孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

タイ  首相任期をめぐりプラユット首相の職務一時停止命令 ブランド効果で首相を狙うタクシン氏次女

2022-09-10 22:19:16 | 東南アジア
(ドバイで亡命生活をしているタクシン・チナワット前タイ首相(右)が昨年政治に入門した末娘のペートンタン氏と孫娘と一緒にいる様子。[写真 ペートンタン氏 インスタグラム]【7月4日 中央日報】)

【首相任期問題、憲法裁は今後1〜2カ月かけて審理を行った後に判断】
タイでは、8年前の軍事クーデターで首相に就任した元陸軍司令官のプラユット首相の任期の上限が過ぎたとして野党が憲法裁判所に訴えると、裁判所は結論が出るまでの間、職務停止を言い渡しました。

職務停止の間は、プラユット氏と同じく元陸軍司令官のプラウィット副首相が首相を代行することになっています。

****タイ憲法裁がプラユット首相の職務停止 任期の解釈めぐり対立、政変や王室批判再燃の可能性も****
<2014年以来首相の座にいる男が停職に。何が起きた?>
タイのプラユット首相が憲法裁判所から首相の職務一時停止命令を受けて首相職を辞し、やはり軍出身の副首相プラウィット氏が首相代行となった。

これは首相の任期は「最大で8年間」とするタイ憲法の規定を巡ってどの時点をプラユット首相の任期の起算点とするかで、政権・与党側と野党や反プラユットを掲げる市民団体との間で意見が分かれていたことが原因である。

野党などは首相任期の任期満了時期の判断を憲法裁に仰ぐ請願書を提出。これを憲法裁が受理したため「首相職の一時停止」を命令することになった。首相の職務停止には憲法裁の裁判官9人中5人が賛成した。

憲法裁は今後1〜2カ月かけて審理を行った後に判断を下したいとしている。

タイは2022年11月に「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」首脳会議を開催予定で、プラユット首相は議長として会議を成功に導き政権基盤をさらに強化することを狙っていた。

今回の憲法裁の命令に関しては、2014年5月の軍事クーデターで政権を追われ現在海外亡命中のインラック前首相とその兄であるタクシン元首相らの野党勢力は「プラユット政権を終わらせる好機」と捉えて今後反政府活動を強化する可能性が出ている。

プラユット首相は国防相職には留まる
8月24日に憲法裁の「首相職の一時停止命令」を受けたプラユット首相は、憲法裁の判断を尊重するとして首相職を一時的に辞したものの、兼務している国防相の職務は続行する方針を明らかにした。

野党側は首相の任期8年の起算点を2014年8月24日、つまり当時のプラユット陸軍司令官がクーデターでインラック政権を倒し暫定首相に就任した日から計算して「任期満了」と主張しているのだ。

これに対し政権側や与党は2019年6月にそれまで暫定首相だったプラユット氏が下院総選挙での与党勝利を経て正式に首相に就任した時を起算点にしており、任期は2027年までと主張している。

またプラユット首相が2014年のクーデターで2007年憲法を廃止して「首相任期8年」を定めた新憲法が施行された2017年4月7日を起算点とする説も与党関係者から出ており、そうなるとプラユット首相の任期は2025年までになり、いずれも任期はまだ満了していないとの主張の根拠となっている。

復権目指すタクシン元首相
今回の憲法裁の決定を間違いなく歓迎しているのがタクシン元首相とインラック元首相だ。

タクシン元首相は2001年に首相に就任し政権を掌握した。しかし地盤であるタイ北部の利権拡大に専心するあまり反タクシン運動が盛り上がり2006年に辞任に追い込まれ、海外に脱出した。

その後2008年には土地取引に関して欠席裁判で有罪判決を受け、タイに帰国すれば逮捕されることからアラブ首長国連邦やカンボジアなどを転々として事実上の海外逃亡生活を続けている。

また妹のインラック元首相も2011年に総選挙で「タイ貢献党」の首相候補として勝利して首相に就任した。しかし「縁者登用に不当関与した」として2014年に失職。兄と共にアラブ首長国連邦や英国で生活している。

タクシン元首相を支持する野党「タイ貢献党」はタイ東北部の農村地帯を中心に幅広い支持を依然として維持しており、下院では133議席と単独政党としては最大の勢力を維持している。軍政支持の与党「国民国家の力党」は単独では100議席しかなく、他党と連立することで辛うじて下院の過半数を占めている。

2022年5月に実施された首都バンコクの知事選でもタクシン支持の「タイ貢献党」の候補者が軍政支持の「国家国民の力党」の候補者に大差をつけて圧勝した。(中略)

このように現在の議会バランスではプラユット政権支持が辛うじて過半数を占めているものの、地方によってはその信任は危うくなっているのが現実だ。

さらに今後政局が不安定になると連立政権から離脱する政党が出ないとも限らず、そうなれば議会でのプラユット政権優勢は揺らぐことになる。

こうした事態に海外にいるタクシン元首相がどこまで野党側に指示を送っているかは不明だが、今回の事態を政権交代そして自身の復権のチャンスととらえていることだけは間違いないといえるだろう。

機能不全に陥っている国王
タイは立権君主制国家だが他国と異なるのは君主としての国王の存在とその機能だ。正確には「存在だった」であり、2016年に逝去したプミポン国王は流血事態やクーデターの仲裁に動くなど「タイ最後の良心の砦」としての機能を果たして国民の絶大な信任を得てきた。

しかし後継のワチラロンコン国王は国外在住が長く、タイ政治への関心も薄いとされており国民の人望も信任も前国王に比べると希薄なのが現状という。

それだけに今後政治を巡って大きな混乱が生じても国王による介入、英断というタイ特有の「政治的解決」は期待できそうになく、混乱が拡大して2020年のようにバンコク市内などで反プラユットを掲げた学生や若者などによる集会やデモ、さらに「王室改革」を唱えるデモなどが頻発して治安が不安定になることも十分予想されている。【8月30日 大塚智彦氏 Newsweek】
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タクシン元首相の政治は金権政治・バラマキ政治的側面もありますが、一方で、国王を頂点とした枢密院・軍部・司法などの既得権益層による政治を打破し、農民・貧困層をターゲットにした政治を生み出した側面もあります。

これまでタイでは司法判断によってタクシン系政権が崩壊を余儀なくされたり、タクシン系政党が解党を命じられたりする反タクシン・既得権益層を背景とした“司法クーデター”的なことがしばしば行われてきましたので、憲法裁が一時的にせよ「首相職の一時停止命令」を出したことは、個人的には非常に意外でした。

ただ、今後1〜2カ月かけて審理を行った後に出される判断はどうでしょうか・・・あまり期待はできないように思えます。

“タイの憲法裁は軍政の流れをくむ現政権の影響下にあるため、プラユット氏の続投を認めるとの見方もある。”【9月6日 NNA ASIA】

****憲法起草委トップが見解 首相の任期は2025年まで****
関係筋によれば、現行の2017年憲法の起草委員会のミーチャイ委員長(当時)は、プラユット首相の首相としての任期は現行憲法が制定された2017年4月に始まると考えているという。同氏の見解に従えば、プラユット首相の8年の任期は2025年4月に満了となる計算だ。

プラユット首相の任期満了については論争が起きており、野党陣営が憲法裁判所に判断を求めている。これに伴い憲法裁は法律を専門とする有識者に見解を求めたのであるが、このうちのひとつが今回内容が明らかになったミーチャイ氏のものだった。【9月7日 バンコク週報】
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軍政の意向を受けた憲法起草委トップですから当然の見解でしょう。
一方、これまた当然ながら、野党・タイ貢献党は首相辞任を求めています。

****タイ首相の任期満了、道譲るべき 野党幹部、タクシン元首相次女****
タイのタクシン元首相の次女ペートンタン・シナワット氏(36)は、任期を巡って首相職務を一時停止されているプラユット氏について「任期は満了していると考えるのが妥当で、ほかの指導者に道を譲るべきだ」との考えを示した。10日までに共同通信の単独インタビューに語った。

