国国内におけるTHAADの使用を制限する方針を採用したなどと表明した。しかし韓国側は同表明を否定し、中国側が関連事項に言及すれば中韓関係の足かせになると批判した。

尹大統領はは栗委員長と会談した際に、THAAD問題が中韓関係の足かせにならないようにする必要があると述べたとされる。李准教授はTHAADについて、名目上は北朝鮮内のミサイルを探知するためとされているが、ロシアの一部と中国領土の大部分を探知する能力があることから、中国がTHAADを潜在的脅威とみなすことは理解できるとの考えを示した。

しかし韓国側はこれまでのところ、韓国国内でのTHAAD配備について、北朝鮮の核の脅威に対応するものであり、国家の安全保障にかかわることであるので妥協はできないとの姿勢を示している。【9月17日 レコードチャイナ】
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前政権と比べて親米的とされる尹錫悦大統領にしても抗しきれない経済的引力が中国にはあるようです。

経済的関係の深さ、地理的条件などを考えれば、そうした中国の引力の強さもわからなくはありません。
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英独と中国の最近の摩擦 宙に浮くEU・中国の包括投資協定

2022-09-17 23:19:44 | 欧州情勢
(【9月17日 ABEMA TIMES】12日に北京のイギリス大使館を弔問し記帳する中国・王岐山国家副主席)

【弔問で英議会にメンツを潰された中国 それでも王岐山国家副主席参列で関係改善を図る】
****エリザベス女王弔問客の列が8キロの長さに 一時受付停止****
イギリスのエリザベス女王を弔問するための列がおよそ8キロに達し、政府は一時的に新たに並ばないよう呼びかけました。

エリザベス女王のひつぎはロンドンのウェストミンスターホールに安置されていて、市民は、国葬が営まれる19日早朝までいつでも弔問できます。

16日は、サッカー元イングランド代表のベッカムさんの姿もありました。
サッカー元イングランド代表 ベッカムさん 「皆、女王の人生をたたえるためにここにいます」

列がおよそ8キロに達したため、政府は16日午前、6時間は列に加わらないよう呼びかけました。現在は再開されていますが、待ち時間は22時間にも及ぶということです。(後略)【9月17日 TBS】
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私は8キロの列とか、22時間待ちとか聞くと気が遠くなってしまいますが、それだけイギリス国民にとって故女王が大きな存在だったということでしょう。トイレとか食事は・・・まあ、簡易トイレなどが大量に設置されているのでしょうが・・・。

当然ながら、「弔問外交」も活発に行われていますが、物議を醸しているのが人権問題で対立する中国との関係。

****英、議会と政府で中国対応割れる 議事堂の弔問拒否 国葬は招待*****
英BBC放送は16日、エリザベス英女王のひつぎが安置されている場所への弔問について、英議会が中国政府代表団の立ち入りを拒否したと伝えた。

ひつぎは国会議事堂のあるウェストミンスター宮殿のホールに安置され、一般市民が14日から弔問に訪れている。一方、英政府は19日にウェストミンスター寺院で行われる国葬には中国も招待しており、議会と政府で中国への対応が分かれた格好だ。

英国は昨年、新疆ウイグル自治区での人権問題を理由に中国当局者への制裁を発動。これに対し中国側は一部の英議員の中国入国を禁じて対抗した。

今回は英議員への制裁に反発するホイル下院議長が、中国代表団による追悼を拒否したと報じられている。安置場所のホールは議会の管理下にあるという。

一方、英政府は既に習近平国家主席に国葬の招待状を送っており、19日の国葬については拒否しない方針だ。中国からは代理で王岐山国家副主席が参列する見通しと伝えられている。だが議会内にはこの政府判断を問題視する声もあり、一部の議員はクレバリー外相に「国葬招待は不適切」との書簡を送ったという。

BBCによると、中国外務省報道官は16日、「英国はホスト国として、外交儀礼や適切なマナーを分かっているはずだ」とコメントした。

英政府は19日の国葬について、ウクライナに侵攻したロシアとその同盟国ベラルーシのほか、ミャンマー、シリア、アフガニスタンなどは招待していない。イラン、北朝鮮は招待したが、国家元首級ではなく大使級の招待にとどめている。【9月17日 毎日】
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日本なら「弔問を断るのは・・・」とウヤムヤになりそうですが、その点英議会の対応は明確なようです。
ウイグル人権問題だけでなく、香港問題で中国にさんざんコケにされた怒りもあるのでしょう。

興味深いのは、メンツを潰されたような中国側の対応が、いつになく抑制的なこと。
議事堂の弔問が拒否されても、王岐山国家副主席が参列するようです。

王氏は最近は陰が薄くなった感がありますが、かつては習氏の看板政策である“虎もハエも叩く”「反腐敗」を主導した盟友で、習近平政権を支えた実力者です。

“バイデン米政権が中国への圧力を強め主要7カ国(G7)などに結束を呼びかける一方、習指導部は欧州や周辺国との外交を強化して切り崩しを図ってきた。外交樹立50年を迎えた英国との関係も強化したいのが本音だ。”【日系メディア】というように、メンツより実をとった形です。

【独連立政権 中国企業の港湾ターミナル買収問題で内部対立 経済界は中国との関係を求める】
欧州と中国の関係で言えば、ドイツと中国の関係もちょっと“揉めて”います。
ドイツ政連立政権内部で中国との関係について意見の対立があるとか。

****ドイツ連立政権、中国のハンブルク港湾ターミナル買収提案で対立****
ドイツ連立政権は、中国海運大手の中国遠洋運輸(COSCO)にハンブルク港湾ターミナルの権益取得を認めるかどうかを巡り意見が分かれている。複数の政府筋が明らかにした。

COSCOは昨年、ハンブルクのドイツ最大の港にある3つのターミナルのうち1つについて、35%権益取得に向けた買収提案を行った。政府の対応は、最大の貿易相手国である中国に対してどこまで強硬な姿勢を取るかを測るものと見られている。

中国に対して特にタカ派であるハーベック経済相(緑の党)は13日、ロイターとのインタビューで、この取引を許可しない方向に傾いていると語った。

一方、3人の政府筋によると、社会民主党(SPD)が主導する首相府は懸念への解決策を見いだしたい考えに傾いている。ショルツ首相は2011─18年にハンブルク市長を務めていた際、拡大する対中貿易を所管していた。

首相府にコメントを求めたが、返答を得られなかった。

中国外務省は、COSCOによる買収提案を政治化しないよう望むとコメントしている。

ハンブルク港マーケティングディレクターのアクセル・マターン氏は「特にCOSCOは近いうちに世界最大の海運会社になるため、(中国の投資は)危険というよりむしろ港にとって大きな利益となる」と述べ、拒否しないよう警告。ロイターに対し「中国に対する拒絶は港だけでなく、ドイツにとっても大惨事となる」と語った。【9月14日 ロイター】
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“ドイツの政界では「経済の対中依存からの脱却」を求める声が高まっているが、ドイツ商工会議所(DIHK)の貿易専門家であるトレイアー氏は、「投資を拒否する明確な基準がない中で、われわれにとってこれほど重要な貿易パートナーからの投資を禁止することは、投資先としてのドイツの魅力に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べている。”【9月15日 レコードチャイナ】と、経済界は中国との関係を求めています。

****「脱中国」に舵を切るドイツ政府、経済界から異論「中国市場からの徹底は利益にならない」―独メディア****
独メディアのドイチェ・ヴェレは15日、ドイツのロベルト・ハーベック経済相がより強硬な対中路線を歩む中、経済界から「中国市場と全面的に関係を断つことはドイツの利益に合致しない」との声が上がっていると伝えた。

ドイツ財界アジア太平洋委員会(APA)のフリードリン・シュトラク委員長は15日、ロイターとのインタビューで「ドイツ企業の中国事業に対する政府の支援と保護は維持されなければならない」と語った。記事はこの発言について、「ハーベック氏が打ち出した新たな対中政策についてドイツ経済界が意見を異にしていることを示すものだ」と伝えた。

ハーベック氏は先日、対中強硬路線が実際の政策に転化されつつあると言明。「中国との貿易においてドイツはこれ以上、天真らんまんではいられない」との考えを示した。

記事によると、これに先立ち、ロイターは複数の消息筋の話として「ドイツ経済省は中国市場の魅力を低下させるための包括的な措置を策定している」と報道。

この措置の中には、中国で事業を展開するドイツ企業に対する投資・輸出保証の廃止、中国でのイベントの開催やマネージャーの訓練などを含む小規模プロジェクトの停止などが含まれるという。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は今年8月の記者会見で、ドイツ企業に対してサプライチェーンの面でも貿易の面でも中国に依存しすぎないよう呼び掛け、「ドイツ企業はすでにこうした決定を下していると、私は信じている」と述べた。

一方、シュトラク氏は「成長の鍵となる市場である中国での適切なプレゼンスは個々の企業だけでなく、経済全体の視点からも重要だ」とし、「ドイツ政府が繰り返し強調している経済面での中国との“全面切り離し”はドイツの利益にならない」と訴えた。

また、「目指すべきは中国市場からの撤退ではなく、アジアや世界の他地域の成長可能性のある市場をさらに切り開くこと。むしろ、対外貿易の促進を拡大する必要がある」との考えを示した。【9月17日 レコードチャイナ】
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ドイツ経済はウクライナ問題での「脱ロシア」によってエネルギーコスト増大などの多大な負担を強いられています。

****対ロシア制裁で大赤字の独天然ガス企業、政府に再び「救難信号」****
2022年9月9日、中国中央テレビ(CCTV)は、ロシアに対する制裁の影響で巨額の損失を抱えているドイツの天然ガス輸入企業最大手のウニパーが、ドイツ政府に再度の支援を求めたことを報じた。

同局はニュース番組の中で「ウクライナとロシアの軍事衝突、西側による対ロ制裁の影響により、欧州の天然ガス価格が大幅に値上がりしている」とし、すでに巨額の損失を抱えているドイツ最大のロシア産天然ガス輸入業者であるウニパーが先日、ドイツ政府に対して改めて資金援助を求めたと紹介。

同社のCEOが「天然ガス価格の高止まりによって損失が増え続けており、ドイツ政府から支援を受けた70億ユーロ(約1兆円)も9月末に底をつく可能性がある」と語ったことを伝えた。

そして、同社がドイツエネルギー企業の大手であることから、ドイツ世論では同社の倒産がエネルギー業界全体の崩壊を引き起こし、より広範な経済分野に衝撃が拡大するのではないかとの懸念が広がっているとした。

また、ドイツでロシアからの天然ガス供給が激減したことで、同社は高価な現物市場にて天然ガスを購入して契約を履行せざるをない状況となっており、今年1〜6月期の報告では120億ユーロ(約1兆7400億円)の赤字が出て、ドイツ企業史上最大規模の赤字額となったことを紹介。ドイツ政府は先日すでに大規模な支援策を打ち出し、同社に大量の融資を行っていたと伝えている。

記事はさらに、エネルギー価格の高騰がイタリアの各産業にもダメージを与えているとし、43業種の零細企業88万社以上、約350万人の雇用が危機にさらされ、陶磁器、ガラス、コンクリート、冶金、化学工業などのエネルギー集約型産業への影響が特に大きくなっていると紹介した。【9月12日 レコードチャイナ】
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ロシアとの関係も断たれたうえに、中国との関係も抑制されたら、「いったいどうしたらいいのか!」といったところでしょうか。

「脱化石燃料」の動きやロシア・中国との関係など、政治が経済に優先する傾向への不満が経済界にはあるのかも。

【凍結状態にあるEUと中国が大筋合意した包括投資協定(CAI) 中国は「パートナーであり、経済的競争相手であり、体制上のライバル」】
各国で中国との関係には事情・差異は当然ありますが、総じて言えば、2020年12月30日にEUと中国が大筋合意した包括投資協定(以下、CAI)が凍結状態となっているように、EUは中国との関係について警戒感を強めています。

****変わるEUの対中スタンス****
(中略)
2――宙に浮く包括投資協定(CAI)-何が問題だったのか?
1|経緯
EUにとって、CAIは、加盟国が個別に締結した投資協定に替わり「EUと中国間の投資関係で一貫した法的枠組みを構築」すること、すなわち加盟各国が個別に締結した二国間投資協定が並存する分散状態を改めるものである。

最大の狙いは中国におけるEU企業の競争条件の公平化にあった。EUの会社法・競争法がEU企業と非EU企業を区別せず、官民も無差別であるのに対して、中国では外資と国内民間企業と国有企業を差別し、国有企業を優遇していることが問題となってきた。中国市場へのアクセスに関わる様々な障壁、制度・政策面での予測可能性の低さや不安定さも問題となってきた。

(中略)こうした背景から、20年下半期、EU加盟国が半年毎の輪番制で務めるEU理事会の議長国であったドイツのメルケル首相(当時)が「相当強引にまとめ上げた」と評価されているが、「駆け込み合意」、「人権よりカネ」という印象を与え2、域内外で波紋が広がった。(中略)

協定は、双方が必要な手続きの完了を通知した日から2カ月後に発効するが、大筋合意から1年半となる今も発効の目途は立っていない。EU側の手続きが凍結されているためだ。

EUの場合、欧州議会による同意、EU理事会(閣僚理事会)の承認手続きが必要だが、欧州議会は21年5月20日にCAIの批准手続きを賛成599対反対30という圧倒的多数で凍結することを決めた。

21年3月22日に少数民族ウイグル族への人権侵害を巡りEU外相理事会が中国に制裁を決めたことを受け、中国政府がただちに報復制裁に動いたことを受けた決定だ。

欧州議会は、中国の制裁が解除されない限り、審議には応じない方針だが、中国はEUが「人権の先生」として振る舞うことへの反発を強めている。

ロシアによるウクライナ侵攻は、次節で見る通り、中国とEUの価値観を巡る溝を際立たせる要因となっており、協定の発効は極めて困難な状態に陥った。(中略)

3――変わるEUの対中スタンス-合意から一方的手段、代替案へ
1|戦略的自立への指向を強めるEU
19年12月に就任したフォンデアライエン欧州委員会委員長は、自らの率いる欧州委員会を「地政学的欧州委員会」と位置づけている。

EUにとって、地政学的な最大の脅威はロシアだが、地経学的な警戒の対象は中国にある。(中略)

EUは「体制上のライバル」としての中国への意識を強めざるを得ない状況となっている。コロナ禍によって、医療防護具等の中国依存のリスクが露呈したこと、コロナ禍の起源や政策対応の巧拙を巡って、中国が自己主張を強め、体制上の優位性を強調するようになったこと、さらにウクライナ侵攻で、西側が主導して形成してきた既存の国際秩序に対する不満というロシアと中国の共通項が浮き彫りになったからだ。(中略)

4|ドイツの新政権と2022年上半期EU理事会議長国フランスの動き
EUを牽引してきたドイツとフランスは、共にCAIの凍結解除には否定的で、戦略目標実現のための規制強化、通商政策の活用を支持する。

ドイツで21年12月に発足したショルツ政権は、16年にわたる在任期間中に12回訪中するなど、中国への傾斜を強めたメルケル政権に比べて中国に強硬な姿勢を採ると見られている。

