「こんにちわッ、テディちゃでス!
♪るるゥ~♫ やねよりィたかくゥ~♪」
「がるる!ぐるるるる~♪」(←訳:虎です!こいのぼりィ~♪)
こんにちは、ネーさです。
今日5月5日は、端午の節句で、立夏で、と
晴れやかな一日でしたね。
では、読書タイムも鯉のぼりのように元気よく、
↓こちらの御本を、どうぞ~♫
―― 色にいでにけり ――
著者は坂井希久子(さかい・きくこ)さん、
2021年6月に発行されました。
『江戸彩り見立て帖』と副題が付されています。
「おえどォ~でスかッ?」
「ぐるるるがぅるる?」(←訳:平安時代じゃなく?)
《しのぶれどいろに出でにけりわがこひは
ものやおもふとひとのとふまで》
とは、天徳内裏歌合(天徳4年/960年)で
帝も口ずさんだという
平兼盛さんの歌ですが、
ええ、この物語の舞台は、
京の都ではなく江戸で、
時代は幕末よりちょっと前……
かの葛飾北斎さん(1760~1849)が
健在であった頃のこと、です。
まさにその、北斎さんの作品
『凱風快晴』を前にして、
叫んでいる女性が、ひとり。
なんですか、この色は!
「えッ? こここッ、これッ??」
「がるぐるがるるぐるるる?」(←訳:この色のどこが駄目なの?)
『凱風快晴』すなわち『赤富士』。
北斎さんの《富嶽三十六景》の中でも
人気の高い作品ですよね。
ところが、その女性――
彩(あや)さんは、
『赤富士』を『赤富士』たらしめている
赤が気に入らないというのです。
もとは、こんな赤じゃなかったのに!
こんなにべったり赤い富士なんて!
「ふァ~、なるほどォ!」
「ぐるがるるるぐるるがる!」(←訳:些細だけれど重要な違い!)
“神は細部に宿る“と申します。
お彩さんにとって、
富士の色合いが異なっているのは
とても重要な事柄……ではありましたが、
『凱風快晴』を売る絵草紙屋さんにとっては、
あまり大した問題ではなかったようで。
懸命な抗議もスルーされてしまい、
結局、お彩さんは
とぼとぼと家路に着く羽目になりました。
「きもちはァ、わきゃりまスゥ!」
「がるぐるるるるるる!」(←訳:そう落ち込まないで!)
そうなのよね、
禍福は糾える縄の如し。
捨てる神あれば拾う神あり。
とぼとぼ歩むお彩さんに、
声を掛けてきた人物が。
「むむッ? ことばづかいィがァ?」
「ぐるがる?」(←訳:京都かな?)
右近(うこん)と名乗る、
上方訛りの男性は、
お彩さんの“才“に眼を留めたのでした。
パッと一目で、
富士の色が違うことを、
しかも、どういう風に違っているかを見分け、
指摘する。
それは立派な才能であると、
お彩さんを誉めて、
誘うのです。
その“才“、活かしてみては?
お菓子の色付け。
着物の配色。
布地の染め。
せっかくの“才“を使わないなんて、もったいない!
「いわれてみればァ、そうかもッ?」
「がるるる!」(←訳:そうそう!)
いきなり失礼な!と怒ったり、
迷ったりしつつも、
つい成り行きで
色選びに手を貸してしまうお彩さん。
広~い江戸の町といえど、
“配色指南役“という
珍ジャンルを切り拓こうとしているのは、
お彩さんだけ、なのでしょうか。
はたして、お彩さんの前途は……?
「わるくゥないでスよゥ!」
「ぐるるるるがる!」(←訳:パイオニアだね!)
お彩さんとともに学ぶ、
色の名前、色の歴史、
色への勘。
江戸アート好きな方々に、
近代史好きな活字マニアさんに
おすすめの文庫オリジナル作品ですよ。
北斎さんと同時代人とは羨ましい!
と羨望したりしながら、
ぜひ、一読してみてくださいね~♫