ペートンタン氏は最大野党タイ貢献党の幹部を務め、世論調査で次期首相に望ましい人物として、プラユット氏に大差をつけてトップ。

「新型コロナウイルスの影響で国は厳しい状況に直面しており、国民はより優れた指導者を求めている」と述べ、プラユット氏に代わる新たな首相の選出が必要だと強調した。【9月10日 共同】
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【政界参入後の日もまだ浅いタクシン氏次女ペートンタン氏、首相を狙うポジションに】
今回、見込みが薄そうな司法判断のこの話題を取り上げたのは、上記“タクシン元首相の次女ペートンタン・シナワット氏”がその理由。

タクシン元首相の妹インラック氏が兄タクシン氏の代理的立場で首相就任後、海外生活を余儀なくされていることは周知のところですが、タクシン氏の娘が野党・タイ貢献党の幹部として首相を狙うポジションにいることは初めて知りました。

****3人目の首相狙うタクシン一族…今度は36歳の末娘が挑戦(1)****
チナワット--。この姓を使えばタイ政界では天下無敵になる。次期総選挙関連のアンケート調査で政治入門9カ月目のペートンタン・チナワット氏(36)が有力首相候補の1位を占めてダークホースに浮上した。

◆「タクシン」ブランド効果…末娘もタイ首相候補
先月27日(現地時間)、日刊紙「バンコクポスト」など現地メディアによると、ペートンタン氏は世論調査機関「NIDA」の次期首相関連アンケート調査で25.28%の支持を得て1位に入った。18歳以上の有権者2500人を対象に先月20~23日まで実施した電話調査でだ。

昨年10月、タイ第一野党「タイ貢献党」総会で登場したペートンタン氏は政界入門と同時に党の首席顧問に任命された。過去9カ月間にわたり熱烈に総選挙運動を展開していたところ、タイ首相有力候補に浮上した。

政治新人がこのように注目を浴びているのはペートンタン氏がチナワット一族に属しているためだ。正確にはタイ現代政治の最高「イシューメーカー」タクシン・チナワット元首相(73)の末娘だ。

シンガポールの日刊紙ザ・ストレーツ・タイムズ(ST)はイスラ・スントンブット元国会議員を引用して「『タクシン・チナワット』という名前には魔法がある」としながら「タイ政界でタクシンの影響力は健在だ」と伝えた。

釜山外大タイ語科のイ・ミジ教授は「タイ政治史はタクシン登場以前と以後に分けることができるほど、タクシンは絶対的な人物」と表現した。

タイ北部チェンマイ出身のタクシン氏は1980年代中盤に移動通信事業で大成功をおさめて億万長者になった。1998年タイ愛国党を創党後、庶民のための経済および福祉政策で、疎外されていた農村地域有権者を積極的に取り込み、2001年総選挙で勝利を収めて首相になった。

その後、30バーツ(約113円)ほど出せば医療保険の恩恵を受けられるようにして、農家の負債を大幅に減少して庶民から全面的な支持を受けた。反面、都市富裕層と超党派からは牽制(けんせい)を受けた。

結局2006年軍部クーデターで失脚し、2007年タイ愛国党は解散した。タクシン氏は2008年実刑が予想される権力乱用関連裁判を控えて海外へ逃避した。

それでもタクシン氏を支持する「赤いシャツ」の波は絶えなかった。タクシン氏を擁護する反政府デモが起き、タクシン政党を継承したタイ貢献党も力を得た。

タクシン氏は2011年、自身の後任者に妹のインラック・チナワット氏(55)を指名した。インラック氏はタクシン氏の後光を背に政治入門2カ月後にタイ初の女性首相になった。しかし3年後、兄と同じように軍部クーデターで退いた。インラック氏も2017年不正腐敗放置容疑で裁判を受けている間に海外へ逃避した。

◆赦免狙うタクシン氏、妹の代わりに娘が成し遂げるか
このような不運な歴史の後、チナワット一族は政界入門を敬遠した。その間にペートンタン氏がすい星のように現れた。首相任命の最低年齢である35歳になると同時だった。

政界入門後、ペートンタン氏がタイ貢献党から任された役割は党員数を増やして来年初めに予想される総選挙で大勝を助けるということだった。

これに先立ち、インラック氏は遊説行事で露骨に「兄が好きなら妹である私にも機会を」と訴えた。ペートンタン氏の戦略は少し違う。首相への挑戦に対しては即答を避け、ソーシャルメディア(SNS)にドバイに逃避中の父親の写真を上げてタクシン支持者の郷愁を刺激している。(中略)

バンコクポストやSTなどのメディアによると、ペートンタン氏が突然政治を始めたのは、タクシン氏が赦免を望んでいるためだという分析が支配的だ。

タクシン氏は昨年SNSを通じて「正門に戻る」と宣言した。だがこれまでも赦免試みがなかったわけではない。インラック首相就任後の2013年、タクシン赦免が推進されて大規模な反政府デモが起き、これが軍部クーデターにつながった。

このような教訓のためなのか、ペートンタン氏はまだ首相欲を表に出さずに節制した遊説を続けている。こうした中でペートンタン氏が次期首相世論調査で1位に入ると、タイ政治分析家は「家族のために仕事をする腐敗した人々ばかりのタイ政治王朝の典型的な姿」としながら批判を相次いでいる。【7月4日 中央日報】
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「『タクシン・チナワット』という名前には魔法がある」・・・とは言え、現実政治において軍部の抑圧をはねのけて首相の座をつかむのは至難の業でもあります。そこには高いハードルがあります。

****3人目の首相狙うタクシン一族…今度は36歳の末娘が挑戦(2)****
◆「金の箸とスプーン」ペートンタン氏、ブランド品など華やかな生活公開にも賛辞
タクシン氏の3人の子女(1男2女)の末っ子であるペートンタン氏は何不自由なく育った「金の箸とスプーン」だ。

1986年に米国で生まれ、タイ最高名門であるチュラーロンコーン大学政治学科を出卒業し、英国サリー大学でホテル経営修士号を取得した。その後、家族所有の不動産・ホテル関連事業に従事していた。そのうちの一つ、不動産開発企業SCアセットの最大株主で持株価値が40億バーツ(約151億円)に達する。

2019年、民航社パイロットと結婚して2021年に娘を産んだ。ペートンタン氏のSNSにはシャネルやルイ・ヴィトンなど華やかなブランド品を着用した写真が並んでいる。高価格なホテルで食事をし、スイスにスキー旅行に行ってきた写真を載せている。それでも反感よりも賛辞のほうが多い。特に若い世代に支持を得ている。

ペートンタン氏のインスタグラムのフォロワーは50万人に達する。イ・ミジ教授は「タクシンに対してさまざまな評価が存在するが、タクシンが初めて庶民のための政策を展開して得た大衆的な支持が今も健在だ」と伝えた。

反タクシン派の動きも無視できない。昨年10月ペートンタン氏が政界に登場すると同時に大学入試不正が提起された。(中略)

いくらタクシン氏の影響力が絶大だと言っても、ペートンタン氏が近づく総選挙で首相選出まで可能なほどの大勝を収めることができるかどうかは未知数だ。

タイで首相になるためには所属政党ないし連合勢力が上・下院750議席のうち過半数である376議席以上を占めなければならない。問題はタイ軍部政権が2017年に改憲を通じて政府が選任した上院議員250人も首相選出に参加するようにした点だ。

ペートンタン氏が連合政府なしで首相になるためにはタイ貢献党が下院500議席だけで75%に達する376議席を獲得しなければならないということだ。タイ貢献党は2019年の総選挙で136議席を獲得している。【7月4日 中央日報】
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タイ一般市民の暮らしは「金の箸とスプーン」とは無縁です。逆に“だからこそ”のブランド効果・ペートンタン氏待望論でしょうか。

****タイ政府、インスタント麺の値上げ承認 14年ぶり****
タイ商務省は24日、国民生活に欠かせない重要な食品であるインスタント麺の値上げを認めると発表した。値上げは14年ぶりとなる。

タイ経済は外国人観光客の受け入れが再開されたものの回復せず、14年間で最大のインフレと、ロシアによるウクライナ侵攻の余波にも見舞われている。

インスタント麺の価格は政府により1袋6バーツ(約23円)が上限に設定されてきたが、主要製造メーカーはコスト上昇を理由に8バーツ(約30円)への引き上げを求めていた。

商務省はAFPに対し、通常サイズの1袋の価格の上限を7バーツ(約27円)に引き上げることを確認した。25日から実施する。(後略)【8月24日 AFP】
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****カードローンなど家計債務がGDPの9割に──タイの構造的問題とは?****
<2010年頃から輸出ブームで貿易黒字は拡大したが、労働者は消費者金融頼みに。パンデミック、そしてインフレの今、タイ政府に打てる手はあるのか?>

タイの家計債務が記録的な水準に膨らんでいる。タイ銀行によれば、昨年第4四半期の家計債務はGDPの9割に達したという。

輸出主体のタイ経済がコロナ禍で大打撃を受けたことが一因だが、それだけではない。家計債務比率の高さはパンデミック以前から続く傾向で、そこには構造的な課題が透けて見える。

タイの債務比率が急速に高まったのは2010年代前半のこと。当時はタイの通貨バーツ安と輸出ブームのおかげで貿易黒字が大幅に拡大していたが、その恩恵が労働者の賃金に反映されたのは当初の数年のみで、その後は伸び悩んだままパンデミックに突入した。

これでは、多くの家庭が消費者金融などに頼り、負債が拡大するのも無理はない。
電気料金などの大幅値上げも家計を圧迫するが、政府は財政出動に消極的だ。急激なインフレと金融引き締め政策が世界的に進行するなか、タイ政府に打てる手はますます限られてきている。【8月23日 Newsweek】
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選挙となれば、こうした市民の経済的苦境はタクシン系野党に有利に働くでしょう。問題はそれを軍部・政権が許すかどうかです。政治弾圧の理由はどうにでも作り出せます。

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EU ロシア産石油価格上限設定に続きガスも検討 EUvs.ロシア「エネルギー大戦」の懸念も

2022-09-09 23:17:43 | 資源・エネルギー
【WTI原油先物チャート|チャート広場 (chartpark.com) 】

【下落への需要減少圧力がかかる原油価格動向】
9月1日からトルコ観光に出かけ、今日帰宅。
この間の情報入手が限られていたので、いささか浦島太郎の感も。

旅行中に円は1ドル=145円付近まで一気に円安が加速し、その後は若干戻して142円付近に。(ささいな個人的問題ですが、旅行する者には円安はこたえます)

一方、原油価格は8月6日ブログ「“意外”にも、ロシア軍のウクライナ侵攻以前の水準に戻っている原油・穀物価格」でも取り上げたように、すでに下落傾向にありましたが、その後も弱含み基調で、旅行中には米WTI先物で1バレル=81ドル台をつけたようです。ただ、その後戻して今現在の足元は85~86ドル付近。

基本的には世界経済の原則による需要減少が基調になっているようです。

****原油価格の下落を心配し始めたOPECプラス****
米WTI原油先物価格は9月7日、1バレル=81ドル台に急落し、8カ月ぶりの安値となった。供給面の不安がくすぶっているものの、各国の中央銀行による強力な金融引き締めや中国のロックダウンなどが需要懸念を高め、相場の押し下げ要因となっている。原油価格は過去3カ月で20%下落している。

OPECプラスが「日量10万バレルの減産」決定
このような状況下でOPECとロシアなどの大産油国が構成するOPECプラスは、9月5日に閣僚級会議を開催した。サウジアラビアのアブドラアジズ・エネルギー相が8月下旬に1年以上ぶりの減産を示唆していたことから、市場の関心を集めていた。

OPECプラスの決定は「10月から生産目標を日量10万バレル減らす」というものだった。原油価格の引き下げを求めるバイデン大統領の求めに応じて9月から増産した分(日量10万バレル)を帳消しにした形だ。

米国では11月の中間選挙に向けて、インフレ対策が争点の1つとなっている。米国のガソリン価格は6月中旬に史上最高値を記録した(1ガロン=5ドル超え)が、直近ではロシアのウクライナ侵攻前の水準に戻りつつある。そのせいだろうか、米国政府はOPECプラスの決定に不満の意を示すことはなかった。

「日量10万バレルの減産」は象徴的な意味合いが強いが、注目すべきはOPECプラスが「生産を調整するために次回10月5日の会合までにいつでも会合を開催することができる」ことに合意したことだ。市場関係者は「OPECプラスが価格注視の姿勢に戻ったシグナルだ」と受け止めている。

原油需要鈍化で供給過剰が続くか
前述のサウジアラビアのエネルギー相は、減産の理由について「核合意再建に伴うイラン産原油の禁輸制裁の解除」を挙げていた。制裁が解除されれば、イランは日量100万バレル以上の増産が可能だと言われている。

だが、サウジアラビアの本当の懸念は、原油市場で先物と現物の価格差が広がっていることにあるようだ。

先物市場ではウクライナ危機で相場が急変し、追加証拠金の支払いや巨額の損失を被った業者の撤退が相次いだことから、流動性が低下し、価格の乱高下が日常化している。世界景気の減退や米利上げに対する警戒感から7月中旬以降、先物価格はヘッジファンドなどの投機筋が主導する形で下落している。

サウジアラビアをはじめとする産油国は「現物の需要が引き続き堅調である」と見ているが、9月に入り米国ではドライブシーズンが終了する。中国でも新型コロナの感染が再拡大し、一部の都市で都市封鎖(ロックダウン)が実施されるなど経済活動が抑制されつつある。インフレ抑制のための積極的な金融引き締めは今後原油需要を鈍化させることは確実な情勢だ。(中略)

サウジアラビアのエネルギー相の脳裏には2014年後半から2015年にかけての原油価格の暴落の記憶がよぎっているのかもしれない。米国の利上げとシェールオイル増産による供給過剰が重なり、原油価格は1バレル=90ドル台から40ドル台に急落したことは記憶に新しい。

いずれにせよ、サウジアラビアをはじめとする産油国が「原油価格の下落」を危惧しだしたことは間違いないだろう。(後略)【9月9日 藤 和彦氏 JBpress】
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【G7はロシア産原油および石油製品の価格に上限設定 ロシア「ガスも石油も石炭も供給しない」】
こうしたなかで、今後の原油価格動向に影響しそうなのが、主要7カ国(G7)がロシアに対する追加制裁としてロシア産原油および石油製品の価格に上限を設定する措置を導入する方針で合意したことです。

原油価格の高騰を回避しつつ、ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む(うまくいけば)「一石二鳥」の戦略です。

****G7財務相、ロシア産石油価格の上限設定で合意****
主要7カ国(G7)の財務相は2日開催したオンライン会合で、ロシア産石油および石油製品の価格に上限を設定する措置を導入する方針で合意した。原油価格の高騰を回避しつつ、ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む。

しかし、バレル当たりの価格上限については「技術的インプットの範囲に基づき」今後詰めるとし、重要な詳細は盛り込まれていない。

G7財務相は声明で「ロシア産原油および石油製品の海上輸送を可能にするサービスの包括的な禁止を決定し、実施するという共同の政治的意図を確認する」と表明した。

価格上限を超えるロシア産石油や石油製品の海上輸送への保険・金融サービスなどの提供は禁止される。

声明はまた、「欧州連合(EU)の第6次対ロシア制裁に含まれる関連措置のスケジュールに合わせて実施することを目指す」としている。EUは12月からロシア産石油の禁輸を施行する。

