天竜川の堤防を走っていた。
一団となった車は10台ほどもいたか。
急に速度が落ち次々と対向車線に出て走るのが見えた。
一団の先に黒い車が止っていた。
それが邪魔で、こういう流れになったのだ。
私も近づき、あと3台で私も車線変更という距離になった。
車はファンカーゴ。
路肩とは、とても言いがたい場所に止めている。
しかも車の左側横に、かがんだ人間がいるようだ。
「吐いているのか?」
いよいよ私の番だ。
しかし私は何か変だと思い自分の車をその後に止めて降りていった。
「どうかしましたか?」と声を掛けてみた。
かがんだ人間は吐いているのではなくケータイで喋りながら車の下を覗き込んでいたのだった。
私が話しかけてもなおケータイで喋っていた。
私も車の下を見てみた。
革の良いジャケットを着ていたので道路に肘は着かないようにした。
道路と車の下に農業用のミが挟まっていた。
草取りをした時に取った草を入れるプラスチック製の道具だ。
風で飛ばされて下に入り込んでしまったらしい。
ガリガリと大きな音がして驚いて車を緊急停止させたようだ。
手を伸ばしてミを取り除こうとしてもミは動かない。
「何か棒のようなものを持っていますか?」と訊いてみた。
にやっと笑って「あります」と車内からスコップを出した。
なぜこの場に相応しすぎるほどの物を持っていたのかは分からない。
「おおいいじゃん」と言ってそれで車の下のミを叩いてみた。
ミは車の最下部と道路にしっかりと挟まってびくともしない。
「ほんの少し車をバックさせてミを外しましょうか」と言うと
「はい」と言って助手席側から乗り込み少しバックさせた。
助手席側から運転席に移動するのが簡単に出来る車だった。
車の位置は変わったがミは相変わらず叩いても外れない。
運転手は、まだ若い女性だった。
ミニスカートであっても思いっ切りしゃがんで覗き込む。
後ろにいる私は、その姿を見て必死さが伝わってきた。
私が次にとった策は車を前に移動させて道路のくぼみを利用することだった。
「ガリガリ言っても車は傷つきませんから、そのまま移動させてみてください」と伝えた。
「そんなにうまくいくでしょうか?」と言いつつも彼女は車を前の左側に向けて動かし始めた。
「ガガー」というプラスチックのミが舗装道路と摩擦を起こす音が聞こえた。
だが次の瞬間その音が止んだ。
「ストップ」と言って車の下を覗き込むとミが道路と車の橋渡しをやめてポツンと何事もなかったかのように佇んでいた。
スコップで引き出した。
一件落着。
「良かったね」と言ってスコップとミを渡した。
彼女はミを道路脇に置いてケータイで連絡し始めた。
私は車に戻り走り始めた。
「あなたは、いつも誰かを助ける運命なのね」と助手席の妻が言う。
ケータイで喋る女性の目が私を追い、その歯の隙間が目立った。
一団となった車は10台ほどもいたか。
急に速度が落ち次々と対向車線に出て走るのが見えた。
一団の先に黒い車が止っていた。
それが邪魔で、こういう流れになったのだ。
私も近づき、あと3台で私も車線変更という距離になった。
車はファンカーゴ。
路肩とは、とても言いがたい場所に止めている。
しかも車の左側横に、かがんだ人間がいるようだ。
「吐いているのか?」
いよいよ私の番だ。
しかし私は何か変だと思い自分の車をその後に止めて降りていった。
「どうかしましたか?」と声を掛けてみた。
かがんだ人間は吐いているのではなくケータイで喋りながら車の下を覗き込んでいたのだった。
私が話しかけてもなおケータイで喋っていた。
私も車の下を見てみた。
革の良いジャケットを着ていたので道路に肘は着かないようにした。
道路と車の下に農業用のミが挟まっていた。
草取りをした時に取った草を入れるプラスチック製の道具だ。
風で飛ばされて下に入り込んでしまったらしい。
ガリガリと大きな音がして驚いて車を緊急停止させたようだ。
手を伸ばしてミを取り除こうとしてもミは動かない。
「何か棒のようなものを持っていますか?」と訊いてみた。
にやっと笑って「あります」と車内からスコップを出した。
なぜこの場に相応しすぎるほどの物を持っていたのかは分からない。
「おおいいじゃん」と言ってそれで車の下のミを叩いてみた。
ミは車の最下部と道路にしっかりと挟まってびくともしない。
「ほんの少し車をバックさせてミを外しましょうか」と言うと
「はい」と言って助手席側から乗り込み少しバックさせた。
助手席側から運転席に移動するのが簡単に出来る車だった。
車の位置は変わったがミは相変わらず叩いても外れない。
運転手は、まだ若い女性だった。
ミニスカートであっても思いっ切りしゃがんで覗き込む。
後ろにいる私は、その姿を見て必死さが伝わってきた。
私が次にとった策は車を前に移動させて道路のくぼみを利用することだった。
「ガリガリ言っても車は傷つきませんから、そのまま移動させてみてください」と伝えた。
「そんなにうまくいくでしょうか?」と言いつつも彼女は車を前の左側に向けて動かし始めた。
「ガガー」というプラスチックのミが舗装道路と摩擦を起こす音が聞こえた。
だが次の瞬間その音が止んだ。
「ストップ」と言って車の下を覗き込むとミが道路と車の橋渡しをやめてポツンと何事もなかったかのように佇んでいた。
スコップで引き出した。
一件落着。
「良かったね」と言ってスコップとミを渡した。
彼女はミを道路脇に置いてケータイで連絡し始めた。
私は車に戻り走り始めた。
「あなたは、いつも誰かを助ける運命なのね」と助手席の妻が言う。
ケータイで喋る女性の目が私を追い、その歯の隙間が目立った。
助けられた女性も奥さんといっしょの車の人で安心もするでしょうし・・