現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

暗あっての明

2008-10-30 22:15:15 | 虚無僧日記
10/29 今日で10日目。朝8時から名古屋駅に立つが、
JRの警備員がやってきて追い出される。

名鉄に乗って岐阜まで行く。岐阜駅はJRと名鉄の駅が
200mほど離れていて、両者を結ぶ長大な歩道橋が漸く
完成したばかり。だが人影は全く無い。駅前の商店街も
シャッター通り。往復1,080円使って、収入は260円。
こういう日もある。

帰宅して、中日新聞の「運勢」欄を見ると、
「田にも村にも人声なく、ただ残月のみあり」。
全くその通りだった。いつもピッタシ当たる。

夜8時、再び名古屋駅に出る。路上に絵を並べて
客待ちの若者がいた。なかなか味のある絵と書だ。
声をかけてみた。

宮城県から全国を回っているという。「似顔絵」
ではなく「笑顔絵師こたろ」だそうだ。
「笑顔絵師」とは、「笑っている顔という意味
だけではなく、絵や言葉によってどこかの誰かが
笑顔になってくれればいいなっていう私の思い」と。

なるほど「では虚無僧の私をどう描く?天蓋を被って
いては笑顔も描けまい」と難問を出した。しばらく
対談して、彼はスラスラ色紙に筆を走らせた。

中心に小さく虚無僧の私。その横に若い男女の笑顔
がドアッフ゜で描かれた。「ムム、私が主役では
ないのか、さて文字はなんと書く?」
彼はしばらく考え考え、筆を入れていく。

「我は暗と成り、明を活かす。闇こそ明を活かす術、
大切は見えぬ所に有る」

なるほど、虚無僧も吹く尺八の音も暗いが、私を見て、
若者は笑顔を見せて通り過ぎていく。
暗があってこそ明が際立つ。暗い私が人々の笑顔を
呼び起こすのだ。
「大切なものは見えぬ所に有る」というのも意味が深い。

お見事、感服して、2,000円 (いざという時の隠し金も
全部) 彼に差し出した。これでまた一文無しになった。
でも、描いてもらった色紙を手にルンルン気分で帰宅できた。


「尺八と一休語りの虚無僧一路」のホームページも見てください。

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新入り

2008-10-30 21:37:38 | 虚無僧日記
毎日会う人がいる。30代のたくましい体つきの男性だ。
1週間前、彼は新品ピカピカの作業服を着て、真っ赤な
キャリング・バッグを曳いて駅構内を歩いていた。
次の日、階段にじっと座っている。次の日も次の日も。
作業服と赤いバッグが人目をつく。
昼はどこぞの作業場で働いているのだろう。夜は帰る
家がないのだ。ホームレスの新参者だった。疲労が顔に
出てきた。作業服も赤いバッグも薄汚れてきた。日に日に
寒くなる。どうする、どうなる、この先。
いかん、私の着物も薄汚れてきた。

「尺八と一休語りの虚無僧一路」のホームページも見てください。

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お坊さんに

2008-10-30 07:27:45 | 虚無僧日記
夜10時半、帰宅直前、自転車に乗った男性に
「お久しぶり」と呼び止められた。「大門の坊主
です」と。中村観音のご住職だった。
「酒飲まない?、今までそこにいたんだけどさ」
と誘われ、すぐ近くのスナックに連れていかれた。

きれいなママさんだった。虚無僧姿ではいっていっても
驚かない。初対面なのに「NHKで見ましたよ」と。
今年1月にニュース番組の中でわずか4分流れただけ
なのに、それをしっかり記憶しているとはすごい。

以前は栄の一等地、錦のクラブにいたが、3年前ここ
中村に店を出した。(観音寺住職の)清弘さんとは錦の
時からのつきあいで、開店祝いに書いてもらったという
額が掛けてあった。「蓮の花は泥の中にしか咲かない」と
いう詩。店の名は「蓮(れん)」。ママさんの名刺には
源氏名ではなく本名が書かれていた。

「錦のクラブにいた時、虚無僧がよく来ましたよ」という。
尺八は吹かない、吹け無いのに恰好だけで、金銭を要求する
のだという。10年位前のことらしい。大阪には今でもいる
と聞く。それで虚無僧は嫌われ者なのだ。

他に客はいない。ママさんの人生話を聞きながら、閉店の
深夜1時まで居て、焼酎2杯飲んで1万円。清弘住職が
支払ってくれた。因みに錦のクラブだと3万円だという。
今錦も閑古鳥が鳴いている。

虚無僧には縁のない世界。浄財をこんな所で使う気には
なれないが、本物の住職は、そんなこだわりをも突き抜けて、
豪放磊落。酒と色好みの一休さんと同じ。考えさせられる。