ケイの読書日記

個人が書く書評

橘玲 「不愉快な事には 理由がある」

2015-08-13 10:21:23 | Weblog
 表紙カバーに、どーんと喪黒福造氏(笑ゥせぇるすまん)が載っているので、すごく目立つ。筆者の橘玲氏については、全く知らなかったが、おもわず手に取ってパラパラ。面白そうだったので借りる。
 橘玲氏は、経済小説を書いている人らしいが、経済の専門家ではないので、自由気ままに思った事をエッセイとして書いている。素人にしか社会批評はできないと言って。


 数年前に話題になった「ベーシックインカムの導入」についても考察している。「20歳以上の国民に、一律に月額7万円を支給する」なら、年金も、失業保険も、生活保護も、すべて不要になるので、行政を簡素化でき、かえって安上がり、という考え方もあるそうだ。
 なんという斬新なアイデア!!!! と驚いたが、もっと驚いたのは、同じような貧困救済策を、産業革命勃興期のイギリスがしていたらしい。
 
 1795年5月、スピーナムランドという小さい町で、「1人ひとりの所得に関係なく、最低所得が保障されるべきである」として、パンの価格に応じた賃金扶助をしたのだ。しかし1834年、廃止されてしまう。(でも、40年近くも、この法律があったという事はスゴイね! さすが英国!)

 どこが上手くいかなかったかというと…
① 労働の論理を破壊する。受け取る所得が同じなら、働くのはバカバカしいだけ。
② 雇用主が払う賃金が極端に下がる。 差額の賃金が税金で補てんされるなら、労働者を安く働かせてもOK。それどころか、貧困層に支払われる家賃扶助を目当てに、ボロ屋を貸し付けて儲ける、現代日本の貧困ビジネスそっくり。

 ①も②も、すごくよく分かります。時代や国が違っても、人間の本質ってあまり変わらないよね。
コメント
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