「こんにちわッ、テディちゃでス!
じゆうのォ~てんちィへッ!」
「がるる!ぐるがる~!」(←訳:虎です!いざ脱出~!)
こんにちは、ネーさです。
今日5月20日、TV(地上波)で久々に放送されるのは、
『ショーシャンクの空に』。
S・キングさんの原作に、
そして美しい映画作品にもうっとりした後は、
さあ、読書タイムですよ。
本日は、こちらのノンフィクション作品を、どうぞ~♪
―― べリングキャット ――
著者はエリオット・ヒギンズさん、
原著は2021年に、日本語版は2022年3月に発行されました。
英語原題は『we are belling cat : an intelligence agency for the people』、
『デジタルハンター、国家の嘘を暴く』
と日本語副題が付されています。
べリングキャット(bellingcat)とは――
『イソップ童話』の『ネズミの相談』に登場する
《誰が猫の首に鈴をつけるのか》、
転じて
《他人が嫌がる中で率先して難局に立ち向かう》
を意味する慣用句であり、
或る調査報道ウェブサイトの名称でもあります。
「うわさはァ、かねがねッ!」
「ぐるがるるるる!」(←訳:聞き及んでます!)
従来の、諜報活動と呼ばれる作業は、
“現場主義“でした。
現地に行って、その場所の言葉を話し、
人脈を築き、情報を収集して、分析する。
この足で現地に行ってみなくては分からぬことがある、と。
そんなインテリジェンス作業を
劇的に変えてしまったのが、
べリングキャットの《探偵》さんたちです。
現地に、行かなくてもいい。
我々が必要とするのは、
ネット世界に蓄積された膨大なデータ。
「どんなにィ~ささいなァこともッ!」
「がるるるるる!」(←訳:見逃さないぞ!)
べリングキャットの設立者である著者・ヒギンズさん、
自分自身を
“よくいるパソコンが趣味の会社員だった“
と語ります。
けれど、
“よくいる会社員“であるはずのヒギンズさんに
突然の閃きが。
ネットで検索すれば、
マスコミも専門家もまだ知らない事実を
突き止められるのではなかろうか。
そして、
同じことを思いつく人間は他にもいて、
ネットのコミュニティが自然に形成されていった、
というのです。
「ちいさなァ、てがかりィ!」
「ぐるるるるる……がるるるる!」(←訳:繋げてみると……大きくなる!)
ニュース画像の背景、すみっこに写っている
標識、窓の形、看板の字体。
そこから住所や位置を割り出し、
グーグルマップ、ストリートビューと照らし合わせる。
古い卒業アルバム写真と
監視カメラが捉えた不審者の顔を比較し、
その人物の国籍、姓名、
さらには職業・任務まで特定する。
現在でこそ、
そんなの簡単じゃん?と言える手法を、
見い出し、効率化し、
完成させていったパイオニアが
ヒギンズさんたちべリングキャット。
この御本では、
べリングキャットが世界中に注目されるきっかけとなった
2014年のマレーシア航空機墜落事件の調査、
英国での元ロシア二重スパイ暗殺未遂事件を中心に
ヒギンズさんたちの行動が語られてゆきます。
特に、マレーシア航空機の事件は、
ロシアによるウクライナへの侵攻が
この時にはもう始まっていたのか、と
愕然とさせられる内容で……無力感がこみ上げます。
何十万人もの犠牲者を出す前に、
私たちに何か出来ることは……
凶事を防ぐ狼煙をあげることは、出来なかったのか?
「せんそうゥ、もういやでスゥ!」
「がるるる!」(←訳:許すまじ!)
ヒギンズさんは記します。
《戦争犯罪者とその支持者たちが
インターネットを乗っ取るのを、
ただ指をくわえて見ていなければならないという法はない》
現実の世界を、
ネット世界を、
ただ平和に、ただ楽しい場所にするために。
ネタバレになってしまうので
これ以上はお喋りできませんけれども、
その志にエールを送りたくなる
全活字マニアさん必読の一冊を、
どうか皆さま、ぜひ!