米国財務省の高官によると、ロシア産原油については特定のドルの価格上限を設け、石油製品については別の2種類の上限を設ける見通し。価格は必要に応じて見直すという。

議長国ドイツのリントナー財務相は会見で、ロシアの石油価格に上限を設けることで、ロシアの歳入が減少するとともに、インフレが抑制されるとし、「われわれはロシアの収入を制限したい。それと同時にわれわれの経済への打撃を軽減したい」と語った。

さらに、G7は上限設定でコンセンサス形成を目指しており、EUの全加盟国が参加することを望んでいるとした。
イエレン米財務長官も声明で「世界のエネルギー価格に下押し圧力をかける、ウクライナでの残忍な戦争の財源となるプーチン大統領の収入を断つという2つの目標」達成に役立つという認識を示した。

ロシア大統領府のペスコフ報道官はG7の声明を受け、世界の石油市場を不安定化させる措置という見方を示し、上限価格を設定する国国への石油販売を停止すると述べた。

G7の高官は、ロシア産石油価格の上限設定を巡り、他国からも参加に向け「前向きなシグナルを受け取っているが、確固としたコミットメントには至っていない」と述べた。同時に「われわれはロシアや中国などに対する結束のシグナルを送りたかった」と述べた。

ウクライナのゼレンスキー大統領のウステンコ上級経済顧問は、ロシアの収入を減らすためにまさに必要な措置」とし、G7財務相会合での決定を歓迎。価格上限が40━60ドルのレンジになるという見通しを示した。
ゼレンスキー大統領はビデオ演説で、ロシアの天然ガス輸出にも上限を設けるべきと訴えた。【9月2日 ロイター】
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当然ながらロシアは。「上限を設定した場合、ガスも石油も石炭も供給しない」と強く反発しています。

****プーチン大統領、対ロシア制裁のG7威嚇「ガスも石油も石炭も供給しない」****
穀物輸出先制限も示唆
ロシアのプーチン大統領は7日、先進7か国(G7)が対露制裁として、露産石油の取引価格に上限を設定した場合、「我々の利益に反するなら、ガスも石油も石炭も供給しない」と反発した。

輸出が再開されたウクライナ産穀物は「ほとんどが貧しい途上国ではなく、欧州連合(EU)諸国に運ばれている」とし、仲介したトルコのタイップ・エルドアン大統領と輸送先の制限を協議する考えを示した。

極東ウラジオストクで開催中の国際会議「東方経済フォーラム」の全体会合で述べた。米欧に対し、「新型コロナウイルスに代わる制裁熱で、他国を自分たちに服従させようとしている」とも批判した。ウクライナ侵略に関しては、「我々は何も失っていないし、何も失わない」と強調した。

プーチン政権は米欧の制裁を受ける中、今回の会議を通じ、中国やインドなどアジア諸国と関係を強化する思惑がある。

タス通信によると、全体会合に出席した中国共産党序列3位の栗戦書リージャンシュー・全国人民代表大会常務委員長は、「米国とその衛星国の厳しい制裁により、ロシア経済が押しつぶされなかったのは喜ばしい」と述べた。

インドのナレンドラ・モディ首相もビデオメッセージを送り、北極圏開発やエネルギー分野など「多くの問題」で、ロシアとの連携を推進する意思を表明した。

全体会合には、米国と対立するミャンマーの国軍トップのミン・アウン・フライン最高司令官も出席した。マレーシアとベトナムの首脳もビデオメッセージを寄せた。

過去のフォーラムでは日本との関係も重視してきたが、プーチン氏が日本に触れることはなかった。【9月8日 読売】
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ロシア産石油および石油製品の価格に上限を設定する措置がうまく機能するかどうかは不透明な点も。

****ロシア産石油の価格上限設定は機能するか****
(中略)
枠組みの機能を阻む3つの懸念
今回の価格上限措置によって、ロシアの石油・石油製品の輸出収入が減少する一方、石油価格下落で世界のインフレ問題が緩和されるかどうかはかなり不明である。逆に事態が一層悪化してしまうリスクもあるだろう。

第1に、上限価格を低く設定し、それが石油・石油製品の生産コストを下回るようであれば、ロシアは石油・石油製品の生産を停止してしまう可能性がある。そうなれば、世界の石油市況は一段と上昇し、先進国及び世界の経済・物価に大きな打撃となってしまうだろう。

第2に、中国、インドなどロシア産石油・石油製品を輸入する国は、この価格上限の枠組みに参加しない可能性がある。そうなれば、この枠組みはほぼ機能しないだろう。ロシア政府は、価格上限の枠組みを受け入れる国には、ロシア産石油・石油製品の輸出を停止すると脅している。

今回の枠組みは、先進国側につくのか、ロシア側につくのか、新興国に判断を迫るもの、いわゆる踏み絵となっているのである。これをきっかけに、世界の分断が一層加速する危うさもあるだろう。

第3に、産地の偽装によって、ロシア産石油・石油製品への上限価格設定が十分に機能しない可能性がある。先進国からの石油輸入禁止・制限措置を受けて、ロシアはアジア諸国だけでなく、中東諸国への輸出も増加させている。

ロシア産重油は、今やその多くがエジプト経由でサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に輸出されている。UAEのフジャイラ港では、ロシア産やイラン産の原油が混合され、原産地が偽造される一大拠点となっているとされる。

世界経済悪化で先進国、ロシアは痛み分けか
こうした点を踏まえれば、上限価格設定が、ロシアの石油・石油製品の輸出収入を大幅に制限するとともに、石油価格の下落を通じて世界のインフレ問題沈静化につながる決定打となることはないのではないか。

他方、大幅な金融引き締めの影響などで世界経済は今後減速に向かい、世界の石油需要は縮小する可能性が見込まれる。そうなれば、需給バランスが悪化して、石油価格も明確に下落するだろう。

そうなれば、石油の輸出数量減少と価格低下の双方の影響が、ロシア経済とロシアの財政に大きな打撃を与えることが視野に入ってくるのである。

制裁措置だけではロシアに致命的な打撃を与えることができなかった先進諸国は、結局、自国経済の悪化という大きな犠牲を払うことで、ロシアに大きな打撃を与えることに成功するだろう。結局は、両者が痛み分けとなるのである。【9月5日 木内 登英氏 NRI】
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なお、上限価格設定合意では、日本のサハリン2事業を通じたロシア産石油輸入は対象外になるとか。

****日本のサハリン2事業を通じたロシア産石油輸入が対象外となることの問題****
(中略)そもそも、G7で価格上限措置が表明されてから今回正式合意されるまでかなりの時間を要しており、議論が紛糾した可能性がうかがえる。ロシアとの関係悪化を懸念する中国、インドが賛同を示していないこともその理由の一つだろう。

さらに、日本がサハリン2事業を失うことを警戒したこともその一因かもしれない。今回のG7会合は、日本企業が新会社の下でサハリン2事業を継続することをロシア政府が認めた直後に開かれた。原油価格上限設定の報復として、ロシア政府が日本企業によるサハリン2事業の継続を認めない決定を下すことを日本政府が警戒していたからかもしれない。

また、日本がサハリン2事業を通じてロシアから輸入する石油については、今回の原油価格上限設定の対象外となる方向だ。

日本のサハリン2事業は天然ガスが中心であり、石油の比率は低いが、原油価格上限設定の報復として、ロシア政府が日本企業に今後厳しい条件を提示することで、事実上サハリン2事業の継続が難しくなれば、日本の天然ガス輸入の約9%を占めるロシア産天然ガスの輸入が停止してしまう事態となる。日本はこれを恐れたのではないか。

ただし、日本のロシア産石油輸入だけが価格上限措置が適用されない例外となれば、それは対ロ制裁での先進国の結束という観点から大きな問題を残すことになるだろう。またロシアは、今後も日本のサハリン2事業の継続を、先進国の結束を乱す手段として利用する余地が残る。【同上】
*******************

