テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 見立ては、色いろいろ。 ~

2022-05-05 19:23:34 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 ♪るるゥ~♫ やねよりィたかくゥ~♪」

「がるる!ぐるるるる~♪」(←訳:虎です!こいのぼりィ~♪)

 

 こんにちは、ネーさです。

 今日5月5日は、端午の節句で、立夏で、と

 晴れやかな一日でしたね。

 では、読書タイムも鯉のぼりのように元気よく、

 ↓こちらの御本を、どうぞ~♫

  

 

 

       ―― 色にいでにけり ――

 

 

 著者は坂井希久子(さかい・きくこ)さん、

 2021年6月に発行されました。

 『江戸彩り見立て帖』と副題が付されています。

 

「おえどォ~でスかッ?」

「ぐるるるがぅるる?」(←訳:平安時代じゃなく?)

 

 《しのぶれどいろに出でにけりわがこひは

   ものやおもふとひとのとふまで》

 

 とは、天徳内裏歌合(天徳4年/960年)で

 帝も口ずさんだという

 平兼盛さんの歌ですが、

 ええ、この物語の舞台は、

 京の都ではなく江戸で、

 時代は幕末よりちょっと前……

 かの葛飾北斎さん(1760~1849)が

 健在であった頃のこと、です。

 

 まさにその、北斎さんの作品

 『凱風快晴』を前にして、

 叫んでいる女性が、ひとり。

 

   なんですか、この色は!

 

「えッ? こここッ、これッ??」

「がるぐるがるるぐるるる?」(←訳:この色のどこが駄目なの?)

 

 『凱風快晴』すなわち『赤富士』。

 

 北斎さんの《富嶽三十六景》の中でも

 人気の高い作品ですよね。

 ところが、その女性――

 彩(あや)さんは、

 『赤富士』を『赤富士』たらしめている

 赤が気に入らないというのです。

 

 もとは、こんな赤じゃなかったのに!

 こんなにべったり赤い富士なんて!

 

「ふァ~、なるほどォ!」

「ぐるがるるるぐるるがる!」(←訳:些細だけれど重要な違い!)

 

 “神は細部に宿る“と申します。

 お彩さんにとって、

 富士の色合いが異なっているのは

 とても重要な事柄……ではありましたが、

 『凱風快晴』を売る絵草紙屋さんにとっては、

 あまり大した問題ではなかったようで。

 

 懸命な抗議もスルーされてしまい、

 結局、お彩さんは

 とぼとぼと家路に着く羽目になりました。

 

「きもちはァ、わきゃりまスゥ!」

「がるぐるるるるるる!」(←訳:そう落ち込まないで!)

 

 そうなのよね、

 禍福は糾える縄の如し。

 捨てる神あれば拾う神あり。

 

 とぼとぼ歩むお彩さんに、

 声を掛けてきた人物が。

 

「むむッ? ことばづかいィがァ?」

「ぐるがる?」(←訳:京都かな?)

 

 右近(うこん)と名乗る、

 上方訛りの男性は、

 お彩さんの“才“に眼を留めたのでした。

 

 パッと一目で、

 富士の色が違うことを、

 しかも、どういう風に違っているかを見分け、

 指摘する。

 それは立派な才能であると、

 お彩さんを誉めて、

 誘うのです。

 

 その“才“、活かしてみては?

 

 お菓子の色付け。

 着物の配色。

 布地の染め。

 せっかくの“才“を使わないなんて、もったいない!

 

「いわれてみればァ、そうかもッ?」

「がるるる!」(←訳:そうそう!)

 

 いきなり失礼な!と怒ったり、

 迷ったりしつつも、

 つい成り行きで

 色選びに手を貸してしまうお彩さん。

 

 広~い江戸の町といえど、

 “配色指南役“という

 珍ジャンルを切り拓こうとしているのは、

 お彩さんだけ、なのでしょうか。

 はたして、お彩さんの前途は……?

 

「わるくゥないでスよゥ!」

「ぐるるるるがる!」(←訳:パイオニアだね!)

 

 お彩さんとともに学ぶ、

 色の名前、色の歴史、

 色への勘。

 

 江戸アート好きな方々に、

 近代史好きな活字マニアさんに

 おすすめの文庫オリジナル作品ですよ。

 北斎さんと同時代人とは羨ましい!

 と羨望したりしながら、

 ぜひ、一読してみてくださいね~♫

 

 

コメント
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