連立を構成する3党の協定には、メルケル首相が取りまとめに尽力したCAIのEU理事会による承認は不可能としている。

連立協定には、南シナ海、東シナ海、台湾海峡に関する記述のほか、「台湾の国際機関への実質的参加支持」、「新疆ウイグル自治区の問題を含む中国の人権弾圧に対してより明確に発言」、「香港の一国二制度の復活を目指す」など、中国政府の反発を招きかねない文言も盛り込まれた。

外相に、人権問題により厳しい立場をとる緑の党のベーアボック氏が就任したことも、ショルツ政権が中国に対して強硬な姿勢を採るとの思惑につながっているようだ。

ショルツ政権も、EUと同じく中国を「パートナーであり、経済的競争相手であり、体制上のライバル」と位置付けている。(中略)エネルギーの脱ロシアも急務であり、対中政策はやや後景に退いている感がある。(中略)

中国とのCAIについてはフランスでも早期発効への政治的機運は失われている。マクロン大統領は、CAIの大筋合意に至ったテレビ会談に、ミッシェルEU首脳会議議長、フォンデアライエン欧州委員会委員長、当時の議長国であるドイツのメルケル首相(当時)とともに参加している。

メルケル首相の招待によるものとされるが、マクロン大統領も、この時点では、合意を積極的に支持していたと思われる。しかし、合意からおよそ1年後の演説では、CAIへの言及はない。

リステール貿易・誘致担当相はメデイアのインタビューで「中国の対応が変わらない限り、批准はできない」との見方を示していた。(後略)【7月12日 伊藤 さゆり氏 ニッセイ基礎研究所】
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EUは台湾問題でも中国批判を強めています。

****欧州議会、台湾海峡の中国実弾演習を非難 決議採択****
欧州議会は15日、中国による台湾海峡での実弾演習を非難する決議を賛成多数で採択した。 決議は欧州連合(EU)と台湾の関係緊密化を呼びかけるとともに、中国に対し台湾海峡や地域の安全保障を脅かす行動の自制を求めている。 

中国は先月、ペロシ米下院議長が台湾を訪問したことに反発し、台湾海峡で実弾射撃などの軍事演習を実施した。 

台湾外交部(外務省)は決議採択を歓迎。台湾海峡の平和と安定に対するハイレベルで党派を超えた関心を示すものだとして、台湾への支持に謝意を表明した。 

決議は台湾の通商上の戦略的地位や、半導体など主要ハイテク分野のサプライチェーン(供給網)における主導的な役割に言及し、EUに台湾との関係強化を要請。 台湾に通商代表部を開設するリトアニアの計画を歓迎し、他の国に追随するよう促した。【9月16日 ロイター】
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上海協力機構首脳会議  習近平主席コロナ後初外遊 注目の中ロ首脳会談

2022-09-16 23:00:15 | 国際情勢
(上海協力機構の首脳会議に参加したロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席=16日、ウズベキスタン・サマルカンド【9月16日 産経】)

【中ロ主導の上海協力機構 参加国全体で世界の人口の半分近く 欧米への対抗軸として位置づけ】
ロシア・中国が主導し中央アジア諸国などが加盟する上海協力機構(SCO)首脳会議が15,16日の両日、ウズベキスタンで開催されています。

****上海協力機構****
中華人民共和国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの8か国による多国間協力組織、もしくは国家連合。中華人民共和国の上海で設立されたために「上海」の名を冠するが、本部(事務局)は北京である。【ウィキペディア】
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参加国人口は32億人。オブザーバー国はアフガニスタン、モンゴル、イラン、ベラルーシ。(イランは加盟覚書に調印)

****プーチン大統領“欧米への対抗軸拡大を”上海協力機構首脳会議****
中央アジアのウズベキスタンで上海協力機構の首脳会議が開かれました。

中国の習近平国家主席などと出席したプーチン大統領は、上海協力機構について「国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性を強調しました。

ウズベキスタンのサマルカンドでは中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構の首脳会議が開かれていて16日、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領、インドのモディ首相など首脳たちによる全体会合が行われました。

首脳会議は、新型コロナウイルスの感染が拡大して以来初めて対面形式で行われ、主催したウズベキスタンのミルジヨエフ大統領は、加盟国が食料危機への対応で協力していくことなどを提案しました。

また、プーチン大統領は「上海協力機構は世界最大の地域の枠組みであり、国際的な問題解決への役割が大きくなっている」と述べ、欧米への対抗軸としてこの枠組みを一層拡大する必要性を強調しました。

上海協力機構には、新たにイランが正式に加盟することになったほか、ベラルーシが加盟の手続きを行っています。

ロシアや中国などは、上海協力機構は、参加国全体で世界の人口の半分近くにあたる30億を超える欧米とは異なる独自の枠組みだとして、その存在感を高めようとしています。【9月16日 NHK】
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上海協力機構(SCO)は“欧米への対抗軸拡”とはいいつつも、従来は国際的にさほど注目される存在ではありませんでした。

しかし、今回はウクライナ戦争のさなかにあること、しかもここのところ劣勢が色濃くなってきていることでロシア・プーチン大統領がどのように主張するか、また、中国・習近平国家主席がコロナ禍以来初めての外遊ということで注目されていました。

【コロナ後初外遊の習近平主席 3選を確実にした自信?】
その習近平主席が3選を目指す来月中旬の党大会直前のこの重要な時期に初外遊することについては、「3選に向けたシナリオを確実にした自信のあらわれ」と解釈するのが一般的なようです。今回首脳会議での成果を上乗せして3期目続投を更に確実なものにする狙いとも。

****習氏、コロナ後初外遊 党大会前に対外成果誇示****
中国の習近平国家主席は14日、中央アジアのカザフスタンを訪れた。習氏が外国を訪問するのは2020年の新型コロナウイルス流行後で初めてで、15日にはウズベキスタンでロシアのプーチン大統領と会談する。

第20回中国共産党大会の開幕を10月16日に控える中での外遊には、外交成果を誇示し、最高指導者として異例の3期目続投につなげる狙いがあるとみられる。

中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官は13日の記者会見で「党大会開催前の最も重要な外交活動だ」と強調した。

中国の指導者を巡っては、外遊中の国内の動きが失脚につながった故趙紫陽・元共産党総書記らの例がある。中国メディア関係者は、習氏が外遊に出たのは「党大会での3期目に向けた権力掌握を確実にしたという感触を得たからではないか」とみる。

コロナ後初の訪問先にカザフを選んだのは、最高指導者就任から10年間の対外成果を示す狙いからだ。習氏は13年のカザフ訪問時、巨大経済圏構想「一帯一路」につながる「シルクロード経済ベルト」を提唱した。習氏は今回の訪問前にカザフメディアに送った文章で、一帯一路を「国際社会に歓迎されているグローバルな公共財だ」と自賛した。

習氏は、ウズベクで15、16の両日開催される上海協力機構(SCO)首脳会議に出席する。中露主導のSCOやプーチン氏との個別会談で結束を確認し、「対中包囲網」の構築を進める米国を牽制(けんせい)する思惑だ。

中国としては、インドネシア・バリ島で11月に開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に向け、関係が比較的良好な国々との連携を確認する機会ともなる。

一方、香港メディア「香港01」は14日、ウクライナ問題を巡りロシアとカザフスタンの間に隙間風が吹いていると指摘。習氏には、プーチン氏との会談前にカザフでトカエフ大統領と会うことで「中国の地域内での影響力」を示す狙いがあると分析した。中露は対米では一致しているものの、両国の力関係を巡る水面下の駆け引きがうかがわれる。【9月14日 産経】
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ただ、習近平主席がこれまで外遊に出ていないのは、コロナの不安だけの話ではなく、国内権力闘争が激しく国を留守にする訳にいかなかったという事情もあってのことです。

その権力闘争は未だ決着しておらず、今回外遊は破綻した「一帯一路」の仕切り直し、敗色濃厚となったプーチン大統領との関係の整理のために、必要に迫られての外遊だとの見方もあるようです。

****プーチンにどう接する? コロナ後初外遊で習近平が臨む「厄介な会談」****
(中略)
習近平は8月の北戴河会議が終わったのちにサウジアラビアを訪問する予定が一部で報じられ、サウジアラビア側は「2017年5月のトランプ米大統領訪問以来、最も盛大な歓迎行事」を準備していたにもかかわらず、結局実現しなかった。これは党大会前に習近平が中国を離れるのが困難なほど、党内権力闘争が激しいからだろうとみられていた。

ならば、今回、習近平が外遊に踏み切ったということは、権力闘争が一段落つき、習近平が総書記の3期目連任が固まり、目下の政治情勢に自信を持っているということの裏付けなのだろうか。それとも党内の権力闘争よりも、中国共産党として習近平がわざわざ自分で行かねばならない重要な問題が、国外にあるということなのか。その辺について、考えてみたい。

ボロボロの「一帯一路」に党内でも批判の声
今回の外遊の見どころは2つある。1つは「一帯一路」だ。(中略)

実は「一帯一路」は、経済構想的にも政治戦略的にもボロボロで、党内でも批判的な声が上がっている。中国経済の減速、世界経済の減速による資金不足に加え、新型コロナや地域の政変、紛争などによって、プロジェクトそのものが「爛尾楼」(未完成で野ざらしにされた建築物の意味)化しているだけでなく、一帯一路が沿線国を債務の罠に落とし入れてきたやり方や、華僑マフィアによる人身売買や詐欺、マネーロンダリングの温床となっていたことなどが暴露され、そのイメージは地に落ちてしまった。

習近平としては、このまま「一帯一路失敗」の印象を放置しておくわけにはいかないので、中央アジアで改めてテコ入れする必要がある、というわけだ。(中略)

「プーチンを切る」という選択肢
外遊のもう1つの見どころは、習近平とプーチンの会談の行方だ。
 
この数日、ウクライナ軍が6000平方キロに及ぶ領土奪還とロシア軍撤退のニュースが大きく報じられた。ウクライナのゼレンスキー大統領はクリミア半島の奪還まで言い出している。これが成功するしないにかかわらず、プーチンの敗北は決定的に見える。そのようなプーチンと習近平が対面して何を話すのか。

2人は今年2月4日の北京五輪開幕日に会談して以来、初めて直接対面する。この2月の首脳会談の時に出した共同声明では、中ロ協力について「上限もタブーもない」と言い、一部でこれは準同盟関係宣言ではないか、という見方も出た。

だが、後から聞いた周辺情報を総合すると、プーチンにあまりに肩入れした習近平の対ロ外交姿勢について党内では強い反発があり、それがロシアのウクライナ侵攻後、さらに強くなり、結局、習近平の対ロ外交は失敗と言われ、その責任を取る形で習近平お気に入りのロシア通外交官で将来の外交部長(外相)と目されていた外務次官の楽玉成が更迭されることになった。

今、プーチンの敗北が誰の目にもはっきりしてきた段階で、習近平としてはロシアとの関係を改めて自らの責任で仕切り直さなければならない。

おそらく習近平としてはプーチンを見捨てたくない。もしプーチン政権が倒れれば、親欧米政権が代わりにできて、ロシアが西側陣営とともに中国包囲網に加わることになりかねない。それは中国としても避けたいだろう。

だが、すでに改革開放路線維持を掲げる李克強ら共産党の反習近平勢力は、米国との関係改善を望んでいるだろうし、少なくとも米国の対ロ制裁に中国が巻き込まれることは絶対に避けたいはずだ。ならば、かつて中国の著名国際学者、胡偉が主張したように「プーチンを切る」必要が出てくる。

この難しい判断を、結局、習近平が責任をもってやらざるを得なくなったのが、おそらくは今回の外遊の最大の見どころだろう。(後略)【9月15日 福島 香織氏 JBpress】
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【注目されたプーチン・習近平会談 中国はロシアへの深入り避ける ロシアへ「懸念」伝える】
上記記事はややうがち過ぎの感もあります。また、今更「プーチンを切る」ことなどできない相談です。
ただ、苦境のプーチン大統領と習近平主席の会談がどのようなものになるかは世界が注目していたところです。

中国・習近平主席としては、ロシアからの輸入拡大など、これまでもロシアを支援するような言動はみせてはいたものの、アメリカの制裁を招くような支援、とりわけ軍事支援は避けてきたというのが実態であり、今回のプーチン・習近平会談では、支援をより必要としているロシアへの深入りを避けることが習近平主席側の方針でしょう。

****ウクライナ侵攻下で中ロ連携=習氏「互いに力強く支持」―首脳会談で対米けん制****
ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は15日、中央アジア・ウズベキスタンの古都サマルカンドで会談した。

タス通信によると、プーチン氏は冒頭、ウクライナ危機に対する「中国のバランスの取れた立場」を高く評価。台湾海峡をめぐる米国の「挑発」を非難するとともに「一つの中国」を支持すると習氏に伝えた。
 
中国国営中央テレビ(電子版)によると、習氏は「ロシアと双方の核心的利益に関する問題において互いに力強く支持することを願う」と応じた。

台湾問題に関し、ロシア側の姿勢を「称賛」した上で、「中国は『台湾独立』分裂勢力や外部の干渉に断固反対だ。いかなる国も台湾問題の裁判官になる権利はない」と強調した。

2月24日にロシアがウクライナ侵攻に踏み切ってから初の直接対話。日本を含む先進7カ国(G7)による対ロ制裁で孤立するプーチン氏には、戦略的パートナーである中国との連携を誇示し、ウクライナを支える米国などをけん制する狙いがありそうだ。【9月15日 時事】 
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上記記事を読む限りでは、これまでの協力関係を確認しあっているだけで、踏み込んだ具体的支援などは示されていません。

プーチン大統領が、(その気がないことが明らかな)中国の風下に立つリスクを犯してまで習近平主席に軍事支援などを依頼したかどうかはわかりませんが、習近平主席としては敗色濃厚なプーチン大統領へこれ以上深入りすることは自らの権力を危うくするものであり、依頼があろうがなかろうが、そういうリスクをとることはないでしょう。言葉の上でどのように協力関係を称賛したとしても。

****習氏、ウクライナ巡りプーチン氏に懸念伝える****
中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、ロシアによるウクライナ侵攻開始後初めて対面で会談した。ウクライナを巡り習氏が伝えた懸念については、プーチン氏は対応する姿勢を示した。
 
ロシアの戦況が悪化する中、ウズベキスタンのサマルカンドで開かれている上海協力機構(SCO)首脳会議に合わせて会談が行われた。
 
プーチン氏は習氏に対し、ウクライナ危機を巡る中国政府のバランスの取れた姿勢を高く評価すると述べた。また、中国がウクライナ危機への懸念を表明したことを受け、ロシアは自国の立場を明らかにしていく考えを示した。詳細には言及しなかった。
 
プーチン氏は中国側の「疑問や懸念は理解している」と述べた。ロシア国営テレビが発言を伝えた。
プーチン氏はまた、台湾を巡り挑発を行っているとして米国を非難した上で、中華人民共和国政府が中国唯一の合法的な政府であるとする「一つの中国」原則を支持すると述べた。
 
