「こんにちわッ、テディちゃでス!
またしてもォ、ろくがァしなくちゃッ!」
「がるる!ぐるがる!」(←訳:虎です!必見必聴!)
こんにちは、ネーさです。
明後日・5月5日22時からHNK総合で放送されるのは、
『ふたりのディスタンス《千と千尋の神隠しスペシャル 橋本環奈・上白石萌音》』!
《千と千尋の神隠し》舞台化に密着したドキュメンタリーですよ。
いまのうちに予約録画の準備を終えたら、
さあ、本日の読書タイムは、
こちらの歴史ノンフィクション作品を、どうぞ~♪
―― 12人の皇帝たち ――
著者はメアリー・ビアードさん、
原著は2021年に、日本語版は2022年4月に発行されました。
英語原題は『TWELVE CAESARS』、
『古代から現代までの権力のイメージの変遷をたどる』
と日本語副題が付されています。
皇帝――
私たち日本人にとっては、
縁遠い存在と申せましょうか。
しかし、冒頭の『序』に於ける
著者・ビアードさんの第一声は、
《私たちは今でもローマ皇帝に囲まれている》。
「むかしのォ、ことなのにィ~」
「ぐっるるがるるる?」(←訳:けっこうしぶとい?)
西欧諸国の文化の基盤となっているのは、
古代ギリシャ&ローマ文明の文化や思想。
それは21世紀の今も変わらず、
日々の暮らしのそこここに
ギリシャあるいはローマの文物の名残りを
見出すことが出来ます。
その代表格が、
ローマ帝国の、皇帝たち。
「はくぶつかんッ!」
「がるるぐるる!」(←訳:映画に絵画に!)
もし西洋の俳優さんやコメディアンさんが、
悪名高いローマ皇帝ネロ、を表現したいなら、
月桂冠とトーガと竪琴があればOK。
咥えて、炎のオブジェを背景に設置できるなら、もう完璧!
ああ皇帝ネロを演ってるんだなぁ、と
誰にだって判ります。
つまり↑これらのアイテムは、
皇帝ネロを表すイメージ=図像なんですね。
そういったイメージが
古代から現代へと、
どうやって伝えられてきたのか。
イメージは正確なのか。
増幅、変容、ディフォルメはあったのか。
そもそも、誰がそのイメージを発信したのか。
著者・ビアードさんはこの御本で、
西洋美術史の中に
《皇帝》たちのイメージが形成されてゆく過程を
丁寧に追ってゆきます。
「まずはァ、あのおかたッ!」
「ぐるるる!」(←訳:カエサル!)
ユリウス・カエサルさんは、
正確を期すなら皇帝になる前に
暗殺されてしまっているのですけれども、
知名度の点では全皇帝さんたちを上回っていますよね。
しかし、実のところ。
そのイメージは……いまひとつ不正確?
カエサルの彫像とされている彫刻はどれも、
本当にカエサル像なのか、分かってない?
「むむむむふゥ?」
「がるるる!」(←訳:カオスだ!)
皇帝たちの本当の顔を知らぬとしても、
ときに、偉大な芸術家さんは
真実を超えた美を創り出します。
ヴェネツィア派の巨匠・ティツィアーノさんが制作した
11人の皇帝肖像作品は、
ゴンザーガ家の宮殿に飾られるや評判を呼び、
多くの画家さんが夢中で模写をしたほど。
これぞティツィアーノさんの最高傑作!
であることは確実の名作は、
しかし、のちにスペイン・アルカサル宮殿の
王室コレクションに納められ、
……そこに悪夢が!
「たッ、たすけてェッ!」
「ぐる!」(←訳:炎が!)
1734年12月、
宮殿で火災が発生しました。
ティツィアーノさんが描いた皇帝たちの肖像画は、
他の何百もの絵画とともに焼失した、と
本文198ページにビアードさんは記しています。
ベラスケスさんの『ラス・メニーナス』は
額縁から引き剥がされて窓から投げ出され、
助かった幸運な作品の一つだ、とも。
「そんなァ~…!」
「がるぐるる!」(←訳:無念だよう!)
オリジナル作品は失われても、
模写作品は残りました。
そして、模写作品がさらに模写され、
ティツィアーノさんの作品が存在した事実は
後世にしっかり伝えられました。
また、19世紀には、
ローマ史への興味が高まったことで、
皇帝たちの新たなイメージが
世に広まってゆきます。
「まだまだァ、つづきそうゥ?」
「ぐるるるがる!」(←訳:続きそうだね!)
幾多の皇帝像が
今後もなお連綿と生み出され、
人びとの目に触れることになるのか。
そこに描き込まれる物語とは。
豊富な図版が掲載されているので、
アート好きさんに激おすすめのこの御本、
もちろん歴史好きな活字マニアさんにも
手に取っていただきたい一冊です。
著者・ビアードさんに拍手を送りつつ、
皆さま、ぜひ~♫