原油価格の動向には、国内政治の混乱や衝突が報じられている産油国イラクやリビアの動向も影響します。

【価格上限 ガスでも検討 ロシアとのエネルギー全面戦争か】
需要が今後縮小する可能性が見込まれる石油もさることながら、ロシア依存ということでも、市民生活を直撃するということでも、この冬に向けて価格高騰が強く懸念されているガスの方が問題かも。

****英、電気・ガス料金の上限8割引き上げへ 燃料の貧困懸念****
英ガス電力市場監督局は26日、電気・ガス料金の上限を10月から80%引き上げると発表した。同国では冬を前に、生活費が高騰している。

Ofgemは、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、天然ガスの卸売価格が高騰していることを理由に挙げた。
上限は固定料金契約を結んでいない顧客に適応されるもの。標準的な家庭の使用量の場合、年間の価格上限は現行の1971ポンド(約32万円)から3549ポンド(約57万円)となる。

複数の慈善団体は発表を受け、市民は近年で「最も厳しいクリスマス」を迎えることになると非難した。
貧困問題の専門家は、上限価格が2倍近くになることで、数百万人が暖房か食事のどちらかを犠牲にせざるを得ない燃料の貧困状態に陥る恐れがあると指摘する。

英国のインフレ率は1982年以来の最悪の水準となっており、年内にも景気後退入りすると予測されている。 【8月26日 AFP】
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欧州各国は似たような状況ですが、EUでは、石油だけでなく天然ガスについても価格上限が見当されています。

****EU、ロシア産石油に続き天然ガス価格に上限設定を検討****
欧州連合(EU)が、ロシア産の石油に続き天然ガスにも価格の上限を設けることを検討すると明らかにした。EUのロシア原油価格の上限設定の方針を受け、ロシアのプーチン大統領が「参加国にはエネルギーを輸出しない」と圧力をかけたことに対応する性格が強い。EUとロシアの「エネルギー全面戦争」の機運が高まっている。

●EUvsロシア「エネルギー大戦」
EU行政トップのフォンデアライエン欧州委員長は7日、ベルギー・ブリュッセルで開かれた記者会見で、「ロシアのプーチン大統領によるウクライナでの非道な戦争の資金源を断たなければならない」とし、「9日のエネルギー相会議で、ロシアから輸入する天然ガスの価格の上限を設けることを提案する」と明らかにした。

価格上限制は、ロシア産エネルギーを一定価格以下で購入しなければ海上輸送を許可しないとする制度で、事実上ロシアのエネルギー輸出を統制し、ロシアの収益を制限するという構想だ。

フォンデアライエン氏が天然ガスの上限価格の設定を提案したのは、プーチン氏が同日、ロシア・ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで、「石油の上限価格の設定に参加する国には、石油や天然ガスを輸出しない」と明らかにしたことへの対応とみられている。EUが、ロシアにエネルギー主導権を奪われないという考えを明らかにしたのだ。事実上、ロシアにエネルギー全面戦争を宣言したも同然という見方もある。(中略)

●「ロシア天然ガスの威力が弱まった」
EUがエネルギー対決に乗り出した背景には、ロシアのエネルギー武器化に対する備えをある程度終えたという自信が作用したとみられている。米紙ニューヨーク・タイムズは同日、「ドイツをはじめEU国家の指導者の間で、これまでのエネルギー備蓄と代替エネルギー確保の努力によりエネルギー武器化の威力を一定部分減少させることができるという自信が生まれている」と指摘した。

ロシアの天然ガスの輸入の割合が高いEU諸国は、ロシアのエネルギー依存度を減らすための努力を続けてきた。昨年、ロシアの天然ガスに全エネルギー消費の49%を依存していたドイツは、天然ガスの輸入先を多様化し、公共機関の屋内温度や夜間照明の使用を制限する省エネ措置を施行した。この結果、先月ロシアの天然ガス依存度が10%以下に下がった。

フランスは今冬に使用する天然ガスの92%を備蓄している。イタリアも、ロシアのエネルギー依存度を40%から23%まで下げることに成功した。フォンデアライエン氏は、「ウクライナ戦争初期、40%だったEUのパイプラインによるロシアの天然ガスの輸入の割合が9%までにまで減少した」とし、「これまでの努力が成果を出している」と話した。

同紙は、「ロシア産エネルギーからの独立がどれほど成功しているかは依然として疑問」とし、「ロシア政府関係者は、エネルギー危機による経済的苦痛で、EUの決意は最後には崩れると見ている」と伝えた。【9月9日 東亜日報】
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トルコ観光 アジアとヨーロッパにまたがる世界唯一の都市、イスタンブール

2022-09-08 22:41:57 | 身辺雑記・その他
1日からのトルコ観光を終えて、先ほど(8日夜)帰国。
コロナ水際対策が丁度変更になって、帰国直前のPCR検査は不要に。

羽田国際線の対応ぶりは、大量にチェック要員を動員しての人海戦術。

私の場合は、今夜は東京に宿泊して、明日早朝のフライトで自宅に。
空港で検査して問題なければ、一応今回旅行も終了に。

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イスタンブールで泊まったインタコンチネンタルホテルからも近い、新市街地中心にあるタクシム広場は街歩きの基点になる場所です。



広場の中央には共和国記念碑があります。地下鉄やトラム、バス乗り場などが集まっており観光へのアクセスが便利な場所。


広場から新市街のメインストリートであるイスティクラール通りが伸びており観光客も多く訪れる広場です。



↑ ↓ スイーツのお店が多かったよう。



朝早い時間なので、ケバブも"太って"います。
これから焼けた表面を削り取られ、次第に痩せ細っていきます。


↓ 昼食をとった旧市街エジプシャンバザールそばのレストランからの眺め。

金角湾をはさんで対岸は新市街。中央の塔はガラタ塔。 橋はガラタ橋。
両岸ともにヨーロッパ側



↓ 7日午後訪れた最後の観光スポット、トプカプ宮殿からアジア側の眺め



言うまでもなくイスタンブールはアジアとヨーロッパにまたがる世界唯一の都市です。さらに旧市街、新市街とその表情は多彩。
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トルコ観光  コンスタンチノープル攻防戦 アヤソフィアの変遷

2022-09-08 04:20:56 | 身辺雑記・その他
1日から8日までトルコを観光しています。
9月6日はイスタンブールに戻り、ボスポラス海峡のクルーズと、市内観光の前半。

イスタンブールはかつてコンスタンチノープルと呼ばれる東ローマ帝国の首都で、20回以上に及ぶ外敵の攻撃に対し、1204年の第四次十字軍による攻撃以外は鉄壁の城壁でこれを撃退してきましたが、1453年にオスマントルコのメフメト2世の攻撃によって遂に陥落し、東ローマ帝国は消滅しました。

この攻防戦で、守備側はガラタ塔付近の金角湾入り口を鉄鎖で海峡封鎖し、オスマン艦隊の金角湾侵入を阻止しましたが、これに対し、オスマントルコ軍は艦船を車輪付き台車に乗せて陸に引上げ、山越えして湾に収入させる奇策をとったとされます。

歴史上最も有名な攻防戦のひとつです。


【マルシアクラッチ: コンスタンチノープルの陥落 13 (calforniwa.blogspot.com) 】

↓ 画像左手前がガラタ橋  守備側はこの付近を鉄鎖で海上封鎖したのでしょう。
一方、メフメト2世は、画像右奥のガラタ塔の奥を「オスマン艦隊の山越え」させました。




*****アヤソフィア****
トルコ共和国のイスタンブールにあるモスク。2020年7月までは博物館であった。

元々は東ローマ帝国(ビザンツ帝国、ビザンティン帝国)時代に首都コンスタンティノープルで建てられたキリスト教正教会の大聖堂を起源とし、帝国第一の格式を誇る教会、コンスタンティノープル総主教座の所在地であったが、1204年から1261年まではラテン帝国支配下においてローマ・カトリックの教徒大聖堂とされていた。

