ケイの読書日記

個人が書く書評

島田荘司「リベルタスの寓話」

2009-05-24 16:42:46 | Weblog
 表題作の他「クロアチア人の手」が収められている。2作品ともボスニア紛争時のセルビア人・クロアチア人・ムスリム(イスラム教徒)の三つ巴の争いが元になっている作品。

 ボスニア紛争の時はNATO軍がセルビアを空爆したりして、その映像がニュースで放映されたりしていたが、日本ではそれほど大きく取り上げられなかったんじゃないだろうか?
 なんにせよ、もうじき21世紀になろうとする、しかもヨーロッパでこんな武力衝突が起こるなんて…ちょっと信じられなかったですね。

 「民族浄化」怖ろしい言葉です。いままで仲良くしてきた隣人が「おまえはクロアチア人(セルビア人・ムスリム)だから抹殺しなければならない」と叫んで襲ってきたら…さぞ怖ろしいと思う。
 民族を根絶やしにしようと殺戮するだけでなく、他民族の女性達を集団レイプして自民族の子どもを産ませようとするのも…歴史的に見てよくある話だが…怖ろしい。

 しかし人種としては同じでしょう? 宗教や言語が違うだけで。でもその宗教が違うというのが大きいのよね。


  推理小説としては「リベルタスの寓話」のトリックは医学的なものだが納得できるなかなか良いトリック。
 「クロアチア人の手」は…あまりにも無理がある。それを御手洗が電話だけで解決しちゃうからもっと無理がある。神がかっているね。こんなことができるなら世の中に迷宮入りの事件なんて無くなっちゃうね!


 余談だが、読み始めて1行目で「NATO」の文字が目に飛び込んできた。エーベルバッハ少佐を思い出してしまったよ。
コメント (4)
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