宮崎さんが、今回のドイツのウクライナへの戦車供与を詳しく書いてくれています。
何となく各国の腰の引けた対応が目に付くのは私だけでしょうか。どの国もやりたくない気持ちが見えているようです。
やりたいのはDS(ディープステート)等のグローバリストや死の商人達なのでしょう。
「宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和五年(2023)1月27日(金曜日) 通巻第7607号 <前日発行>
米国、ウクライナへ『エイブラムスM1』戦車を31両供与
ドイツもNATOの圧力を前に14両のレオパルド戦車を供与
欧米はウクライナへ二個戦車大隊を編成できる新鋭の戦車の提供に踏み切る決定をした。
とくにドイツ製レオパルド戦車の供与でNATO諸国は大論争を展開し、最終的には四月から供与開始となる。
NATO国防相会議は1月25日に合計100両前後のドイツ戦車供与で合意したが、こまかな詰めは行われていない。ポーランド、ノルウェーはドイツに先 んじて供与を決めており、またスペインも前向き、フィンランドとオランダはドイツから新型と交換され次第、在庫を供給することなった。
ドイツのシュルツ首相ははじめから乗り気ではなく『アメリカが提供するのなら同時に』との条件をつけてきた。緑の党,FDPが賛成、与党SPDは慎重だった。
ところがNATO国防相会議の合意によりドイツは供与決定に踏み切った。とりあえずドイツ軍の在庫から14両のレオパルド戦車2A6型を供与し、他の NATO諸国からの供与分と合わせて、とりあえず88両で二個大隊とする予定。編成が完了するのは早くても六月ごろになる。ロシアの大攻勢には間に合わな いことになりそう。
米国も最新鋭『エイブラムスM1』戦車を31両供与をきめたほか、装甲車ストライカーを90両、歩兵先頭車ブラッドレーを59両、また英国はチャレンジャー戦車を14両とAMX10RC軽戦車を供与する。
とはいうものの、これでいきなりウクライナ有利の戦局が望めるだろうか? 軍事専門家によれば、必要とされる戦車の最低量は300両(理想は1000両以上)、NATOがかき集めての供与予定は最大で139両だ。
あまつさえレオパルド2戦車には多くの脆弱性が指摘されている。
第一に重すぎる。重量が65トン。ウクライナの多くの橋梁を渡河出来ないため局地戦の範囲で留まる。米エイブラムスは61・5トン、120ミリ砲装備で 最大時速72キロ。英チャレンジャーは62・5トン、120ミリ砲。時速59キロ。ドイツのレオパルド2は、64トン、120ミリ砲装備、最大時速70キ ロである。
第二に戦車側面、屋根、後部装甲は鉄板が比較的薄く、ロシアの対戦車兵器による攻撃に対して脆弱である。迎え撃つロシア軍は塹壕をほっており、ゲリラ的は対戦車戦を想定しているばかりか、二月にキエフへの兵站を破壊する作戦を準備中といわれる。
第三に破損したときに修理する前にロシアの無人偵察機に発見されると、砲撃で破壊されやすい。乗員修理工、連絡方法などの訓練は最低ニケ月を要する。ド イツは部品を集めて戦車の組み立てをやり直すため追加の29両は四月に、残りの22両は年末、もしくは2024年になるとしている(ワシントンポスト、 26日電子版)。
最大の弱点は、ウクライナの指揮官が、もし陣形を間違えて戦車隊を配置した場合、敗北を喫しやすいのだ。2016年のシリアでトルコ軍は 1 回の戦闘で 8 両のレオパルド(2A4) 戦車を失った。
▲ロシアは塹壕で待ち構え、春に兵站壊滅作戦を準備している
レオパルト 2 戦車は、ロシア軍の射程をはるかに超えた距離でロシア車輌を迎撃できるが、その条件は広範囲の地形で、遠くに配置し稜線位置を取ることで優位にたてる。
しかしウクライナ東部の戦域には集落、森林、湿地などの地形で、戦車の得意な戦法がとれないと予測される。
実際にレオパルド戦車の第一陣がウクライナに届くのは、四月末から五月と予測されている。さらに追加の戦車は在庫からだす中古ゆえに、各地で『修理』され、なんとか年末までにウクライナの手に渡る計画だという。
戦車乗組員を訓練するために、NATO側にも通訳や宿舎の準備の必要があり、ウクライナ人乗組員 1 人を訓練するのに少なくとも 2 か月、またそれに加わるウクライナ兵士が確保できているのかの問題がある。
米国はドイツにある米軍基地でエイブラムス戦車の特訓を始める。エイブラムスは操作が非常に難しい戦車とされる。乗員四人の息の合ったチームプレーも要求される。
ポーランドはただちに数百人のウクライナ兵を受け入れ訓練を開始するとしている。
訓練が間に合わなければ、NATOは『志願兵』を募って実際の戦闘に参加するのだろうか?
過剰な期待は禁物である。
やはり、どうも怪しそうな動きが見えるようです。これは戦争が拡大しない為には良いことんなのかも。
とは言え、それが戦争が長引くのは嫌ですね。