新参者

最近我が家に新参者がやってきた。
メダカ用の水鉢に勝手に住み着いた殿様ガエルだ。
毎晩「グググ、ゲゲゲ」と鳴いている。

当初彼を追い回して我が家から追放した。
しかし３０分もすると戻って来ていた。

次の時、鉢の中にいるのを火バサミで掴もうとして当たり所が悪く水底に沈んでしまった。ところが３０分後に再び復活。あれが演技だったとは思えない。

また次の時、今度は火バサミで捕まえた。右腕一本を掴み隣接する小学校のビオトープに向けてフェンス越しに放り投げた。すると鉄製ポールに「コーン」と当たった音がした。
やれやれやっと古巣に戻ったか、と思ったのもつかの間その夕方には、ちゃんと戻って来ていた。

これで私は許す気持ちになった。彼の強情さに負けた。

それでは名前をつけようということになり殿様ガエルだから略して「殿」。それをカタカナにして「トノ」にしようということにした。しかし新参者を我が家の主たる私が「トノ、トノ」と呼ぶのもシャクに障る。そこでいっそのこと「ケライ」と呼ぶことにしようとも思ったが、それもまた大人気ないと感じている。

まだ名前は未定だ。

今日も水瓶の中で泳いでいた。彼は私が居住を許したことをまだ知らない。私の顔を見ると一目散に水中に没する。しかし息が苦しくなって浮上してくる。その束の間の息継ぎ時間をカメラで捉えた。

瀧川鯉昇

師匠とは高校の同級生である。
1年のとき同じクラスであった。
当時から落語が好きで授業中にも落語の文庫本を読んでいた。
私も「読んでみな」と言われて読んだことがある。
当時から顔が怖かったが今もそのままだ。
つまり今の顔が高校1年生の時の顔なのだ。その方がよっぽど怖いか。
性格は至って大人しく狼の皮を被った羊の子供である。
噺は素晴らしい。
高座に出てきてすぐに大笑いさせる。
笑いでお客さんと息が合った頃古典落語に入っていく。
その円滑な運びが彼の頭の良さを物語る。

以前彼と顔を合わせる機会が有ったのだが彼は私を覚えていない風であった。
たぶん今は私の方が怖い顔になってしまったのだろう。