中国国営の新華社によると、習氏は会談で、中国とロシアが今年初めから「実効性のある戦略的対話」を維持してきたと発言。「世界が歴史的変化に直面する中、主要国として中国はロシアとともに主導的役割を果たし、動揺する世界に安定をもたらすよう取り組む用意がある」と述べた。
 
米首都ワシントンに拠点を置く保守系シンクタンク、民主主義防衛財団のクレイグ・シングルトン氏は、ウクライナでの戦争を巡り中国が懸念していることをプーチン氏が公に認めたことは極めて注目に値すると指摘。

中国政府の公式発表はウクライナについて触れていないとした上で、中国はロシアへの支援を強める意図がないことを示唆していると述べた。

シングルトン氏は、ロシアによる侵攻を支持し続けることで、欧州との関係だけではなく、侵攻への反対姿勢を明らかにしている国が多い中央アジア全体との関係も大幅に悪化することを中国は「当然ながら懸念している」と述べた。【9月16日 WSJ】
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習近平主席が伝えた“懸念”がどのようなものなのかは知りませんが、少なくともプーチン大統領が今まで以上の支援を期待できるような雰囲気ではなさそうです。

“習氏はウクライナに言及せず、ウクライナ情勢を念頭に置いたとみられる発言すらしなかった。”【9月16日 産経】というのも非情です。

ロシア・プーチン大統領のウクライナ侵攻と距離を置く姿勢は“ロシアの裏庭”と呼ばれてきた中央アジア諸国ではより顕著です。カザフスタンはロシアからの派兵要請を断ったとも報じられています。

プーチン大統領としては、中国にしても中央アジア諸国にしてもあまり期待できるものがない状況で、気の重い首脳会談だったのではないでしょうか。せいぜい、言葉の上での協力関係を再確認するぐらい。

【習近平主席とインド・モディ首相の会談は? 国境では軍を退く動きも】
習近平国家主席のコロナ後初外遊ということで、もうひとつ注目される会談がインド・モディ首相と習近平主席の会談。

国境問題を抱えて軍が対峙してきた両国ですが、首脳会談に向けて軍を退く動きが見られています。会談が実現すれば、2020年の国境紛争で両国関係がこじれて以降、両首脳が初めて顔を合わせることになります。

ただ、“インドのクワトラ外務次官は15日の記者会見で、モディ首相が16日のサミットの傍らで二国間会談を行うと語ったが、習氏との一対一の会談については確認を避けた。中国側も両首脳の会談を確認していない。”【9月15日 ロイター】とのことで、会談がおこなわれるのかどうかは不透明でした。

閉幕が報じられている現時点(16日22時)で報道がないということは、結局行われなかったということでしょうか。

****中国・インド両軍が国境地帯から一部撤兵、首脳会談直前のタイミング****
中国とインドは、未確定の国境線を巡り対峙(たいじ)していた軍部隊の一部を撤収させた。15日と16日には、ウズベキスタンのサマルカンドで上海協力機構(SOC)が開催され、出席する中国の習近平国家主席とインドのモディ首相の個別首脳会議も行われる見込みだ。

中国外交部の毛寧報道官は9日の定例記者会見で、インド紙の質問に対して「双方の軍最前線部隊は8日に、(対峙していた)ジアナン・ダバン地区からの撤退を開始した。これは一時期以来、両国が外交軍事の各階層で繰り返し行った話し合いの成果であり、中印国境地帯の平和と安寧を促進するために有利だ」と説明した。(中略)

中印両国の国境は、約3600キロに渡り双方の主張が異なっている。2020年6月にはラダック地方にまたがる地区で両軍が衝突した。双方とも火器の使用は控えたが、棒などを使った殴り合いになって少なくともインド兵20人、中国兵4人が死亡したとされる。中印両軍の衝突で死者が出たのは、1967年以来だった。

その後、双方は最前線に配備する兵力を増強した。双方はその後、話し合いを続けて、一部地域からの軍部隊の撤収を実現させたが、それでも国境地帯にそれぞれ5万人以上の兵力を配備し続けていたとされる。

中国国防部が7月28日に双方の合意事項を発表した後も、双方の緊張が再び高まる事態は発生している。

中国国防部の譚克非報道官は8月25日の定例記者危険で、米印両国の特殊部隊が10月にヒマラヤ南麓で合同演習を行うとの報道があったことについて、「国境問題は中印両国間の問題だ。双方はあらゆるレベルで効果的な意思疎通を維持しており、二国間対話を通じて事態を適切に処理することで一致した。われわれは、中印国境問題へのいかなる形の第三者の介入にも断固として反対する」と、強く反発した。【9月10日 レコードチャイナ】
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日韓関係  加速する関係改善を模索する動き 日韓逆転も起きている時代、相互補完を目指す新たな関係を

2022-09-15 22:42:17 | 東アジア
(【9月14日 NHK「“日韓逆転”の時代?!」】)

【改善する相互好感度】
日韓関係については、慰安婦問題や徴用工の問題、あるいは不買運動などもあって、国民感情が極度にこじれた状況にありますが、前政権に比べ日本との関係を重視する尹錫悦大統領の就任もあって、両国の感情的対立はややほぐれる方向にあります。

****韓国と日本の相互好感度 不買運動以前の水準ほぼ回復=両国調査****
韓国と日本の相互好感度が、2019年の日本製品不買運動以前に匹敵する水準まで回復したことが分かった。韓国民間シンクタンクの東アジア研究院と日本の非営利シンクタンク「言論NPO」は1日、両国での世論調査結果を発表した。

調査は韓国人1028人、日本人1000人の計2028人を対象に今夏実施。調査の結果、日本に対して良い印象を持つ韓国人は昨年の20.5%から今年は30.6%に増加した。2013年に調査を開始して以降、過去最高だった19年(31.7%)に次ぐ高水準となった。

日本政府による対韓輸出規制強化を受け韓国で日本製品の不買運動が本格化した後に集計された20年の調査では12.3%と過去最低を記録したが、今年はほぼ不買運動以前の水準まで回復した。

一方、日本に対して良くない印象を持つ韓国人は昨年の63.2%から今年は52.8%に減少した。

このような認識の変化を反映してか、日本のアサヒビールはこのほど韓国のSNS(交流サイト)や動画投稿サイト「ユーチューブ」で広告を再開した。不買運動が始まってから韓国で苦戦していたカジュアル衣料品ブランドのユニクロも韓国での営業利益が黒字転換した。

韓国に対して良い印象を持つ日本人も25.4%から30.4%に増加し、調査初年度の13年(31.1%)以来の高水準となった。

一方、韓国に対して良くない印象を持つ日本人は昨年の48.8%から今年は40.3%に減少した。これも13年(37.3%)以来の低水準だ。

両国間の好感度は年齢層が低いほど高かった。10代では相手国に対して良い印象を持つ人は韓国で53.5%、日本は52.2%に上り、全年齢層の中で唯一過半数となった。一方、60代以上では韓国で22.9%、日本は25.4%にとどまり、全年齢層の中で最も低かった。

韓日関係の未来に対する楽観的な見通しも広がった。両国関係について前向きな見通しを示した韓国人は昨年の18.4%から今年は30.0%に増加した。日本人も17.2%から29.9%に増えた。

韓日関係の改善を求める声も高まっている。「両国関係を改善するために努力する必要がある」と答えた韓国人は20年の61.2%から21年に71.1%、今年は81.1%と年々増加している。

同じ質問に対し、日本人も20年は38.8%、21年は46.7%、今年は53.4%が肯定的な見方を示した。

両国の国民は、いずれも相手国の大衆文化に多く触れるほど好感度が上昇した。「相手国の大衆文化を楽しめば良い印象を感じるようになる」と答えた韓国人は昨年の67.0%から今年は81.3%に増えた。同じ質問に対する日本人の回答も同期間に81.2%から86.2%に増加した。

このほか、「相手国を訪問した後に良い印象を持つようになった」と答えた人の割合は、両国とも80%に上った。

韓日首脳会談で議論されることを望む議題としては、両国民ともに「両国関係改善のための幅広く包括的な対話」を挙げた。 

研究者らは「12年の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結を巡る議論をはじめ、李明博(イ・ミョンバク)元大統領の独島訪問、韓日通貨交換(スワップ)の終了、旧日本軍の慰安婦問題の協議中断など、さまざまな分野で浮き彫りになった両国間の対立は10年間続いている」とした上で、「しかし、今年の両国の世論は明確に肯定的な様相を呈した」と説明した。

また、国民の相互認識の改善や両国の指導者交代など、変化の機会を捉えて韓日関係が発展的な方向に改善する政策が開発・実現されることに期待を示した。【9月1日 聯合ニュース】
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また、5月に就任した尹錫悦大統領に対し「良い印象」を持つ日本人は20.1%で、文在寅前大統領の2%から大きく伸びたとも。【9月1日 共同】

若年層で、互いに相手国文化への関心が強いことは以前から言われるところです。
高齢者の私も、気が付けば最近動画配信サイトで韓国ドラマばかり観ています。「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は非常に面白いドラマでした。「還魂」のチョン・ソミンにも魅了されました。少し以前では「イカゲーム」や「地獄が呼んでいる」も。 

総じて、エンタテイメントのレベルは日本より遥かに高いようにも思えますが、それは別として、ドラマの世界で接する機会が増えると、日本とほとんど同じような社会の様子、人々の暮らしぶりに、韓国社会への違和感・抵抗感みたいなものも減弱するようにも思えます。

【「済州フォーラム」 日韓議員が関係改善模索 金大中・小渕宣言の時代への回帰目指す】
政治レベルの日韓関係に話を戻すと、これまでは話し合いの機会さえ持てませんでしたが、前述のような相互好感度の改善の流れを受けて、政治レベルでも「話し合い」の機会が持てるようになってきています。ようやく・・・といったところでしょうか。

****日韓議員が関係改善模索=98年共同宣言に回帰を****
韓国南部・済州で15日、日韓・韓日議員連盟所属議員らが両国関係をテーマに議論を交わした。「反省とおわび」「未来志向」を明記し、1998年に当時の小渕恵三首相、金大中大統領が発表した日韓共同宣言の精神を取り戻すべきだという声が双方から相次いだ。

韓日議連の鄭鎮碩会長(与党「国民の力」)は元徴用工問題を念頭に「どちらか一方が解決策を用意しろというのはプラスにならない」と日本側の努力も要請。両国関係を日韓共同宣言の時期に戻さなければならないと訴えた。

日韓議連幹事長の武田良太元総務相(自民)も「共同宣言の時期よりさらに友好を深める責任がある」と強調した。
 
ただ、韓日議連の尹昊重幹事長(最大野党「共に民主党」)は「共同宣言で合意した歴史認識が後退しないようにする必要がある」と日本に注文。中曽根康隆衆院議員(自民)は「日本は、豊臣秀吉の朝鮮出兵、日露戦争後の韓国への行動を謙虚に直視すべきだ」と指摘する一方、「日韓請求権協定、日韓慰安婦合意も尊重しなければならない」と韓国側にもくぎを刺した。
 
一方、韓国外務省によると、朴振外相は済州で日本側議員らと懇談。朴氏が「関係改善と未来志向の発展のためには日本の誠意ある対応が必要だ」と強調したのに対し、議員側は「積極的に努力する」と応じた。【9月15日 時事】 
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****両国関係を「ウィンウィン」に 金大中・小渕宣言に言及=韓日議連会長****
韓国与党「国民の力」の非常対策委員長で韓日議員連盟の会長を務めている鄭鎮碩(チョン・ジンソク)氏は15日、南部・済州島で開かれている「済州フォーラム」の韓日議員特別セッションで、「韓日両国が正しい未来志向の関係で発展していかなければならない」として、「両国が直面している厳しい状況を省察し、『ウィンウィン』する関係に生まれ変わらなければならない」と強調した。(中略)

また、「24年前、金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相は21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップを発表した」とし、「韓日関係をその時代へ早急に回帰させなければならない」と強調した。

1998年、当時の金大統領と小渕首相は東京で開かれた首脳会談で共同宣言を発表した。共同宣言には両国が過去を直視しつつ、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことや、植民地支配に対する「痛切な反省と心からのお詫び」が盛り込まれた。

鄭氏は「石の上にも三年」という日本のことわざを引用し、「力を集め、未来志向の韓日関係をつくっていきたい」と呼びかけた。

また、「両国の国会議員と専門家が一堂に会する場が設けられただけでも大したものだ。わずか1年前は想像もできなかった」と言及し、前政権での両国関係を遠回しに批判した。【9月15日 聯合ニュース】
*******************

更に、「話し合い」だけでなく、ビザなし交流再開といった具体的な動きも予定されているようです。

****韓日議員連盟会長「来週にも良い知らせ」 ビザなし交流再開の可能性言及****
韓国与党「国民の力」の鄭鎮碩(チョン・ジンソク)非常対策委員長は15日、日本との「ビザ(査証)なし交流」再開の可能性に言及した。

(中略)(「済州フォーラム」開会の)あいさつを終えた鄭氏は記者団に対し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が就任前の4月に日本に派遣した「政策協議代表団」の団長を務めたことを振り返り、尹大統領の韓日関係改善に向けた意思を日本側に広く伝えてきたとし、「来週ぐらいには良いニュースが出るのではないかと期待している」と述べた。

また「金浦(ソウル)―羽田(東京)の航空路線が再開され、まもなく韓日間の訪問客数が急速に拡大すると思われ、またビザ免除がもとの形に戻る日も遠くないだろう」と話した。

韓日両国は新型コロナウイルス禍前には、それぞれの国からの入国者に対し90日以内の短期滞在についてはビザを免除していたが、2020年3月から同制度を停止している。

鄭氏はまた、「日本と韓国の若者は互いに交流し、訪問することを望んでいる」とし、済州を訪れた日本の議員と懇談会を開き、韓日関係の発展と未来について踏み込んだ議論を行う考えだと述べた。【9月15日 聯合ニュース】
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【国連総会に合わせ、NYで30分程度の日韓首脳会談予定】
また、今月後半の国連総会も両国関係改善の舞台となりそうです。

****日米韓外相、9月後半にも会談 国連総会に合わせ、北朝鮮が議題****
日米韓3カ国は9月後半にも米ニューヨークで外相会談を開く調整に入った。複数の日本政府関係者が明らかにした。開催中の国連総会に合わせて会談する。核・ミサイル開発を進める北朝鮮への対応が主要議題となる見込みだ。
 
会談には日本の林芳正外相、米国のブリンケン国務長官、韓国の朴振(パク・ジン)外相が参加する予定。核実験の準備を進めているとされる北朝鮮への懸念を共有するとともに、8月に日米韓3カ国が弾道ミサイル警戒訓練を実施したことなどについて話し合うとみられる。

日本側は、北朝鮮が日本人の拉致を認めて謝罪した2002年の「日朝首脳会談」から17日で20年となることも踏まえ、拉致問題の解決に向けて理解と協力を改めて求める考え。

日米韓3カ国の外相会談は7月、主要20カ国・地域(G20)外相会合に合わせてインドネシア・バリ島で開催されて以来、約2カ月ぶりとなる。【9月15日 毎日】
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外相レベルを超えて、日韓首脳会談の予定も。

