子供のころ、風邪で熱が出て寝込み、熱さましやのどの渇きを潤すために、冷えた三矢サイダーを飲むことが喜びの一つであったことを突然思い出した。今夏の暑さを和らげるために、シャワーを浴びるが、生ぬるい水道水では殆ど、その効果がない。冷蔵庫を開ければ、冷たい麦茶の隣にあるサイダーを見つけ、飲んでみた。しかし、あのころの味とはかなり異なるようである。確かに、甘みは少なくなり、後味の良いように、今風にアレンジされたのかも知れないが、味覚とは、自分が置かれたその時代・環境・暮らし・周りの家族をはじめとする人々との接触によって大いに変化するものである。あの時代に逆戻したく願うのは、サイダーの味ばかりではなく、足らずともこころが満たされたささやかな生活そのものかもしれない。