脳のシステムが摂食障害を起こす仕組みは次のように考えられています。引用文献はリタ・カーター『脳と心の地形図』より。<o:p></o:p>
これまで紹介したように「私たちの脳は生存に必要なものを追い求め、獲得するために『アメとムチ』システムを使って」います。たとえば摂食障害に一番関係する食欲について考えてみると、まず美味しそうな食べ物を見る、また良い匂いに反応する感覚、あるいは身体からの血糖値低下といった刺激を、大脳辺縁系(皮質の内部にあります)が認知すると、「食べたい、手に入れたい」という欲求を感じます。<o:p></o:p>
次に欲求や衝動を満たすために、新皮質(意識的な脳)は、食べ物を口に入れる、追いかけて獲得するといった身体的な行動や行為を起こす命令を出します。そうして行動・行為の後、身体は大脳辺縁系に再び信号を送り返し、その結果ドーパミン・セロトニンに代表される神経伝達物質(脳内ホルモン)を分泌し、満足感・快感を得るというシステムです。<o:p></o:p>
アメとムチが具体的にどんなものかについては触れていませんが、アメは当然脳内ホルモンのドーパミンなどで、それによりあま~~いごほうびが与えられます。一方ムチというのは行動に伴う危険性、はらはらどきどきの試練、身体的なしんどさ、厳しさなどにあたるでしょう。<o:p></o:p>
ところがなんらかの不具合で、この最後のごほうびが与えられない、感じられない状況、つまり満足感が得られない状態が生まれます。「アメリカの遺伝学者ケネス・プラムとデビッド・カミングスは、この種の不満状態を報酬不全症候群と名づけ、多くの障害はすべてここに含まれると考えた」。臨床心理学的にはたくさんの症状がありますが、多くがこのシステムの障害で説明され、脳のどの部位の働きが悪くなるかで、症状や程度が決まるというのです。前述したようにたとえば摂食障害の場合は大脳辺縁系の視床下部が関係しているし、脅迫神経症は尾状核というところの活動過剰と考えられているのです。<o:p></o:p>
報酬不全症候群は名前のとおり、報酬がないために満足できない、安心したり確信したりすることもできず、常に欲求から気をそらすことができなくなるのです。こうした症状は程度の差はあるものの、およそ4人に1人の割合で存在する、というのですから誰でもそんな状態になる確率は高いといえます。<o:p></o:p>
「何百万年もかけて発達してきたこの複雑なシステムは、最近までとてもうまく機能していた。資源の乏しい世界では、快楽を求めたり、目標に向かって行動するときの報酬がはっきりしていたから、食べ物や獲物を得るのに、長い時間と労力をかけるのをいとわなかった」のですが、近年人間はすさまじい勢いで環境を変化させ、たいした手間も、時間もかけず食べ物を入手することが可能になったのはご存知の通りです。そのぶん得られる報酬が少ないのも当然なのかもしれません。でも脳は物足りなさを感じていて、ますますごほうびを求め続けているようなのです。
写真:沖縄おもろまちにあるDFS店の豪華なツリー。クリスマスソングが聞こえてくるようです。
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さて実は言いたいことはこれからの部分なのですが、長くなったので次回です。脳科学が目指しているのはいったいどんなところなのでしょう?
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