****ニューヨークで日韓首脳会談 2年9カ月ぶり 徴用工など議題か****
アメリカ・ニューヨークで開かれる国連総会に合わせ、日韓首脳会談が行われることになった。
韓国大統領府が15日に明らかにしたもので、来週の国連総会に合わせ、日本と首脳会談を行うことで合意し、現在、「日程を調整中」だという。

韓国政府関係者は、会談が30分程度になる見通しだとしていて、最大の懸案である、いわゆる徴用工をめぐる問題などが議題になるとみられる。【9月15日 FNNプライムオンライン】
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(追記 日本側は会談合意を否定【9月15日 読売より】)

****国連総会に合わせ韓米・韓日首脳会談開催 韓国大統領室****
(中略)韓日首脳会談については、「双方が今回会うことが良いと快く合意した」として、「どのような話をするかはまだ決まっていない。強制徴用などの懸案は韓国が自主的にプロセスを進め、日本とも内々に意見交換しているため、首脳が会って確認する必要もない状態で会うことになった」と述べた。(後略)【9月15日 聯合ニュース】
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“首脳が会って確認する必要もない状態で会うことになった”とはどういうことかよく理解できませんが、いずれにしても30分ほどの短時間の会談ですから、中身云々より会うこと自体が意味がある会談と言えそうです。

【安倍前首相国葬には韓国首相来日】
日韓首脳が顔をあわせる機会は日本武道館で27日に行われる安倍晋三元首相の国葬でも。韓国は韓悳洙(ハン・ドクス)首相が参列します。

****こじれにこじれた日韓関係が安倍元首相の国葬をきっかけに改善?韓国専門家「日本の反応が重要」****
2022年9月15日、韓国・ファイナンシャルニュースによると、韓国政府は同日、日本武道館で27日に行われる安倍晋三元首相の国葬に韓国政府代表として韓悳洙(ハン・ドクス)首相が参列すると発表した。記事は「文在寅(ムン・ジェイン)前政権でこじれにこじれた“永遠の宿敵”日本との関係を改善する糸口を見つけられるかどうか、注目される」と伝えている。

記事によると、韓首相は国葬に参列する他、政・財・官界の主要人物との会談や同胞代表招請懇談会への参加が予定されている。

記事は「韓首相の訪日に対し日本がどこまで具体的な反応をみせるかが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権での日韓関係の行方を予測する重要な材料となる」「特に岸田文雄首相などの高官級と会い、どのようなメッセージを交わすかがキーポイントだ」としている。

尹大統領は候補時代から日韓関係改善に積極的な姿勢をみせてきた。当選後の3月には駐韓日本大使と会談し「日韓関係を未来志向的に改善し、過去のような良い関係に修復しなければならないと考えており、両国共に多くの努力が必要だ」と述べていた。

朴振(パク・チン)外相も最近「日韓間の歴史問題解決のため、さまざまなレベルで協議していく」と述べ、関係改善への意思を示していたという。

ただし記事は「日本との関係は韓国内の世論や政治的問題が複雑に絡み合っているため予測が難しい」とし、「日本側が前向きな姿勢をみせなければ、日韓関係は再び霧の中に迷い込む可能性もある」と指摘している。

韓国の専門家は、「韓国はすでに日本に関係改善のメッセージを送っているため、焦りすぎず、日本の反応を見極めることが重要だ」と話したという。

この記事を見た韓国のネットユーザーからは「関係を改善したがっているのは韓国だけ」「正直、日本との関係を改善するのは難しい。歴史問題、独島(日本名:竹島)問題で韓国が譲歩しない限り日本は納得しないだろうけど、韓国としてもその2つは絶対に譲れないところだ」など後ろ向きな声が上がっている。

また、「関係改善には日本の謝罪が必須」「韓国は何も悪くない。日本が勝手に哨戒機で威嚇したり、半導体の物資を統制したり、優遇対象国から除外したり、個人に対する戦争犯罪の謝罪や補償を拒否したりしているだけ」などと主張する声もあった。

そのほか、「日帝の過去の過ちは忘れてはならないが、韓国の国益のためには隣国と協力するしかない」「低姿勢の屈辱外交はやめて、対等な立場で関係を改善してほしい」などの声も見られた。【9月15日 レコードチャイナ】
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【これまでのように垂直的な、追いつかれる追いつくっていう構造のフレームワークは払拭しないといけない】
一人当たり名目GDP(購買力平価)や平均賃金ですでに「日韓逆転」が生じていることは周知のところ。
韓国側が過去の歴史問題に執拗に拘る傾向があるように日本から見えますが、日本側にも韓国を下に見るような風潮があるようにも。今後は、同じレベルの目線で両者の理解を深め、相互補完していくことが求められます。

****“日韓逆転”の時代?!*****
(中略)韓国は大変な競争社会です。一部のエリートは豊かで恵まれた生活を送っていますが、競争に敗れた人達の生活は非常に苦しい。日本に較べると社会保障制度の歴史が浅いので特に高齢者の生活が厳しく、その一方で世界でもっとも少子化が進んでいます。高齢者を支える若者層が減ってきているのです。

Q6、韓国も様々な問題を抱えているのですね。日本と韓国の力関係が変化してきていることが、日韓関係悪化の背景にあるのでしょうか?

A6、それはあると思います。日本の特に古い世代にはどうしても韓国を下に見る、対等に見ようとしない傾向があるように感じられます。一方韓国の中にも「もう日本からは学ぶものはない」という奢った意識が感じられます。
これからの日韓関係はどうあるべきなのか、先ほどの(韓国外国語大学)イ・チャンミン教授に聞きました。

(イ・チャンミン教授)
「日本と韓国それぞれの相手の持っていない優れたところがたくさんあると思います。例えば日本の優れたところは予測可能性の高い社会だということです。そして韓国の優れたところは、躍動的な社会だということだと思います。そういう意味で協力のスペースがもっと広がるというふうに思います」

ダイナミックコリアという言葉がありますが、韓国は変化を恐れない、走りながら考える社会です。石橋を叩いて渡る日本とは違って失敗も少なくありませんが、ダイナミックな変化に対応できる柔軟性があるように感じます。

日韓関係も、これまでは上と下という垂直的な関係でしたが、対等な水平的な関係に変わってきています。これからの日韓関係の可能性について深川教授は次のように指摘しています。

(深川由起子教授)
「これまでのように垂直的な、追いつかれる追いつくっていう構造のフレームワークは払拭しないといけないと思います。ひとつは共通の課題に立ち向かっていく。少子高齢化以外にも資源小国ですし、お互い資源ないですし、あと第3国に向けて成功の共有という意味では途上国の支援とか難民の支援ですね。

これでもポジティブに競ったり、協力して日韓が考えるいいフレームワークというのを提供していくという協力の余地というのはたくさんあります」

Q7、お互い協力の余地があるということですね。
A7、日本にとって、すぐ近くに韓国という手強いライバルが出現したことはむしろチャンスととらえるべきではないでしょうか。イ・チャンミン教授が指摘しているように、日本と韓国はお互い似ているようで似ていない面もあり、一方で共通点もたくさんあります。

少子高齢化のような共通の課題には協力して取り組む。一方が弱い分野や不得意な分野では互いに補完し合うような関係を築いていく。

そうした関係を作るためには、まずは等身大の相手を見ることが必要だと思います。感情的ではなく客観的に相手を見て理解するという姿勢が、日韓関係の改善には必要ですし、それが日本の再生にもつながっていくのではないでしょうか。【9月14日 NHK】
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アフガニスタン  「人権は存在しない」」「女性の存在は消されている」 鈍い国際社会の対応

2022-09-14 23:27:05 | アフガン・パキスタン
(アフガニスタン東部ナンガルハル州で、水が入った容器を運ぶ少女(2022年9月11日撮影)【9月13日 AFP】)

【「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」】
これまでも再三再四取り上げているアフガニスタン・タリバンによる弾圧、特に女性に関する問題。
「またか」と言われそうですが、最近でも連日のように報じられており、事態が一向に改善しない状況がうかがわれます。

9月8日で、タリバン暫定政権が始動してから1年となりましたが、タリバン統治が旧政権時代と本質的に変わっていないことが次第に明らかになっています。

****マーライオンの目 タリバン「穏健路線」の嘘****
「日本は米国の仲間だろう」。イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握して1年が過ぎたアフガニスタンを訪れた。首都カブールで取材中、タリバン戦闘員にこう詰め寄られ、カメラ内のデータの削除を求められた。目を離した隙にカメラからSDカードを抜いて隠し、その場は何とか切り抜けたが、厳しい監視の一端がうかがい知れた。

カブールなど各都市で目についたのは街中にあふれる戦闘員だ。「治安維持」を名目に監視を行い、米軍で勤務した人物らへの弾圧を展開している。

タリバンは昨年8月の首都制圧後、旧タリバン政権(1996〜2001年)が実施した公開処刑など恐怖政治を、表向きは行っていない。「穏健路線」をアピールしている形だが、実態は違う。取材に応じた音楽家や女性活動家は「監視と弾圧はかつての政権と同じで、本質は変わっていない」と異口同音に語った。

タリバン支配が固定化する一方、急速に拡大する貧困に対してタリバン上層部は有効な解決策を持たない。国内では国際社会の目がウクライナ情勢などに向き、アフガンの注目度が下がっていることに懸念の声が上がっている。「アフガン国民にとって地獄は、むしろこれからだ。世界はアフガンを見捨てないでほしい」。音楽家の男性の言葉が胸に響いた。【9月14日 産経】
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****タリバン、報道弾圧を強化 国外移転しネットで対抗****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権が始動してから8日で1年となった。

暫定政権は記者の拘束や検閲を通じて報道への弾圧を強め、既存メディアの弱体化が指摘される。国際社会の制裁による経済危機の影響もあり、この1年で記者の人数は約6割減少。国外に拠点を移し、インターネットの自社サイトで政権批判を続けて対抗する地元紙も出ている。
 
タリバンは既存メディアに対し、報道の自由を認める一方、イスラム法の尊重と国益保護を要求。政権の動向や治安に関する報道は情報文化省からの事前許可が必要で、事実上の検閲が横行している。【9月8日 共同】
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【懸念される女性への暴力、教育打ち切り】
連日の女性問題に関する報道をいくつか。

****アフガン女性、タリバン幹部によるレイプ・強制結婚を告発****
アフガニスタンの女性が、イスラム主義組織タリバンの幹部から暴行やレイプを受け、強制的に結婚させられたと訴える動画をネットに投稿した。この幹部は女性の主張を否定している。
 
動画が投稿されたのは先月30日。エラハと名乗る女性が、内務省で報道官を務めたサイード・ホスティ氏から性的暴行を受けたと主張している。ヒジャブをかぶったエラハさんは20代半ばとみられ、カブール大学の医学生だと述べている。
 
ホスティ氏は、エラハさんとは「合意に基づき結婚」し、その後離婚したとしている。
これまでに、双方の主張がソーシャルメディアで数千回共有されている。アフガニスタンで、タリバン構成員による性的暴行の告発や、特定個人の詳細が流布するのはまれ。
 
エラハさんは動画で「2月に、内務省報道官だったサイード・ホスティに内務省の建物内で強制的に結婚させられた」「殴られ、レイプされた。どうしたらいいか分からなかった」と涙ながらに語った。2人が知り合った経緯には触れていない。
 
アフガニスタン軍幹部の娘だというエラハさんは逃亡を試みたが、パキスタンと国境を接するトルカムで拘束され、首都カブールの刑務所に入れられた。ホスティ氏から謝罪を求められ、拒否すると殴られたという。
 
エラハさんがこの動画をどこから投稿し、現在どこにいるのかは不明。
 
ホスティ氏はツイッターでエラハさんの訴えを否定。「彼女には信仰に関する問題がいくつかあった。話し合いや助言を通じて矯正を試みたが、駄目だった」と主張した。
 
また、エラハさんが望むなら自分を訴えることもできるとし、「イスラム首長国のムジャヒディン(イスラム戦士)と国民に謝罪する。神のお許しを」と続けた。
 
タリバンの最高指導者ハイバトゥラ・アクンザダ師は昨年、「強制や圧力によって女性に結婚を無理強いした」場合、厳しい措置を取るよう命じている。 【9月2日 AFP】AFPBB News
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エラハさんによると、女性の権利を訴えるデモに関与したとして拘束された際に警察署を訪れていたタリバン高官に目をつけられ、強制的に結婚させられたとのこと。

人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、9月1日、声明で「タリバンの役人が強制結婚やレイプ、暴行、脅迫行為を行っていたとしても、驚くことではない」とした上で、エラハさんの所在と健康状態について緊急に調査する必要があると訴えています。【9月3日 日テレNEWS24より】

常に問題となる女子教育。

****再開の女子中等教育打ち切り タリバン、生徒が抗議****
アフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権は10日、東部パクティア州で部族長らが独自の判断で再開していた女子中等教育(日本の中学・高校に相当)を打ち切った。女子生徒らは抗議し再開を訴えた。地元メディアが報じた。
 
暫定政権は女子教育の尊重を主張する一方で、女子中等教育の全面再開を拒んでいる。国際社会からの批判は強く、今回の打ち切りはさらなる波紋を呼びそうだ。
 
女子生徒らは10日、学校に入ることが許されず、数十人がデモ行進。生徒の1人は地元メディアに「とてもショックだった」と語った。【9月11日 共同】
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カルザイ元大統領も11日、タリバンに対し女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛しています。

カルザイ元大統領の現在の政治的影響力についてはよく知りませんが、タリバンとは同じパシュトゥン人ということもあって比較的対話・協調も可能な立ち位置で、上から目線でアフガニスタンの権利・独自性を認めず武力掃討中心のアメリカとはそりが合わないところもありました。(アメリカにすれば、カルザイ氏こそは腐敗・汚職・非効率の中心にいるということになりますが)

昨年末もCNNインタビューで“、国際社会はますます緊要となっている援助をアフガニスタンの人々に届けることを優先し、今のところタリバンへの不信感は棚上げにする必要がある”と語っています。

****カルザイ元アフガン大統領、女子高校再開をタリバンに要請****
アフガニスタンのカルザイ元大統領は11日、実権を掌握しているイスラム主義組織タリバンに対し、女子高校を再開するよう求めるとともに、東部パクティア州で女子学生らが学校閉鎖に抗議行動を行っていると住民が伝えている件を称賛した。

カルザイ氏はツイッターで「パクティア州の女子学生たちの声はアフガニスタンの全女子の声であり、全アフガニスタン人の声だ。われわれは暫定政権に対し学校再開を要請する」と投稿した。

タリバンは3月、女子校再開の公約を突然撤回した。パクティア州当局は女子高校を再開したと発表したが、公式に承認されていない。【9月12日 ロイター】
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【アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」へ 西側からの動きはないに等しい】
カルザイ元大統領、逃亡したガニ前大統領時代のアフガニスタン政府が十分に女性の権利を保護した訳でもありませんが、それでも少しずつ前進していた女性の地位・権利はタリバン復活で「無」に帰することにもなっています。

****20年間の進歩と希望は「無」に帰した──アフガン女性たちの地獄****
<タリバン復権から1年がたち世界の関心が薄まるアフガニスタンだが、この国に生きる女性たちには再び暗黒の時代が訪れている>
最後の駐留米軍がアフガニスタンを去り、イスラム主義勢力タリバンが政権を掌握してから丸1年。アフガニスタンの貧困、特に女性や少女に対する厳しい抑圧、そして国際的孤立は悪化の一途をたどっている。

アフガニスタンの政治家で人権活動家のアズラ・ジャファリは、2004年に採択された憲法の起草に参加した唯一の女性であり、同国で女性初の市長になった人物だ。今、亡命先のアメリカから祖国の現状を見つめつつ、絶望感を募らせている。

「私たちは20年間、民主主義を機能させていた。この20年間、私たちは希望に満ちていた」とジャファリは本誌に語った。「今や何も残っていない。私たちが20年間取り組んできたものは無に帰してしまった」

当初はあたかも穏健化したかのようなふりをしていたタリバンだが、政権を掌握してからというもの、女性や少女が学校や自宅外の多くの職場に行くことを禁じている。女性たちの着るものや発言、行動は厳しく制限されている。恣意的な逮捕や失踪、拷問や殺害といった人権侵害に遭う例は男女問わず多い。

アメリカとその同盟国が足並みをそろえて外圧をかけない限り、何も変わらないだろうとジャファリは言う。
「アフガニスタンに、タリバンを制御できる集団は存在しないと思う」と彼女は言う。「タリバンが自らイデオロギーを変えることはないだろうから、国際社会は(外圧のための)行動計画を立てる必要がある」。

だがこれまでのところ、女性の権利侵害に対する非難声明を除けば、西側からの動きはないに等しいと彼女は言う。(中略)

悲惨な拷問の末に殺害されたハザラ人女性
国連によれば4月、タリバンは助産師の女性を拷問し殺害した。彼女は両足を切断され、刃物で刺され、12発も弾丸を撃ち込まれた。女でハザラ人だからというのが理由だった。

タリバン政権崩壊後、学校に通う女性や少女の数、そして女性が経営する事業所の数は増加した。下院議員の定員のうち27%は女性に割り当てられた。

タリバン政権下では女性はなかなか医療を受けることができなかったが、新政府は女性が診察を受けられる医療施設を3000カ所以上、建設した。新生児の死亡率は減少し、ブルッキングス研究所によれば女性の平均寿命は01年の56歳から17年には66歳へと大幅に伸びた。
ただし、女性の地位に対する古い考え方は国中に深く根を張っていた。農村部の女性は都市部の女性ほど自由を手にできなかった。

それでも女性の生活はいいほうへと大きく変わった。この進歩はタリバンの復権がなければ続いていただろうとジャファリは考える。だが今は「女性が完全に社会から切り離されてしまう」という彼女の危惧が現実のものになりそうな状況だ。

うわべだけだったタリバンの融和姿勢
1年前、米軍が混乱のうちに撤退した直後、タリバン政権は表向きは融和的な姿勢を見せていた。ザビフラ・ムジャヒド報道官も、女性に対する差別のない、全ての人に平等な政権だとアピールしていた。「シャリーア(イスラム法)の枠内で」とか「われわれの文化の枠内で」というただし書きは忘れなかったが。

それはつまり、大半の女性が働くことを禁じられるという意味だ。これでは女性の稼ぎで生活している家族は貧困に突き落とされてしまう。

さらに、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)によると、この国は財政危機に瀕しているため、働いている女性も適切な賃金が支払われない場合がある。なんとか働き続けていても、厳しい服装規定を守らなければ解雇される。

タリバンは公式声明で、女性は家の中にいればいいと忠告している。「ヒジャブ(イスラム教徒の女性が頭髪を覆うスカーフ)に従っているという最も分かりやすい印は、家から出ないこと」だからだ。

家の外では女性は顔を覆わなければならず、地域によっては親族の男性が同伴しなければならない。女性が服装規定に違反すると、親族の男性が罰金や懲役を科される。国連によると女性の10人に9人がドメスティックバイオレンス(DV)を経験している国では、こうした状況は暴力を助長しかねない。

今年3月、タリバンは制服がイスラム文化に従っていないとして、女子中高生(7年生以上)の通学再開を当日になって撤回した。

アフガニスタンの女性は「家の中の囚人」だと、HRWの女性の権利局暫定共同局長ヘザー・バーは言う。バーは今年1月に、女性と少女が直面している危機は「終わりが見えないままエスカレートしている」と警告し、タリバンの政策が、この国から「最も貴重な資源」の1つを奪っていると指摘した。

アフガニスタンは今、あらゆる資源を必要としている。この1年で経済は崩壊した。タリバンが再び権力を握った直後に、欧米諸国はアフガニスタン中央銀行の国外資産90億ドル以上を凍結した。タリバン幹部への制裁はインフレを加速させ、基本的な生活必需品の価格が高騰している。多くの家庭が生活のために財産の大部分を売り払い、若い娘を金と引き換えに見合い結婚させている。

「10代の少女の大半は今も学校に戻ることが許されず、児童婚のリスクがさらに高まっている」と、ヘンリエッタ・フォアはユニセフ(国連児童基金)の事務局長を務めていた21年11月に声明で述べている。「教育は、児童婚や児童労働のような負の対処方法から子供を守る最善の手段になることが多い」(中略)

「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」
タリバンは変わるつもりがないと分かって人々は「絶望」していると、(タリバン復権まで首都カブールでジャーナリストとして働いていた)レザエイは言う。アフガニスタンから発信される前向きなニュースはどれも、タリバンが国際社会の機嫌を取ろうとしているだけだと、彼女は警告する。「女性はあらゆる意味でタリバンの囚人だ」

市長を5年間務めたジャファリは、地元で「ミスター市長」と呼ばれることを誇りに思っている。彼女もレザエイと同じように、国際社会の関心がウクライナに移りつつあることを痛感している。「悲惨な状況だ、変わるといいねと、みんなが言う。みんなが黙っているのに、どうすれば変わるというのか」

経済制裁が続くことはアフガニスタンの人々にとって破壊的だが、世界がタリバンに対抗する最も強力な武器になっていると、ジャファリはみる。アメリカと同盟国がその経済力を使って、タリバンに国際的な人権基準を遵守するように圧力を強めてほしいと、彼女は働き掛けている。ただし、楽観してはいない。

「国際社会は、アフガニスタンで起きていることを黙ってやり過ごしたいと思っている。この国には多くの活動家やジャーナリスト、少数民族、女性がいて、今も恐怖の中で暮らしている。助けを必要としている。彼らのことを忘れないでほしい」【9月10日 Newsweek】
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国内にタリバンに対抗できる勢力が無い以上、国際社会に訴えるしか道はありません。

****「私たちは消されている」 アフガン女性、国連に行動訴え****
スイス・ジュネーブの国連人権理事会で12日、アフガニスタンの女性・少女の人権をめぐる特別会合が開かれた。出席者は、同国で昨年8月にイスラム主義組織タリバンが実権を握って以降、「性別によるアパルトヘイト(分離)」が広がっているなどとして、国際社会に一致した対応を訴えた。
 
ジャーナリストで人権活動家のマブバ・サラジャ氏は「今日、アフガニスタンでは人権は存在しない」と述べ、女性の人権が奪われていることに警鐘を鳴らしても何も起きないことに「うんざり」していると語った。(中略)

サラジャ氏は「アフガニスタンでは女性の存在は消されている」と指摘。同氏ら出席者は理事会に対し、あらゆる人権侵害を監視する独立した専門家グループを設置し、当事者の責任を問うことができる態勢を構築することを提言した。
 
アフガンの人権状況に関する国連の特別報告者リチャード・ベネット氏も、同国では「性別によるアパルトヘイト」とも言うべき事態が起きているとして、責任追及態勢の強化が急務だと強調した。
 
ベネット氏は、アフガンでは女性の人権が「がくぜんとするほどの後退」を余儀なくされているだけでなく、ハザラ人などイスラム教シーア派系の少数民族も迫害を受けていると報告した。 【9月13日 AFP】
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アフガニスタン国内の活動もまったくない訳ではありませんが、常にタリバンの脅威にさらされています。

****アフガンに「女性図書館」 タリバン標的の可能性も「学び続けられる場所を」****
イスラム原理主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンの首都カブールで、このほど「女性図書館」がオープンした。女性活動家らが設置したもので、タリバンが女性の教育を制限する中、教育の助けにしたい考えがある。タリバンの標的となる可能性もあるが、設立者は「それでも教育の火を消してはならない」と話している。

図書館は8月24日にオープンし、小説や学術書など約千冊を所蔵する。本のほとんどは寄贈されたものだ。海外からの寄付で運営するという。

共同設立者の1人である女性活動家、ライラ・バシムさんは、設立の目的について「女性が学び続けられる場所を作りたかった。教育を受ける機会を少しでも確保することが大切だ」と話す。(中略)

現在のところ、図書館をめぐってタリバン側から警告や嫌がらせはない。「ただ、将来的にタリバンがどう出てくるかは分からない。国際的にこの図書館の知名度が高まれば妨害しづらくなるだろう」とバシムさんは話した。【9月1日 産経】(
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国内の対抗勢力という点では、IS以外に、北東部パンジシール州でタリバンに抵抗を続ける故アフマド・シャー・マスード司令官の息子がトップを務める武装勢力「民族抵抗戦線」もありますが、どれほどの影響力を有しているかは知りません。

“タリバン、抵抗勢力40人殺害と主張 パンジシール渓谷で”【9月14日 AFP】
「民族抵抗戦線」は、北部を中心とした12州で戦いを続けるとしています。
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パキスタン洪水  気候変動も関与した世界的危機 国連事務総長「これほどの気候被害は目にしたことがない」

2022-09-13 22:29:22 | 災害
(【8月28日 BBC】)

【国土の3分の1が冠水】
8月末から報じられているパキスタンの洪水は甚大な被害をもたらしています。

****パキスタン、洪水で国土の3分の1冠水 死者1100人超・人口の15%被災****
パキスタンのレーマン気候変動相は、モンスーン期の豪雨と大規模な洪水によって、国土の3分の1が冠水したと明らかにした。死者はこれまでに1100人を超え、シャリフ首相によると、子ども380人が含まれる。

6─8月の降雨量は30年間平均を約190%上回り、全人口の15%に当たる3300万人が被災した。

国連は「前例のない気候の大惨事」とし、グテレス事務総長はビデオメッセージで1億6000万ドルの支援を各国に呼びかけた。報道官によると、グテレス事務総長は来週被災地を訪問するという。【8月31日 ロイター】
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国土の3分の1が冠水・・・・俄かには信じがたい数字です。
日本で言えば、北海道と九州の全域が冠水したような数字で、ほとんど「日本沈没」クラスの災害です。
人的被害の1100人(続報では1290人とも)は、災害規模を考慮すれば、よくぞそのレベルにとどまっているという感も。
経済的被害は・・・想像できません。

****パキスタン洪水、雨量は平年の10倍 インダス川が「湖」に****
パキスタンで深刻な被害をもたらしている洪水について、欧州宇宙機関は1日、平年の10倍の降雨量が原因となったとの見解を示すとともに、インダス川の氾濫によって生じた広大な「湖」の衛星画像を公開した。
 
同国では、6月から続くモンスーン(雨期)の豪雨が引き起こした洪水で、これまでに少なくとも1190人が死亡。広範囲の農地が水没し、家屋100万戸以上が損壊した。
 
ESAは、救助活動を支援するため、地球環境モニタリング計画「コペルニクス」の衛星データを使用して宇宙から洪水の規模を測定したと発表。6月中旬以降の降雨量は「通常の10倍」であり、これが国土の3分の1を水没させる洪水を引き起こしたと説明した。
 
ESAはさらに、南部ラルカナとデラムラードジャマリの間で、氾濫したインダス川が「幅数十キロの長い湖を事実上形成」している地域の衛星写真を公開した。
 
パキスタン当局によると、同国の7人に1人に当たる3300万人以上が被災しており、復興には100億ドル(約1兆4000億円)以上を要する見通し。

国連のアントニオ・グテレス事務総長は「気候大災害」だとして、1億6000万ドル(約224億円)の緊急支援を各国に呼び掛けている。 【9月2日 AFP】AFPBB News
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パキスタンのレーマン気候変動担当大臣は「モンスーンは毎年来るが、こんな“怪物”は見たことない」と。
また、同氏は北部の氷河が解けているとする専門家の見解に言及し、洪水の主な原因は「気候変動だ」とも述べています。

【気候変動との関連】
そのたりの気候変動との関連について、気象予報士の千種ゆり子氏は以下のようにも。

****【解説】パキスタンの洪水被害。地球温暖化の影響は?2つのポイントから分析****
(中略)
1300人近くが亡くなったとされるパキスタンの洪水被害は、過去最悪と言われた2010年の洪水に迫る被害となってきています。パキスタンのシェリー・レーマン気候変動相によれば、国土の1/3が冠水したといいます。

地球温暖化が進むと極端な気象が増えると言われている中で、今回のパキスタンの洪水と地球温暖化はどのように関係しているのでしょうか。ポイントとなる降水量や、春先の熱波による氷河の融解から考えます。

一年で降る雨がわずか一日で…
まずは、降水量を見てみましょう。
被害の大きかった地区の一つ、シンド州の都市ナワーブシャー。年間の降水量は約150mmですが、今年の8月24日には、たった一日で222mmの雨が降りました。
平年であれば一年で降る量の雨が、わずか一日で降ってしまったことになります。18日、25日にも似たような大雨が降っていたのですから、レーマン気候変動相が「モンスターモンスーン」と表現していたのも頷けます。

パキスタンは「水不足」が深刻な社会問題になることもある、雨の少ない国です。大雨に慣れていない土地柄であるために、被害が拡大したと思われます。

温暖化の影響は?2つのポイントから分析
今回の洪水被害に関して、地球温暖化による影響は、いくつかに分けて論じることができます。
1.地球温暖化が、今回の降水量に与えた影響。
2.地球温暖化が、氷河の融解に与えた影響。

1.大雨そのものに地球温暖化が与えた影響
現在地球は、産業革命前に比べて、約1℃気温が上昇しています。気温が1℃上がると空気が含むことが出来る水蒸気量は7%増えます。

今回の場合は水蒸気量がどれくらい増えていたのか、詳しい分析は研究者による解析を待つ必要がありますが、日本を対象にした研究では、1℃気温が上昇した時の水蒸気量の増加率は、7%をはるかに上回り、11~14%にものぼることがわかっています。

一般的には、空気中の水蒸気量が多くなると、積乱雲がより発達しやすくなり、雨が降る所ではより顕著な大雨になりやすい傾向が存在していて、これは「Wet-gets-wetter,dry-gets-drier」メカニズムとして広く受け入れられています。

雨のもととなる水蒸気量が増えているわけですから、地球温暖化の影響を受けて多少なりとも降水量が増えている可能性は高いと思います。

2.氷河の融解に地球温暖化が与えた影響
今回の洪水について、パキスタンのレーマン気候変動相は「4~5月の熱波で氷河が融解しインダス川の水量が多くなっていた所に大雨が降ったため洪水の被害が拡大した」と、専門家の見解を引用しながら述べています。

