ケイの読書日記

個人が書く書評

綾辻行人「黒猫館の殺人」

2008-06-02 09:18:19 | Weblog
 ホテル火災で記憶を失った老人が、自分が何者なのか調べて欲しい、と推理作家の鹿谷門実に依頼する。

 唯一の手掛かりは、彼が自分で書いたと思われる手記。そこには『黒猫館』で彼が遭遇した奇怪な事件が綴られていた。

 ミステリアスなストーリーで、どんどん話に引き込まれるが、なぜもっと調べないのか、まどろっこしい所も多い。
 例えば、手記の中で、フルネームや職業や大学名といった固有名詞がきちんと書かれているなら、老人は偽名でもその身元など、個人でも簡単に分かりそうなのに。
 バンド名が分かっているなら、そのボーカルを訪ね話を聞き、他のメンバーの大学名や住所など特定できるだろう。
 その人が亡くなっていたり、連絡が取れなくなっていても、その友人や知り合いを訪ねれば、去年の夏、彼らがどこら辺を旅行したか聞きだすのは難しくないだろう。

 だいたい、大きなホテル火災の被害者だったら、テレビ局が飛びついて老人を大写しにし、「火事で記憶を無くしてしまった。自分が誰か分からない。心当たりの人は連絡して欲しい」と大々的に放送するだろう。

 なんといっても記憶喪失はドラマチック。ピアノマンだってロマンチックにでっち上げられた事柄が、世界中を駆け巡ったではないか。
 実際のところ、仮病だったけど。
コメント
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