ケイの読書日記

個人が書く書評

佐野洋子「シズコさん」

2011-06-23 11:26:22 | Weblog
 佐野洋子さんと聞いても、ピンとこないかもしれないが、絵本『100万回生きたねこ』の作者といえば、誰もが思い当たるに違いない。
 そう、あの名作絵本を描いた人なのだ。ついこの間、亡くなったよね。
 「シズコ」とはお母様の名前。

 筆者は昭和13年生まれで芸大を出ているんだから、大変なお金持ちのお嬢様と思いきや…中国からの引揚者で、とても苦労したらしい。
 おまけに、浪人中、お父様が病気で亡くなった。

 だから、苦労して芸大を出してくれたお母様と仲が良いのかと思ったが、実際はその反対で、筆者はお母様を好きではなかった。
 筆者は、その事でずっと心を痛めていた。「私はなんて冷たい娘なんだ」と。

 ところが、大人になり交遊が広がると、母親が嫌いという娘は決して珍しくない、と気付く。

 父親と娘、母親と息子、この困難な関係をフロイトは分析しているが、母親と娘の難しい関係を、なぜフロイトは取り上げなかったんだろう、それは彼が男だからだ、と彼女は言う。

 お母様が、高級老人ホームに入居し(なんと、1ヶ月35万円!)ボケ始めると…やっと筆者は優しい気持ちを持つようになる。
 そして93才でお母様が永眠。

 長い!本当に長い!! 娘の方が先にくたばってしまいそうだ。(事実、筆者はその時乳癌が再発していて車椅子生活だった)

 「孝行を したい時には 親は無し」は昔の事で、今は「孝行を しきれないほど 親が生き」なのだ。
コメント
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