パキスタンに貴重な水資源を供給しているのが、パキスタンの北にあるカラコルム山脈やヒマラヤ山脈の積雪・氷河です。

実際にインダス川の流量がどれだけ増えていたかはわかりませんが、4~5月にパキスタンが異常高温だったことは確かで、パキスタンの月平均気温は、4月としては1961年以降で最も高かったと報告されています(パキスタン気象局)。

世界気象機関は、今年の春先の熱波についても、地球温暖化の影響で、1℃分の底上げ効果があったとの発表をしています。

ヒマラヤやカラコルム山脈をはじめとするアジアの氷河の融解がすでに進んでいることは、IPCCによって2019年に発表された海洋・雪氷圏特別報告書でも「確信度が非常に高い」と結論づけられています。
地球温暖化の影響で、インダス川の流量が増えていた可能性は高いと思います。

気象災害とSDGsを繋げて考えてみよう
被害をさらに大きくする要因が「貧困」です。

地球温暖化が進むと気象現象が極端になると言われますが、気象災害はどうしても、貧しい人が一番被害を受けやすくなる傾向にあります。

インフラの整備で防げる被害も、貧しければ防げません。被害を受けた後の復興にも時間がかかります。気象災害によって職を失い、さらに貧困が加速する、という負の循環もあります。

パキスタンのシャバズ・シャリフ首相はパキスタンが出している二酸化炭素は全体の1%以下だとTwitterで述べています。つまり、ほとんど温室効果ガスを出していないのに、地球温暖化によって激甚化した災害の被害を受けてしまったのだ、不公平である、ということで、「気候正義」という概念を念頭に発言したものと思われます。

地球の気温は産業革命前に比べて約1.1℃上昇しており、この上昇のほとんどが、人間活動による温室効果ガスの影響であることに疑う余地がないということは、すでにIPCCで報告されています。この温室効果ガスの多くを排出したのは、先進国です。これまで豊かさを享受した先進国は、その責任を果たすべきだ、という考え方が、気候正義です。

「持続可能な開発目標」、いわゆるSDGsでは17の項目があげられていますが、項目1であげられている「貧困をなくそう」は、気候変動による被害を小さくすることにも繋がります。今回の洪水で被害を受けたパキスタンの方々が一日も早く平穏な暮らしを取り戻せるように、日本からは何ができるのか、SDGsの視点も含めて、考えるべきです。

もちろん、今回の洪水被害に対して募金をする、というのも1つの選択肢。カーボンニュートラルを一刻も早く実現するために行動することは、今後の被害を減らすという観点での、1つの選択肢になると思います。【9月6日 気象予報士・千種ゆり子氏 HUFFPOST】
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【貧困者にとりわけ重い負担】
災害の犠牲者の悲しみ・痛みは、パキスタンでも日本でも、また、洪水でも地震・台風でも同じです痛ましいものがあります。

上記記事にもあるように、その悲しみは貧困者に襲い掛かります。

****パキスタン、洪水で1290人死亡 「国土の3分の1」が浸水****
(中略)
被害が大きかった地域の一つの北西部カイバル・パクトゥンクワ州のカブール川近くの集落を毎日新聞助手が9月2日に訪ねた。多くの家屋が損傷し、水圧によって壁にヒビが入った家も多く見られた。

住民によると、8月末に近くの川のダムが決壊し、決壊から約1週間がたった今も一部の家や集落を通る道は冠水したままだという。住民のアルシャドさん(35)は「夜、寝ているうちに川が決壊して水が家の中まで入ってきた。避難して自分の命は助かったが、家財道具はすべて失ってしまった」と途方に暮れていた。

パキスタンでは、かねて食料品などの物価上昇が深刻で、洪水被害は庶民の生活苦に追い打ちをかけている。
政府が用意した避難所に身を寄せるタジーム・ビビさん(36)は「借金をして2カ月前に牛を買って牛乳を売って生活していたのに、牛は洪水で流され、家も損壊した。どうやって家を修理しろと言うのでしょうか」と訴えた。

同じく避難中のディルシャド・ベグムさん(70)も「私たちは貧しく、家を建て直すお金はありません。政府に被害を補償してほしい」と語った。

パキスタン災害当局によると、6月中旬以降に住宅約146万軒が全壊または部分的に損傷した。また、国連人道問題調整事務所は、5000キロ以上の道路と243の橋が被害を受けたとしている。

国連のグテレス事務総長は9月9日にパキスタンの首都イスラマバードに到着した後、被災地を訪ねる予定で、ビデオメッセージで「(現地の)ニーズの規模は洪水のように拡大している」と支援を呼びかけた。【9月4日 毎日】
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****コツコツためた持参金が洪水で駄目に…結婚も中止 パキスタン****
パキスタンのトラック運転手で、7人の子どもがいるムリード・フセインさんは、10月に娘を結婚させようとしていた。しかし、自宅が洪水の被害に遭い、後ろ側の壁だけではなくコツコツ貯めた娘のための持参金「ダウリ」も流されてしまった。
 
フセインさんは、4部屋の家に兄弟家族と住んでいる。「娘の持参金は3年近くかけて準備していた」とAFPに語った。
 
パキスタンでは6月以降、記録的なモンスーン(雨期)による洪水が全土で発生。これまでに1200人以上が亡くなった。国土のほぼ3分の1が水に漬かり、3300万人の生活に影響が出ている。
 
最も影響を受けているのは農村部の貧困層だ。家屋や所持品、これまでにためてきた資産、穀物が押し流された。
 フセインさんが住むパンジャブ州の村もひどい状況になっている。洪水により倒壊したり、破損したりした建物も多い。
 
フセインさんの娘ノウシーンさんの結婚も流れてしまった。
 
フセインさんは、トラック運転手として稼ぐ月収1万7000パキスタン・ルピー(約1万1000円)から、毎月数千ルピーを娘のダウリー用にためていた。
 
家父長制のパキスタンでは、娘が結婚する際に多大な持参金を持たせる習慣がある。多くの地域で、親は娘が生まれたその日から持参金をためることになっている。多額の持参金を要求することは法律で禁止されているものの、未だこの習慣を行っている人は多い。
 
新郎の家族は将来の花嫁の家を頻繁に訪れ、家具や家電、衣料品などほしいものが書かれた膨大なリストを渡す。裕福な家庭は、自動車や住宅を要求することさえある。
 
リストに上げられたものを用意できないことは恥だとされ、十分な持参金を渡せない場合には、娘が義理の家族からひどい扱いを受けることも多い。
 
フセインさんは「ノウシーンの後に、娘2人と残っている息子1人を結婚させたかった」と語った。「少しずつためればできると思っていた」
 
自宅が洪水になると、フセインさんは、妻と子どもたちと一緒に、高台にある近所の駅に避難した。
一家は2日前、泥をかき分けながら自宅に戻った。家のひどいありさまを見て、妻と娘は泣き出したという。
 
フセインさんの妻スグラ・ビービーさんは、家の状態と娘の持参金のことを思うと涙が出てくる。
長い年月をかけて特注のベッドセット、鏡台、ジューサー、洗濯機、アイロン、シーツ、キルトなどを買い集めてきた。しかし、すべてが洪水で駄目になってしまった。

「汚れてしまった。これを見たらみんな、私たちが娘に中古品を持たせたと思うだろう」とスグラさん。
 
結婚は中止になったが、ノウシーンさんは気丈に振る舞っている。
「家族にとって幸せな時となるはずだった、私もとても楽しみにしていた」とノウシーンさんはAFPに語った。
「私のために持参金をためるのがどんなに大変だったか、両親の苦労を目にしてきた。父と母はこれを一からやり直さなければならないなんて」
 
フセインさんは「自宅を再建すべきか、小麦をまくべきか、子どもたちを結婚させるべきか? 私たちにとっては、どれもとても重要なことだ」と述べた。 【9月12日 毎日】
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【国連事務総長「明日はあなたの国かもしれない」】
洪水自体の復旧には長い時間が必要とされるようです。その後の被災者の生活再建となると・・・

****冠水解消まで半年も パキスタン洪水で州首相****
大雨による洪水の被害が深刻化しているパキスタン南部シンド州のアリシャー州首相は、被災地で冠水が解消するまでに「3カ月から半年かかる」との見方を示した。地元メディアが13日までに報じた。
 
シンド州では、国内最大級のマンチャール湖の氾濫で近くの人口密集地が洪水に遭うのを避けようと、当局が堤防を一部破壊して人口が少ない地域に水を流した。このため周辺の村で新たに冠水が広がっている。
 
アリシャー氏は、冠水が深さ3メートルに及ぶ場所もあると指摘。「水が引いている場所でも、住民が戻れる状況ではない」と説明した。排水設備の整備を急いでいるという。【9月13日 共同】
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各記事にもあるように国連も支援に動いています。

****パキスタン洪水、国連総長が国際支援呼びかけ 「世界的危機」****
国連のグテレス事務総長は10日、大規模な洪水被害に見舞われたパキスタンの被災地を視察し、国際社会に資金援助の強化を呼びかけた。

モンスーンによる豪雨や北部山岳地帯の氷河溶解を受けた今回の洪水では1391人以上が死亡、住宅や道路、橋、家畜などが流され、パキスタンは被害額を300億ドルと試算している。

グテレス氏は記者会見で「きょうはパキスタンだが、明日はあなたの国かもしれない。これは世界的な危機であり、世界的な対応が必要だ」と述べた。

また「世界中で多くの災害を見てきたが、これほどの気候被害は目にしたことがない」とし、国際社会は気候変動の影響が最も深刻な国々への支援を強化する必要があると訴えた。

具体的には、復興や気候変動への適応を支援する資金提供に加え、20カ国・地域(G20)各国は自国の排出削減目標を毎年引き上げるべきだと指摘。

また、パキスタンのように気候変動の影響を受けやすい国に対する新たな債務救済の仕組みが必要だとし、債務国が対外債務の返済を続ける代わりに自国の気候プロジェクトに資金を振り向ける債務交換を提案した。【9月12日 ロイター】
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こうした災害を教訓として、今まで以上の取り組みが・・・ということであれば、唯一の救いにもなりますが、残念ながらそうしたこともないようです。

今後、現地では感染症拡大の心配もありますし、食料品価格高騰は必至でしょう。

貧しい国が裕福な国の工業化の影響を受けて気候変動災害に苦しむことについて“ラホール経営科学大学の社会学教授であるニダ・キルマニ氏は、「洪水に関するいかなる救済も『援助』としてではなく、過去数世紀にわたって蓄積された不正に対する賠償としてとらえられるべきである」と述べている”【8月31日 東洋経済ONLINE】
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アメリカ  中間選挙に向け、バイデン大統領はトランプ派による民主主義への脅威を訴える戦略

2022-09-12 22:25:58 | アメリカ
(9月5日ウィスコンシン州ミルウォーキーで、支持者からの熱烈な歓迎を受けるバイデン大統領【9月9日 WEDGE ONLINE】)

【中間選挙まで2か月 バイデン大統領のトランプ批判もエスカレート 「分断の解消」からトランプ派を除く「新たな融和」へ トランプ前大統領も激しいバイデン批判】
アメリカでは11月8日の中間選挙まであと2か月を切り、共和党を主導するトランプ前大統領へのバイデン大統領の言動もヒートアップしてきています。

トランプ支持者をファシスト呼ばわりするような発言については、翌日にアメリカの民主主義を脅かしているのはトランプ前大統領の支持者全員ではなく一部の過激な支持者だと記者団に述べ軌道修正する一幕も。

バイデン大統領としては、中間選挙の位置づけを「バイデン政権の審判」から「民主党とトランプ氏の共和党との対決」に変える狙いがあり、それがうまくいけば敗北必至と見られていた民主党にも勝利の目が出てきます。

****「半ばファシズム」 バイデン氏のトランプ派批判がエスカレート****
バイデン米大統領(民主)が11月の中間選挙に向けて、トランプ前大統領(共和)や共和党のトランプ派への非難を強めている。「半ばファシズムのようだ」「国の土台を脅かす過激主義の象徴」と言葉がエスカレートしており、共和党からは「分断をあおっている」と反発を受けている。

バイデン氏は1日の演説で、2020年大統領選の「不正」を根拠なく訴えるトランプ派を「選挙否定論者」と断じ、「憲法を尊重せず、法の支配を信じず、自由な選挙の結果の受け入れを拒んでいる」と批判した。

中間選挙や24年の次期大統領選を巡っても「彼らは勝てなければ、『不正な選挙だった』と訴える。そんな状況では民主主義は存続できない」と危機感を表した。8月25日には民主党の集会で「トランプ氏だけでなく、MAGA(マガ=トランプ派)の考え方は、半ばファシズムのようだ」と述べた。

しかし、「分断の解消」を掲げて大統領に就任しただけに、トランプ氏のスローガンを指して「MAGA(『米国を再び偉大に』の意味)」とトランプ氏の支持者全体をこき下ろす論法には批判も出ている。クルーズ上院議員(共和)は1日の演説を受けて「(トランプ氏を支持する)何百万人もの米国民を中傷した」と指摘した。

バイデン氏は2日、自身の発言について「トランプ氏の支持者が国にとっての脅威なのではない。暴力を呼びかけたり、暴力を非難しなかったり、選挙結果を認めるのを拒んだりすることが脅威なのだ」と記者団に説明した。

トランプ氏の支持者の大半は、20年大統領選が「盗まれた」との根拠のない主張に同調しており、バイデン氏からみると「過激主義者」となっている。

一方、トランプ氏は1日の保守系ラジオの電話インタビューで、21年1月の連邦議会襲撃事件で起訴された被告らを擁護し、「2日前にも会った。すばらしい人たちだ。金銭的にも援助している」などと発言。大統領に返り咲いた場合には「全面的な恩赦を非常に真剣に検討するだろう。(起訴などについて)謝罪もするだろう」などと語った。金銭的支援の具体的内容などは明らかではない。

中間選挙に合わせて行われる連邦上院選や州知事選では、東部ペンシルベニア州や西部アリゾナ州などの接戦州で、民主党候補と共和党のトランプ派の候補が対決する。バイデン氏とトランプ氏の「代理対決」の構図になっており、双方の言動が過激化する一因になっている。【9月3日 毎日】
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“バイデン大統領は同演説で、民主党支持者、無党派層と共和党保守本流による「新たな融和」を示唆した。政治的な暴力を肯定するMAGA共和党は、融和の中に含まれていない”【9月9日 WEDGE ONLINE】と、敢えて“MAGA共和党”批判を前面に押し出す戦略です。

トランプ前大統領も“打ち合い”“殴り合い”の展開ならお手のもの。

****バイデン氏は「国家の敵」 トランプ氏反撃****
ドナルド・トランプ前米大統領は3日、ジョー・バイデン大統領を「国家の敵」と呼び、連邦捜査局による、自身を標的とした家宅捜索を「茶番」と非難した。

バイデン氏が先に、トランプ氏と同氏を支持する共和党員を「米国の根幹を脅かす過激思想の象徴」と激しく批判したことを受け、反論した形。トランプ氏が公の場に姿を現したのは、先月8日にフロリダ州の邸宅がFBIの家宅捜索を受けて以降、初めて。

