ケイの読書日記

個人が書く書評

奥田英朗「家日和」(いえびより)

2013-06-06 11:26:10 | Weblog
 奥田英朗らしい、ちょっと捻りのきいたユーモア小説。全部で6編。みな面白いが、特に最後の『妻と玄米御飯』がよかった。笑えます。


 自身をモデルとしているのだろう、中年太りが気になってきた作家と、その妻のロハス攻防。

 以前は貧乏暮らしをしていたが、N賞を受賞した途端、一躍流行作家の仲間入りした大塚の家では、毎日の食事が玄米ご飯になった。妻がロハスに、はまったせいだ。
 
 もちろん玄米ご飯は健康にいい。妻や妻の友人たちから参加しないかと誘われるヨガも、健康にいい。体調が良くなったのは認める。だけど、どうも受け付けないのだ。ロハスを。ムカムカしてきて。
 同じくロハスブームを嫌いな担当編集者と、大塚は盛り上がる。

「ああいうのって、善意のファシズムじゃないですか。自分だけピュア、みたいな顔をして、実の所は単なる自分好きでしょう。偽善ですよ、偽善。なぁにが“地球にやさしい”ですか。だったら、てめえの家だけ汲み取り式便所に戻せって言うんですよ」

 なるほど、善意のファシズムか。そうかもしれない。

 もちろん地球環境を考えるのは、良いに決まってる。でも、結局はいいとこどりなのだ。本気でロハス生活をしようとするなら、電気やガスは自給しなくちゃね。ごく少数だが、そうして生活している人もいるのだ。

 だいたい、ロハスロハスと言いながら、子どもを私立中学に行かせるのは、おかしいんじゃない? ロハスなら、歩いて行ける公立中学だろう。矛盾してない?

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