その後はオスマン帝国によるコンスタンティノープルの陥落が起きた1453年5月29日から1931年までの長期間にわたりイスラム教モスクとして改築を繰り返し使用されて現在の特徴的な姿となった。

トルコ共和国政府は1935年2月1日、世俗的な博物館とし、それが2020年7月まで続いた。【ウィキペディア】
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上記のように宗教的変遷を経験してきた壮麗なアヤソフィアですが、2020年にエルドアン大統領が再びモスクとして利用することを決定。

入り口付近のキリスト教関連装飾は、礼拝時には白いカーテンで覆われるとか。

また中央祭壇上部の装飾もカーテンで覆われています。



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トルコ観光 エフェス遺跡

2022-09-07 02:22:37 | 身辺雑記・その他
棚田状石灰岩地形のパムッカレの後訪れたのがエフェス(エフェソス)遺跡

****エフェス(エフェソス)*****
トルコ西部の小アジアの古代都市

エフェソスはヘレニズム都市として栄えたが、紀元前2世紀に共和政ローマの支配下に入り、小アジアの西半分を占めるアシア属州の首府とされた。

巨大な図書館と劇場を備えていた。劇場は当時最大のもので、5万人が収容された。エフェソスの繁栄は港湾によるところが大きかった

東ローマ帝国の下でも、エフェソスは引き続きアシア属州の首都として繁栄した。【ウィキペディアより】
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↓ その繁栄ぶりがクレオパトラに妬まれて放火されたとも言われる巨大図書館 エジプトにパピルスの使用を禁じられ、羊皮紙を使用


↓ 巨大円形劇場


↓ 港湾に通じる通りから円形劇場を望む

 

エフェス遺跡は、この地域が世界の古代史において中心的存在であったことやその文化水準の高さを偲ばせる遺跡です。

この日(9月5日)はイスタンブールまで移動
↓ ガラタ橋からの夜景


翌日、翌々日はイスタンブール観光です。
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トルコ観光 パムッカレ

2022-09-06 06:39:26 | 身辺雑記・その他
9月1日から8日までトルコ観光中。
5日に訪れたのはパムッカレ

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ヒエラポリス-パムッカレはトルコ西部・デニズリ県にあるユネスコの世界遺産(複合遺産)の登録名。パムッカレは石灰華段丘からなる丘陵地の名前であり、2世紀頃、ヒエラポリスというローマ帝国の都市が存在した。現在は遺跡が残る。【ウィキペディア】
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“ヒエラポリス”(聖なる都市)は温泉を利用した一種の療養都市で、人口は3万人ほどだったとされています。
人口推計は、劇場の収容人数の約10倍という算出方法とか。

遺跡は地震と崩れやすい岩質のため、現在はさほど大きなものは残っていません。
遺跡を見るなら近くのエフェソス遺跡がよいでしょう。

****パムッカレ****
パムッカレとは、トルコ語で「綿の宮殿」という意味。綿とあるのは昔からこのあたりが良質の綿花の一大生産地であることによる。

二酸化炭素を含む弱酸性の雨水が台地を作っている石灰岩中に浸透し、炭酸カルシウムを溶かした地下水となる。その地下水が地熱で温められて地表に湧き出て温泉となり、その温水中から炭酸カルシウム(石灰)が沈殿して、純白の棚田のような景観を作り出したものである。

棚田の畦の部分は、流れてきた植物片などがひっかかり、これに石灰分が沈着して次第に堤のように成長する。これは温水が畦を越流する時に石灰分の沈積が化学的に加速するためでもある。

このような景観が約200mの高さにわたって形成されている。【ウィキペディア】
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下は現地の看板。

最高の条件でプロが撮影したものですが、基本的に以前と異なり、現在は温水が棚田を流れ落ちる・・・・という状態ではなくなっているようです。

そのため、現実の風景は・・・・



パムッカレ観光の後は前出のエフェソス遺跡に向かいます。

なお、売店で売られていたカップヌードルは1個60リラ 約500円。
街中であれば35~40リラほどか。約280円~320円
やはり日本の物価は外国に比べ格安になりつつあるようです。

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トルコ観光二日目はカッパドキアの気球観光 経済効果は大きそう

2022-09-05 03:02:44 | 身辺雑記・その他
トルコ観光二日目(9月3日)

奇岩ニョキニョキの景観で世界遺産にも登録されているカッパドキアで気球観光 ただし、4時前に起床 ちょっとつらい。

ざっと見た感じでは周囲に飛んでいる気球は80~100個 別場所でもやっているのかも。

私たちの気球は乗客14名でしたが、最大24名乗れるみたいです。時間は小1時間。


気球は飛行機と同じような扱いで、ターキッシュエアラインの管理下にあります。

気球を操縦するパイロットは、ターキッシュエアラインの訓練学校で学び、その後50時間の見習い乗務が必要とか。

その日の気球フライト催行の可否判断もターキッシュエアラインが毎日行っているとのことで、安全性は厳しくチェックされているとか。

気球自体も150時間(つまり150回)使用したら、新しいものに交換する規則
また、定期点検も半年ごとにあるようです。


操縦は2名ほどでやっていますが、着地地点への車の配備、車がけん引する台車への気球の誘導・固定、着地した気球の整理・片づけ(数名~十名が気球を引っ張って横倒しにするなど)など、運用には相当の人員が必要になります。

ということは、それだけの雇用を生んでいるということでもあります。


ただ、着地後に参加者にシャンパンがグラスでふるまわれるセレモニーが行われますが、参加者は飲み干したグラスにチップのお札を入れるのが習わしになっているようです。

参加者がそのような形でチップを差し出すと、運用側関係者から一斉に拍手が。

まるでホストクラブで「はい、ドンペリ入りました!」みたいな雰囲気で、私は興ざめ。(ほとんどの日本人参加者は嬉々としてやっていましたが)
支払う側は少額ではすまないような雰囲気も。

こういうチップを強要するような習慣は、あまり好きではありません。
もともとチップの習慣がなかった国でも、欧米系観光客が持ち込むチップ習慣が広がっているようにも。

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トルコを旅行中 カッパドキアの地下都市や洞窟住宅

2022-09-03 23:50:29 | 身辺雑記・その他
9月1日から8日まで、トルコ観光旅行中です。
コロナ対応の手続きなどもあるので、すべてお任せのツアー参加。

詳しくは帰国後、旅行記サイトにアップしますが、とりあえず、どんなところへ行ったのかだけ紹介。(通常の記事を書く時間も、気力もないので)

1日は移動(地元から羽田へ移動、羽田からイスタンブールまで13時間、イスタンブールで国内便に乗り換えてカッパドキア方面へ・・・・滅茶苦茶疲れました。

2日目、その滅茶苦茶疲れた状態で、休むことなくそのまま観光スタート。しかも日中は35℃、36℃。いささかゾンビ状態。

最初のスポットはカイマクルの「地下都市」

地下都市とついている通りそこは巨大な地下空間。紀元前から存在し、多くの人が住み着いた場所。 

地下8層(深さ約55m)にもなる巨大な地下都市ですが、現在入れるのは地下4階まで。

次に訪れたのがウチヒサル城

カッパドキアと言えばニョキニョキ、キノコののような岩の奇景が有名ですが、ここは岩山全体をくりぬいて要塞にしたもの。

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古代ローマ時代後期、ギリシャ人のキリスト教徒がローマ帝国の迫害から逃れるためにこの地に隠れ住んだことが始まりと言われています。数々の争いの中で、この巨大な岩山は城壁の役割を果たしてきました。

城内はまるで蜂の巣のように、数多くの部屋が洞窟を掘って造られています。迫害から逃れたキリスト教徒たちは、外敵から身を守りつつ、信仰を守り続けながらこの場所に隠れ住んでいたのです。【ターキッシュエア&トラベル】
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付近にはカイマクルの「地下都市」のような地下都市もあって、敵が来たらその地下都市に逃げ込んだとか。