トランプ氏はペンシルベニア州ウィルクスバリで開いた集会で、バイデン氏の発言について、「歴代米大統領による演説の中で最も悪質で、憎しみに満ち、分裂を生むものだ」「彼(バイデン氏)は国家の敵だ」と非難。「われわれこそが民主主義を守ろうとしている。非常に単純だ。民主主義の脅威は右派ではなく、急進左派からやって来る」と述べた。

また、FBIによる捜査を「正義の茶番」と一蹴し、「誰も見たことのないような反動」をもたらすことになると警告。「米国史上最も衝撃的な、どの政権も行わなかった権力の乱用の一事例をわれわれは目撃した。米国の自由がこれほど生々しく、真に脅かされた例は他にない」と主張した。

ペンシルベニア州は11月の中間選挙における激戦州の一つで、バイデン氏とトランプ氏が相次いで訪れ、演説を行った。 【9月4日 AFP】
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トランプ前大統領は「MAGA運動の共和党員は民主主義を弱体化させようとしているのではない。私たちは民主主義を救おうとしている」
「バイデン政権は最大の政敵の家にFBIを送り込んでいる。正義の茶番劇で恥ずべきことだ。このひどい法律の乱用は、誰も見たことのない反発を生むだろう」
「司法省は、左翼過激派の悪党、弁護士、メディアに支配された悪質な怪物と化している」とも。

“トランプ氏は演説のかなり部分を、FBIによる捜査への批判に費やした。それだけ、トランプ氏にとっては琴線に触れる事態となっているのだろう。”【9月11日 FNNプライムオンライン】

また、バイデン大統領の政策を痛烈に批判
「バイデンが進める電気自動車は運転に費やせる時間より、充電する時間の方が長いんだ。人々はそれを買う余裕はないし、バッテリーは全て中国製だ。レアアースも全て中国製だ」
「トランプ政権のもとでは、インフレもなく、世界史上最高の経済があった。バイデンと民主党の議会は過去50年で最悪のインフレを引き起こした」
「大卒者の数千億ドルの負債を帳消しにする不道徳な計画で経済を悪化させている。考えてみてくれ。なんて不公平なんだ」
「アフガニスタンの撤退に失敗した結果、世界で2番目に大きな武器商人はアフガニスタンだ」「最も屈辱的だったのは、プーチンが侵攻したことだ。私があなたの大統領だったら、そんなことは決して起きなかっただろう」。

“事実関係は別にして、この指摘に会場は沸いた”【同上】

なお、トランプ前米大統領の標語「米国を再び偉大に」の頭文字から呼び名が付けられ、支持者やその運動を指す「MAGA(マガ)」について、世論調査ではアメリカの民主主義の根幹を脅かしているとの回答が全体の58%を占めており、共和党支持者でも「MAGA」と距離を置く傾向が見られるようです。

****トランプ氏の政治運動、「米民主主義脅かす」が58%=世論調査****
6─7日実施のロイター/イプソス調査では、トランプ前米大統領の標語「米国を再び偉大に」の頭文字から呼び名が付けられ、支持者やその運動を指す「MAGA(マガ)」について、米国の民主主義の根幹を脅かしているとの回答が全体の58%を占めた。

共和党支持の回答者のうちでも、MAGAが共和党の大多数を代表しているとは思わないとの回答は60%になった。

バイデン米大統領は1日の国民向け演説で、トランプ前米大統領や同氏に傾倒する野党共和党議員らが「米国の根幹を脅かす過激思想の象徴だ」と批判していた。

もっとも今回の調査では、1日のバイデン氏の演説が米国をさらに分断させるとの回答も全体の59%に上った。(中略)

バイデン氏の大統領としての仕事ぶりを評価するとしたのは全体の39%にとどまった。トランプ氏の大統領時代の同様の調査の最低時を大きく上回る数字にはなっていない。

調査対象は全米の成人1003人で、民主党支持者が411人、共和党支持者が397人。【9月8日 ロイター】
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【バイデン大統領支持率は持ち直しの動きもあるものの、以前低空飛行は変わらず】
バイデン大統領の支持率は、大型法案の成立やガソリン価格が落ち着く動きをみせていることもあって、このところ若干持ち直したとの調査結果も。バイデン大統領の攻勢もこうしたながれを受けてのものでしょう。

***バイデン氏支持率41%、6月上旬以来の高水準=調査****
23日公表のロイター/イプソス調査によると、バイデン米大統領の支持率は41%と、6月上旬以来の水準に上昇した。民主党が議会で一連の法案を通過させたことが追い風となった。

バイデン氏の支持率が40%を超えるのは、6月初め以来。

民主党が多数派を占める米議会が、気候変動対策や薬価引き下げを盛り込んだ法案のほか、中国に対する競争力向上を目指す国内半導体産業支援法案などを可決したことを受け、同氏の支持率は過去5週のうち4週で上昇した。

今週の調査では、民主党員の78%がバイデン氏を支持し、7月上旬の69%から上昇。共和党員による支持率は12%で、ここ数週間ほぼ変わっていない。

国民が新型コロナウイルス禍による経済への影響や物価高に対処する中、全体の支持率は昨年8月以降、50%を下回る状況が続いている。

ただ、ガソリン価格が記録的高水準から下落する中、インフレ鈍化の兆しも幾分見られつつある。【8月24日 ロイター】
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しかし、翌週調査では・・・・低空飛行は変わらないようです。

****バイデン氏支持率が38%に低下、過去最低近辺=調査****
30日公表のロイター/イプソス調査によると、バイデン米大統領の支持率は38%と、先週の41%から小幅低下した。(中略)

国民が新型コロナウイルス禍による経済への影響や物価高に対処する中、支持率はここ1年、50%を下回る状況が続いている。5─7月の週間調査では過去最低の36%を4回記録した。トランプ前大統領の最低支持率は2017年12月に記録した33%だった。(後略)。【3月31日 ロイター】
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【与党・民主党 敗北必至からやや勢力挽回へ】
以前から“民主党は11月の中間選挙で上下両院で過半数議席を失う”と大方が見ていましたが、ここにきてやや民主党が持ち直す動きも出ています。

****分断解消どこへ?トランプ派を「ファシスト」と呼び…米民主党、中間選挙まで2カ月****
米政治の行方を左右する11月8日の中間選挙まで2カ月に迫った。急速なインフレへの不満の高まりを受けて一時は野党・共和党の圧勝もささやかれたが、ガソリン価格が落ち着く中で現在は与党・民主党が勢力を挽回。

バイデン大統領は、2020年大統領選での敗北を認めない共和党のトランプ前大統領とその支持層を「民主主義の敵」と位置付けることで、攻勢を強めている。

米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の集計(7日現在)によると、政権運営のカギを握る上院(定数100)では、民主、共和両党が非改選分を含めてそれぞれ46議席をほぼ固め、接戦となっている中西部オハイオ州や東部ペンシルベニア州などの8議席を争う状況。民主党は、現有50議席の維持が視界に入った。

全議席が改選となる下院(定数435)では、共和党が過半数となる218選挙区で優勢に選挙戦を進めている。ただ、6月時点よりも民主党との差は縮まっており、今後の2カ月でさらに接戦となる可能性が高いとも予測される。

民主党が勢力を盛り返している背景には、複層的な要因がある。経済面では今夏、高騰していたガソリン価格の下落が続き、インフレ圧力が緩和されつつあるとの見方が広がった。

保守派優位の連邦最高裁が6月、人工妊娠中絶は憲法で保障された女性の権利だとした判例を覆したことは、リベラルな民主党支持層のみならず、穏健な共和党支持層の危機感もかきたてている。

さらに指摘されるのは、共和党の候補者選びなどで大きな影響力を持つトランプ氏に対する同党支持層の微妙な変化だ。

20年大統領選の結果を覆すことを狙ったトランプ氏支持者による昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会は今年6月以降、8回の公聴会を開き、事件におけるトランプ氏の責任を追及している。8月には連邦捜査局(FBI)がトランプ氏宅を捜索し、同氏の退任時にホワイトハウスから持ち去られた機密文書などを押収した。

各種世論調査によると、共和党支持層の多くは、大統領選で大規模な不正があったとするトランプ氏の主張をなお信じている。だが、共和党系の政治アナリスト、サラ・ロングウェル氏は、公聴会などを受けて同党支持層の一部には「トランプ氏(が党の主導権を握ったまま)では次の大統領選に勝てないとの不安が広がった」と指摘する。(後略)【9月8日 産経】
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ガソリン価格など物価の落ち着き、8月21日ブログ“アメリカ 中間選挙に向けて激しさを増す銃規制・中絶問題・同性婚などをめぐる「カルチャーウォー」”でも取り上げた中絶問題などをめぐる「カルチャーウォー」の状況、更に前述の共和党支持者一部のトランプ離れ的な動き・・・などが、民主党側に有利に作用しているようです。

****米中間選挙 民主党優位との分析も 人工妊娠中絶容認の影響****
11月8日の米中間選挙では、民主党のバイデン大統領の支持率が低迷する中で、共和党が上下両院選とも優勢とみられてきた。

だが7月以降は民主党が盛り返し、上院選では「民主党優位」との分析も出ている。最新の情勢について、選挙予測で定評のあるウェブサイト「ファイブサーティーエイト(538)」の上席選挙アナリスト、ナサニエル・ラキッチ氏に聞いた。

――民主党が盛り返している要因は。
◆連邦最高裁が6月24日に人工妊娠中絶を選ぶ権利を女性に認めた判例を覆し、州による中絶禁止を容認した影響が大きい。

世論調査の政党支持率は、今年に入ってからは共和党がずっと上回っていたが、最高裁の判決後は民主党が支持を伸ばして逆転し、直近では1・2ポイント差でリードしている。

同様の傾向は下院補選の結果にも表れている。判決直前の6月14日には南部テキサス州の民主党が優勢な選挙区で共和党候補が勝利したが、8月にあった北部アラスカ州や東部ニューヨーク州での下院補選では、逆に共和党が強い選挙区を民主党候補が制した。

――最高裁判決はどんな層に影響しているのか。
◆性別や党派に関係なく、満遍なく影響があった。特に、共和党穏健派や無党派層など「支持政党を変える可能性がある人たち」の考えを変えたとみられる。

民主党支持者でも、政権運営への不満や「高齢過ぎる」との懸念からバイデン氏を支持しない層は中間選挙での投票意欲が乏しかった。だが共和党が中絶禁止を進めることへの警戒感が高まり、積極的に民主党候補に投票する理由ができた。

――バイデン氏の支持率は最高裁判決後も下がっていたが、7月下旬から反転した。
◆最高裁判決はバイデン氏自身とは関係がなかった。むしろ、高騰したガソリン価格が下落傾向になり、気候変動・医療対策法(政権側の通称は「インフレ抑制法」)を成立させてアピール材料ができたことで、支持率が上向いたとみている。

ただし、「バイデン支持=民主党支持」ではない。大統領の支持率が高い方が中間選挙の結果が良くなる傾向はあるが、必ずそうだというわけでもない。

――連邦捜査局(FBI)によるトランプ前大統領への捜査は影響しているか。
◆FBIが8月8日にトランプ氏宅を捜索した時には、既に民主党への支持は上向いていた。どの程度の影響があるかはまだ分からない。

――バイデン氏は共和党内のトランプ派への批判を強めている。
◆中間選挙の位置づけを「バイデン政権の審判」から「民主党とトランプ氏の共和党との対決」に変える狙いがある。

トランプ氏は共和党内では絶大な人気があり、(党の候補者を絞り込む)予備選では彼の支持が各候補者の大きな武器になった。

しかし、無党派層や民主党支持者には不人気なため、本選ではトランプ氏の存在感が目立つほど、民主党には追い風になるとみている。トランプ派の共和党候補がウェブサイトから「トランプ氏の支持」という記載を削除する動きが一部で出ているのはそのためだ。

――投票日まで約2カ月あるが、今後の情勢は。
◆過去の中間選挙でも、世論調査の数字は直前まで揺れ動いた。大統領の所属政党に不利な動きをすることが多く、(民主党のオバマ政権時代の)10年や14年の中間選挙では、9〜10月に共和党有利に傾いた。

今回で言えば、インフレの行方や新型コロナウイルスの感染状況などが情勢に影響するかもしれないが、何が鍵になるのか現時点で予測するのは難しい。【9月12日 毎日】
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まだ2か月近くありますので“現時点で予測するのは難しい”・・・まあ、それはそうでしょう。
ただ、民主党の敗北が必至と見られていた状況はやや変わったようです。

これで、やっぱり民主党大敗、そして2年後のトランプ復活へ・・・ということになるなら、「民主主義とは一体何なのか?」という疑念にも。
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中国  習近平国家主席が目指す完璧に設計された社会、抵抗しない市民には安心と利便性を提供

2022-09-11 23:22:27 | 監視社会

(アリババが開発した「シティー・ブレイン」【9月9日 WSJ】)

【中国情報管理の二つの顔 ディストピア的な悪夢の新疆 ユートピアを目指す杭州】
中国が国民の個人情報をリアルタイムに把握し、AIを駆使した技術も活用して“安心・安全な社会をつくろうとしている”あるいは“国家への反抗・不満を許さない監視社会をつくろうとしている”というのは今更の話でもあります。

この問題には、常に市民生活の利便性・安全性を高めるユートピア的側面と、監視というディストピア的側面が同居しています。

****中国の監視国家モデル、相反する二つの顔****
習氏が目指す完璧に設計された社会、抵抗しない市民には安心と利便性を提供

何か劇的な不測の事態が起こらない限り、中国の習近平国家主席は今秋、北京の人民大会堂で3期目続投を決める見通しだ。おそらく終身制への布石となるだろう。3期目の新体制では、習氏の壮大なる野望の一つに注目が集まりそうだ。習氏はデータと大量のデジタル監視が支える新たな政府の在り方を目指しており、世界の民主国家に対抗する存在になるかもしれない。

中国共産党は完璧に設計された社会という未来像をちらつかせている。具体的には、人工知能(AI)企業と警察が連携して犯罪者をとらえ、誘拐された子どもを発見し、交通規則を無視して道路を横断する者を戒める社会だ。つまり、当局は市民の善行に報い、悪行には罰を与え、しかも数理的な精密さと効率性を持って実行する。

習氏がこの構想の実現にこだわるのは、必要にかられてのことだ。毛沢東が死去した1976年以降の約30年間、共産党は市民の生活から離れ、インフラ投資にまい進。歴史的な高度成長を遂げ、中国を貧困国から中所得国へと引き上げた。ところが、ここ10年は成長が鈍化。爆発的な債務の伸びや新型コロナウイルス禍に絡む厳格な規制、高齢化など人口動態の問題によって急激に失速する恐れが出てきた。

習氏はここにきて、新たな社会契約を結ぼうとしている。豊かな未来像を示すのではなく、安全と利便性を提供することで市民の心をつかむのだ。数千のアルゴリズムが脅威を制圧し、円滑な日常生活を阻害する摩擦を排除する予測可能な世界だ。

