ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ作「ポアロのクリスマス」を読んで

2005-06-13 11:20:12 | Weblog
大好きな本・読んだ本
 この作品も、最後、意外な犯人だったから、驚いた。ちょっと『アクロイド殺し』と通じるところがある。だから読者がアンフェアだ、と怒ることもあるかもしれない。
 しかし、読み返してみると、なるほどいたる所にヒントが出てきて、なぜこんなたくさんヒントがあるのに、犯人がわからなかったのかな、あの人を犯人とすれば、すべて辻褄があう、と自分の間抜けさかげんがよくわかる。

 でも、この作品は1938年のもの。血液のトリックは、今ではもう使えない。現代の法医学ではわかってしまうものね。

 この小説にも、クリスティの他の作品と同じように、大金持ちの親父と、働かないいい年をした子どもたちが出てくる。
 長男 親父の会社で働いているが、実権は親父が握っている。
 次男 国会議員だが、親から多額の仕送りを受けている。
 三男 トラブルを起こし、家から追い出され、世界を放浪。しかし、先々で金に困り、親父にカ    ネを無心。
 四男 芸術家タイプの男。生活力はまったくない。いったい何で食べているんだろう。奥さんの    収入?親父から仕送りが少しはあるんだろうか。

 しかも、この4人の息子に子どもは1人もいない。
 文中に、親父が集まってきた息子たちに「お前たちは、誰も彼もまったく1ペニーの値打ちもないやつらだ!」と罵る場面がある。
 若い頃に南アフリカに渡り、ダイヤモンドで財をなしたやり手の親父からすれば、この4人の息子にはまったく愛想がつきるだろう。いったい、どうしてこういうことになるんだろう。
 親に金があると、子どもは働かなくなってしまうのかな?

 なお、この兄弟の順番は、私の印象で、年齢順にした。原書でもそうだろうと思うが、会話の中で、『兄さん』といった呼びかけがなく、名前で呼びかけているので、兄弟の順がわかりにくい。
訳者も苦労してるんじゃないだろうか。
コメント
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