カッパドキア地方では、以前はごく普通にこうした岩山や奇岩に穴をjくりぬいた横穴式住居に住民が住んでいましたが、最近では政府が資金を出して買い上げるかたちで立ち退かせ(自発的なものか、半ば強制に近いのかは知りません)、ホテルやレストランなどの観光資源に再利用しています。(新たに岩をくりぬくのは禁止されています)

そのため、実際に岩をくりぬいた住居に住んでいる世帯は現在ではごくわずか、数えるほどしかいないそうです。

その中のある住居(現地ガイドさんのお知り合い)を特別に見せてもらいました。


洞窟住宅内の撮影は遠慮して、外観だけ。
中は結構広いです。くりぬいた洞窟にトルコ特産の絨毯を。

奥様が絨毯作成の先生だとかで、ご自分が結婚時にもってきたものとか、お母さんの結婚時のものとか。

なにより涼しい、エアコンいらず。
こうした形状の洞窟住宅がひろく利用された理由がわかります。

現在は、先述のようにかつての洞窟住宅はホテルやレストランに再利用されています。

昼食を食べたのも洞窟レストラン、宿泊も洞窟ホテル

洞窟ホテルは、付近の洞窟をまとめてホテルに再利用したもの。
ですから、敷地内に散らばる部屋ごとに広さも形も異なります。



↑ 私の部屋。 奥が寝室 さらにその奥にバスルーム
相当に広いです。

ただ、外観は普通の建物のようにも見える形状のせいか、エアコンがないとちょっとつらい。

翌日はカッパドキア名物の気球観光。
朝4時前起床のハードスケジュールが続きます。

気球の話はまた次回。
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トルコ・エルドアン大統領  80%に迫るインフレでも金利引き下げ もはや暴走列車か

2022-09-01 20:18:58 | 中東情勢
(スーパーで付加価値税の軽減が反映されているかを確認する当局者ら(16日、北部チョルム県)【2月17日日経】)

【GDPは拡大しているものの、通貨安と80%に迫るインフレが進行】
今日、夜のフライトでトルコに向かいます。観光旅行です。
そこで、トルコ経済の話

****トルコ、第2四半期GDPは前年比+7.6% 好調維持****
トルコ統計庁が31日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.6%増と、市場予想をやや上回った。輸出と内需が好調だった。
季節・日数調整済み前期比では2.1%増。

ロイターがまとめた市場予想は前年比7.5%増だった。今年の経済成長率予想は4%。今年下半期は、主要貿易相手国の景気減速などを背景に外需・内需が伸び悩み失速するとみられている。

昨年の経済成長率は改定値で11.4%と、新型コロナウイルス禍からの力強い回復を背景に過去10年で最高の伸びを記録した。今年第1・四半期のGDPは前年比7.3%増から7.5%増に修正された。

エルドアン大統領の経済計画では、一連の非正統的な利下げを通じて成長、雇用、投資、輸出の拡大を促しているが、利下げは通貨危機やインフレ高進を招いた。【8月31日 ロイター】
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上記のGDP伸び率を見ていると経済好調のように見えますが、最後の一文に記されている通貨安・インフレという大きな問題に翼面しています。

****トルコのインフレ率、7月は80%に迫る-ピークは先か****
トルコのインフレ率は7月も上昇し、1997年のアジア金融危機後以来となる高水準を記録した。ピークに達するのはまだ先の可能性がある。

トルコ統計局が3日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比79.6%上昇。6月は78.6%上昇だった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査では80.24%上昇と見込まれていた。国内最大都市イスタンブールのインフレ率は99%を上回った。

世界的にインフレが高進しているものの、トルコのインフレ率は極めて高い。同国を上回るペースでインフレが加速しているのはジンバブエやベネズエラなど数カ国で、こうした国々のインフレ率は100%以上だ。

高金利がインフレ加速を招くとのエルドアン大統領の考えの下でトルコ中央銀行は政策金利を14%に据え置いているが、利上げせずにインフレを抑制するのは困難であることが示されている。【8月3日 Bloomberg】
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1年前に比べて物価が2倍ほどに高騰するという異常な事態。
トルコ以上のインフレが記録されているジンバブエやベネズエラなどは経済破綻を経験した国です。

さらに、インフレを加速させる電力・ガスの値上げも。

*****トルコ、産業用電力・ガス料金50%値上げ 家庭用は20%上げ****
トルコ当局は1日、家庭用の電気・天然ガス料金を約20%、産業用を約50%、それぞれ引き上げた。7月に80%近くまで上昇したインフレ率に一段と押し上げ圧力がかかる見通しだ。(後略)【9月1日 ロイター】
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【エルドアン大統領 インフレでも金利を下げる反教科書的な独自の政策】
これまでも当ブログで取り上げてきたように、特筆すべきは、このインフレがエルドアン大統領の経済原則を無視した低金利政策によってもたらされていることです。エルドアン大統領は長らく低金利を提唱。実質金利が大幅なマイナス圏に陥り、国民の生活は圧迫されています。

経済学の教科書が教えるところは、インフレ対策としては金利の引上げが必要というものですが、強権的なエルドアン大統領は反対する何人もの中央銀行総裁の首を切ってでも、金利引き下げによる輸出・投資拡大、成長拡大に固執しています。

****トルコ中銀利下げ、市場に衝撃-インフレ率85%に上昇と予想でも****
トルコ中央銀行は18日、政策金利を引き下げた。トルコ・リラが最安値付近で取引され、インフレ率が24年ぶりの高水準となっている同国の利下げは予想外で、市場に衝撃が走った。リラは急落した。
  
金融政策委員会は1週間物レポ金利を13%と、これまでの14%から引き下げた。政策金利は前月まで7カ月据え置かれていた。ブルームバーグがまとめたエコノミスト21人の調査では全員が据え置きを予想していた。リラは対ドルで一時約1%下落。その後、下げ幅を縮小した。
  
金融政策委は発表文で、製造業が減速した場合に備えての対応であり、金融緩和サイクルに突入したわけではないと示唆、「政策金利は現在の見通しでは最適な水準」と説明した。

さらに「世界経済成長を巡る不透明感や地政学リスクの高まりが見られる中で、工業生産の成長の勢いや雇用の前向きなトレンドが保たれるよう、金融環境が引き続きそれを支えることが重要だ」との考えを述べた。
  
エルドアン大統領は今年6月、利下げの継続を表明。選挙を控え、1年を経ずして利下げを再開した背景には大統領の意向をくむ当局の姿勢が反映されている。トルコ中銀は先月下旬、今年のインフレ率見通しを約18ポイント引き上げていた。

トルコ中銀、年末のインフレ率予測を60.4%に引き上げ-従来42.8%
カブジュオール中銀総裁は、ロシアのウクライナ侵攻を要因とする商品相場の世界的な上昇がインフレの原因だと非難。

同中銀は現在、今秋にはインフレ率が約85%に上昇すると予想している。年末には60%付近に低下するとみているものの、それでも中銀インフレ率目標の12倍だ。【8月18日 Bloomberg】
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利息を認めないイスラム社会にあって、イスラム主義者のエルドアン大統領は基本的に金利を敵視するようなところがあるようにも見えますが、「高金利はインフレを引き起こす」という“独自の理論”を展開しています。

****失政でハイパーインフレ? 利下げしたトルコリラが陥る通貨危機のリスク****
インフレ圧力が高まる中、トルコは政策金利を引き下げ
(中略)トルコのインフレ率は、7月時点で前年同月比79.6%の上昇です。ちなみにトルコ中央銀行が定めている目標ンフレ率は5%ですから、大幅に乖離した状態が続いています。そうであるにも関わらず政策金利を引き下げたのは、なぜでしょうか。

第一生命経済研究所の主席エコノミスト、西濱徹氏が8月19日に発表した、「トルコ中銀の『暴走特急』は再出発」と題したレポートのなかで「金利の敵を自認するエルドアン大統領の圧力も影響した」と書いています。