だが、世界は中国の国家監視プロジェクトの暗闇も目の当たりにした。新疆ウイグル自治区で行われているウイグル族などイスラム系少数民族に対する強制的な同化政策だ。

ウイグル人らは顔や声、歩き方まで検出され、デジタル上で徹底的に追跡される。警察が常にスマートフォンをスキャンし、宗教上のアイデンティティーや外国とのつながりを調べる。問題を引き起こすと判断されたウイグル人は刑務所か、地域にある「教育センターを通じた変革」のための施設へと送られる。その結果、第二次世界大戦以降、最大規模となる宗教マイノリティー(少数派)の投獄が起こった。

新疆が共産党の大衆監視によるディストピア(反理想郷)的な悪夢に陥っている所だとすれば、経済的に豊かな浙江省の省都、杭州はユートピア(理想郷)の極みを必死で目指している場所かもしれない。

杭州でも、新疆と同じように至る所に監視カメラが設置されている。だが、これらの監視網は市民を管理するとともに、生活を改善するためにある。集められた膨大なデータはアルゴリズムに送られ、交通渋滞の解消や食品の安全性の徹底、救急隊員の迅速な派遣に寄与している。杭州は、習氏の野望の中でも、世界に変革をもたらし得る、魅力的な一面を体現しているのだ。

杭州の中心部には、慎重に育成され、異例の成功を遂げたテクノロジー企業が集積している。(中略)ハイテク企業がタッグを組んだことで、杭州市は中国で「最もスマート」な都市に変身し、世界が追随を目指すようなひな形になった。

市が収集するデータが観光地の人の流れを管理するとともに、駐車場のスペースを最適化し、新たな道路網を設計する。市内の随所にある監視カメラは、長らく産児制限が続いた中国ではとりわけ、行方不明になった子どもの発見に寄与したとして高く評価されている。

杭州市内の「リトル・リバー・ストリート」として知られる地区で行われている「シティー・アイ」という取り組みは特に注目に値する。ここでは「城管」と呼ばれる都市管理部隊の地元支部がAIツールを使い、警察がわざわざ介入しないような任務に当たっている。具体的には、露天商人を追い払う、違法なゴミ放棄者を処罰する、駐車違反者にチケットを切るといった仕事だ。

リトル・リバー・ストリートにあるシティー・アイの司令部を訪れた。周辺の住民は、中流階級に上がりつつあるところか、中流階級から落ちこぼれないように必死に取り組んでいるかのいずれかだ。こうした中間層の間では、一定の幸福感も感じられるが、もろさも漂う。

中国共産党が懸念するのは、このような地域だ。富裕層は問題を起こす動機がなく、貧困層にはその力がないが、中間層はちょうどその両方を持っている。容赦のない長時間労働、未整備の医療制度、絶え間ない物価高騰、環境汚染に食品安全の問題、そして乱高下する株式市場――。今の中国を生き抜く上で、相当なプレッシャーにさらされている彼らは時に「キレ」やすくなる。

シティー・アイは、ハイクビジョンがリトル・リバー・ストリートに警察の監視カメラ約1600台を設置し始めた2017年に運営が開始された。カメラの映像とAI技術をつなぎ、24時間体制で監視しており、何か不審な動きがあるとスクリーンショットともに自動で警告を送る。

都市管理部隊の城管はこれまで、露天商人への攻撃的な対応がネットに出回るなどして市民から嫌われる存在になっていた。

シティー・アイの司令部責任者、チュウ・リクン氏は、同プロジェクトで地元住民と城管との関係が改善したことを特に評価している。監視カメラと対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の報告システムの透明性により、城管が介入するのは最終手段であることが証明されたという。

しかも、シティー・アイによって城管の汚職も減った。その結果、城管は憎むべき国家の残忍さの象徴から、リトル・リバー・ストリートの社会秩序を守る、尊敬される存在へと変わったと同氏は感じている。

ハイクビジョンが杭州市の路上に監視の目を提供したとすれば、アリババは頭脳を提供した。AIを駆使した「シティー・ブレイン」と呼ばれるプラットフォームが、交通量から水資源管理まであらゆる政府の任務を最適化する手助けをする。同時に、アリババのサービスやプラットフォームは、光熱費の支払いや公共交通機関の利用、融資取得といった市民生活の利便性を高め、ネット裁判所の登場で地元企業を提訴することさえも容易にした。

シティー・ブレインはとりわけ、ひどい交通渋滞で知られる杭州を変えたと言われ、国内ワーストランキングでは5位から57位へと改善した。アリババは交差点の動画データやリアルタイムの全地球測位システム(GPS)位置情報を解析するシステムを開発。同市の交通当局が信号を最適化し、老朽化する交通網の混雑を緩和できるようにした。

2019年10月には、農村地区で77歳の住民女性が洗濯中に小川に転落する事故が発生。女性を救急車に乗せた隊員は近くの病院まで最速で到着できるよう、シティー・ブレインの道案内ツールを作動させた。アルゴリズムにより、病院まで14カ所ある交差点がいずれも通過時に青信号になっていたことで、通常ではよくても30分かかるところを、12分で病院に搬送することができたと報じられた。(中略)

ウイグル人への組織的な弾圧が行われている新疆と同じように、杭州も社会管理のいわば実験場であり、何が機能して、何が機能しないのかを理解する材料を共産党に提供する。2カ所で行われている実験からは、共産党の権威に抵抗すると思われる人物を脅し、強制的に変えようとするまさに同じ技術が、党の支配を受け入れる人々を大事に扱い、安心させる手段にもなることが分かる。

習氏によるAIと独裁主義の融合は、戦争や新型コロナウイルス禍、経済減速、崩壊寸前の組織制度に見舞われる時代において、安心と効率性の世界を提供できるかに見える。

完璧につくられた社会の魅力は現実のものだ。このモデルがどこまで浸透するかは、習氏の野心とパフォーマンスのみならず、世界の民主国家が同じ問題にどううまく対処できるかにもかかっている。【9月9日 WSJ】
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嫌われ者の城管が“社会秩序を守る、尊敬される存在へと変わった”・・・俄かには信じがたいことです。

「ブレグジット、トランプ大統領の登場などによって、『民主主義って機能しているの?』というイメージを中国人は持っています。人に任せるよりデータに任せたほうが良いのではないかという。日本にも民主主義が機能不全だと考えている人は増えているのではないでしょうか。だからといって、中国と同じになるのがいいとは思いませんが、民主主義をバージョンアップさせるためにも、中国がどう課題に取り組んでいるかを知ることは必要不可欠でしょう」【『幸福な監視国家・中国』著者・高口康太氏 2021年8月23日“中国人が監視国家でも「幸福」を感じられるワケ”WEDGE】

中国のような政治体制とAIによる情報管理は親和性がいいようにも見えます。
中国の実験が成功すれば、限界・欠陥が意識されるようになった欧米民主主義に変わる価値概念になる可能性も。

ただ、“抵抗しない市民には安心と利便性を提供”ということの“抵抗しない”という条件には、どうしても国家(という悪魔)に魂を売り渡してしまうような“譲れないもの”を感じてしまいます。

【ディストピア的負の側面のいくつかの事例】
今のところ比較的話題になりやすいのはディストピア的負の側面。
コロナ対応の健康コードが地方当局によって経済問題での抗議行動抑制に流用されたことも大きな話題になりました。

中国当局もこうした軽率な個人情報利用が健康コードシステムの信頼を損なうという認識はあるようです。

****中国 コロナ対策アプリで「健康コード」不正しないよう呼びかけ****
中国の衛生当局は(6月)24日、新型コロナウイルスの感染対策アプリで市民の移動制限にもつながる「健康コード」について、不正行為をしないよう呼びかけました。

衛生当局の幹部は会見で、「感染予防以外の理由で、市民の健康コードを操作してはならない」と述べ、アプリの運用ルールを徹底するよう求めました。

中国のコロナ対策アプリ「健康コード」をめぐっては、河南省の銀行から預金を引き出せなくなった人たちが抗議しようとした際、アプリを不正に操作され隔離措置を受けたことが明らかになりました。

その後、地元当局の幹部らが処分されていますが、感染対策の柱でもある健康コードを当局が恣意(しい)的に操作し、足止めに使っていたとして批判の声が広がっていました。【6月24日 日テレNEWS】
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もっとも、処分が軽すぎるということで、ことの重要性が認識されていないのでは・・・との声も。

****「処分軽すぎ」の声も…“コロナアプリ悪用”で中国が幹部処分【ネタプレ国際取材部】****
(中略)中国で、預金が引き出せなくなった人が抗議しようとしたところ、次々と連行されました。
実は、地元政府が抗議を封じ込めるため、1300人以上のコロナ対策アプリを改ざんし、隔離が必要な状態にしたことが発覚。これにより、共産党幹部ら5人が処分を受けました。(中略)

河南省鄭州市の発表によりますと、処分されたのは、地元政府でコロナ対策を担当する幹部や共産党幹部ら5人。
中国河南省の複数の銀行で、8000億円規模の預金が引き出せなくなったトラブルを巡り、抗議に訪れるなどした預金者たちは、ホテルなどへ連行される事態となっていました。

処分された5人は、抗議を封じ込めるため、1317人の預金者のコロナ対策アプリを不正に操作し、隔離が必要な状態に改ざんにした疑いが持たれています。

鄭州市は、処分した5人について「権力の乱用で社会に深刻な影響を及ぼした」と厳しく批判。

5人は、共産党や政府の職務を解かれましたが、中国のSNSでは「身分や階級のみで、処分が軽すぎる」「刑事罰を与えるべき」などの声も上がっています。【6月27日 FNNプライムオンライン】
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膨大な個人情報の管理が適正になされているのかという問題もあります。
中国の個人情報が闇市場に流出していることが問題になりましたが、中国政府も情報管理に無関心という訳でもありません。

****中国「監視国家」の副作用、流出情報を闇取引****
中国政府は世界有数の徹底したサイバーセキュリティーとデータ保護体制を築き上げてきた。だが、こうした取り組みにもかかわらず、中国市民の個人情報を売買する国境を越えた闇市場が広がっている。

データの大半は、中国政府がこれとは別に注力する大型セキュリティー対策から来ている。巨大な市民の監視網だ。

今月(7月)初め、人気のサイバー犯罪フォーラムで、ある匿名ユーザーが上海警察から盗んだとする推定10億人の中国市民の個人情報を売りに出していた。これは史上最大級の個人情報漏えいとされ、公民身分番号(国民識別番号)、犯罪歴といった極めて扱いに慎重を要する個人情報が含まれていた。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこの問題が発覚して以降、サイバー犯罪関連の投稿フォーラムやチャットツールのテレグラム上で中国市民の個人情報が売りに出されているのを数十例発見した。無償で提供されているものもあった。

WSJが分析したところ、盗まれたキャッシュのうち、4つは政府から流出したデータである可能性が高いことが分かった。政府データが含まれているとして売りに出されているものも複数あった。

流出データを追跡するLeakIXによると、数万件に及ぶ中国のデータベースがネット上で無防備な状態で放置されている。合計のデータ規模は700テラバイト以上と、世界最大だという。

中国公安省と中国サイバースペース管理局(CAC)、上海政府はコメントの要請に応じていない。

とはいえ、世界各国がデータ保護に苦慮している。LeakIXによると、中国の次に多いが米国で、ネット上で公開された状態にあるデータが540テラバイト近くに上った。

ただ、無防備に放置されているデータが広範に及び、かつ扱いに慎重を要するデータであるという点で、中国は突出する。背景には、国家運営の監視プラットフォーム上で政府機関や企業など複数のデータ元から流れてくる個人情報を一元管理しているとの事情がある。

サイバーセキュリティーの専門家は、これだけの膨大なデータを1カ所に集約すれば、それだけ流出のリスクも高まると指摘する。パスワードが1つでもぜい弱だったか盗まれた、あるいは誰かがフィッシングに引っ掛かる、不満を抱えた社員が1人でもいるという状況になれば「システム全体がやられる」。ダークウェブ分析会社シャドーバイトの創業者、ビニー・トロイア氏はこう指摘する。(中略)

中国政府は2013年以降、国家のデータ保護を国家安全保障の最優先課題と位置づけてきた。米国家安全保障局(NSA)の元契約職員エドワード・スノーデン氏が、中国のネット基盤に米政府がハッキングで不正侵入していると暴露したことがきっかけだった。

当時国家主席に任命されたばかりの習近平氏を含め、スノーデン氏の暴露は中国の政府高官に衝撃を与えた。習氏はそれから程なく、すでにネット利用者が5億人に達していた国内のサイバー空間を封鎖した。

その後数年で、ネット利用者がさらに数億人増えるのに伴い、中国当局は国内データの安全対策に不備が多いことを発見する。闇市場では、大半が政府のコンピューターネットワークから盗まれたとみられる個人情報が売買されていた。その結果、電話を通じた詐欺で多額の資金をだまし取られる事件が起きるなど、国民の間で怒りが高まっていた。

中国政府は21年、世界で最も厳格とされる欧州連合(EU)のプライバシー保護法をひな形とする個人情報保護法を成立させた。個人情報の収集やクロスボーダーのデータ移転を制限した。17年には重要データの国外流出を阻止する「サイバーセキュリティー法」を可決するなど、入念なデータ保護規制の枠組みを整備しており、個人情報保護法はその集大成に相当する。(中略)

中国ハイテク政策の専門家によると、中国のデータセキュリティー規制はまだ日が浅く、執行状況も均一ではないため、問題をさらに難しくしている。政府自身の活動を制限する場合には、特にこうした傾向が強いという。

また、ネット上でこれだけ膨大なデータが売られているという実態は、まさに中国政府が避けたいと考える国家安全保障上の脅威だと専門家は話している。

米外交評議会(CFR)のデジタル・サイバー空間政策プログラムの責任者アダム・シーガル氏は、政府の監視データベースには本質的に、個人の弱みや国家のぜい弱性を外国の情報当局者が把握できるような機密情報が含まれていると指摘する。

中国政府は上海警察の情報漏えいについて公の場でコメントしておらず、ソーシャルメディア上では関連の投稿が削除されている。【7月22日 WSJ】
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一方、当局が求める「監視機能」とユーザーの反発の間でIT企業が板挟みになることも。

****中国当局がIT企業に押し付ける「監視機能」...板挟みの企業が見せたギリギリの抵抗****
6月下旬、中国IT大手キングソフトが提供するクラウドベースのワープロソフト「WPSオフィス」に検閲疑惑が浮上した。中国の作家が原稿をクラウドに保存したところ、「違法な」情報が含まれているとしてアクセスできなくなったと告発したのだ。

同社は当初、検閲を否定しつつも、7月13日には中国のサイバーセキュリティー法に従っているだけだと発表。来年末までに無料版WPSから広告を排除すると告知するなど、ユーザーのつなぎ留めに必死になっている。

1989年のリリース以来、WPSは中国においてマイクロソフト・オフィスに代わる業務ソフトとなってきた。今回、国内法に従わざるを得ない状況をユーザー離れのリスクを冒してまで認めたことは、同社がユーザーと当局の板挟みになっている証拠でもある。

国内法の縛りを受け自社製品に監視機能を付けているとみられる中国IT大手は少なくない。リスクを冒した声明は、キングソフトなりの「告発」だったのかも。【7月29日 Newsweek】
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キングソフトは私も重宝していますが・・・
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