ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖 「怪しい店」

2015-08-08 10:15:56 | Weblog
 「古物の魔」「燈火堂の奇禍」「ショーウインドウを砕く」「潮騒理髪店」「怪しい店」の5編を収録。初出が2014年なので、最近の火村とアリスの話。いつも通り、好調です。
 
 この火村とアリスのコンビは、永遠の30代半ば独身で、トシを取らないんだよね。それが、御手洗・石岡コンビと大きく違う。御手洗と石岡は、作者の島田荘司と同じ、団塊の世代らしいから、今は60代後半か…。

 それに、火村・アリス組は、2人の推理能力にそれほど差がないので、事件に関しての会話のキャッチボールができて、その間に読者も色々考えることができる。それが、なかなか楽しい。ああ、本格推理小説を読んでいるなって。

 ところが、御手洗・石岡組だと、御手洗が突出した推理でどんどん先に行ってしまい、石岡君はうなずくだけ。読者である自分も石岡君化してしまい、何も考えず読み進み、最後に「ああ、御手洗ってすごいなぁ!天才!!」って事になる。
 読み物としてすごく面白いけど、犯人や動機、犯行手口など、自分であまり考えないで読書終了となる。それが、残念と言えば残念。


 第5話の「怪しい店」は、少しネタバレになってしまうから申し訳ないが、悩みごとの相談を受けている女が、そこで知った情報を元にお客を恐喝する。これって、表面化しないだけで、水面下では、結構ある話じゃないかな?
 仲の良い友人や肉親よりも、見ず知らずの占い師やカウンセラーの方が、悩みを打ち明けやすいって心理、理解できます。
 その悩みの原因が、法に触れる、あるいは人間関係を破壊するものだったら…。一方で取り繕って善人のように振る舞っているのに、もう一方では、知られたら破滅する秘密を、わざわざ有料で見知らぬ他人に打ち明ける。バカな事、やってるなぁ。

 誰かに話さなければ狂ってしまう、そういう場合は、各自治体がやっている「心の電話」におかけ下さい。無料だし、誰がかけてきたのか詮索しません。
コメント
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