ケイの読書日記

個人が書く書評

平安寿子「しょうがない人」

2012-06-13 15:20:26 | Weblog
 ネットショップ「スマイルスマイル」のパート従業員・日向子は、夫と娘がいる43才の主婦。社長は高校時代の友人で、他のパート仲間とも仲が良く、盛り上がる話題は、生きている限り必ず遭遇する「しょうがない人」たち。


 平安寿子さんの小説は、どうもクセになるようだ。ドラマチックな展開もなく、キャラが立っている訳じゃない。
 どこにでもいる市井の中年女性の、どうでもいいような話が満載!
 井戸端会議でおしゃべりする楽しさ、人をこき下ろしてスカッとする爽快感がある。

 やり玉に挙がるのは、まず、金持ちに嫁いだことを自慢する親戚の女、悪口対象の王道・姑と小姑、大した用もないのに電話をかけてくる大学時代の後輩、中学になりモンスター化した子供、金銭にルーズな仕事上の知人、電話注文の時1時間以上も家庭の事情を話しまくるお客さん、実家を下宿屋にしようとする両親、その話に飛びつく妹夫婦…などなど。

 ああ、一歩外に出ると、女には7人の敵がいるのだ。

 特に面白かったのは、金銭にルーズな仕事上の知人・狸男。
 話が上手いので、よくモテて女性とデートするが「持ち合わせがないから立て替えておいて」という。そして、そのままになる。
 街でばったり出会い「そこらでお茶を」と相手を誘う。話が終わり、さて会計という時「しまった、財布を忘れた!」というので相手は「おごるよ」と言わざるを得ない。
 「○○ちゃん」となれなれしく相手を呼び、有名人の名前を列挙して「皆、ぼくの遊び仲間さ」と自慢する。だったらコーヒー代くらい払えよ!!

 人の財布は僕の財布と思っているんだろうなぁ、こういう人は。
コメント
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