家訓は「遊」

幸せの瞬間を見逃さない今昔事件簿

主の居ない別荘

2018-03-13 08:43:59 | Weblog
分かりにくい入り口を入り、目立たない角を曲がって気づけば目的地。

主の居ない別荘に到着していた。

地元民の案内に付いて行くだけの私。

我々の良き友人であるS氏が、あちらに行ったのは一昨年の11月。

2度目の偲ぶ会に出席しての翌朝のことだ。

主が居た時よりもスッキリして広く感じる。

整然と手入れされた庭木が悲しい。

「もっと雑然としていてよ」

思わず天国の彼にテレパシーを送る。

彼の好きな民宿に宿泊したが、そこは風呂事情が良くないため近くのホテルの日帰り風呂を利用する。

料理は、やはり食べおせないほど用意された。

伊勢海老とヤリイカの刺身 金目鯛とメバルの煮付け カサゴのフライ カニ サザエの刺身とつぼ焼き などなど。

豪華な食事内容にビールと熱燗。

朝食も新鮮な海の物が食べ押せないほどの量出てきた。

朝食後は再びどこかの風呂に移動する。

これが彼の好きなコースだ。

宿泊料金を皆で割ろうというときに驚いた。

請求書の宛名が彼の名前になっている。

宿の女将は「天国から電話が来たのよ」と言って笑った。

その後今がさかりの菜の花畑を見て河津桜のトンネルをくぐり西伊豆の名物うどんを食べて解散した。

晴れで暖かい伊豆は午後になるとまもなく渋滞となる。

それでも何のトラブルもなく無事に帰宅できた。

去年は「オレはまだ行かないよ。連れに来ないで」と願ったものだが今年は連れに来る感覚が遠のいた。

徐々に薄めてくれる記憶装置がありがたい。

むき出しの傷口はもうない。

ただし会いたい気持ちは変わらない。

いずれ会うのだから、その時の楽しみにしておこう。