テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

~ 鈴の音を世界に ~

2022-05-20 23:32:19 | ブックス

「こんにちわッ、テディちゃでス!

 じゆうのォ~てんちィへッ!」

「がるる!ぐるがる~!」(←訳:虎です!いざ脱出~!)

 

 こんにちは、ネーさです。

 今日5月20日、TV(地上波)で久々に放送されるのは、

 『ショーシャンクの空に』。

 S・キングさんの原作に、

 そして美しい映画作品にもうっとりした後は、

 さあ、読書タイムですよ。

 本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~♪

  

 

 

       ―― べリングキャット ――

 

 

 著者はエリオット・ヒギンズさん、

 原著は2021年に、日本語版は2022年3月に発行されました。

 英語原題は『we are belling cat : an intelligence agency for the people』、

 『デジタルハンター、国家の嘘を暴く』

 と日本語副題が付されています。

 

 べリングキャット(bellingcat)とは――

 『イソップ童話』の『ネズミの相談』に登場する

 《誰が猫の首に鈴をつけるのか》、

 転じて

 《他人が嫌がる中で率先して難局に立ち向かう》

 を意味する慣用句であり、

 或る調査報道ウェブサイトの名称でもあります。

 

「うわさはァ、かねがねッ!」

「ぐるがるるるる!」(←訳:聞き及んでます!)

 

 従来の、諜報活動と呼ばれる作業は、

 “現場主義“でした。

 現地に行って、その場所の言葉を話し、

 人脈を築き、情報を収集して、分析する。

 この足で現地に行ってみなくては分からぬことがある、と。

 

 そんなインテリジェンス作業を

 劇的に変えてしまったのが、

 べリングキャットの《探偵》さんたちです。

 

   現地に、行かなくてもいい。

   我々が必要とするのは、

   ネット世界に蓄積された膨大なデータ。

 

「どんなにィ~ささいなァこともッ!」

「がるるるるる!」(←訳:見逃さないぞ!)

 

 べリングキャットの設立者である著者・ヒギンズさん、

 自分自身を

 “よくいるパソコンが趣味の会社員だった“

 と語ります。

 

 けれど、

 “よくいる会社員“であるはずのヒギンズさんに

 突然の閃きが。

 

   ネットで検索すれば、

   マスコミも専門家もまだ知らない事実を

   突き止められるのではなかろうか。

 

 そして、

 同じことを思いつく人間は他にもいて、

 ネットのコミュニティが自然に形成されていった、

 というのです。

 

「ちいさなァ、てがかりィ!」

「ぐるるるるる……がるるるる!」(←訳:繋げてみると……大きくなる!)

 

 ニュース画像の背景、すみっこに写っている

 標識、窓の形、看板の字体。

 そこから住所や位置を割り出し、

 グーグルマップ、ストリートビューと照らし合わせる。

 

 古い卒業アルバム写真と

 監視カメラが捉えた不審者の顔を比較し、

 その人物の国籍、姓名、

 さらには職業・任務まで特定する。

 

 現在でこそ、

 そんなの簡単じゃん?と言える手法を、

 見い出し、効率化し、

 完成させていったパイオニアが

 ヒギンズさんたちべリングキャット。

 

 この御本では、

 べリングキャットが世界中に注目されるきっかけとなった

 2014年のマレーシア航空機墜落事件の調査、

 英国での元ロシア二重スパイ暗殺未遂事件を中心に

 ヒギンズさんたちの行動が語られてゆきます。

 

 特に、マレーシア航空機の事件は、

 ロシアによるウクライナへの侵攻が

 この時にはもう始まっていたのか、と

 愕然とさせられる内容で……無力感がこみ上げます。

 

 何十万人もの犠牲者を出す前に、

 私たちに何か出来ることは……

 凶事を防ぐ狼煙をあげることは、出来なかったのか?

 

「せんそうゥ、もういやでスゥ!」

「がるるる!」(←訳:許すまじ!)

 

 ヒギンズさんは記します。

 

 《戦争犯罪者とその支持者たちが

  インターネットを乗っ取るのを、

  ただ指をくわえて見ていなければならないという法はない》

 

 現実の世界を、

 ネット世界を、

 ただ平和に、ただ楽しい場所にするために。

 

 ネタバレになってしまうので

 これ以上はお喋りできませんけれども、

 その志にエールを送りたくなる

 全活字マニアさん必読の一冊を、

 どうか皆さま、ぜひ!

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする