テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ カエサルたちの美術史 ~

2022-05-03 23:49:44 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 またしてもォ、ろくがァしなくちゃッ!」

「がるる!ぐるがる!」(←訳:虎です!必見必聴!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 明後日・5月5日22時からHNK総合で放送されるのは、

 『ふたりのディスタンス《千と千尋の神隠しスペシャル 橋本環奈・上白石萌音》』!

 《千と千尋の神隠し》舞台化に密着したドキュメンタリーですよ。

 いまのうちに予約録画の準備を終えたら、

 さあ、本日の読書タイムは、

 こちらの歴史ノンフィクション作品を、どうぞ~♪

  

 

 

      ―― 12人の皇帝たち ――

 

 

 著者はメアリー・ビアードさん、

 原著は2021年に、日本語版は2022年4月に発行されました。

 英語原題は『TWELVE CAESARS』、

 『古代から現代までの権力のイメージの変遷をたどる』

 と日本語副題が付されています。

 

 皇帝――

 私たち日本人にとっては、

 縁遠い存在と申せましょうか。

 

 しかし、冒頭の『序』に於ける

 著者・ビアードさんの第一声は、

 

 《私たちは今でもローマ皇帝に囲まれている》。

 

「むかしのォ、ことなのにィ~」

「ぐっるるがるるる?」(←訳:けっこうしぶとい?)

 

 西欧諸国の文化の基盤となっているのは、

 古代ギリシャ&ローマ文明の文化や思想。

 それは21世紀の今も変わらず、

 日々の暮らしのそこここに

 ギリシャあるいはローマの文物の名残りを

 見出すことが出来ます。

 

 その代表格が、

 ローマ帝国の、皇帝たち。

 

「はくぶつかんッ!」

「がるるぐるる!」(←訳:映画に絵画に!)

 

 もし西洋の俳優さんやコメディアンさんが、

 悪名高いローマ皇帝ネロ、を表現したいなら、

 月桂冠とトーガと竪琴があればOK。

 咥えて、炎のオブジェを背景に設置できるなら、もう完璧!

 ああ皇帝ネロを演ってるんだなぁ、と 

 誰にだって判ります。

 

 つまり↑これらのアイテムは、

 皇帝ネロを表すイメージ=図像なんですね。

 

 そういったイメージが

 古代から現代へと、

 どうやって伝えられてきたのか。

 イメージは正確なのか。

 増幅、変容、ディフォルメはあったのか。

 そもそも、誰がそのイメージを発信したのか。

 

 著者・ビアードさんはこの御本で、

 西洋美術史の中に

 《皇帝》たちのイメージが形成されてゆく過程を

 丁寧に追ってゆきます。

 

「まずはァ、あのおかたッ!」

「ぐるるる!」(←訳:カエサル!)

 

 ユリウス・カエサルさんは、

 正確を期すなら皇帝になる前に

 暗殺されてしまっているのですけれども、

 知名度の点では全皇帝さんたちを上回っていますよね。

 

 しかし、実のところ。

 そのイメージは……いまひとつ不正確?

 カエサルの彫像とされている彫刻はどれも、

 本当にカエサル像なのか、分かってない?

 

「むむむむふゥ?」

「がるるる!」(←訳:カオスだ!)

 

 皇帝たちの本当の顔を知らぬとしても、

 ときに、偉大な芸術家さんは

 真実を超えた美を創り出します。

 

 ヴェネツィア派の巨匠・ティツィアーノさんが制作した

 11人の皇帝肖像作品は、

 ゴンザーガ家の宮殿に飾られるや評判を呼び、

 多くの画家さんが夢中で模写をしたほど。

 

 これぞティツィアーノさんの最高傑作!

 であることは確実の名作は、

 しかし、のちにスペイン・アルカサル宮殿の

 王室コレクションに納められ、

 ……そこに悪夢が!

 

「たッ、たすけてェッ!」

「ぐる!」(←訳:炎が!)

 

 1734年12月、

 宮殿で火災が発生しました。

 ティツィアーノさんが描いた皇帝たちの肖像画は、

 他の何百もの絵画とともに焼失した、と

 本文198ページにビアードさんは記しています。

 

 ベラスケスさんの『ラス・メニーナス』は

 額縁から引き剥がされて窓から投げ出され、

 助かった幸運な作品の一つだ、とも。

 

「そんなァ~…!」

「がるぐるる!」(←訳:無念だよう!)

 

 オリジナル作品は失われても、

 模写作品は残りました。

 そして、模写作品がさらに模写され、

 ティツィアーノさんの作品が存在した事実は

 後世にしっかり伝えられました。

 

 また、19世紀には、

 ローマ史への興味が高まったことで、

 皇帝たちの新たなイメージが

 世に広まってゆきます。

 

「まだまだァ、つづきそうゥ?」

「ぐるるるがる!」(←訳:続きそうだね!)

 

 幾多の皇帝像が

 今後もなお連綿と生み出され、

 人びとの目に触れることになるのか。

 そこに描き込まれる物語とは。

 

 豊富な図版が掲載されているので、

 アート好きさんに激おすすめのこの御本、

 もちろん歴史好きな活字マニアさんにも

 手に取っていただきたい一冊です。

 著者・ビアードさんに拍手を送りつつ、

 皆さま、ぜひ~♫

 

 

コメント
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