ケイの読書日記

個人が書く書評

皆川博子「伯林蝋人形館(ベルリンろうにんぎょうかん)」

2010-11-19 16:45:00 | Weblog
 プロイセン貴族で義勇軍くずれの、アルトゥール・フォン・フェルナウという美青年をめぐる人間模様を、様々な視点(亡命ロシア娘、ナチス親衛隊員、ユダヤ系ドイツ人、ベルリンのキャバレーの大スターなど)から書いている。
 ちょっと少女マンガチック。

 もしタイムマシンがあって過去に遡れるとしたら…私は第一次大戦と第二次大戦の間の、ベルリンとミュンヘンに行きたい。

 ドイツは第一次大戦に負け、天文学的な賠償金を支払わなければならなくなり、猛烈なインフレが始まり、ドイツ紙幣は紙屑になって、コーヒー一杯飲むのにもトランク一杯のお札が必要な大混乱の中にある。
 それでも、数年したらアメリカ資本が大量に流入し、一時的に落ち着いたかに見えた世情も、1929年の大恐慌でぺしゃんこになる。
 街には大量の失業者があふれ、革命を起こせとストやデモが頻発する。

 そんな中からナチスが生まれたんだ。


 これから先のドイツ国民の苦難を思うと…胸が苦しくなるね。
 日本も確かに大変だったろうが、一応、第一次大戦では戦勝国になり、火事場泥棒のように領土をかっさらったのだ。
 日本中が沸きかえってたんじゃない?

 国内の不景気を、他のアジア諸国を植民地化することにより打開しようとして、どんどん深みにはまって行き、第二次大戦に突入する事になる。


 しかし、どうすれば日本もドイツも戦争にならずにすんだんだろう? 戦争反対という理念は大賛成だが、唱えるだけでは、避ける事はできないよ。
コメント
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