ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ作「予告殺人」を読んで

2005-06-02 15:06:46 | Weblog
 どうしてこんなに老嬢が多いんだろう。いつもクリステイの小説を読んで感じていたことだが、それにしても、この作品の中には多すぎる。
 小説が始まる前に主な登場人物のリストが載っているページがある。この作品には19人その中の11人が女性、その11人中の5人が老嬢。いくらなんでも老嬢率、高すぎ!
 
 でもどうして?イギリスって男の子の出生率が低いのかしら?まさかね?2つの大きな戦争があって男がたくさん戦死した、ということも考えられる。日本だって、そういうことはあった。大正生まれの男女の比率ってすごく歪だろう。
 しかし、クリスティの書いているイギリスでは、そうゆうケースが世代を超えまんべんなく見られる。またそういった中産階級は子どもが少ない。例えば『復讐の女神』に登場する旧領主館に住む3人姉妹。真ん中の女性だけが結婚し、しかも子どもがいない。いとこが1人いたが、その男性も戦死。つまり、この3人の老婦人だけが一族の最後の人たち。
 話すことといったら、リューマチ、神経痛、老齢年金、ああ、暗い。
 少子高齢化とはこういうことか。
 しかし、彼女たちは子どもがいなくても、身の回りの世話をやいてくれる使用人がいるから、まだいい。この使用人たちが高齢化したら……いや、この階層の人たちは、子どもが多いからいいか。

 なぜ、イギリス中産階級で、老嬢率が高いか?私もつらつら考えてみた。まずイギリスというのは、善くも悪くも階級社会で、階級を超えた結婚というのは少ない。また外国人差別も根強く「いいとこのお嬢さん」は外国人と結婚しにくい。しかし、イギリスは早くから植民地政策をとっていて、男性が外国へ出掛ける事はおおく、男性の方が外国人と結婚する可能性は高い。だから同じイギリス人、同じ中産階級の人と結婚を希望している女性は少し余ってしまうのだ。

 ミス・マープルは、甥のレイモンドと仲がいい。レイモンドの奥さんともうまくいっているようだ。名付け親になって親しくしている若い人は数人いるようなので少し安心。
 しかし、日本では名付け親という習慣がないので、自分に子どもがいない、甥や姪もいない、という人はどうするのだろうか。昔から身寄りがない年寄りはいた。しかし、少子高齢化まっしぐらの日本。これから、大量に身寄りのない高齢者が出てくる。なにか、いい方法があるのだろうか。この『予告殺人』を読んで、犯人が誰かということよりそっちのことを考えてしまった。
コメント
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