これまでエルドアン大統領は、「高金利はインフレを引き起こす」という、経済学の主流である考え方とは逆の持論を展開してきました。なぜ、このような持論になるのか、ということですが、さまざまなニュースに目を通すと、2つの見方があるようです。

トルコ・エルドアン大統領が強行する利下げのロジックは破綻?
ひとつは、「インフレが加速すると、中央銀行は政策金利を引き上げてインフレを抑制しようとするため、金利水準は上昇する」→「つまりインフレが加速すると金利が上がる」→「したがって金利を引き下げればインフレも収まる」ということ。

そしてもうひとつが、「インフレの最中に金利を引き下げると通貨安になる」→「自国通貨安は輸出にとってプラス。あるいは観光地であるトルコにとって、外国人観光客を増やすのに望ましい」→「輸出産業、観光産業が潤い、雇用が回復してトルコ経済は好転。最終的にトルコリラが上昇に転じ、インフレも収まる」という考え方です。

正直、このロジックを理解しろと言われても、頭のなかがぐちゃぐちゃになるだけで、一般的な経済学を勉強してきた人にとっては理解不能でしょう。

このような持論を展開するエルドアン大統領の圧力によって、極めてユニークな金融政策に異を唱えるトルコ銀行の総裁は次々に更迭されてしまいました。

そもそも、エルドアン大統領のロジックは、破綻しています。インフレが進行した時、事後的にでも金利を引き上げれば、インフレを抑制する効果が見込めますが、金利を下げることが、インフレの抑制効果をもたらすことはありません。金利を引き下げれば景気は回復しますから、むしろ物価は上昇しやすくなります。

また、利下げで自国通貨安へと誘導し、輸出産業や観光産業にとってプラスになるとしても、結局のところはバランスの問題です。

仮にそうなったとしても、自国通貨安はインフレ要因ですし、そもそも物価上昇率が80%にも達しようとしている国の通貨を買いたいなどとは誰も考えませんから、結局のところトルコリラが高くなることはなく、事態はさらに深刻化します。(後略)【8月29日 Finasee】
******************

【国によって異なるインフレに対する寛容さ】
低金利政策という点では、欧米各国がインフレ抑制のために金利を引き上げるなかで、低金利政策を維持し、結果的に円安を惹起している日本も、似たようなところがあります。もちろん、インフレの程度、景気の状態など取り巻く環境はそれぞれ異なるのでしょうが。

****トルコがインフレ率が80%に近いなかでの「利下げ」実施で、市場に衝撃。日本も他人事ではない****
トルコ中央銀行は18日、金融政策決定会合を開き、主要政策金利の1週間物レポ金利を年14%から13%に引き下げると決めた。利下げは2021年12月以来8会合ぶり(18日付日本経済新聞)。
 
足元のインフレ率は80%近いが、インフレのなかでの利下げという異例の事態。FRBやECBが物価上昇を受けて金融政策を正常化から引き締め、つまり利上げに動くなか、欧米のインフレ率を大きく上回るトルコがインフレを加速させかねない利下げを実施したのである。(中略)
 
今回のトルコの利下げは全く想定外となり、金融市場に衝撃が走った。その結果、トルコの通貨リラは発表後に対ドルで一時、前日比1%超下落し、1ドル18リラ台の年初来安値を付けた。通貨安は当然ながら輸入物価を通じて物価の上昇要因となる。
 
トルコのエルドアン大統領は「金利を下げればインフレ率も下がる」として、経済学の定石とは逆を主張し、その主張を中央銀行に押しつけている格好となっている。(中略)

物価上昇の要因はエネルギー価格の上昇など一時的なものによるとして、頑として非常時対応の金融緩和を修正もせず、市場がそれを催促するような動きに出ると、今度はさらなる緩和策ともいえる指し値オペで対抗するという、日銀の姿勢とトルコの姿勢には共通点があるようにみえる。
 
今回のトルコの利下げに対して「全く言葉を失う。こうしたことは明らかに行なうべきでない」といった市場の声が紹介されていたが、これはそのまま日銀の現在の政策にも言えるものである。
 
「金融政策はもともと機動的、弾力的であるのが特徴だ。超緩和の常態化は日本経済の新陳代謝を遅らせ構造改革を阻む。日銀は超緩和に固執するのではなく、正常化への出口を探るときだ。景気一辺倒から景気・物価両にらみに政策転換する場面だろう」
 
これは19日付日本経済新聞のコラム「大機小機」にあったものだが、完全に同意する。【8月19日 久保田博幸氏 金融アナリスト】
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インフレに対する国民の敏感さは国よって異なります。
アメリカなどは非常に敏感で、大統領選挙や議会選挙前のインフレ率・失業率の状況がストレートに選挙結果に反映するため、政権も神経質になります。

GDP成長率といった“漠然としたもの”よりは物価や雇用といった各自が肌で感じられるものが重視されるといったところでしょうか。

一方、日本などは“まずは経済成長率ありき”といった感も。

中南米諸国などはあえてインフレを放置しているとも。

****物価上昇率80%でもトルコが「利下げ」を決断したワケ、エルドアン政権の“真の狙い”*****
(中略)世界には、物価上昇という問題に直面しても、制御できないインフレに陥る国と、そうならない国とに分かれる。

たとえばロシアはインフレになりにくい国の典型である。ウクライナ侵略に伴う各国の経済制裁によって、ロシアは猛烈なインフレが危惧されたが、金利の引き上げを強行するとともに、厳格な外貨管理を実施することで何とかインフレ押さえ込むことに成功した。

一方、トルコのように、理論とは逆の政策を実施し、インフレを拡大させている国もある。トルコもロシアも大統領が強権的という点では同じだが、この違いはどこから生じるのだろうか。

あえてインフレを放置している?
インフレを繰り返す国として有名なのは中南米諸国である。アルゼンチンは過去に何度もハイパーインフレに見舞われているし、ベネズエラも制御できないインフレが進行中である。しかしながら、中南米諸国とトルコには大きな違いがある。それはインフレそのものに対する根本的な認識の違いである。

中南米諸国の場合、インフレを止められないのではなく、社会全体として過度なインフレも許容するような風潮がある。

農作物輸出が中心の経済構造であり、基本的に通貨が安くなることは輸出事業者にプラスになるとの考え方が根強い。

日本でも輸出競争力を強化するため、円安を強く望む風潮が一部にあるが、基本的な図式は同じである。土地所有者が経済の中核を担っており、インフレが進んでも土地の価格は同じように上昇するため、インフレに対してあまり警戒感を持っていない。

政権側もこうした事情をよく理解しており、国民の人気取りを目的に大型の財政出動を繰り返し、結果として生じるインフレを放置している面がある。

アルゼンチンでは、小麦粉の価格高騰を受けて、低所得者を中心に大規模なデモが発生しており、一部の国民はインフレに対して強く反発している。しかしながら、インフレに対して激しい抵抗感を持つロシアのような国民性とは異なり、社会全体としてインフレに対して寛容であるのは間違いないだろう。

ちなみにインフレが進むと、国民の預金は物価上昇分だけ毀損する一方、政府債務は物価が上がった分だけ軽減されていく。つまりインフレが進めば、国民が持つ預金から政府に所得が移転はインフレ対応に苦慮していますので、"寛容"かどうかは簡単ではなさそうです。するので、インフレは事実上、増税として機能する。

だが多くの国民はそのメカニズムに気付かないため、為政者の中には、お金をバラ撒いてインフレにしてしまった方が手っ取り早いと考える人も多い。中南米諸国は基本的にこうしたメカニズムで動いている。【8月19日 経済評論家 加谷珪一氏 ビジネス+IT】
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もっとも、アルゼンチンにしても“アルゼンチン、数千人がデモ 賃上げとインフレ対策求め”【8月18日 ロイター】ということで、政権はインフレ対応に苦慮していますので、"寛容"かどうかは簡単ではなさそうです。
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